2023年12月施行の「改正空家特措法」の変更点は?空き家所有者の注意点4つ

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空き家が社会問題になる中、2015年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されましたが、2023年12月には空き家対策をより強化するために「改正空家特措法」が施行されています。

そこで今回のコラムでは、「改正空家特措法」によって変更された空き家対策について解説し、空き家の所有者が注意するべき点も紹介していきます。

目次

  1. 日本国内の空き家問題
    1-1.日本国内の空き家の現状
    1-2.空家等対策の推進に関する特別措置法とは
  2. 改正空家特措法のポイント
    2-1.管理不全空家を追加
    2-2.特定空家等の取り壊しを簡略化および円滑化
    2-3.空家等活用促進区域を創設
  3. 空き家所有者が注意するべきこと
    3-1.空き家を維持・管理するケース
    3-2.空き家を活用するケース
    3-3.空き家を売却するケース
  4. まとめ

1 日本国内の空き家問題

1-1 日本国内の空き家の現状

日本国内では空き家問題が顕在化しており、1988年に394万戸だった全国の空き家の数は2018年には846万戸に増加しています。

下記の表は、総務省住宅局の「空き家政策の現状と課題及び検討の方向性」で公表されている空き家数と空き家率をまとめたものです。

調査年 空き家の総戸数 空き家率
1988年 394万戸 9.4%
1993年 448万戸 9.8%
1998年 576万戸 11.5%
2003年 659万戸 12.2%
2008年 757万戸 13.1%
2013年 820万戸 13.5%
2018年 846万戸 13.6%

※参照:総務省住宅局「空き家政策の現状と課題及び検討の方向性」より抜粋

空き家が増え続けている主な要因は、核家族化や少子高齢化に加えて、人口減少や都市部への人口集中などが進んでいることです。今後は、団塊世代が平均寿命を越えることで相続問題が各地で起き、都市部でも空き家が増えていくという想定もされています。

空き家があると景観が悪化するだけではなく、地域全体の荒廃感を進めてしまいます。また、空き家の所有者は使用していないのに税金を支払い続ける必要があります。こうした空き家に関する問題解決のために、2015年に制定されたのが「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空き家対策法)です。

1-2 空家等対策の推進に関する特別措置法とは

「空家等対策の推進に関する特別措置法」は、空き家を減らすために有効的な利活用や適切な管理、除去などを推進することを目的に制定されました。この空き家対策法第2条では、空き家の定義を次のように定めています。

「空家等」とは、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。)をいう。

※引用:e-GOV「空家等対策の推進に関する特別措置法」より抜粋

また、空き家の中でも倒壊や害虫の発生、ごみの堆積といった問題が大きく、周辺への悪影響が懸念される空き家を「特定空家」とし、対応の緊急性が高いとしています。以下のように定義されています。

そのまま放置すれば倒壊等、著しく保安上危険となるおそれのある状態または著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等のことを指す。

※引用:e-GOV「空家等対策の推進に関する特別措置法」より抜粋

特定空家に指定されると、空き家を適切に管理するように行政から助言・指導が行われます。しかし、その後も空き家の状況が改善されない場合は、勧告→命令→代執行(取り壊し等)といったように対策が厳しくなっていきます。さらに、勧告を受けた時点で固定資産税の優遇措置が無効になり、命令に応じない場合は罰金が科せられるなど厳しい対応がとられることになっています。

このように厳しい措置が行われる法律が定められていますが、全国の空き家は増え続け、措置が行われる件数も増えています。

下記の表は、国土交通省住宅局住宅総合整備課が2021年に公表した資料「空家等対策特別措置法について」から抜粋した特定空家等に対する措置の状況をまとめたものです。

措置の内容 2015年度 2016年度 2017年度 2018年度 2019年度
助言・指導 2,206件
(129)
3,126件
(203)
3,816件
(270)
4,487件
(323)
5,394件
(401)
勧告 52件(23) 198件(72) 271件(91) 364件(101) 466件(139)
命令 4件(3) 17件(16) 44件(29) 43件(21) 42件(33)
行政代執行 1件(1) 10件(10) 12件(12) 18件(14) 28件(25)
略式代執行 8件(8) 27件(23) 40件(33) 49件(44) 67件(56)

※参照:国土交通省住宅局住宅総合整備課「空家等対策特別措置法について」より抜粋、()内は実施した市区町村数

このような状況を改善するために、法律の改正が行われています。それが「改正空家特措法」です。次の項目から詳しく見ていきましょう。

2 改正空家特措法のポイント

改正空家特措法は、空き家の「活用拡大」「管理の確保」「特定空家の除去等」が3本柱です。代表的な3つの変更点について確認していきます。

2-1 管理不全空家を追加

空き家の活用や管理を促進するために、「改正空家特措法」で新たに設定されたのが管理不全空家です。適切な管理がされておらず、そのまま放置するといずれ特定空家になる恐れのある空き家が管理不全空家として指定されます。空き家の中でも、特定空き家に近い空き家と考えると良いでしょう。

改正前は、自治体が指導や勧告などの措置を行う対象は特定空家でしたが、改正後は管理不全空家に指定された空き家も措置の対象になります。特定空家と同様に、勧告のタイミングで住宅用地特例が除外扱いになり、実質的に固定資産税の優遇措置が解除されます。つまり、固定資産税や都市計画税が大幅に増額されることになるのです。

2023年2月に行った「社会資本整備審議会 住宅宅地分科会空き家対策小委員会とりまとめ」で公表された資料「今後の空き家対策のあり方について」には、下記のように記載されています。

市区町村が把握した管理不全の空き家は累計約50万件、うち約14万件は、空家法に基づく措置等により除却等されたものの、約2万件の特定空家等や、約24万件にのぼるその他の管理不全の空き家は、今なお現存。(約10万件は状況不明)

※引用:社会資本整備審議会 住宅宅地分科会空き家対策小委員会「今後の空き家対策のあり方について

この資料によると、全国の市区町村が把握している管理不全空家は約24万件、特定空家等は約2万件に及ぶことがわかります。これまで措置の対象となっていた特定空家等が約2万件だったのに対して、「改正空家特措法」が施行されたことで措置の対象は約26万件に増えたことになるのです。

また、特定空家化を未然に防止する方法としては、管理不全空家を設定したことに加えて以下の2つも追加されています。

対策 内容
管理不全建物管理制度の活用 所有者に代わって建物管理を行う「管理不全建物管理人」の選任を市区町村が裁判所に請求できる
所有者を把握するのを円滑化 電力会社などにある所有者情報を市区町村が提供するよう要請ができる

これらの対策によって、空き家の活用や管理がさらに進むことを目指すのが「改正空家特措法」による変更点の一つです。

2-2 特定空家等の取り壊しを簡略化および円滑化

特定空家等に指定された空き家の所有者が命令などへの措置に応じない場合、各自治体が空き家の除去を行う行政代執行ができることになっています。今回の改正では、この流れを簡略化および円滑化できるように以下の点が変更になっています。

  • 特定空家等に対する「緊急代執行制度」の創設
  • 所有者不明時の略式代執行および緊急代執行の費用を確定判決なしで徴収
  • 相続放棄など所有者不明・不在の空き家に対して市区町村が財産管理人の選任を請求
  • 市区町村長に特定空家等に対する報告徴収権(資料の提出等を求める権利)を付与

例えば緊急代執行とは、事前の手続きがなくても特定空家等を取り壊すなどの対策ができることです。

このように空き家の取り壊しなどがスムーズに行えるようになっており、施行後5年間で約15万物件の管理不全空家および特定空家が適切に管理される、または除去されることを目指しています。

2-3 空家等活用促進区域を創設

空き家になる理由の一つに、再建築ができない土地に建物が建っているケースがあります。そのため、建て替えなどによって空き家の活用が進むように、「空家等活用促進区域」が創設されています。

具体的には、下記のような対応を各自治体で実施することになります。

接道規制の合理化

建築基準法では、前面に接する道路の幅員が4m未満の場合、建物の建て替えなどができないのが決まりです。しかし、安全確保策を行うことを前提に、特例として建て替えが認められるようになっています。

安全確保策については、市区町村と特定行政庁が協議して指針に規定することになっています。

用途規制の合理化

建築基準法では、土地の用途が制限されていますが、市区町村が特定行政庁の同意を得て指針に規定した場合、用途の変更を特例として認めることになっています。

例えば、第一種低層住居専用地域の場合は、店舗の床面積が50㎡以下かつ建物の延べ面積の2分の1未満の店舗兼住宅でのみ飲食店を営業することができますが、用途変更によって空き家をカフェなどとして開業することができるようになります。

市街化調整区域内の用途変更

市街化調整区域とは、都市計画法で定められた市街化を抑制する区域のことです。無秩序な市街化を防止し、計画的に市街化を進めるために各自治体が定めているものですが、知事の判断によって空き家の活用が進むよう用途変更ができるようになっています。

このほかには、所有者が不在の空き家について取り壊しがしやすくなるように、財産管理人の選任を市区町村が裁判所に請求できるようになっています。

また、所有者に対して、空き家の活用や管理に関する情報提供などのサポートを行う「空き家等管理活用支援法人」を創設しています。空き家等管理活用支援法人には、各地域の一般社団法人やNPO法人などが指定されることになっています。

※参照:国土交通省「空家等管理活用支援法人の指定等の手引き

3 空き家所有者が注意するべきこと

使っていない場合でも空き家を所有していると固定資産税・都市計画税が所有者に課せられますが、管理が適切にされていない場合などは管理不全空家や特定空家に指定されることがあります。その場合、「固定資産税等の住宅用地特例」の適用対象外になってしまいます。

「固定資産税等の住宅用地特例」では、以下のように固定資産税と都市計画税が軽減されています。

特例 対象 固定資産税 都市計画税
小規模住宅用地の特例 200㎡以下の部分 1/6 1/3
一般住宅用地の特例 200㎡を超える部分 1/3 2/3

これまで住宅用地として認められていた空き家の所有者は、減額された固定資産税と都市計画税を支払っています。

しかし、空き家が管理不全空家や特例空家に指定され、指導に応じて改善が見られないと判断された場合は、各自治体から勧告されることになります。この時点で、特例の適用が解除されることになります。

例えば、固定資産税が1/6に減額されていた場合は、これまでに比べて6倍の税金を支払うことになるのです。

また特定空家に指定され、指導や命令されたにもかかわらず状況を改善しない場合には、自治体が行政代執行、つまり強制的に空き家を解体することができます。この際の解体にかかる費用は、解体後に自治体から請求されることになります。

空き家所有者が注意するべきこととしては、管理不全空家および特例空家に指定されないよう対策をすることとなります。また、どちらかの指定を受けても、以下のような方法によって指定が解除されるようにすることもできます。

  • 空き家のまま維持・管理する
  • 賃貸物件や飲食店などとして活用する
  • 子どもや親族が住む
  • 売却する

それぞれの方法を選んだ場合の注意点について見ていきましょう。

3-1 空き家を維持・管理するケース

空き家が適切に管理されている場合、周辺への悪影響は及ばないとして管理不全空家や特定空き家に指定されることはないと考えられます。破損部分などを修繕するほか、美観を保てるよう定期的にゴミを処分したり、雑草などを処理するなどをするようにしましょう。

ただし、住宅は使われないと老朽化が進むのが早くなるものです。清掃するだけではなく、メンテナンスも定期的に行うようにしましょう。ゴミが投棄されたり、害虫の発生などにも十分な注意が必要です。

また、いずれ売却することを考えると、資産価値をどのように維持するのかも注意すべきポイントです。この先、固定資産税や都市計画税を支払えるかどうかも確認しましょう。

3-2 空き家を活用するケース

空き家の活用方法には、「住む」「貸す」「解体する」などいくつかの方法があります。例えば、自分が住めない場合でも、親族などに住んでもらうことで空き家ではなくなります。

また、古民家カフェとして経営したり、貸家や貸別荘、解体して駐車場にするなどといった活用方法も考えられます。

この場合の注意点は、空き家を維持・管理できるだけの収入が得られるかどうかです。また賃貸経営やカフェなどの店舗運営を行う場合、事業が頓挫すると再び空き家化する可能性もあります。そうならないように知識をしっかり身につける必要もあります。

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3-3 空き家を売却するケース

空き家を所有し続けることで、いずれ管理不全空家や特定空家に指定されてしまうという懸念があります。それを避けるために、空き家を売却することも方法の一つです。

ただし空き家を売却するには、再建築不可物件などに関する専門的な知識やリフォーム・リノベーションに関するノウハウ、周辺の不動産事情などに精通している必要があります。そのため、空き家売買に実績のある不動産会社を選ぶことが注意すべきポイントになります。

そこで、地域に精通した不動産会社を幅広く掲載している不動産一括査定サイトを活用するのも一つの手です。複数の不動産会社に一度に査定を依頼できるだけではなく、相場価格の把握などにも役立ちます。下記の表は、代表的な不動産一括査定サイトです。活用を検討されると良いでしょう。

主な不動産一括査定サイト

サイト名 運営会社 特徴
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まとめ

空き家の利活用や除去を促進するために制定されたのが「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空き家対策法)です。しかし、空き家の状況が改善しないため、より対応を厳しくするために2023年12月に改正空家特措法が施行されています。

大きなポイントは、適切に管理されていない空き家は固定資産税が増額になるなどの対策がとられることで、これを回避するには空き家を「管理をする」「売却する」「活用する」といった方法があります。

空き家を所有されている方は、空き家をどうするか判断するためにも、今回の記事を参考に一つずつ対策を検討されていくと良いでしょう。

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倉岡 明広

経済学部経済学科卒業後、出版社や編集プロダクション勤務などを経てフリーライターとして独立。雑誌や新聞、インターネットを中心に記事を執筆しています。初心者が抱く不動産投資の疑問や質問を解決できるよう丁寧な記事を執筆していきます。