住宅ローンの返済に行き詰まった場合は、競売によって手放してしまう前に任意売却という方法がとれる可能性があります。
しかし、任意売却とはどういう売却方法で、一般の不動産売却と何が違うのかわからないという人も多いのではないでしょうか。この記事では、不動産の任意売却について、手順やメリットデメリットなどを解説します。
目次
- 不動産の任意売却とは?
- 任意売却のメリット
2-1.市場価格に近い金額で売却できる
2-2.周辺住民などに知られにくい
2-3.手元に現金がなくても進められる - 任意売却のデメリット
3-1.買手を見つけるハードルが高い
3-2.結果的に自己破産を迫られる可能性もある
3-3.関係者全員の同意が必要 - 任意売却の手順
4-1.金融機関から通知書が届く
4-2.不動産会社に相談する
4-3.物件査定に対応する
4-4.不動産会社と媒介契約を締結する
4-5.不動産会社が金融機関と交渉を行う
4-6.不動産の販売活動を開始する
4-7.金融機関と売却額の割り振りについて協議する
4-8.不動産売買契約を締結して引き渡し対応をする - まとめ
1.不動産の任意売却とは?
通常、住宅ローンの融資を受けると、貸手の金融機関が抵当権を設定します。不動産の任意売却とは、住宅ローンをはじめとする借入金の返済に行き詰まったとき、売却後も借入金の返済が残る不動産を売却することです。
抵当権とは返済が滞ってしまった物件を融資元の金融機関が差し押さえることができる権利のことで、一般的には抵当権が設定されたままの不動産を売却するのは困難です。
しかし、任意売却という手段で売却すると、残債の有無にかかわらず抵当権を解除することが可能です。
2.任意売却のメリット
任意売却には金銭面でのメリットなどが複数あります。任意売却によって得られるメリットについて解説します。
2-1.市場価格に近い金額で売却できる
競売では不動産市場よりも安い金額で売却されることが多い一方、任意売却をすると市場価格に近い金額で売却できます。任意売却も売却方法は通常の不動産売却と同じであるためです。
競売だと残債よりも低い価格での売却となる可能性が高いうえ、結果的に残債が多くなると給与を差し押さえられることもあります。一方、任意売却を経てから返済する場合は売却後も月額での返済となり、無理のない返済を続けられます。
2-2.周辺住民などに知られにくい
競売になると、新聞や公告のほかインターネットなどに競売物件として物件情報が掲載されます。このため、家が競売にかけられたことを周辺住民などに知られやすいです。
一方、任意売却の売却手続きや広告は通常の不動産売却と同じなので、任意売却の場合は住宅ローンの返済に行き詰まったことを知られにくくなります。
2-3.手元に現金がなくても進められる
通常、不動産を売却するときには仲介手数料のほか引越し費用や抵当権抹消のための費用などがかかります。しかし、任意売却の場合はこれらの経費を売却額から捻出可能です。
住宅ローンの返済に行き詰まるほど現金がないような状態でも、任意売却であれば、滞りなく売却を進められます。また、引渡しスケジュールをコントロールできるので、売却後の生活費についてもあらかじめ想定できるでしょう。
3.任意売却のデメリット
一方、任意売却にもデメリットはあります。任意売却であれば必ずうまくいくというわけではないので、注意しましょう。
3-1.買手を見つけるハードルが高い
任意売却の場合は、売買契約締結と引渡しとを同日中に行うため、買手から見るとローンを利用できません。このため、物件の買手は現金購入者に限られます。高額な不動産を現金購入できる買主はあまり多くありません。
また、買手による契約解除を防ぐため解除条件が限定され、売買契約が買手に負担となる契約内容となります。具体的には、売買契約で売主の瑕疵担保責任を免除するほか、現状引渡しを条件とするなどです。
金銭面や条件面でのハードルから、一般的な不動産売買と比較すると、任意売却は買手を見つけるのは難しいと言えます。
3-2.結果的に自己破産を迫られる可能性もある
任意売却を進めても買手がつかなかったり、金融機関からの承諾を得られなかったなどにより、結果的に自己破産を迫られる可能性もあります。
金融機関との交渉などがあるため、通常の不動産売却と比較して時間がかかるので、任意売却はできるだけ早い時点から進めることが肝要です。なお、任意売却は時間がかかる一方で期限もある方法なので、売却までのスケジュールに気をつけましょう。
3-3.関係者全員の同意が必要
任意売却を進めるためには、金融機関のほかに共同債務者や連帯保証人など関係者全員の同意が必要です。返済が滞ることが予測されるならば、任意売却の準備を始めるとともに、あらかじめ各関係者に事情を説明しておきましょう。
何も知らない状態で共同債務者や連帯保証人などに金融機関からの督促状などが届くと、トラブルを招く可能性もあります。
4.任意売却の手順
任意売却の手続きは、通常の売却と同じ部分も多い一方、追加の手続きも必要です。任意売却の手順について解説します。
4-1.金融機関から通知書が届く
住宅ローンは毎月金融機関に返済していくものですが、6ヶ月前後にわたって返済が滞ると、金融機関から「期限の利益喪失予告書」という書類が届きます。なお、書類が届くまでの滞納期間についてはローン契約ごとに異なるため、ローン契約書を確認しましょう。
「期限の利益」とは、わかりやすく言い換えると、ローンを分割返済(=月額に分けて返済)できる権利とも言えます。予告書が届いた時点から任意売却が可能です。
4-2.不動産会社に相談する
任意売却の場合でも、通常の不動産売却と同じく不動産会社を探す必要があります。まずは売却を任せられる不動産会社を探しましょう。任意売却に関する手続きは、一部を除いて一般の売却と変わりません。
しかし、後述する金融機関との交渉などがあるため、慣れている不動産業者に任せる方が安心です。任意売却の取扱実績がある不動産会社を探しましょう。
任意売却の取扱実績のある不動産会社を探すには
任意売却の実績がある不動産会社を探すには、不動産一括査定サービスの利用を検討してみましょう。不動産一括査定サービスは複数の不動産会社から無料で物件査定を受けられるサービスですが、任意売却のような特殊な条件を伴う場合にも有効利用することが出来ます。
不動産一括査定サービスに物件を登録する際、備考欄や売主の希望欄に「任意売却を検討しているため、対応実績のある不動産会社へ依頼したい」旨を記載することで、1社ずつ問い合わせるよりも効率的に実績のある不動産会社にアプローチすることが出来ます。
また、不動産一括査定サービスによって登録されている不動産会社は異なるため、より多くの不動産会社から探したい場合には複数のサービスに登録すると良いでしょう。下記は主な不動産一括査定サービスをまとめた表です。
主な不動産一括査定サイト
サイト名 | 運営会社 | 特徴 |
---|---|---|
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4-3.物件査定に対応する
任意売却の物件であっても査定方法は通常の売却と変わりません。査定金額を上げるためには、内見前に部屋の掃除をしておいたり、修繕が必要な個所は直しておくなど、できる限り物件をきれいに保っておきましょう。
査定額の提示を受けたら、ローンの残債と比較したうえで任意売却を進めるかどうか判断します。金額に開きがあって残債が多く残ってしまうようであれば、競売と自己破産などの選択肢と比較することになります。。
また、任意売却を進める場合は、必ず期限内に売れるようにすることを第一目標としましょう。任意売却を進めた場合でも、物件が売れなければ結局競売になってしまいます。
物件が売れるようにするためには、相場に合わせた価格設定が最も重要です。売り出し価格が相場から乖離しないように気をつけましょう。
4-4.不動産会社と媒介契約を締結する
売買を任せる不動産会社を決めたら、不動産会社と売買契約を締結します。なお、任意売却を進める場合の媒介契約は、必ず専属専任媒介契約もしくは専任媒介契約となるので、留意しておきましょう。
専属専任媒介契約もしくは専任媒介契約となる理由は、金融機関との交渉をする必要があるからです。一般媒介契約は複数の不動産業者と媒介契約を結べるものの、金融機関との交渉窓口は一社に絞る必要があります。このため、不動産業者一社とのみ契約する専属専任媒介契約もしくは専任媒介契約を結ぶこととなります。
4-5.不動産会社が金融機関と交渉を行う
任意売却で不動産を売却する場合は、不動産に抵当権を設定している金融機関からの承認が必要です。なお、承認を得るために、媒介契約を締結した不動産会社が金融機関との交渉にあたります。
任意売却をすると、取引金額は自動的にローンの返済に充てられるものの、売却額が残債に届かない場合もあります。残債が残ると、金融機関にとっては不良債権が発生することになるので、あらかじめ許可を得る必要があることを覚えておきましょう。
4-6.不動産の販売活動を開始する
金融機関からの承認を得られたら、通常の不動産売買と同じく販売活動を開始します。なお、専任媒介契約では、不動産会社に対して、販売活動状況について定期的に売主へ報告することが義務付けられています。
任意売却を進めるうえでは、とにかく期限内に不動産を売却することが重要です。不動産会社とのコミュニケーションを欠かさないようにしましょう。
5-7.金融機関と売却額の割り振りについて協議する
買手が見つかったら、売却額と契約・引渡し日に関する交渉を行います。なお、任意売却では、購入申し込みが入った証憑として購入申込書の提出が必要です。そのほか、金融機関に対して売却金額の使途を示した配分表も提出します。この配分表を作成するにあたって、金融機関との協議を行います。
5-8.不動産売買契約を締結して引き渡し対応をする
金額の配分について金融機関からの承認が取れたら、次のステップは買手との売買契約及び引渡し対応です。
任意売却では売買契約日が引渡し日となり、一般的に手付金の支払いもありません。これは、売主が手付金を持ち逃げできないようにするためです。
なお、通常の不動産売買では契約時点で買主が手付金を支払い、契約後1ヶ月などの時間をおいてから引渡しとなります。
まとめ
今回は任意売却の手順、メリット・デメリットについて解説しました。もし住宅ローンの返済を滞納してしまった場合は、まず金融機関に相談することが大切です。
例えば離婚による世帯収入の減少など、やむを得ない事情による滞納であれば、任意売却に頼らずとも手を打てる可能性があります。返済期間を再設定することにより月額の返済を減らすなどが代表的です。
また、万一自己破産をするならば、任意売却を実施した後に行うのが良いでしょう。不動産資産がある状態で自己破産すると、管財手続きが必要となり、最低50万円以上の予納金が必要となります。
返済が行き詰まったときには、できる限りスケジュールを把握し、より良い条件で資産を整理することが大切です。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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