不動産の査定は不動産会社が行う無料査定と不動産鑑定士が行う有料の査定(鑑定)の2つの方法があります。
無料査定はお金をかけずに売却価格の相場が分かるというメリットがありますが、不動産会社によって価格にばらつきが生じやすく、相続や離婚など複数人の利害関係が関わる場面には適さない可能性があります。
有料の査定は国家資格を持つ不動産鑑定士が、国土交通省が定めた方法で評価を行うため一定の信頼性のある価額が分かりますが、コストがかかるというデメリットがあります。
不動産の有料・無料査定の概要とそれぞれの方法のメリット・デメリット、2つの方法を選ぶ場面をケース別で解説していきます。
目次
- 不動産査定を依頼する2つの方法
- 不動産査定、2つの方法のメリットとデメリット
2-1.不動産会社による無料査定のメリット・デメリット
2-2.不動産鑑定士による有料査定(鑑定)のメリット・デメリット - 不動産の無料査定と有料査定の選び方
3-1.不動産会社の無料査定が適しているケース
3-2.不動産鑑定士の有料査定(鑑定)が適しているケース - まとめ
1.不動産査定を依頼する2つの方法
不動産の査定には不動産鑑定士による有料の査定と、不動産会社が行う無料査定という2つの方法があります。
不動産の査定は売却、相続、離婚の財産分与など様々な場面で行われますが、査定は目的に応じて2つの方法又は両方を利用します。2つの方法の概要は以下の通りになります。
不動産会社の無料査定 | 不動産鑑定士による有料査定(鑑定) | |
---|---|---|
査定の流れ | 複数の不動産会社に査定を依頼する | 不動産鑑定士事務所に依頼する |
査定で分かる価額 | 売却価格の相場 | 資産としての不動産の鑑定額 |
金額 | 無料 | 物件により費用が異なるが、15万円~30万円程度 |
査定する人 | 不動産会社の担当者 | 不動産鑑定士 |
用途 | 売却価格や物件の相場を知りたいとき | 相続や不動産を担保にする時などの価額が知りたいとき |
不動産会社の査定が無料なのは、不動産会社が売却を担当したときの仲介手数料が報酬として入ることが背景としてあります。不動産会社によってはあえて高い査定額を提示し、案件獲得をしようと考えるケースもあるため、複数社の査定を受け、査定価格や査定の根拠を比較することが重要です。
一方、不動産鑑定士による査定は鑑定士事務所に依頼することになります。不動産鑑定士への報酬は物件の規模によって異なりますが、15~30万円程度の費用が発生します。
2.不動産査定、2つの方法のメリットとデメリット
不動産会社による無料査定と不動産鑑定士による有料査定にはメリットとデメリットが存在します。それぞれ詳しく見て行きましょう。
2-1.不動産会社による無料査定のメリット・デメリット
不動産会社による無料査定のメリットは、費用をかけずに売却価格の相場を知る事が出来るという点です。
査定のスピードが早く、簡易査定は数時間で結果が分かることも多いため、手軽に物件価格を知りたい時に利用しやすい方法と言えます。売却を見据えた査定方法であることから、実勢価格に近い不動産価格を知るにも適した方法です。
査定を依頼する際には、物件の間取り図や住宅ローンの残高証明書、測量図、パンフレット、固定資産税の納付通知書等、物件に関する資料を準備しておきましょう。
下記、複数の不動産会社へ同時に査定依頼ができる不動産一括査定サイトの一覧です。不動産一括査定サイトでは、効率的に複数の不動産会社への無料査定依頼が可能となっています。
主な不動産一括査定サイト
サイト名 | 運営会社 | 特徴 |
---|---|---|
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一方、無料査定のデメリットは、不動産会社によって査定額が異なる、不動産鑑定士による鑑定よりも証拠力が低いという点が挙げられます。
不動産会社の査定は、原則として物件売却を目的とした営業活動の一環で無料となっているため、原則として売却を勧められることになります。不動産会社や担当者によって査定の基準や範囲が異なるうえ、売主の売却意欲を後押しする目的で相場よりも高い査定価格を提示することもあります。このように、無料査定では査定額にばらつきが生じる点にも注意が必要です。
上記のような背景があることから、不動産会社への査定依頼は複数の会社に依頼し、査定価格や査定根拠を比較しながら精査していくことが重要となります。
不動産会社による査定は上記の通り価額にばらつきが生じやすいため、裁判や調停などに利用する際の証拠力が鑑定士による鑑定評価額より弱い傾向がある点にも注意しておきましょう。
2-2.不動産鑑定士による査定のメリット・デメリット
不動産鑑定士による査定のメリットは、「不動産の鑑定評価に関する法律(昭和38年法律第152号)」に基づいた価額を把握でき、高い証拠能力を持った査定書類を獲得できるという点です。
不動産会社による査定は不動産売買のプロが行いますが、不動産鑑定士は不動産の資産価値について、地理的な環境や法律、市場経済など様々な要素を参考に公平な立場で評価を行います。
相続で相続人同士の意見が合わない時や、離婚による財産分与でもめているケースなど利害関係が対立する時に検討しやすい査定方法と言えるでしょう。
デメリットは費用がかかるという点で、物件により15~30万円程度の費用がかかります。また、鑑定額が提出されるまでには、依頼者との打ち合わせや不動産の調査・確認、情報収集や分析などを行った後、約1週間前後の時間を要します。
また、不動産の売却価格は売り手と買い手の相対取引によって価格が決まります。鑑定価格がそのまま実際に不動産を売却した時の価格とはならないという点にも注意が必要です。
3.不動産の無料査定と有料査定、選び方
不動産会社による無料査定と不動産鑑定士による鑑定は双方にメリット・デメリットが存在しますので、どちらを選ぶかはケースバイケースです。
3-1.不動産会社の無料査定が適しているケース
不動産会社による無料査定を検討するのであれば、対象不動産を売却したい時・売却も選択肢として視野に入れている時に適していると考えられます。査定を担当する不動産会社は売却を目的としているため、スムーズな相談もしやすくなるためです。
不動産会社の査定担当者にはエリアの需要を聞いたり、物件の条件について質問をすることも可能です。複数社に問い合わせながら、相手の知識や対応を見極め、数社を選ぶことでより良い不動産会社と出会える確率が高くなります。
なお、相続や贈与、離婚の財産分与においても、意見が一致している際には無料の査定額を参考にすることが出来ます。
後に意見が変わりトラブルに発展する可能性を考慮し、相続の際には遺産分割協議書、離婚では離婚給付等契約公正証書に「不動産会社による査定額を不動産の価額とする」旨を記載しておきましょう。
3-2.不動産鑑定士の有料査定(鑑定)が適しているケース
不動産鑑定を選んだほうが良いケースとしては、トラブルになりそうな場面や正確な価額を把握したい時など、不動産売却を視野に入れておらず、不動産価値そのものが争点になっている時に検討しやすいと言えるでしょう。
相続や離婚などで意見が合わない時や裁判に発展しそうな場面では、法律に基づいた鑑定額は証拠として有用となります。
また、不動産を貸し出すために家賃・地代を判断しなくてはいけない時、担保として不動産を設定する際は正確な価値を分かっておくために鑑定を依頼するケースも存在します。
不動産鑑定士への依頼は「鑑定費用をどのように捻出するのか?」という点もポイントとなります。不動産鑑定士への依頼を検討する場合も、相続人同士や相手方との話し合いを行い、費用負担について確認をしておきましょう。
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まとめ
不動産の有料・無料査定は場面に応じて使い分ける事が重要です。トラブルが起きそうな時や精緻な価額を知りたい時には有料査定、売却を視野に入れる場合は無料査定というケースが適していると考えられます。
なお、相続や離婚時の採算分与に無料査定を利用する際には、「不動産会社による査定額で全員が合意している」という旨を書面で残しておくと後のトラブルを回避できる可能性が高くなります。
それぞれのメリット・デメリットを比較しながら、自身の状況に合った方法を検討し、選んでみると良いでしょう。
田中 あさみ
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