最近、早期リタイアを目指す「FIRE」という概念が注目されています。FIREとは、所得を企業などに依存せず経済的に自立し、自分の好きなことに時間を使えるように早期退職を実現するということです。以前からあった早期退職は一部の特別な人しかできないイメージでしたが、FIREは誰でも目指せるということが関心を集める理由の1つです。
今回は、FIREを実現するためにどのような投資が向いているか具体的な方法について解説します。FIREを検討する際の参考にしてください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- 「FIRE」とは?
- FIREの「4%ルール」とは?
2-1.月間生活費から目標資産額を算出する
2-2.毎月の支出を切り詰めて投資に回す - インカムゲイン・キャピタルゲイン両方が狙える「米国株投資」
3-1.米国株投資のメリット
3-2.米国株投資のデメリット
3-3.米国株投資の始め方 - コツコツと長期的に資産形成がしやすい「インデックス投資」
4-1.インデックス投資のメリット
4-2.インデックス投資のデメリット
4-3.インデックス投資の始め方 - ローンを活用してレバレッジを利かせられる「不動産投資」
5-1.不動産投資のメリット
5-2.不動産投資のデメリット
5-3.不動産投資の始め方 - まとめ
1.「FIRE」とは?
FIREとは、「Financial Independence, Retire Early」という言葉の頭文字を取った言葉で、「経済的に自立をして、早期リタイアする」といった意味です。アメリカの女性作家ヴィッキー・ロビンの「お金か人生か」という著書などが火付け役になったと言われています。FIREはライフスタイルとライフプランが一体になった考え方で、節約と投資によって早期リタイアを目指すというものです。
FIREの目的は単純に「お金持ちになる」ということではなく、「生活のためにお金を稼ぐことから解放され、自分の好きなことに時間を使える」ようになることです。その目標を達成するために、アメリカではFIREを目指す人の年収に対する貯蓄率を70%にするなど、ストイックな努力が必要とされています。
そこまでの倹約が難しい場合、生活費のすべてを不労所得で賄うのではなく、副業や短時間労働での収入で不足分を補う「サイドFIRE」というセミリタイアに近いやり方もあります。
2.FIREの「4%ルール」とは?
具体的にFIREを目指す場合の数値目標の設定について解説します。
2-1.月間生活費から目標資産額を算出する
FIREを実現する目安として「4%ルール」という考え方があります。「4%ルール」とは、「年間支出の25倍の資産があれば年利4%の運用益を所得として生活していける」という目安です。
たとえば、月間の生活費が20万円の場合、年間では240万円になります。6,000万円(240万円×25)の資産を年利4%で運用すると、資産を減らすことなく運用益だけで生活できるというわけです。この数字をベースに、月間の生活費30万円で資産額9,000万円のように目標額を決めるとよいでしょう。
ただし、年利4%以上で運用を続けることは実際には困難であるほか、急な支出が発生した場合にはプランが崩れてしまいかねないため、鵜呑みにするのは危険です。あくまでも当面の目標値設定の手段として参考にする程度が望ましいといえます。
2-2.毎月の支出を切り詰めて投資に回す
FIREでは、投資に回すお金を多くするために支出を極限まで減らすことも推奨されます。たとえば、手取り月収30万円の70%というと、21万円です。この金額をすべて投資に回し年利5%で複利運用した場合、約16年で6,000万円の資産が作れる計算になります。
このように、早期にリタイアしたい場合、節約や副業で可能な限り投資元本を増やしていかなくてはなりません。「自分にはそこまではできない」という場合、投資額を減らして準備期間を延長するか、サイドFIREを目指すのも選択肢となるでしょう。
3.インカムゲイン・キャピタルゲインを両方狙える「米国株投資」
米国には連続増配50年以上という企業も珍しくなく、P&Gやコカ・コーラなど日本で知られた企業も含まれます。このような企業の株式を長期保有して配当金を得る、もしくは米国高配当株式に投資するETFを購入するのも選択肢の一つとなります。
また、連続増配ができる企業は好業績が続いている企業でもあるため、インカムゲインだけでなく値上がりによるキャピタルゲインも狙うことができます。
3-1.米国株投資のメリット
米国株投資のメリットは以下の通りです。
配当金を再投資することで複利効果を得られる
配当株に投資をした場合、配当金・分配金を再投資すれば複利運用ができます。複利運用とは運用益を投資元本に組み入れて運用する方法です。インカムゲインを消費してしまわずに再投資することで、長期的に資産を大きく増やすことが期待できます。
キャピタルゲインも狙える
米国企業はグローバルで事業展開をしている企業が多く、大企業でも成長を続けているケースが珍しくありません。そのため、好業績が評価されて将来の期待なども含めて株価に織り込まれていくことで、インカムゲインだけでなくキャピタゲインも狙うことができます。
3-2.米国株投資のデメリット
デメリットは以下の通りです。
配当金・分配金に課税される
配当金や分配金を再投資する場合でも、受け取り時に20.315%の税金が源泉徴収されます。このことは、投資効率の面では不利になります。さらに米国株式の場合、米国において10%課税された後に日本で20.315%課税されます。確定申告により米国での課税分は取り戻せますが、手間を考慮するとやはりデメリットです。
この税金面のマイナスを受容できるかどうかが米国高配当株式投資を選択する上でのポイントになります。
減配のリスクがある
米国株の中には数十年にわたり連続増配を維持している銘柄があると先述しました。しかし、そのような銘柄を選んで長期保有したとしても、必ず期待した配当利回りが保証されるわけではありません。
企業の業績には浮き沈みがつきものであり、業績が悪化して減配されるリスクは常に考えておく必要があります。このようなリスクを軽減させるために、個別株式で銘柄を分散させる、またはETFを購入するなどの方法に一定の効果が期待できます。
株価下落リスクがある
一般的にインカムゲインを狙う投資戦略では、投資対象の値動きはあまり気にせずに保有することが前提となっています。しかし、減配のリスク同様に、業績が長期的に低迷して株価が下落し、大きな含み損が生じる可能性もあります。そのため、特に株式への直接投資では業績が伸びていて長期的な収益が見込める銘柄を見極めることが大切です。
3-3.米国株投資の始め方
米国の株式やそれに投資するETFの取り扱いがある証券会社で購入します。最近は、手数料が安く取引しやすい環境が整っているネット証券の利用が増えています。証券会社を選ぶにあたっては、取り扱い銘柄数や取引手数料などを比較するとよいでしょう。
証券会社によっては、外国株式・ETFの定時定額購入のサービスもあります。手間をかけずに取引をしたい人には選択肢となるでしょう。従来、外国株式・ETFの配当金・分配金の再投資は定時定額購入の利用者も自分で行わなければなりませんでした。しかし最近では、配当金・分配金の再投資を自動的に行う証券会社もあります。
自分の投資スタイルに合った証券会社に口座を開設しましょう。
4.コツコツと長期的に資産形成がしやすい「インデックス投資」
インデックス投資とは、市場の動きを表す指数(インデックス)と同じ値動きを目指す投資信託・ETF(上場投資信託)に投資する手法です。インデックスの目安となる指標のことをベンチマークと言います。日経平均やNYダウのような特定のインデックスをベンチマークとする金融商品がインデックスファンドです。
4-1.インデックス投資のメリット
インデックス投資のメリットは以下の通りです。
投資の知識がなくても始めやすい
インデックス投資はインデックスファンドを買い付けるだけのシンプルな投資です。自分の投資対象とするインデックスを決めれば、自然に購入する商品も決まります。そのため、投資に関する知識が少ない初心者でも始めやすい投資手法です。買い付け後はファンドマネージャーが個別銘柄の売買をしてくれるので、手間もかかりません。
運用コストが低い
投資信託では、インデックスファンドの他にベンチマークを上回る成果を目指すアクティブファンドがあります。一般的にインデックスファンドの運用コストはアクティブファンドより低く抑えられています。インデックス投資のコストとは、購入時の手数料や保有にかかる信託報酬などです。
一般的にアクティブファンドは銘柄のリサーチなどに費用がかかるため、機械的に運用できるインデックスファンドより高コストな傾向があります。運用においてはコストを上回る利益が出なければ、収益はプラスにはなりません。そのため、ファンドにかかるコストは収益に大きく影響します。ゆえに、ローコストであることはインデックスファンドの強みの1つです。
分散投資ができる
インデックスファンドは購入するだけで分散投資ができる金融商品です。分散投資は、投資のリスクを軽減する重要な手法の1つです。1本のインデックスファンドは複数の銘柄で構成されています。個々の値動きが異なることにより、全体の値動きの振れ幅を抑える効果が期待できます。
複利効果が得やすい
インデックスファンドは投資信託では分配金の頻度が少ないもの、ETFでは分配金がないものを選ぶことにより、複利効果が得やすくなります。高配当株式投資のように分配金に課税されてから再投資する場合、投資効率は下がります。複利運用はお金を増やすために重要な方法です。よって、複利効果の高いインデックス投資は長期の資産形成に適しています。
4-2.インデックス投資のデメリット
デメリットは以下の通りです。
短期で大きな利益は期待できない
インデックス投資では、個別株式の投資のような短期でのハイリターンは期待できません。分散投資は個別株の投資に比べて値動きの振れ幅は抑えられますが、1銘柄が急に値上がりした場合の影響も反映されにくくなります。そのため、短期で利益を得るより長期運用に適しています。
4-3.インデックス投資の始め方
インデックス投資はポピュラーな投資であり、対象ファンドを取り扱う金融機関もたくさんあります。始めるにあたっては、NISAやつみたてNISAの利用できる範囲では、非課税枠を活用するといいでしょう。
投資対象のファンドはコストが安く、できるだけ分配金の支払われないものを選びましょう。
5.ローンを活用してレバレッジを利かせられる「不動産投資」
不動産投資は、アパートやマンションなどの物件を取得し、賃貸経営を行うことによって家賃収入を得る投資手法です。物件の購入に多額の資金が必要ですが、借入の活用で大部分を賄えます。そのため、金融資産への投資に比べて早期の資産形成が期待できるという特徴があります。
5-1.不動産投資のメリット
不動産投資のメリットは以下の通りです。
レバレッジが効かせられる
不動産投資における「レバレッジ」とは、ローンの活用で自己資金以上に高額な物件を取得して家賃収入を得ることです。
たとえば、1,000万円の自己資金を4%で運用するインデックス投資と、同じ自己資金にローン1,000万円をプラスする不動産投資で得られる利益を比較してみましょう。
インデックス投資 → 1,000万円×4%=40万円
不動産投資 → 2,000万円×4%=80万円
上記は単純化した比較なので、経費を差し引いた不動産投資の手取りはもっと少なくなります。しかし、レバレッジの効果でより効率的に資産形成ができることがわかります。
金融商品の価格変動に比べて家賃相場の変動は小さい
不動産から得られる家賃相場は特に居住用物件の場合、コロナ禍のような経済変動の影響はあまり受けません。株式のような金融商品は経済変動の影響が大きく、短期的に損失を被る可能性があります。しかし、そのような場合でも居住用不動産の需要が急激に落ち込むことは考えにくく、家賃の大幅な減収の可能性が低いことは不動産投資の特徴です。
5-2.不動産投資のデメリット
不動産投資のデメリットは以下の通りです。
空室リスクがある
不動産投資の代表的なリスクに空室リスクがあります。空室が発生すると利回りが低下し、想定していた運用プランが崩れてしまいかねません。そのため、できる限り空室期間を減らすことが不動産投資の重要なポイントです。
空室リスクを回避するためには、「空室が発生しにくい物件を選ぶ」「空室対策に強い不動産管理会社と契約する」などの方法があります。いずれにしても不動産を取得する前から空室対策をしっかり考えることが大切です。
流動性が低く、売りたいときに売れない
不動産は金融商品に比べて流動性が低く、売りに出してもすぐに売れないというデメリットがあります。売却を想定する場合、空室リスクの低い、条件の良い物件を選ぶように努めるとよいでしょう。
天災などで物件に被害が出るリスクがある
不動産の価値がゼロになる可能性は低いのですが、地震や台風などの自然災害で建物が損壊することも考えられます。近年の自然災害の増加で、火災保険の保険料は年々値上がりしています。保険でのリスクヘッジをしすぎると収益が圧迫されるので注意しましょう。物件取得前にハザードマップなどで、災害のリスクを確認することも重要です。
5-3.不動産投資の始め方
不動産投資は扱う金額が少なくとも数百万円と高額になるため、失敗した時のダメージが大きくなります。そのため、事前準備をしっかり積んで万全を期すことが大切です。
不動産投資の勉強をする
不動産投資を始めるにあたっては、まずは知識を得ることが基本です。書籍やセミナー、現在賃貸経営をしている人に話を聞くなどで、実践的な知識を身に付けていきましょう。
例えば、東京23区・横浜に集中してマンション開発・販売を行うプロパティエージェントでは、幅広い知識レベルに合わせた「オンラインセミナー」を定期開催しています。このような無料で参加できるセミナーで体系的な不動産投資の知識を学ぶことも検討してみましょう。
FIRE実現のための物件取得プランを立てる
具体的にFIREを実現するためにはいくらの家賃収入が必要か考え、物件取得のプランを立てます。ローンを組む場合、マイホームの購入や教育費の準備など他のライフイベントとの兼ね合いにも注意が必要です。
物件を探し、購入
物件取得プランを立てたら、目標が達成できる物件を探します。幅広く情報収集を行い、収支計算を行ったうえで、納得のいく物件に出会えたら購入しましょう。購入にあたっては、ローン審査などさまざまな手続きが必要になります。
管理会社の選定
不動産の購入後の管理は自分ですることもできますが、難しい場合は管理会社に委託することになります。しかし、管理会社ごとにサービスの質には差があるため、管理会社の選定は実績などを調査して慎重に行ってください。
まとめ
FIRE実現のためには、リスクを取って運用することと、投資額を多くするために厳しく節約することが大切です。
FIREを完全に実現することが難しい場合、サイドFIREなどより緩やかなやり方も選択できます。自分なりにカスタマイズした、FIREに向けた投資プランを検討してはいかがでしょうか。
松田 聡子
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