投資用マンションの売却は、マンション投資の利益を確定する重要なポイントとなります。売却の手順やタイミングに失敗してしまわないよう慎重に検討し、適切に判断していくことが大切です。
しかし、投資用マンションはそれぞれエリアごとの特徴や築年数、収益性など、様々な点が異なります。大まかな一般論で売却方法やタイミングを決めてしまうのではなく、様々な視点からそれぞれのマンションに適した売却タイミングを、投資家自身で判断することも重要なポイントとなってきます。
そこで今回は、投資用マンションを高く売却するコツと、売り時を見極めるポイントを5つご紹介します。投資用マンションの売却を検討している方、出口戦略に迷っている方はご参考下さい。
目次
- 投資用マンション売却では金融機関の融資が重要
1-1.融資年数とマンションの築年数
1-2.量的緩和政策と金融機関の金利推移 - 投資用マンションを高く売却するコツ
2-1.空室率を下げ、収益性を高めておく
2-2.修繕履歴の資料を揃える
2-3.複数の不動産会社の査定を受ける - 投資用マンションの売り時を見極める5つのポイント
3-1.マンション売却の譲渡所得税率が切り替わるタイミング
3-2.不動産投資ローンを売却価格で完済できるか
3-3.買い替え検討している物件があるかどうか
3-4.競合となる投資用マンションの売出状況
3-5.定期的に不動産会社へ査定を依頼する - まとめ
1.投資用マンション売却では金融機関の融資が重要
不動産の価格推移に大きな影響を与えているのが、金融機関による不動産への融資姿勢です。マンション購入には多くの場合ローンが利用されるため、金融機関が貸し出しを積極的に行わない場合は価格下落の要因となります。この点を踏まえて、金融機関の融資の重要性について詳しく見て行きましょう。
1-1.融資年数とマンションの築年数
金融機関から受けられるローンの融資年数について考えてみます。金融機関が投資用不動産での融資年数を設定するうえで重要視する指標のひとつに、物件の「残耐用年数」があります。残耐用年数は、以下の式で求めることができます。
法定耐用年数-築年数=残耐用年数
大半の金融機関において、不動産投資ローンの融資期間はこの残耐用年数内に設定されています。融資年数が短くなることで月々のキャッシュフローがマイナスになるのであれば、売却価格を下げないと次の融資を得られない可能性が高まってしまいます。
マンションの成約築年数の推移についても見て行きましょう。下図は、東日本不動産流通機構「サマリーレポート2021年4~6月期」から抜粋した、首都圏中古マンションの成約・新規登録築年数(平均)の推移を表したグラフです。
こちらのグラフを見ると新規登録のマンションの平均築年数よりも、成約したマンションの平均築年数の方が3~4年ほど新しいことが分かります。2018年~2021年の間で、成約築年数は増加傾向にあるものの、新規登録の築年数の増加スピードよりも緩やかであることから、築年数がマンション売却の成約に与える影響は未だ大きいことが推察されます。
融資を得られないマンションを購入するには現金買いがメインとなり、大幅な価格下落の要因となります。投資用マンションを売却する際は、次の購入者の融資事情についても考慮し、売却のタイミングを検討することも重要なポイントと言えるでしょう。
1-2.量的緩和政策と金融機関の金利推移
2021年7月時点、金融機関の貸し出し金利は非常に低い水準に設定されています。この背景としては、2012年12月26日に始まった第2次安倍政権において実施されたアベノミクスにおいて、金融緩和(2%のインフレ目標が達成できるまで無期限の量的緩和)が行われ、以降、金融機関が積極的に融資を行うようになったことが主な要因です。
この流れから2016年1月にはマイナス金利政策による更なる金融緩和が実施され、低金利での貸し出しが行われた経緯があります。下図は日本銀行が発表している貸出約定平均金利の2010年1月~2021年1月までの推移をグラフ化したものです。
2010年1月から2021年1月までの間、貸出金利が下落傾向にあることが分かります。量的緩和政策が不動産へ与えた影響は大きく、貸出金利が低水準であるほど住宅ローンや不動産投資ローンの金利も下がり、マンション価格の上昇につながりました。
同期間のマンション価格の推移についても確認してみましょう。下図は国土交通省が発表している不動産価格指数の推移です。
上図の不動産価格指数は2010年の平均価格を100とした時の価格推移を表しており、低金利の状況が続く中、堅調なマンション価格の上昇を続けています。
このような低金利の状況が続く間にマンション売却を検討する、ということが一つの判断のポイントと言えるでしょう。金融緩和がいつまで続くのか、インフレ率なども考慮しながら推察していくことも重要です。
【関連記事】不動産投資とインフレ率の関連性は?不動産価格や金利の推移との比較も
2.投資用マンションを高く売却するコツ
投資用マンションを購入検討する人の多くは実需(居住)目的ではなく、運用益を狙う投資目的で不動産を探しています。そのためターゲットとなる買主は不動産投資家か買取再販を行う不動産会社です。
不動産投資家や不動産会社は不動産情報を収集しながら複数の物件を比較しているため、収益面やリスクの観点から購入するメリットが薄いマンションの場合、高値売却が難しくなってきます。
投資用マンションを高く売却するには「購入を検討する不動産投資家にメリットがあるかどうか」という視点が重要となります。この点を踏まえて、投資用マンションを高値売却するためのコツについて見ていましょう。
1-1.空室率を下げ、収益性を高めておく
空室率の高い投資用マンションは、収益性の低下が懸念されてしまい高値売却が難しくなってきます。空室の要因にはいくつかありますが、主に考えられるのは下記の3点です。
- 周辺の家賃相場よりも高く設定されている
- 設備の劣化や傷みがみられ、入居検討者の印象が悪い
- 管理会社が入居付けに積極的ではない
周辺相場よりも高い家賃設定をしていると、空室率が上昇していきます。しかし、安易に家賃を下げてしまうと収益性が大きく低下してしまい、売却価格の低下を招きます。その他の対策を取ったあとに、慎重に検討するのが良いでしょう。
例えば、設備が劣化していたり壁紙などに傷みが見られる場合、内見を行った入居検討者の印象が悪くなります。このような場合、管理会社を通して設備の変更を行うか、変更した場合の修繕費が売却価格に上乗せできるかどうか、検討してみましょう。
その他、管理会社が入居付けに積極的でないケースもあります。管理会社ともコミュニケーションを取りつつ、空室の要因は何か、入居率の改善方法がないか、相談をしてみると良いでしょう。
2-2.修繕履歴の資料を揃える
中古マンションの売却では、修繕履歴などの資料が少ないと売却価格に悪い影響を与えます。不透明な情報が増えるほど購入のリスクが上がり、買主側の買い控えにつながるためです。
長期修繕計画と修繕履歴・修繕積立金残高が大きく相違していなければ、適切に管理されているマンションとみなされやすいでしょう。その他、長期修繕計画が適切な頻度とタイミングで更新されているかどうかも重要です。
ただし、修繕計画がうまく機能しておらず修繕積立金が不足しそうである場合でも隠さずに買主に伝えることが大切です。その他、マンションに欠陥がある場合は、後の契約不適合責任を回避するためにも、必ず買主や不動産仲介会社へ伝えるようにしましょう。
明確にマンションのメリット・デメリットを買主に伝えることで、買主側にも適切な投資判断をしてもらいやすくなります。マンションの状態が分かる資料をできるだけ揃え、相手方に伝えて行きましょう。
1-3.複数の不動産会社の査定を受ける
不動産会社へマンション査定を依頼する際は、1社だけでなく複数の不動産会社へ依頼しましょう。1社だけでは査定価格や査定の根拠、担当者の対応力などを比較することができず、不動産会社の言うことが適切であるかどうかの判断が難しくなるためです。
不動産一括査定サイトを活用すると、複数の不動産会社へ効率的に問い合わせすることができます。現在で15年目の老舗サイトである「リガイド」では、収益不動産の売却に強みを持った不動産会社が多く提携しており、同時に10社の査定結果を比較することが可能です。
その他、下記は悪徳な不動産会社の排除を積極的に行っており、収益不動産の査定に適した不動産一括査定サイトの一覧です。不動産査定を依頼する際はご参考下さい。
主な不動産一括査定サイト
サイト名 | 運営会社 | 特徴 |
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【関連記事】不動産査定会社・不動産売却サービスのまとめ・一覧
なお、査定サイトを利用する際は価格だけを単純に比較しないように注意しましょう。不動産会社の中にはあえて高い査定額を提示し、売却依頼を受けたあとで指値(減額)交渉を行うことがあるためです。不動産査定サイトの利用手順や注意点については下記の記事でも詳しく解説しています。
【関連記事】不動産一括査定サイトで不動産を高く売却する手順は?おすすめのサイトも
3.投資用マンションの売り時を見極める5つのポイント
投資用マンションの売り時を見極める5つのポイントについて解説していきます。
3-1.マンション売却の譲渡所得税率が切り替わるタイミング
譲渡所得税率は築年数にかかわらず、マンションを所有していた期間に応じて変わります。売却するまでのマンションの所有期間が5年未満の場合、譲渡所得税率は39.63%となります。所有期間が5年以上であれば20.315%です。(参照:国税庁「譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」)
ここでの注意点は、所有期間の起算日は土地や建物を売った年の1月1日となることです。その土地や建物の所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」に、5年以下の場合は「短期譲渡所得」になります。
例えば、2021年中に売った場合は、その土地や建物の取得が2015年12月31日以前であれば「長期譲渡所得」に、2016年1月1日以後であれば「短期譲渡所得」になります。
譲渡所得税の税率は5年の経過以前・以降で大きく変わるため、マンション売却によって譲渡所得が発生する場合には、所有年数が売却タイミングを推し測るひとつの目安と言えるでしょう。
3-2.不動産投資ローンを売却価格で完済できるか
投資用マンションを売却する際、不動産投資ローンの残債を売却価格で完済できるかどうか確認しておきましょう。マンションにローンが残っていると金融機関の「抵当権」がついており、これを抹消しないと原則として売却することができないためです。
マンションの売却価格で完済できない場合、手元の現金資金で差額を支払う必要があります。この状態をオーバーローンと言い、差額が大きい場合には、マンションを売却したくても難しい状況であるケースも少なくありません。
自由なタイミングで売却できない可能性を考慮して、まずはローンの残債を確認したうえで不動産査定を受け、売却によってローンの完済ができるか確認しておきましょう。なお、売り急がなければならない場合には「任意売却」を行うことで、ローンの残債を分割払いで支払っていくことも検討可能です。
3-3.買い替え検討している物件があるかどうか
投資用マンションを売却したあとは金融機関からの借入が減り、新しい物件を購入できる余力が生まれる可能性があります。次にどのような物件を購入するのか、売却益を得た場合はどのような投資対象へ資金を活用するのか、検討してみると良いでしょう。
ただし、前回の投資用マンション購入時よりも属性が変化していることで同条件での融資を得られない可能性もあります。当時よりも年齢を重ねており、融資可能年数が短くなってしまっているケースは少なくありません。
一方で勤続年数が増えている、年収が増加している、住宅ローンの返済が進んでいるなど、融資審査で良い評価を得やすい変化が起きているケースもあります。買い替え検討をしているのであれば、まずは買い替え先の物件の融資を得られるかどうか確認してみましょう。
【関連記事】不動産投資ローンの審査が通らない原因は?4つの理由と対策を解説
3-4.競合となる投資用マンションの売出状況
同じエリア内で競合する物件があり、自身のマンションよりも好条件で売り出されていると、買主にとって購入メリットが薄いため売却が長期化していきます。周辺エリアで競合となる物件が売り出されていないか、確認してみましょう。
この時、5年後~10年後を想定して、同一エリアのやや築年数が経過したマンションの売り出し状況についても確認しておくと良いでしょう。マンションは築年数が経過すると価格を下げることになるため、将来的な価格を予測し、今売るべきかどうか判断するのに役立ちます。
なお、売り出されている物件が不動産ポータルサイトで長期(半年~1年など)的に掲載されている場合、掲載されている価格での売却が出来ていない可能性が高いと言えます。定期的に競合物件の売出状況を確認し、売り時を判断してみましょう。
3-5.定期的に不動産会社へ査定を依頼する
投資用マンションの価格は築年数や家賃などの個別事情に加えて、金融機関の融資姿勢や不動産需要などの環境要因によって取引価格が日々変化しています。そのため、一つのタイミングだけの査定価格で判断するのではなく、定期的に不動産査定を行い、価格がどのように推移しているのか調査しておくことも大切なポイントとなります。
例えば、先に紹介した不動産一括査定サイトでは、査定価格を確認してから売却をするかどうか判断することも可能です。大きな経済変化が起きた時や、将来の家賃下落リスクが気になるタイミングなどで、不動産査定を受けてみると良いでしょう。
まとめ
投資用マンションの売却は、不動産投資の利益を確定する重要なフェーズとなります。売却の手順やタイミングに失敗してしまわないように注意し、適切に判断することが大切です。
投資用マンションのの高値売却には、金融機関の融資姿勢の確認に加えて、次の買主が投資メリットを感じること、売却のタイミングを推し測ることが重要となります。マンションをできるだけ高く売却していくためにも、定期的に不動産査定を受けるなどで事前に準備を行い、慎重に進めておくと良いでしょう。
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