離婚の際に持ち家の売却を検討している方も少なくないのではないでしょうか。離婚時に家を売却するのであれば、売却前に分与の対象範囲を確認しておく必要があります。
また、売却時にはローン残債と売却価格の比較や隣地との境界線など、気を付けておきたいポイントがあります。特にローンの残債が売却価格を上回るケースと下回るケースでは売却方法を変更しなくてはいけない可能性もあるため、重要な手順となります。
本記事では、離婚で持ち家を売却する前に確認しておくこと、オーバーローンの際に検討される任意売却の注意点について解説していきます。
目次
- 持ち家の売却をする前に確認しておきたい事項
1-1.財産分与の可否と対象となる範囲
1-2.不動産の所有者や住宅ローンの名義の確認 - 持ち家の売却で気を付けるべきポイント5つ
2-1.複数の不動産会社に査定を依頼する
2-2.ローンが残っている場合は残債と売却価格を比較
2-3.売却価格・引き渡し時期などを話し合っておく
2-4.土地の境界線を確認
2-5.契約不適合責任について - 持ち家がオーバーローンであった場合の注意点
- まとめ
1.持ち家の売却をする前に確認しておきたい事項
離婚時に持ち家を売却する前に、不動産が財産分与の対象となるか、対象となる場合には範囲を確認しておきましょう。
1-1.財産分与の可否と対象となる範囲
離婚における財産分与は「夫婦が協力して築いた財産」が対象となります。
不動産の場合、土地は親が所有しているケースや頭金の一部を親に出してもらうケースもありますが、この部分は分与の対象とならず、財産の総額から親が所有している財産の価額分を差し引いて夫婦の共同財産となる部分が分与の対象となります。
頭金を親に出してもらった以下のケースで分与の対象となる財産を計算してみましょう。
- 購入価格:3000万円
- 親から出して貰った頭金:600万円
- 親の財産の持ち分:20%(600万円÷3000万円)
- 売却価格:2000万円
売却価格から、親が出した頭金である20%分を差し引く形になります。
2000万円(売却価格)-(2000万円×20%)=1600万円
この事例では1600万円は夫婦の共有財産となり、分与の対象となります。
なお、結婚前から保有している財産や相続で得た財産、一方の固有財産と見られるもの(女性用のアクセサリーや男性用の腕時計等)も財産分与の対象外となる可能性が高いと言えます。
1-2.不動産の所有者や住宅ローンの名義の確認
自宅が共有名義になっている場合、登記上は共有持分となります。共有持分の物件は単独で自宅を売却することはできません。共有名義のまま離婚すると、自宅を売却したいと思っていても元夫もしくは元妻の同意が必要になり、手続きをスムーズに進められないというトラブルが生じてしまうためです。
また、住宅ローンを夫婦2人で契約していて返済がまだ終わっていない場合には、名義を切り替えるために金融機関の承認が必要になります。住宅ローンの返済が終わっていない状況で、共有名義を単独名義に切り替える方法として以下の3つが挙げられます。
- 住宅ローンを単独名義に変更する
- 住宅ローンを借り換える
- 住宅ローンの契約に連帯債務者や連帯保証人を加える
どのような契約内容になっているか、またどのような選択肢が検討できるのか、金融機関へ確認をしておきましょう。
【関連記事】自宅が共有名義のまま離婚…不動産の名義変更や売却はできる?
2.持ち家の売却で気を付けるべきポイント5つ
持ち家の売却において気を付けておきたいポイントを見て行きましょう。
2-1.複数の不動産会社に査定を依頼する
不動産査定の際は一括査定を利用し、複数の不動産会社に依頼しましょう。個別性の高い不動産は不動産会社によって査定額が異なってしまうことから、複数の査定価格を比較することが重要なためです。
また、査定価格だけでなく、査定の根拠を確認しておくことも重要です。不動産会社によってはあえて高めの査定価格を提示して売却を促すケースもあるため、他社よりも高い価格を提示する不動産会社があった場合は、その理由を確認しておきましょう。
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【関連記事】不動産査定会社・不動産売却サービスのまとめ・一覧
2-2.ローンが残っている場合は残債と売却価格を比較
持ち家にローンが残っている場合は、ローンの残債と不動産査定の金額を比べてみましょう。ローンの残高は「残高証明書」により分かりますが、より正確な金額を知りたい方は金融機関の窓口で尋ねてみましょう。
ローンの残債と売却予想価格を比較し、ローンの残債が多い時はオーバーローン、売却予想価格が多い時はアンダーローンとなります。
アンダーローンの場合は売却した代金でローンを完済、残ったお金を分与するという流れになります。
オーバーローンは不動産の資産価値がマイナスの状態ですので、基本的に分与の対象とはなりません。
なおオーバーローンの場合、残債を一括返済するか、金融機関の許可を得たうえで任意売却を行う必要があります。どちらかが家に住み続けた方が経済的な損失は少ないケースも多いため、慎重に検討しましょう。
2-3.売却価格・引き渡し時期などを話し合っておく
離婚における不動産の売却では、売却価格の決定や引き渡し時期等で意見が合わないケースが存在します。
例えば、どちらかが「新居が見つからないから引き渡し時期を遅らせたい」「離婚後の生活のためにもっと高く売却したい」と希望した時に意見のズレが生じる可能性があります。
あらかじめ売却について話し合った時に、引き渡し時期や売却価格など細かい点も意見をすり合わせておきましょう。
不動産売却を含めた財産分与を話し合った後は、公証役場で「離婚給付等契約公正証書」を作成しておくことも検討してみましょう。離婚給付等契約公正証書を作成することで、離婚の合意や財産分与、養育費・親権など離婚に関する双方の取り決めを公的な文書として保管できます。
2-4.土地の境界線を確認
土地を所有しており家と同時に売却する場合は、境界線を明確にしておきましょう。
登記記録と実際の土地面積が異なる場合には、売買代金を清算するケースがあります。売却前に測量業者に依頼し、計測を行っておくことで後のトラブルを防ぐことが出来ます。
ただし、測量には費用が発生するため、この費用をどのように捻出するのか話し合っておくことも重要です。できるだけ費用を掛けたくない場合には、隣地所有者と境界を明確にする覚書を締結するなどの対策も検討すると良いでしょう。
2-5.契約不適合責任について
2020年4月以降、民法改正により物件に契約と異なる点が見つかった際には、買主は売主に物件の補修や代替物の請求等が出来るようになりました(契約不適合責任)。
住宅売却の際は「契約不適合責任」で契約と適合しない部分は代金減額や追完、契約の解除や損害賠償を請求される可能性があります。不動産売買契約では契約不適合責任の範囲・請求できる期間を設定できるため、売却前に確認しておきましょう。
【関連記事】契約不適合責任をわかりやすく解説!売主が注意したい3つのポイントも
3.持ち家がオーバーローンであった場合の注意点
任意売却は通常の不動産売却と同様に不動産会社を通して売却を行いますが、「売却可否や売却価格に対してローンを契約している金融機関の承諾が必要」という相違点があります。
金融機関はローンを契約する際に不動産に抵当権を設定します。抵当権を設定することで、契約者がローンを返済できなくなった時に不動産を差し押さえ、最終的には競売にかけ資金を回収することができるようになっています。
任意売却では、残債が残っている状態でも抵当権を抹消することが可能です。任意売却後のローン残債は金融機関と相談し返済期間を長くしてもらう、毎月の返済額を減らす等の方法で負担が減らせる可能性があります。
ただし、金融機関としては差し押さえの権利を失うため、返済状況や借主の返済能力によっては任意売却に応じない、または売却価格に承諾しないケースがあるため注意が必要です。
【関連記事】不動産の任意売却とは?メリット・デメリットや売却手順を解説
まとめ
離婚時に家を売却する際、売却前に分与の対象範囲やローン残債、売却価格の比較、隣地との境界線など、気を付けておきたいポイントがあります。特にローンの残債が売却価格を上回るケースはオーバーローンとなり、分与の対象とならず売却の難易度も上がってしまうため注意が必要です。
また、双方の事情によって金銭的なメリット・デメリットだけでなく後の生活を考慮した判断も重要になります。話し合いを慎重に進めながら、持ち家の売却を検討していくことが大切です。
田中 あさみ
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