投資用不動産を扱う株式会社グローバル・リンク・マネジメント(GLM)は6月15日、新型コロナウイルス感染拡大による東京の地価への影響と、「令和」3年間の住宅地の地価動向について分析、結果を発表した。東京23区ではコロナ禍でも住宅地地価への影響は軽微で、23区別にみた住宅地地価の動向は、港区、目黒区で変動率がプラスになった。さらに、令和の3年間で地価上昇した東京の住宅地はコロナ禍において港区の3A(赤坂、麻布、青山)や目黒区の高級住宅地を再評価する動きもあったが、コロナ収束後は港区・品川区の臨海部や、城北・城東地区の住宅地が地価上昇の可能性に注目している。
調査は、GLMが19年に設立したグローバル都市不動産研究所の調査・研究の第11弾として、国土交通省「公示地価」の最新データ(令和3年の地価公示価格)から、新型コロナウィルス感染拡大による東京の地価への影響と「令和」3年間の住宅地の地価動向について分析した。
今年3月に国土交通省が発表した21年の地価公示価格によると、東京都は住宅地と商業地ともに、新型コロナウイルス感染拡大の影響で対前年平均変動率が8年ぶりにマイナスとなった。発表当時は全国の地価ナンバーワンの「中央区銀座4丁目」で7.1%下落、「新宿区歌舞伎町2丁目」でも10.3%下落など、衝撃的な数値となった。しかし「今回の地価の動向を住宅地・商業地の用途別、23区別に詳細に分析してみると、違った様相が見えてくる」と同研究所。
23区の公示地価は、住宅地、商業地とも14年から上昇の一途をたどり、ここ数年、その変動率は商業地で19年に7.9%、20年に8.5%、住宅地で19年に4.8%、20年に4.6%と高水準で推移してきた。21年には商業地で2.1%の下落となったが「これまで高水準で上昇が続いてきた分、新型コロナウイルスの影響で反動が現れた」(同研究所)と見られる。一方、住宅地では0.5%の下落に過ぎず、商業地と比べ、影響は軽微だったとする。
さらに、東京都地価調査(毎年7月1日時点の基準地価格調査)の基準地と同一地点である標準地(共通地点)で、前半期(20年1月1日~7月1日)・後半期(20年7月1日~21年1月1日)に分けて変動率をみた場合、東京23区での前半期の変動率は、住宅地で0.6%、商業地で2.1%の下落となったが、後半期は住宅地で横ばい、商業地で0.6%の下落にとどまっている。
前半期は、初めての緊急事態宣言、ステイホームの徹底や地域間移動に制約がかかるなど経済活動が大きく停滞したこともあり、商業地を中心に大きく下落したが、後半期は「経済と感染防止との両立が試みられ、経済活動も相対的に活発化しはじめたことから、横ばいないしは小幅なマイナスにとどまった。現在進められているワクチン接種が各世代へと拡大していけばウイルスに対する不安が解消され、経済活動も復活し、地価の下落も一旦は底打ちする」と同研究所は予測している。
東京23区別にみた住宅地地価の動向で、21年に変動率がプラスとなったのは0.3%の港区と目黒区の2区のみで、多くの区で下落に転じた。
この状況を、各区の調査地点ごとに「上昇」「横ばい」「下落」となった地点数の構成比でみると、「下落」地点で大半を占めているタイプ、「上昇」と「横ばい」地点で占めているタイプ、「横ばい」と「下落」地点で大半を占めているタイプに分けられる。新宿区、墨田区、江東区、北区、荒川区、板橋区などの多くは、ここ数年の上昇ピッチが早かった地点もあり、その調整も含めて下落地点が多くなったことが想定される。
港区と目黒区では、「横ばい」地点が6~7割程度で、「上昇」地点が港区で3割(9地点)、目黒区で4割(14地点)存在している。この2つの区は、コロナ禍に見舞われた1年であっても、多くの地点で「横ばい」の地価を維持し続け、「さらには上昇するだけのポテンシャルを持つ地点をいくつも有している」と同研究所は指摘している。
さらに、19年(令和元年)の地価上昇率ランキングから3年間の動向を対比し、「令和」3年間でみた住宅地価格の上昇率ランキングTOP30を作成した。渋谷区恵比寿をトップに、港区品川(2位)、田町(3位)が並び、港区・品川区の臨海部への期待度が高いことがうかがえる。高級住宅地の文京区本駒込の次に、北区赤羽(5位)、滝野川(6位)、荒川区東日暮里(7位)、足立区北千住(8位)、綾瀬(9位)が続いています。上位30位中、北区は3地点、荒川区は8地点、足立区は3地点ランクインし、城北・城東地区への注目度が引き続き変わっていないことを示している。
コロナ禍においては港区の3A(赤坂、麻布、青山)や、目黒区の青葉台、目黒、中目黒などの高級住宅地を再評価する動きあったが、コロナ収束後は、都心への近接性と価格の手ごろさを重視する流れへと戻り、港区・品川区の臨海部や、城北・城東地区の住宅地が地価上昇の注目エリアとなる可能性は今も高い―――というのが、同研究所の見立てだ。そのうえで「都心への交通利便性と高い住環境を兼ね備えた立地が改めて評価された都心・城南地区と、都心への近接性と価格の手ごろさを重視する流れが城北・城東地区がアフターコロナの主役になるかもしれない」と締めくくった。
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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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