築古アパートは建物の経年劣化の影響で物件価格が下がり、表面利回りが高くなる特徴があります。高利回りの収益性にメリットを感じ、築古アパート経営を検討している方も少なくないのではないでしょうか。
しかし、築古アパートは新築物件と比較して様々なリスクを抱えています。築古アパートのリスクについて理解し、事前準備や対策を考えたうえで投資検討することが大切です。
そこで本記事では築古アパート経営のメリット・デメリット、注意点やリスク対策について解説します。築古アパート経営を検討している方はご参考下さい。
目次
- 築古アパート経営の特徴
- 築古アパート経営のメリット
2-1.物件価格の値下がりで利回りが高くなる
2-2.オーナーチェンジの場合、収益性が可視化されている
2-3.経年劣化による価格下落の幅が少ない - 築古アパート経営のデメリット
3-1.金融機関の評価が低く、融資を受けづらい
3-2.アパート購入後に重大な欠陥が見つかるリスクがある
3-3.退去者が出ると、入居率の回復が難しいケースがある - 築古アパート経営のリスク対策
- まとめ
1.築古アパート経営の特徴
築古アパートに明確な定義はないため、本記事では法定耐用年数の残り年数が少ない、もしくは法定耐用年数を超えている物件のことを指して解説します。アパートの法定耐用年数は構造によって異なり、木造は22年、軽量鉄骨(厚さ3mm以下)は19年となります。
不動産の築年数が経過して残りの法定耐用年数が少なくなると、問題なく居住が行える場合でも金融機関の融資審査に通りづらくなり、資金調達のハードルの高さから物件価格が下落していきます。
また、築古物件になると、入居希望者が減ることで新築・築浅の時よりも空室率が高くなってしまったり、経年劣化によって外壁塗装や雨漏りの改善など、大規模な修繕を必要とする欠陥が見つかることがあります。
その他、築古アパートは建築時から時間が経過していることにより、当初は想定していなかった環境変化のリスクを抱えている可能性もあります。
このような様々なリスクへの対策や準備が必要であることから、アパート経営は不動産投資の中でもやや難易度の高い投資手法であると言えるでしょう。
2.築古アパート経営のメリット
築古アパート経営のメリットとして、以下の点が挙げられます。
- 物件価格の値下がりで表面利回りが高くなる
- オーナーチェンジの場合、収益性が可視化されている
- 経年劣化による価格下落の幅が少ない
それぞれ詳しく見て行きましょう。
2-1.物件価格の値下がりで利回りが高くなる
築古アパートは、物件価格の値下がりによって表面利回りが高くなる傾向にあります。表面利回りとは、想定される年間家賃収入を物件価格で割った割合のことで、下記の計算式で求めることができます。
表面利回り=想定される年間家賃収入÷物件の購入価格×100
表面利回りは投資物件の収益性を簡易的に表しており、複数の投資物件を比較するときの一つの指標となります。
ただし、表面利回りには物件の維持費や修繕費などの経費や、実際の家賃収入が考慮されておらず、物件本来の収益性とかけ離れていることがあります。投資物件の実質的な収益性を正確に比較するには、実質利回りという指標を利用してみましょう。下記、実質利回りの計算式です。
実質利回り=年間家賃収入-年間経費÷物件の購入価格+購入時諸経費
築古アパートは新築時よりも年間経費が高額になっているケースも少なくないため、表面利回りだけでなく実質利回りで比較することが大切です。物件の問い合わせをする際は、できるだけ詳細な経費や空室率が記載されているレントロール(家賃表)を提示してもらい、実質利回りを比較してみましょう。
2-2.オーナーチェンジの場合、収益性が可視化されている
中古物件は、入居者がいる状態で前オーナーから物件を引き継ぐ「オーナーチェンジ物件」であることも少なくありません。オーナーチェンジ物件は、正確な入居率や経費、修繕履歴などを確認できるメリットがあります。
一方、新築物件の場合は入居者がいないため、過去の事例や周辺の家賃相場、賃貸需要からシミュレーションを作成しており、アパートの収益性が未知数である側面があります。その他、新築当初は高く保っていた入居率が経年劣化によってシミュレーション以上に低下していくリスクもあります。
オーナーチェンジ物件は過去の実績や現在の入居状況を確認でき、より具体的な投資計画を立てやすいメリットがあります。ただし、入居者がいる部屋の内見が難しいなどのデメリットもあり、隠れた欠陥が引き渡し後に発覚する可能性には注意が必要です。
【関連記事】オーナーチェンジ物件に投資するメリット・デメリットは?失敗しないポイント4つ
2-3.経年劣化による価格下落の幅が少ない
アパートは経年劣化により建物の評価額が下がり、不動産価格が下落していきます。法定耐用年数が切れた築古アパートは建物部の評価額が下がりきった状態となり、以降の不動産価格の下落幅が少なくなる特徴があります。
購入時から売却までの値下がり幅が少ないことから、物件の収益性や不動産投資ローンの金利条件によっては、売却益(キャピタルゲイン)を得られる可能性もあります。新築アパートと比較したとき、値下がり幅が狭いという点はメリットと言えるでしょう。
なお、構造別の法定耐用年数は税法上の減価償却期間として設定されており、建物が実際に使用できなくなる寿命として設定されている年数ではありません。建物がその使用目的に適応して、充分に使用目的を達成できる年数を「経済的耐用年数」といい、住宅においては法定耐用年数よりも経済的耐用年数の方が長くなる傾向があります。
金融機関の融資審査では、残りの法定耐用年数と再調達価格から算出した「積算評価」が重視される傾向にあることから、築古アパートの中には経済的耐用年数で検討した時に割安となっている物件が見つかるケースもあります。
3.築古アパート経営のデメリット
次に、築古アパート経営のデメリットについて見てきましょう。今回は下記3点のデメリットを取り上げています。
- 金融機関の評価が低く、融資を受けづらい
- アパート購入後に重大な欠陥が見つかるリスクがある
- 退去者が出ると、入居率の回復が難しいケースがある
3-1.金融機関の評価が低く、融資を受けづらい
前述したように、築古アパートは金融機関からの評価が下がり、融資を受けづらくなる特徴があります。融資可能額や融資年数、金利などの条件が悪くなることから資金調達に苦戦してしまい、購入可能なアパートを見つけるまでに長い期間を必要とすることも少なくありません。
融資審査をクリアしても、融資年数が短くなることから月々の返済金が大きくなり、適切なキャッシュフローでの運用が難しいケースがあります。購入時よりも大きく入居率が悪化すると、キャッシュフローがマイナスになってしまうリスクにも注意が必要です。
なお、融資条件の厳しさから、売却を検討しても次の買主を探すことに苦戦し、売却が長期化してしまうリスクが高い点もデメリットとなります。
このような、金融機関による評価の低さや融資条件の厳しさは、築古アパート経営を検討する際に重視しておきたいポイントの一つと言えるでしょう。
3-2.アパート購入後に重大な欠陥が見つかるリスクがある
築古アパートは築年数の経過により老朽化が進み、購入後に思わぬ重大な欠陥が見つかるケースがあります。特に、オーナーチェンジ物件では入居者がいる室内の内見が出来ず、退去後でしか確認できない点は大きなデメリットです。
中古アパート購入後のトラブルを防ぐには、売買契約書の契約不適合責任の範囲や期間などの条件を確認し、必要に応じて交渉することが重要です。ただし、売主と利益相反してしまうポイントのため、仲介不動産会社の協力を得ながら慎重に交渉を進める必要があります。
また、築古アパート経営を長期間運用する場合、定期的な修繕などのメンテナンス費用が高額になる可能性があります。購入前には過去の修繕履歴を確認し、適切な管理が行われていたか、修繕にはどの程度の費用が発生していたか、確認しておきましょう。
3-3.退去者が出ると、入居率の回復が難しいケースがある
築古アパートは現在の賃貸ニーズにそぐわない間取りや内装になっているケースも多く、退去者が出ると入居率を回復させることに苦戦する可能性があります。
また、退去者が長年居住していたパターンでは、入居時の築年数における家賃設定がされているケースがあります。この場合、同じ家賃設定で入居者を探すことが難しくなることから家賃下落に繋がり、アパートの収益性が購入時よりも低下してしまうことになります。
築古アパ―ト経営を検討する際は、このような収益性の低下や入居率回復の難易度が高いことを加味し、できるだけ余裕のあるキャッシュフローが設定できる物件を探すことが重要なポイントとなります。
4.築古アパート経営のリスク対策
ここまで築古アパートの特徴、メリット・デメリットについて解説してきました。築古アパートは高い収益性が期待できる反面、様々なリスクがあり、新築時よりも運営の難易度が高くなっていることが分かります。
築古アパート経営を検討するのであれば、このようなリスクに対応できるよう潤沢な資金を準備しておくことが重要になります。突発的な修繕の必要性が出てきた際や、空室が長引いてキャッシュフローがマイナスになっている時でも、運営に支障がないように対応する必要があるためです。
ただし、築古アパート購入時の金融機関の融資条件が厳しくなることから、購入時に多くの頭金を必要とするケースが少なくありません。この時、手元の現金資産に余裕を持たせ、運営時のリスクに備えておくことも検討しておきましょう。
頭金で現金資産の大半を失ってしまうと突発的なトラブルに対応できず、アパートの収益性や資産性を毀損してしまう可能性もあります。取得に必要な費用と、運営に備えておく資金のバランスを取りながら、慎重に投資判断をすることが大切です。
築古アパート経営をリスク対策しながら検討する際は、これらのリスクに対応できる資金力や、融資が下りやすく資金調達ができるアパートを見つけ出すノウハウが必要であると言えるでしょう。
まとめ
築古アパート経営は、アパートの価格が低下していることで利回りが上昇しており、大きな利益を得られる可能性があります。
しかし、新築物件と比較して様々なリスクを抱えているため、築古アパート経営を検討する際はこれらのリスクについて理解し、突発的なトラブルに対応できる資金力や運営のノウハウが必要になります。
このように、築古アパート経営は数ある不動産投資の手法の中でもハイリスク・ハイリターンな投資方法であると言えます。これらのメリット・デメリット、リスク対策を考慮しながら、慎重に投資検討することが重要です。
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