アパートを相続するメリット・デメリットは?必要な手続きや注意点も

アパート経営をしていたオーナーが亡くなってそのアパートを相続する場合、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

相続が発生すると、親世代から子世代へ資産が継承されることになります。相続人が多い場合や資産の大きさによっては遺産分割がスムーズに進まなかったり、トラブルに発展する可能性もあります。出来ればまだ相続が発生していない段階から、万一に備えて準備しておくことも大切なポイントです。

本記事では、アパート経営を相続するメリット・デメリットと、相続の際に必要な手続き、注意点について解説していきます。

目次

  1. アパート経営を相続するメリット
    1-1.家賃収入を得ることができる
    1-2.資産形成ができる
    1-3.相続税対策になる
  2. アパート経営を相続するデメリット
    2-1.ローンの返済義務も相続することになる
    2-2.他の相続人とのトラブルが起こりやすい
    2-3.アパート経営にはリスクもある
  3. アパート経営を相続する手続き
    3-1.アパートの調査とローンの確認
    3-2.遺産分割協議をおこなう
    3-3.必要に応じて弁護士や税理士などの専門家に相談する
    3-4.準確定申告をおこなう
    3-5.相続登記・相続税申告をおこなう
    3-6.管理会社や入居者に連絡する
  4. アパート経営を相続する際の注意点
    4-1.ローン負担が大きい場合相続放棄も検討する
    4-2.アパート経営や相続トラブルを考慮し売却も検討する
    4-3.相続時は相続税の優遇措置を利用する
  5. まとめ

1.アパート経営を相続するメリット

アパート経営の相続には、次のようなメリットがあるといえるでしょう。

  • 家賃収入を得ることができる
  • 資産形成ができる
  • 相続税対策になる

以下で、それぞれの内容をみていきましょう。

1-1.家賃収入を得ることができる

アパート経営を相続することで、家賃収入を得ることができます。家賃収入は、資産を運用することによって得られる収入であり、アパートの管理業務を管理会社に委託することで管理の手間も省くことができます。

勤労収入以外の副収入を得ることができ、収入を多角化できるメリットがあると言えるでしょう。

1-2.資産形成ができる

アパート経営を相続することで、資産形成をすることも可能です。アパート経営では、通常アパートローンを借りて行われますが、相続時点でローンの返済が完了しているのであれば、返済リスクのない運用が可能です。

また、ローンが残っている場合でも、アパートローンの返済を家賃収入で補填し、さらに利益を出すことができれば、ローンによって借りた資金を利用して資産形成をおこなうことが可能になります。

1-3.アパートの相続税評価額は実勢価格よりも低くなる傾向がある

現金よりも不動産の方が相続税の財産評価額が低くなる傾向があるため、アパートのまま相続を行うことで、課税される相続税を軽減できることがあります。

また、相続税の財産評価では、一定の条件を満たす土地・建物の財産評価額を最大80%減額する小規模宅地等の特例もあり、このような優遇税制の適用を受けることで、さらに相続税の軽減を受けることが可能です。(※参照:国税庁「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」)

2.アパート経営を相続するデメリット

アパート経営の相続には、次のようなデメリットがあるといえるでしょう。

  • ローンの返済義務も相続することになる
  • 他の相続人とのトラブルが起こりやすい
  • アパート経営にはリスクもある

以下で、それぞれの内容をみていきましょう。

2-1.ローンの返済義務も相続することになる

相続ではプラスの資産を相続すると同時に負債も相続することになります。つまり、アパートの土地建物などのプラスの資産のみを相続するということはできず、アパートローンの残債があるのであれば、返済義務も相続することになります。

ローンの返済額が家賃収入を上回るようであれば、生計を圧迫することになりかねません。返済が滞った場合、アパートを失うことになる可能性が高いだけでなく、ローンの残債をアパートの売却代金で返済することができなければ、自己破産に追い込まれる可能性もあります。

また、家賃収入がローンの返済額を上回っている場合でも、アパートの売却価格よりローンの返済総額の方が大きい「オーバーローン」の状態である可能性もあります。相続前にはアパートを売却した時の価格査定を行い、ローンの残債と比較しておくことが大切です。

2-2.他の相続人とのトラブルが起こりやすい

相続人が複数いる場合でアパート経営を相続する際、相続人間の財産分割がトラブルを招くことがあります。
アパートを一人の相続人が相続し、他の相続人には代償金を支払う場合、アパートの資産評価が難しいことから、相続人間で代償金額について意見が食い違う可能性があります。

また、アパートを複数の相続人の共有とした場合、アパートから生じる収益の分割方法や管理費・修繕費の負担方法などでトラブルになる可能性もあります。

このように、収益不動産は公平に分割することが難しく、相続人が複数いる場合は、現物で相続するとトラブルが生じやすいといえるでしょう。

2-3.アパート経営にはリスクもある

アパートを相続すると経営を引き継ぐことになりますが、アパート経営には、様々なリスクが潜在しています。収入面では、空室の発生や築年数の経過による家賃下落、そして、費用面では、老朽化や災害などによる大規模修繕などのリスクがあります。ローンがある場合、利率の上昇リスクなども存在します。

このようなリスクが顕在化する可能性もあり、アパートを相続することは、そのようなリスクの負担を引き受けることであるといえるでしょう。

3.アパート経営を相続する手続き

アパート経営の相続手続きには、次のような流れでおこないます。

  1. アパートの調査とローンの確認
  2. 遺産分割協議をおこなう
  3. 必要に応じて弁護士や税理士などの専門家に相談する
  4. 準確定申告をおこなう
  5. 相続登記・相続税申告をおこなう
  6. 管理会社や入居者に連絡する

以下で、それぞれの内容をみていきましょう。

3-1.アパートの調査とローンの確認

アパートの権利関係や担保権など、登記簿謄本を取得して確認しましょう。担保権が設定されている場合は、その金融機関に連絡するなどしてローンの残債、借入状況を確認します。

アパート購入時の資料があれば、その資料一式をみてこれらの情報を収集します。相続税の申告や遺産分割協議に備えて、購入価格や市場価格も調べておくとよいでしょう。管理会社の情報や入居者の状況についても調べておくようにしましょう。

前述したようにアパートの売却価格をローンが上回るオーバーローンの状態である可能性もあり、このような場合にはアパートを相続することが逆に負債となる可能性があります。不動産会社の査定を受け、実勢価格を調査しておきましょう。

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3-2.遺産分割協議をおこなう

被相続人の遺産全体について、どの相続人がどれぐらい相続するのかを遺産分割協議で決定します。遺産分割の協議がまとまったら、合意内容を遺産分割協議書という書面にあらわします。

相続財産の分配や、相続税の負担はこの遺産分割協議書によっておこないます。遺言がある場合この作業は不要ですが、相続人全員の意見が一致するのであれば、遺言と異なる分割が可能であるケースもあります。

【関連記事】遺産分割協議書を作る手順は?相続の開始から相続財産の確認方法まで解説

3-3.必要に応じて弁護士や税理士などの専門家に相談する

遺産分割協議は、その後の相続財産の分配や相続税の負担を決定付ける重要な協議になります。権利関係や分割方法について、認識の間違いや相続人間のトラブルが発生しないよう、必要に応じて弁護士などの専門家に相談することを検討しましょう。

相続税の負担については、分割の方法によっては、優遇税制が利用できないなど大きく負担が増える可能性もあります。適宜、税理士などの専門家に相談することを検討しましょう。

3-4.準確定申告をおこなう

被相続人がアパート経営によって不動産収入を得ていた場合、その不動産所得について相続開始の日から4カ月以内に準確定申告をおこなう必要があります。準確定申告をおこなう義務があるのは、相続人であり、準確定申告にかかる所得税等の納付義務もあります。(※参照:国税庁「納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」)

3-5.相続登記・相続税申告をおこなう

アパートを相続することが決定したら、所有権を明確にするために法務局に相続登記をおこないます。被相続人の出生から死亡までの戸籍一式や、相続人全員の戸籍、新たに登記名義人となる相続人の戸籍附票などが必要となります。

相続税の申告は、相続開始日から10カ月以内におこないます。相続税の納期限も同様となります。配偶者の税額軽減制度の利用枠など、遺産分割協議の内容によって相続税の金額が異なることがあるため、注意しましょう。

相続税の法令の取扱いは難解な部分もあります。申告手続きの際は、専門家である税理士などに相談することを検討しましょう。

3-6.管理会社や入居者に連絡する

アパートの相続が決まったら、管理会社やアパートの入居者にオーナーが変わった旨を伝えます。

家賃の入金口座が被相続人の口座のままになっていると、死亡後は凍結され、管理会社や入居者も家賃の入金ができないことがあります。家賃の入金先については、暫定のものでも早めに伝えておくとよいでしょう。

その他、被相続人が亡くなってからアパートの相続が決まらないうちに、入居者の退去や急を要する修繕などが発生する場合もあります。長期間連絡もつかない状態で放置しておくと、トラブルに発展する可能性もあります。連絡先についても、早めに伝えておくようにしましょう。

4.アパート経営を相続する際の注意点

アパート経営を相続する際の注意点として、ローンの負担やアパート経営に関するリスク、収益不動産という性格から生じる相続トラブル、相続税に関する優遇措置の適用、などが挙げられます。

4-1.ローン負担が大きい場合相続放棄も検討する

アパート経営では、アパートの資産価値よりもローンの残債が大幅に超過していたり、あるいは、家賃収入がローンの返済額を下回っていたり、所有をし続けるとローンの負担が積み重なっていくようなケースもあります。

ローンの借り換えをしたり、繰上げ返済をしたりすることでローンの負担が改善することもありますが、改善が難しいような場合、相続放棄も検討しましょう。相続放棄手続きには、相続の開始があったことを知った時から3カ月以内となっているので注意しましょう。(※参照:民法915条1項)

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4-2.アパート経営のリスクや相続トラブルを考慮し売却も検討する

アパート経営には空室リスクや修繕リスクなど、様々なリスクがつきものです。経営していくにはそのようなリスクを負担しなければならないだけでなく、手間や費用もかかります。

また、アパートを現物で相続すると、アパートの資産価値を評価することが難しかったり、相続後に収益を生み出したりするため、相続人間でのトラブルを招きかねません。このようなことに配慮し、売却して現金化してから相続することも検討してみましょう。

【関連記事】相続不動産をトラブルなく売却する手順・注意点は?相続税の特例も

4-3.相続時は相続税の優遇措置を利用する

アパートの相続にかかる相続税は、場合によっては極めて多額になる場合もあります。そして、相続税額は、小規模宅地等の特例などの優遇措置を利用するかどうかで大きく変わる場合があります。

このような特例の適用は、相続税申告の際に定められた申告をしないと適用できません。さらに、特例の適用要件には、遺産を取得する相続人についても条件を付しており、配偶者の税額軽減制度の利用枠なども含め、遺産の分割方法にも大きく影響を受けます。

相続税の申告をする際は、遺産分割協議の時点から、専門家である税理士などに相談するなどして、相続税の優遇措置をどのように利用するのかという観点に注意を払うようにしましょう。

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まとめ

アパートを相続すると、家賃収入、資産形成などの観点からメリットがあるといえます。他方、ローンの相続やアパート経営に関するリスクなどはデメリットになりえます。経済面からは、メリット、デメリット両方を比較して相続を検討しましょう。

ただし、相続人間のトラブルが起きそうな事情がある場合は、売却して現金を分割相続する方法も検討しましょう。

アパートの相続手続きは、相続人が複数いる場合は、遺産分割協議が最大の重要なポイントになります。必要に応じて専門家に相談するなどして、慎重におこないましょう。

被相続人の所得税および相続税の申告、納付は期限があります。さらに、相続税には優遇措置があります。税金の申告、納付には十分注意を払っておこなうようにしましょう。

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佐藤 永一郎

佐藤 永一郎

筑波大学大学院修了。会計事務所、法律事務所に勤務しながら築古戸建ての不動産投資を行う。現在は、不動産投資の傍ら、不動産投資や税・法律系のライターとして活動しています。経験をベースに、分かりやすくて役に立つ記事の執筆を心がけています。