路線価で不動産の査定価格を計算する手順は?具体例を5つ解説

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不動産の査定価格を自分で計算したいという場合、路線価から計算する方法があります。

路線価は、国税庁が不動産の課税価格を計算するために公表している価額で、全国の土地の査定価格を、推計することができます。不動産会社の査定や金融機関の担保評価などの際にも利用されるため、不動産オーナーや投資家であれば計算方法を知っておきたいといえます。

この記事では、路線価で不動産の査定価格を計算する方法について、5つの具体例を挙げて解説していきます。

目次

  1. 路線価と路線価の調べ方
    1-1.路線価とは
    1-2.路線価の調べ方
  2. 路線価で不動産の評価額を計算する方法
    2-1.1路線のみに面しており奥行補正がある場合
    2-2.1路線のみに面しており間口が狭小である場合
    2-3.1路線のみに面しており不整形である場合
    2-4.正面と側方で2路線に面している場合
    2-5.正面と裏面で2路線に面している場合
  3. 路線価の評価額から査定価格を推計する
  4. 路線価から自分で不動産査定をするのが難しい場合
  5. まとめ

1.路線価と路線の調べ方

路線価で不動産の査定価格を計算する方法を説明する前提として、まずは路線価の意味と、路線価の調べ方について説明します。

1-1.路線価とは

路線価とは、相続税や贈与税の課税価格を算定するために、毎年7月頃国税庁が公表している価格基準です。1月1日を評価時点として地価変動などを考慮し、公示地価の8割を目安に、全国の道路に価格を設定します。路線価は、その道路に接する標準的な宅地の1m2単価(千円単位)になります。

1-2.路線価の調べ方

該当する住所の近隣路線価図は、国税庁ウェブサイト「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」から、住所検索をすることによって調べることができます。

路線価図のなかで、道路に付された数字が、その道路に接する土地の千円単位の路線価になります。たとえば、「200」と付されていれば、その道路の路線価は、「20万円」ということになります。

数字の横に付されているアルファベットAからGは借地権割合を示しており、AからGに対応して、90%から30%までの借地権割合が設定されています。路線価を囲う記号の形は、その路線価が適用される地域を示しています。

また、路線価のない地域もあり、そのような地域では、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて評価額を算定します。この評価倍率表も、国税庁のウェブサイトから調べることが可能です。

2.路線価で不動産の評価額を計算する方法

路線価は、標準的な大きさや形状の土地の価格を基準としています。その土地が標準的な範囲に収まるものであれば、評価額は、路線価に土地面積を乗じることによって求めることができます。

しかし、標準的な大きさや形状から外れる土地は、その土地の特徴によって、奥行きや形状の不整形さ、あるいは、間口の狭小さを補正する割合を乗じて路線価の評価額を修正計算していきます。また、土地が接する路線の数によって、路線価の評価額を加算修正する場合もあります。

以下で、典型的な補正の事例を設定し、それぞれの評価額を計算してみましょう。

2-1.1路線のみに面しており奥行補正がある場合

標準的な形状の土地よりも奥行が長いか、または短い土地である場合、路線価に「奥行価格補正率表」によって定められた補正率を乗じて評価額を求めていきます。補正率は、地区と奥行距離によって区分され、それぞれ定められています。

たとえば、下図のように、1路線の道路にのみ面しており、接面の間口が20m、奥行きが25mの普通住宅地区の土地の事例を設定し、路線価が20万円の場合の評価額を計算してみましょう。

1路線のみに面しており奥行補正がある場合

奥行価格補正率表」によると、普通住宅地区で奥行距離が24m以上28m未満の場合の補正率は、0.97となっています。そこで、評価額は以下のように計算します。

200,000円×0.97×25m×20m=97,000,000円

2-2.1路線のみに面しており間口が狭小である場合

標準的な形状の土地よりも、間口が狭小で、その間口と比べて奥行が長い土地である場合、路線価に「間口狭小補正率表」と「奥行価格補正率表」によって定められた補正率を乗じて評価額を求めていきます。

補正率は、地区と奥行距離÷間口距離によって区分され、それぞれ定められています。たとえば、下図のように、1路線の道路にのみ面しており、接面の間口が5m、奥行きが20mの普通住宅地区の土地の事例を設定し、路線価が20万円の場合の評価額を計算してみましょう。

1路線のみに面しており間口が狭小である場合        

「間口狭小補正率表」によると、普通住宅地区で間口距離が4m以上6m未満の場合の補正率は、0.94となっています。

次に、「奥行距離÷間口距離」を求めます。20m÷5m=4mであり、「奥行長大補正率表」によると、普通住宅地区で「奥行距離÷間口距離」が4m以上5m未満の場合、補正率は0.94となっています。

路線価に乗じる補正率は、この2つの補正率を掛け合わせ、0.94×0.94=0.8836となります。したがって、評価額は次のように計算されます。

200,000円×0.8836×5m×20m=17,672,000円

2-3.1路線のみに面しており不整形である場合

標準的な形状の土地よりもいびつな土地である場合、この不整形地を覆うようにして道路に接する整形地を想定します。そして、その想定整形地から不整形地を除いた部分(かげ地)の想定整形地に対する割合を求めます。

想定整形地の路線価に、かげ地割合に応じた「不整形地補正率表」の補正率を乗じて評価額を求めていきます。

たとえば、下図のような、1路線のみに面している普通住宅地区の旗竿地を考えて評価額を計算してみます。竿部分が道路に接する間口が5m、奥行20mで、整形地とした場合の間口は10mの土地の事例を設定し、路線価が20万円の場合の評価額を見て行きましょう。

1路線のみに面しており不整形である場合

まず、かげ地割合を算出します。想定整形地の地積は10m×20m=200m2であり、かげ地の地積は(10m-05m)×(20m-5m)=75m2となります。したがって、かげ地割合は、75m2÷200m2×100=37.5%となります。

「不整形地補正率表」によると、普通住宅地区で500m2未満であるため地積区分はAであり、かげ地割合が35%以上40%未満の場合、補正率は0.88となっています。

また、「間口狭小補正率表」によると普通住宅地区で間口4m以上6m未満の場合、補正率は0.94となっています。

路線価に乗じる補正率は、この2つの補正率を掛け合わせ、0.88×0.94=0.82(小数点2位未満切り捨て)となります。この補正率を不整形地の路線価と地積に掛け合わせます。

200,000円×0.82×(10m×20m―75m2)=20,500,000円

なお、本事例の場合、奥行長大補正率を適用して評価額を計算することも可能です。

2-4.正面と側方で2路線に面している場合

正面と側方で2路線に面している場合はその土地の利用性が高いと考えられるため、正面路線の路線価に、「側方路線影響加算率表」によって求めた側方路線の路線価の影響額を加算して評価額を求めていきます。

たとえば、下図のような、正面で路線価30万円の道路、側方で路線価20万円の道路の2路線に面している普通住宅地区の土地の事例を設定し、評価額を計算してみましょう。なお、正面路線は、その土地の接する路線価に奥行価格補正率を乗じて計算した金額が高い方の路線となります。

正面と側方で2路線に面している場合        

まず、正面路線価に対して、「奥行価格補正率表」に基づいて奥行補正をおこないます。

300,000円×0.97=291,000円

次に、「側方路線影響加算率表」に基づいて、角地の場合の側方路線価の影響額を加算します。なお、側方路線に対する奥行は20mであるため、奥行価格補正はありません。

291,000円+(200,000円×0.03)=297,000円

最後に、地積を乗じて評価額を算出します。

297,000円×25m×20m=148,500,000円

2-5.正面と裏面で2路線に面している場合

正面と裏面で2路線に面している場合、側方路線影響加算率とは異なる、「二方路線影響加算率表」に基づいて求めた影響額を加算して、評価額を求めていきます。

たとえば、下図のような、正面で路線価30万円の道路、裏面で路線価20万円の道路の2路線に面している普通住宅地区の土地の事例を設定し、評価額を計算してみましょう。なお、正面路線は、その土地の接する路線価に奥行価格補正率を乗じて計算した金額が高い方の路線となります。

正面と裏面で2路線に面している場合

まず、正面路線価に対して、「奥行価格補正率表」に基づいて奥行補正をおこないます。

300,000円×0.97=291,000円

次に、「二方路線影響加算率表」に基づいて、裏面路線価の影響額を加算します。なお、裏面路線に対する奥行も25mであり、奥行価格補正率0.97と二方路線影響加算率を掛け合わせていきます。

291,000円+(200,000円×0.97×0.02)=294,880円

最後に、地積を乗じて評価額を算出します。

294,880円×25m×20m=147,440,000円

3.路線価の評価額から査定価格を推計する

路線価の評価額や、補正の計算方法は、相続税や贈与税の課税価格を算出するためのもので、地価の8割を目安に設定されています。そのため、査定価格を計算する際は、上述で求めた評価額を0.8で割り戻すことになります。

土地の売却相場価格=土地の固定資産税評価額÷0.8

ただし、査定価格には、他の類似条件の不動産の取引事例と比較して、それに地域性や個別性による補正を考慮して価格を推計する方法や、収益不動産であれば、一年間の純収益を還元利回りで割り戻すことによって価格を推計する方法もあります。

実際に相場価格を判断する際は、このような方法によって推計した価格と、路線価の評価額から算出した価格とを併せて考慮するようにしてみましょう。

4.路線価から自分で不動産査定をするのが難しい場合

ここまで路線価を使った不動産査定の仕組みを解説してきましたが、慣れない不動産の用語や計算が絡み、自分で不動産査定を行うことにハードルが高いと感じている方も多いと思います。

不動産会社では、土地や建物の評価をする際にこれらの計算を自動で行うシステムを導入していることも少なくなく、個人が行うよりも早く容易に評価額を算出することが可能になっています。自身で査定を行うのが難しい場合は、複数の不動産会社への査定依頼し、査定価格を比較してみると良いでしょう。

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不動産会社の査定では、路線価による評価額だけでなく実際に売買される実勢価格の相場調査が行われます。不動産売却を実際に検討する場合は、査定依頼することにより具体的な価格を知ることが出来るメリットがあります。

ただし、不動産会社の無料査定は売却による仲介手数料を得る営業活動の一環として行われるため、売却を考慮した査定価格を算出されることになります。路線価をもとにした評価額とは異なる視点で価格が算出される点に注意が必要です。

まとめ

路線価から土地の評価額を計算する際は、土地の特徴によって、奥行きや形状の不整形さ、あるいは、間口の狭小さを補正する率を乗じて算出します。また、土地が接する路線の数によっても、決められた補正率があり、それを路線価に加算して評価額を計算します。

査定価格は、このように路線価にかかる評価額を計算してそれを下に推計することが可能です。

路線価による評価額は、相続税や贈与税の課税価格を計算する方法であり、法令によって計算方法が厳密に定められています。正しく計算すれば、中立的な価格を推計することができます。

査定価格を計算する際は、他の評価額の計算方法と併せて参考にするとよいでしょう。また、売却を目的とする査定を行いたい場合には、複数の不動産会社への不動産査定を依頼し、査定価格や査定の根拠を比較することも検討してみましょう。

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佐藤 永一郎

筑波大学大学院修了。会計事務所、法律事務所に勤務しながら築古戸建ての不動産投資を行う。現在は、不動産投資の傍ら、不動産投資や税・法律系のライターとして活動しています。経験をベースに、分かりやすくて役に立つ記事の執筆を心がけています。