近隣トラブルや管理の手間、経済的負担増など、空き家を放置してしまうと様々なデメリットがあります。適切な管理の難しい不動産の売却を検討している方も多いのではないでしょうか。
しかし、初めての不動産売却で手順や相場が分からず、不安に感じている方もいらっしゃると思います。
そこでスムーズな空き家の売却ができるように、今回のコラムでは空き家売却の注意点を解説しつつ、手順や相場価格の調べ方も紹介します。
目次
- 空き家を売却する際の注意点
1-1.原則として名義人でなければ売却はできない
1-2.空き家を売却する方法は1つだけではない
1-3.管理を怠ると税金の高い「特定空家」に指定される
1-4.更地にする場合、建物の取り壊し時期に注意する
1-5.3年を超えると3,000万円の特別控除の対象外になる - 空き家を売却する際の手順
- 空き家の相場価格を調べる方法
3-1.レインズマーケットインフォメーション
3-2.不動産ポータルサイト
3-3.固定資産税の評価証明から推定する - まとめ
1 空き家を売却する際の注意点
空き家売却の注意点として5つのポイントを取り上げています。それぞれ詳しく見て行きましょう。
1-1 原則として名義人でなければ売却はできない
不動産の売却は名義人である所有者が行うのが原則となっています。
空き家の売却では、親が使っていたが使わなくなって放置していた、といった理由などで名義変更がされていないケースもあります。空き家を売却する際はご自身が名義人かどうか、一度確認してからにしましょう。
名義人が親のままであれば、贈与あるいは相続によって名義人を変更する必要があります。この場合、贈与では贈与税、相続では相続税がかかる点に注意しましょう。
なお、贈与と相続は財産を誰かに与えることですが、下記のような違いがあります。
- 贈与:財産の所有者が財産を譲渡すること
- 相続:財産の所有者が亡くなった後に財産を受け継ぐこと
贈与税と相続税は、不動産の評価額に対してそれぞれ異なる税率が設定されています。相続の方が税制上使える特例が多く、控除される金額も多額となりますが、どちらの方が税率が低くなるのかはケースバイケースとなるため、税理士などの専門家への相談も検討してみましょう。
【関連記事】不動産の生前贈与と相続、どちらが良い?相続税と贈与税を比較
【関連記事】不動産相続の手順は?名義変更(相続登記)や相続税の納付まで詳しく解説
1-2 空き家を売却する方法は1つだけではない
空き家を売却するには「築古一戸建てとして売却」「更地として売却」「買取」の3つの方法が主になります。それぞれにメリットとデメリットがありますので、下記にまとめました。
売却方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
築古一戸建て | 買主がリフォームしたり、そのまま利用したり、選択肢が多い | 建物の古さや状態、リフォーム費用などが懸念材料となる |
更地 | 駐車場や住宅用地など買主の用途が幅広い | 解体費用がかかる |
買取 | 不動産会社のつける価格に納得すればすぐに売却ができる | 買取価格が、市場での価格の7割程度になることが多い |
更地にしてしまうと、後で元に戻すことはできません。また「早く売却したいのになかなか買い手がつかない」「相場よりも安く売ってしまった」ということにならないように、売却方法を慎重に選択しましょう。
【関連記事】空き家買取のメリット・デメリットは?仲介との違いや不動産会社の探し方も
1-3 管理を怠ると税金の高い「特定空家」に指定される
売却予定の空き家をそのまま放置する人もいますが、「特定空家」に指定されてしまうことで、課税標準額が6倍になってしまい、税金が高くなる可能性があります。
「特定空家」とは、「空家等対策の推進に関する特別措置法」で下記のように定義されています。
(第二条2)
この法律において「特定空家等」とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。
※引用:e-GOV法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法」
通常、土地にかかる固定資産税には「住宅用地の特例措置」という特例が適用され、敷地面積が200㎡以下なら課税標準額は1/6に優遇されています。住宅用地として使用していることが前提で適用されている特例ですが、「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されたことによって、空き家は対象外となる可能性があります。
この調査で建物の状態などによって「特定空家」に指定され、さらに自治体から改善に向けた「勧告」を受けると、「住宅用地の特例措置」の対象から外されます。つまり、固定資産税の優遇措置が適用されなくなるのです。
空き家は売却するのに時間がかかることがあります。管理を怠り、放置してしまうと特定空き家に指定されてしまう可能性もあるため、注意しましょう。
※参考資料:国土交通省「空家等対策特別措置法について」
1-4 更地にする場合、建物の取り壊し時期に注意する
前項で紹介した「住宅用地の特例措置」は、更地にして売却する際にも関わってきます。それは更地にすることで、それまで適用になっていた「住宅用地の特例措置」の対象から外れてしまうからです。つまり更地にすると固定資産税の課税標準額は6倍になるのです。
ただし、この固定資産税の基準日は1月1日で、その日に住宅があったかどうかが基準となります。12月31日に建物を解体すると、翌年の固定資産税の課税標準額は6倍になりますが、1月2日に建物を解体すると1月1日時点では建物はあったことになります。そのため、固定資産税が高くなるのは、1年遅れとなります。
1-5 3年を超えると3,000万円の特別控除の対象外になる
居住用財産、つまりマイホームを売却した際は、所有期間の長さに関係なく譲渡所得から控除できる「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」という特例が利用できます。控除額は最高3,000万円までとなっているので、適用になるとマイホームを売却して利益が出た際にかかる譲渡所得税が減額になります。
この特例が空き家に適用されるのは、住まなくなった日から3年を経過する日の12月31日までに売却することという条件があります。空き家になって3年目の12月末を過ぎても売却ができなかった場合、この特例は適用されなくなってしまう点に注意が必要です。
2 特例を受けるための適用要件(1)イ
その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
※引用:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
その他、相続財産であれば、被相続人の居住用財産の特例を利用できる可能性があります。こちらも3,000万円の特別控除です。(*国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」を参照)
2020年6月時点では、令和5年12月31日までの期間限定の特例となります。主な要件は下記の5つです。
- 昭和56年3月31日以前に建築された一戸建てであること
- 相続開始直前まで被相続人が1人で居住していたこと
- 相続してから空き家であること(賃貸用などの利用履歴がないこと)
- 耐震用リフォームあるいは解体して更地にすること
- 相続を開始した日から3年以内の売却であること
2 空き家を売却する際の手順
空き家売却は概ね下記のような流れで進めます。
- 不動産会社に査定を依頼する
- 不動産会社を決めて媒介契約を結ぶ
- 査定価格に基づいて売り出し価格を決める
- 不動産会社が売却活動を開始する
- 買い主候補との交渉で合意したら、売買契約を結ぶ
- 代金が支払われ、空き家を引き渡す
空き家の売却は、一戸建てやマンションなどの不動産を売却する際と大きくは変わりませんが、空き家の売却に強い不動産会社を選ぶことが一つのポイントとなります。
築古一戸建てとして売り出してもなかなか売れず、更地での売却や、不動産会社の買取という方法に切り替えることを検討することも考えられます。このような状況に備え、実際に更地での売却、買取での実績がある不動産会社を選ぶことも検討しましょう。
また、依頼実績がなくても、空き家の売却に関わるアドバイスや助言をその都度丁寧にしてくれる不動産会社や、綿密に調査を行ってくれる不動産会社であれば、スムーズに売却が進むことがあります。
このような不動産会社を見つけるには、できるだけ多くの不動産会社へ査定を依頼してみましょう。例えば、複数の不動産会社へ同時に査定依頼ができる「不動産一括査定サイト」の利用を検討してみましょう。
下記の表は、悪徳業者の排除を積極的に行い、全国エリアに対応している不動産一括査定サイトをまとめたものです。
主な不動産一括査定サイト
サイト名 | 運営会社 | 特徴 |
---|---|---|
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【関連記事】不動産査定会社・不動産売却サービスのまとめ・一覧
3 空き家の相場価格を調べる方法
空き家に限らず、不動産の売却を失敗しないためには相場価格を知っておくことが重要です。相場価格を知るには、下記の2つの方法があります。
3-1 レインズマーケットインフォメーション
1つ目は成約事例情報サイトである「レインズマーケットインフォメーション」で、過去の取引事例を調べて相場価格を推測することです。
不動産流通機構の「レインズマーケットインフォメーション」は、国土交通省から依頼を受けて運営しており、直近1年間の販売価格や成約価格が掲載されています。このサイトで、ご自身が売却したい空き家と同様の条件で検索すると、類似物件の取引事例が閲覧できるので、おおよその相場価格が分かるのです。
3-2 不動産ポータルサイト
もう1つは「LIFUL HOME’S(ホームズ)」「suumo」「athome」などの不動産ポータルサイトで調べる方法です。レインズマーケットインフォメーションと同様に、ご自身が売却したい空き家と「築年数」「間取り」「最寄り駅」などの条件を同じにして検索します。現在、販売されている物件が一覧できますので、おおよその相場価格を推測することができます。
このようにして相場価格を知ることで、ご自身の空き家がどのくらいの価格で取り引きされるのかが推測できます。売り出す際の価格や、買主候補から価格交渉をされたときの判断基準にしてみましょう。
3-3 固定資産税の評価証明から推定する
空き家であっても不動産を所有していると固定資産税の課税対象となり、不動産の評価額に応じて固定資産税が課税されることになります。
土地の固定資産税評価額は、時価の約7割を目安に評定されています。したがって、土地の売却相場を固定資産税評価額から推計するのであれば、下記算式のように、土地の固定資産税評価額を0.7で割り戻すことによって、おおよその相場価格の算出が可能になります。
土地の売却相場価格=土地の固定資産税評価額÷0.7
固定資産税の評価額は、納税通知書と同時に届く「課税明細書」や、固定資産の所在する市区町村や都に申請することで固定資産評価証明書を取得して確認することができます。
まとめ
少子高齢化や人口減などによって、今後も空き家が増えていくと考えられます。空き家対策に関する法整備も強化されているため、特定空き家に指定されないよう注意する必要があると言えるでしょう。
空き家には空き家の売却方法があり、今回のコラムではいくつかの注意点を紹介しました。不動産会社の協力も得ながら、失敗のないように売却を進めていきましょう。
倉岡 明広
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