マンション経営の利回りは?計算方法や目安を初心者向けに解説

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さまざまな投資における収益性は「利回り」という指標を参考にします。マンション経営でしばしば参照する利回りには、想定利回り・表面利回り・実質利回りの3種類があります。それぞれ空室率や諸経費に対する考え方が異なるため、違いをおさえて投資判断に活用しましょう。

今回の記事では、マンション経営の利回りについて基本的な考え方や目安を紹介します。これからマンション経営を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

目次

  1. マンション経営の利回りの基本と計算方法
    1-1.不動産・株式・債券の利回りの違い
    1-2.想定利回り
    1-3.表面利回り
    1-4.実質利回り
  2. マンション経営の利回りの目安
    2-1.東京都内の期待利回り
    2-2.主要地域の期待利回り
    2-3.一棟と区分の利回りの差は?
  3. マンション経営の利回りを考えるときの注意点
    3-1.利回りは高いほどよいとは限らない
    3-2.キャッシュフローを加味したROIも見ておく
    3-3.利回りは将来変動する場合もある
  4. まとめ

1 マンション経営の利回りの基本と計算方法

マンションをはじめとした不動産経営の収益性を図るうえでは、利回りを参照するのが有効です。まずは利回りの基本的な概念と、不動産経営において参照される3種類の利回りについて解説します。

1-1 不動産・株式・債券の利回りの違い

利回りは、投資の収益性を見るための指標で、収入額を投資額で割ったものです。

投資一般の「利回り」の考え方

利回り(%)=投資収益 ÷ 投資額 × 100

不動産投資に限らず、株式投資や債券投資でも応用できる指標です。つまり、利回りを活用すれば不動産投資と他の投資の収益性の比較もできます。ただし、投資収益の出方や投資額の考え方は商品によってさまざまなので、それぞれの違いに留意しましょう。

投資先による投資収益・投資額の考え方の違い

投資先・利回り 投資収益 投資額
株式投資
配当利回り
1株あたり年間配当額 株価
債券投資
直接利回り
表面利率 購入価格
不動産投資
想定利回り
年間家賃収入 物件購入価格

不動産投資の場合は、比較的単純な利回りである「想定利回り」のケースで、収入が年間家賃の総額、投資額は物件価格を使用します。年間で購入したときに支払った金額の何%の収益が得られるかを示す指標です。

マンション経営では今紹介した想定利回りのほか、実際の賃料収入を加味した表面利回り、諸経費などを加味した実質利回りがあります。それぞれの違いを理解したうえで利回りを参照し、投資判断に役立てましょう。

1-2 想定利回り

想定利回りとは、物件が1年間満室であることを前提とした利回りです。具体的な計算式は次の通りとなります。

想定利回り(%) = 満室前提の年間賃料収入 ÷ 物件購入価格 × 100

マンション一棟投資では、一つの物件に多数の区画が入っています。1年間すべての部屋で1日も空室が出ないとは考えにくいため、実際の賃料収入は少なくなると想定されます。

区分マンションの場合は1区画だけで運営するため、入居者が1年間全く退去しなければ満室前提の年間収入=実際の収入となる可能性も相応にあるでしょう。ただしそれでも、年によっては年間に一定日数の空室が発生して、収入額は想定を下回ると想定されます。

空室が全くないまま不動産経営をするのは現実的ではありません。実際の不動産経営の収益率は、想定利回りよりも基本的に下回ると考えておきましょう。

不動産仲介会社やポータルサイトでは、しばしば想定利回りか次に紹介する表面利回りを掲載しています。どちらの利回りを表現しているのかわかりにくい場合もあるので、参照するときには注意しましょう。

1-3 表面利回り

表面利回りは、不動産経営にかかるコストは含まないものの、実際の賃料収入額をもとに計算される指標です。

表面利回り(%) = 実際の年間賃料収入 ÷ 物件購入価格 × 100

実際の賃料収入には、過去の空室実績が反映された数値になっているため、空室リスクを織り込んだ収益性とみることができます。ただし将来の空室リスクを反映することはできません。

過去と将来で不動産市況が大幅に変わる際には、空室が増加して収益性が下がるリスクもあるので注意しましょう。

1年間全く空室が起きない場合には、表面利回り=想定利回りとなります。なお、いずれの利回りもマンション経営にかかる諸経費が含まれていません。

マンション経営するとなると、経費が全くかからない状況は想定しづらいため、実際に投資家が得られる収益はさらに低下すると考えておきましょう。

1-4 実質利回り

実質利回りは、マンションをはじめとした不動産経営において発生する諸経費を加味した利回りです。今回紹介するなかでは、最も保守的な数値といえます。

実質利回り(%)=(実際の年間賃料収入 – 諸経費) ÷ (物件の取得価格 + 購入時諸費用)× 100

諸経費には、たとえば次のような項目が含まれます。

  • 共用部分の水道光熱費
  • 修繕費・修繕積立金
  • 火災保険などの保険料
  • 不動産管理会社への管理費
  • 固定資産税や都市計画是氏

また、購入時の諸経費としては、たとえば以下が想定されます。

  • 仲介手数料
  • 不動産取得税/印紙税
  • 登記費用
  • ローンの保証料や事務手数料
  • 初回の火災保険料
  • 税理士や司法書士への報酬

マンション経営をするうえで、一定の経費発生は避けられないため、現実的な収益性を把握する上では実質利回りを参照するのが一案です。

ただし、実質利回りは購入時の条件や管理会社選びなどによって変わってきます。そのため、物件のポータルサイトなどには掲載されておらず、不動産会社との面談などによってシミュレーションを作成してもらうことで確認することができます。購入検討時には、仲介会社や管理会社に相談して、実質利回りを把握するようにしましょう。

特に、1棟投資は物件の規模も大きいため、区分マンション投資と比べて経費も高くなる可能性があります。必ず実質利回りをもとに、本来の収益性を把握しておきましょう。

また、このほかに投資家が支払う費用としては、ローンの元利金支払いと不動産所得に対してかかる所得税があります。特にローンの元利金支払いは借入条件によっては月々のキャッシュフローに大きく影響を及ぼすので、注意が必要です。

正確な収支を確認するために、元利金支払いや税金支払いを全て加味した収支見通しを立てましょう。

2 マンション経営の利回りの目安

利回りの目安は市場環境により変わっていくものですが、ここでは2023年10月時点の日本不動産研究所「不動産投資家調査」を参考にして、利回りの目安を紹介していきます。

ここで参照する「期待利回り」は、基本的には費用等を控除した金額を基に算出されます。そのため、今回紹介した利回りのなかでは「実質利回り」に近い性質を持つものです。

2-1 東京都内の期待利回り

市場関係者のヒアリングに基づく東京都内の期待利回りの目安は次の通りです。

住宅の種類 立地 期待利回り
ワンルームマンション 城南地区(目黒区・世田谷区)
城東地区(墨田区・江東区)
3.8%
4.0%
ファミリー向け 城南地区(目黒区・世田谷区)
城東地区(墨田区・江東区)
3.8%
4.0%

出所:日本不動産研究所「不動産投資家調査

いずれの場合も都内で3.8%~4.0%という結果となりました。なお、いずれも一棟投資を前提とした期待利回りです。また、基本的な利回りの定義に照らし合わせると、実質利回りの目安として参照するのが適切といえるでしょう。

実質利回り3.8%~4.0%を達成するためにはポータルサイト等で記載されいている表面利回り・想定利回りでは更に高い利回りを追求する必要があります。

2-2 主要地域の期待利回り

日本各地の大都市の期待利回りは次の通りです。

地区 ワンルーム ファミリー向け
仙台 5.0% 5.1%
横浜 4.4% 4.4%
名古屋 4.5% 4.6%
大阪 4.4% 4.4%
広島 5.2% 5.2%
福岡 4.6% 4.6%

出所:日本不動産研究所「不動産投資家調査

全体的に都心部より地方の方が利回りは高い傾向にあります。その中でも横浜や名古屋・大阪など大都市圏に属する地域の利回りは相対的に低く、広島・仙台と都市の規模が小さくなるにつれて利回りは高くなりがちです。

2-3 一棟と区分の利回りの差は?

一棟マンションと区分マンションの利回りの差を見てみましょう。「不動産投資と収益物件の情報サイト 健美家(けんびや)」を参照し、首都圏で築20年以内・駅から徒歩15分の物件の利回りをみたところ、次の様な結果となりました。なお、こちらは想定利回りの数値です。

物件タイプ 範囲 中間値
一棟マンション 2.4%~11.5% 7.0%
区分マンション 1.6%~9.0% 5.3%

※「不動産投資と収益物件の情報サイト 健美家(けんびや)」で公開された物件情報(2024年1月20日時点)をもとに小数第二ケタを四捨五入して〇.〇%表示。上記の利回りは目安であり特定の物件の利回り事例ではありません。

中間値で見ると双方の差は1.7%あることがわかります。このような利回りの差が出る要因としては、それぞれの流動性の違いがあります。

区分マンションは物件価格が低く購入できる層も多いため、比較的に売却も容易に行えます。一方、一棟マンションは物件価格が高く、資金調達の面から購入できる層も限られるため比較して売却が難しいという特徴があるのです。このようなリスク面での違いから、一棟マンションの方が利回りが高くなるという傾向があります。

区分マンションの目安を考えるときは、先ほど紹介した一棟マンションの利回りよりも低い水準を想定する必要があるでしょう。

3 マンション経営の利回りを考えるときの注意点

利回りは収益性の指標として重要ですが、参照するときにはいくつか注意すべき点があります。次に紹介するポイントをふまえたうえで、物件選びや投資判断に役立てて行きましょう。

3-1 利回りは高いほどよいとは限らない

他の投資にもいえることですが、大きなリターンを見込める場合には相応のリスクを内包しているケースが大半です。マンション投資の場合、利回りが高い物件は、極端に賃料収入が高いか、物件価格が安いケースが考えられます。

前者であれば、いざ不動産経営を始めると、賃料が高すぎて空室が発生する恐れがあります。

後者であれば、築年数が古い、駅から遠い、災害リスクが極端に高いなど、物件価格が下がっている要因があります。いずれの要因も不動産経営のリスクを高める要素といえます。

不動産投資において「利回りが高い」物件は、リスクも高い傾向があります。リスクの高さを許容して投資するなら投資先として誤りとは限りませんが、初心者の場合は過度に高利回り=ハイリスクな物件を選ぶのは必ずしも有効な選択とはいえないでしょう。

3-2 キャッシュフローを加味したROIも見ておく

最終的な投資判断は、実際に投資家の手に残るキャッシュフローを加味したROIをみておくのも一案です。実質利回りには、不動産投資ローンの元利金返済など一部の経費項目が加味されません。

借入比率が高いと、月々の返済額が嵩むので、不動産自体の収益率と実際に投資家の手に残る収益に大きな乖離が生まれる場合があります。

ROIという指標は次の式で計算するため、より投資家が実際に得る収益をもとにした収益性を確認できます。

  • ROI(%) = キャッシュフロー ÷ 投資金額 × 100
  • キャッシュフロー = 実際の年間賃料 – 諸経費 – ローン支払い額

【関連記事】不動産投資の利回り・ROI・CCR・キャッシュフローの違いは?

3-3 利回りは将来変動する場合もある

購入時の利回りが常に維持されるとは限らない点に注意しましょう。物件価格は購入時点の価格を参照するため、将来変化することはありませんが、次の要素により利回りが変化する場合があります。

  • 賃料:賃料が下がれば、各利回りの低下要因に
  • 空室率:空室が増えれば、表面利回り・実質利回りの低下要因に
  • 諸経費:諸経費が高くなれば実質利回りの低下要因に

将来収益性が変化するリスクも理解したうえで、投資判断をすることが大切です。

4 まとめ

不動産の利回りには、おもに想定利回り・表面利回り・実質利回りの3つがあります。空室や諸経費の考え方が利回りによって異なるため、マンション投資の収益性を判断する際には注意してください。基本的には想定利回り≧表面利回り>実質利回りとなります。

想定利回り=表面利回りとなるのは、一棟投資ではレアケースです。一方で、区分マンションなら単年であれば空室が1日も発生しない可能性はゼロではありません。

利回りの高い物件はリスクも高い傾向にあるため、無闇に高利回りを追求するのは適切とはいえません。利回りの目安を参考しながら、リスクとリターンのバランスをとった物件での投資を検討していきましょう。

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伊藤 圭佑

資産運用会社に勤める金融ライター。証券アナリスト保有。 新卒から一貫して証券業界・運用業界に身を置き、自身も個人投資家としてさまざまな証券投資を継続。キャリアにおける専門性と個人投資家としての経験を生かし、経済環境の変化を踏まえた投資手法、投資に関する諸制度の紹介などの記事・コラムを多数執筆。