不動産物件を探しているときに、「積算オーバー物件」という言葉が目についた方もいるのではないでしょうか。この積算オーバー物件は融資を受けやすいのがメリットのひとつですが、反対に注意するべき点もあります。
そこで今回のコラムでは積算オーバー物件とはどのような物件なのか、また何に注意すべきなのか、詳しく解説していきます。
目次
- 積算オーバー物件は融資を受けやすいのは本当か?
1-1.積算とは?
1-2.積算オーバー物件とは - 積算オーバー物件の特徴
2-1.築古物件のケース
2-2.RC物件のケース
2-3.土地価格を安く算出するケース - 積算オーバー物件を購入する際の注意点
3-1.融資が得られないケースもある
3-2.修繕費がかさむケースもある
3-3.土地価格は減価償却ができない - まとめ
1 積算オーバー物件は融資を受けやすいのは本当か?
1-1 積算とは?
積算とは正確には積算価格あるいは積算評価と言い、不動産の評価を表す計算方法のひとつとして広く用いられています。主に銀行などの金融機関が融資を行うときに、この積算価格を基準のひとつにしています。
積算価格を計算するときは下記の計算式を用います。
- 土地…公示地価または路線価×土地面積
- 建物…再調達価格×延床面積×(法定耐用年数-築年数)÷法定耐用年数
建物の場合は、土地と建物の価格をそれぞれに計算して足した価格ということになります。
再調達価格は物件と同じ条件の材料や設備などを新しく購入するための金額を指しており、積算価格を言い換えると、同じ物件を今改めて建て直すのに必要な価格と言えます。
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1-2 積算オーバー物件とは
金融機関が融資判断の際に重視する項目のひとつは、融資したお金が回収できることです。もし融資金を返してもらえなければ、その代わりに抵当権をつけた不動産を売却して資金を回収することになります。そのため、現在の資産価値を評価するのに適した積算価格を金融機関は重視する傾向にあります。
例えば、積算価格が5,000万円で、販売価格が4,500万円だった場合で考えてみましょう。4,500万円を融資して返済が滞っても、物件を売却すれば5,000万円が手元に残るため4,500万円を回収できます。
このように販売価格よりも積算価格が高い場合を、積算オーバー物件と言います。例で紹介したように、売却すれば融資したお金を金融機関は回収できるため、融資がおりやすい傾向があります。
反対に積算価格が売買価格よりも低いと、収益性や購入希望者の収入といったそのほかの用件が良好ではないと融資がおりにくくなります。
2 積算オーバー物件の特徴
販売価格は売主が決めることですが、積算オーバー物件にするには理由があります。それは金融機関から融資を引き出しやすくすることで、売却をスムーズに進めたいという意向がある場合などです。
ただし、ひと言で積算オーバー物件と言っても、それぞれに違う理由があります。そこでどのような理由で積算オーバーとするのか、代表的なものを紹介します。
2-1 築古物件のケース
積算オーバー物件で多いのが、建物が法定耐用年数を超えているような築古物件です。
耐用年数を超えている物件は建物自体の評価がほとんどなく、土地価格とあまり変わらない価格で売却されている物件が多くあります。この場合、融資を完済していることも多く、売主が十分に利益を得ているということで積算価格より安く売却することもあるのです。
また建物の評価がほとんどないということは、ほとんど土地価格で購入でき、売却するときも土地価格で売却できるということです。つまり、所有している期間の資産の減少幅が新築物件と比較して非常に少ないという特徴があります。
ただし、築古アパートは入居率が低下していたり、家賃下落が起きている可能性の高い物件です。積算価格だけでなく、アパートの収益性をしっかりと確認し、投資判断をしていくことが重要です。
【関連記事】築古アパート経営のメリット・デメリットは?注意点やリスク対策も
2-2 RC物件のケース
RC物件が積算オーバーで売り出されている場合は、法定耐用年数とローン返済の関係もあります。RC物件の場合は建物の耐用年数は47年ですが、金融機関からの融資は35年で返済するケースがほとんどです。つまり、建物の価値がなくなるのには47年かかるのに、ローンの返済は35年で終わってしまうということなのです。
そのためローン返済が終わっているなどで売主に利益が出ている(あるいは売主が十分に利益を得ていると感じている)場合は、早期の売却のため積算オーバー物件として販売していることがあるのです。
2-3 土地価格を安く算出するケース
元々持っていた土地に建てた賃貸用物件を売却するときに、積算オーバー物件として販売していることがあります。この場合、土地を取得するのに費用がかかっておらず、すでに利益を得ていることが多いため、販売価格を抑えることができるのです。
例えば、敷地内の一角に賃貸用物件を建てたといったケースでも、土地価格を低く算出して積算オーバーにすることもあります。
このように積算オーバー物件と記載していても、どんな理由で販売価格を低く設定しているのか、それぞれで違います。そのため積算オーバー物件だからと鵜呑みにしないで、不動産会社を通じてどのような理由で積算オーバーになっているのか確認することも大切です。
3 積算オーバー物件を購入する際の注意点
一見すると、金融機関から融資が得られやすいということで魅力的に思える積算オーバー物件ですが、その一方で注意するべきポイントもあります。この項目では、次の3つの注意点を紹介します。
3-1 融資が得られないケースもある
金融機関が融資の際に判断材料とするのは、積算価格ばかりではありません。物件の価値を算出するには収益還元法などさまざまな手法があり、返済する購入希望者の属性なども加味して融資判断をしていきます。そのため積算オーバー物件だからといっても、金融機関に融資を断られるケースもあるのです。
積算オーバー物件を検討する際は、積算価格だけではなく、物件としての収益性や将来性などもしっかり検討した上で選ぶようにしましょう。
3-2 修繕費がかさむリスクがある
積算オーバー物件として販売されていることの多い築古でさらに木造のアパート物件は、購入後に修繕費用が多くかかるリスクがあります。それは建物の評価が低いからこそ積算オーバーになっているという物件が多いからです。
融資が受けられたとしても、空室が出やすく、入居者も決まりにくいといった物件では賃貸用物件の運営はうまくいきません。建物の状態や入居状況などを丁寧に評価するようにしましょう。
3-3 土地価格は減価償却ができない
賃貸用物件を購入すると、減価償却を用いた所得税の損益通算を行うことができます。しかし、土地の購入費用は資産に計上し、減価償却はできないことになっています。
そのため積算オーバー物件に多い建物の評価額がほとんどない場合は、減価償却費としてほとんど計上できないということになります。
まとめ
金融機関からの融資を受けやすい積算オーバー物件について紹介しました。融資が受けやすい物件ということは購入に際してスムーズに進む可能性があります。しかし積算オーバー物件になっている理由や、今回紹介した注意点を把握しないで購入すると、のちのち運営がうまくいかなくなるリスクもあります。
積算オーバー物件だからすべて良い物件なのではなく、メリットがある物件だからこそリフォームや修繕工事の履歴も確認して、収益性もしっかり兼ね備えているか慎重に物件を選びましょう。
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倉岡 明広
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