不動産サービス大手のCBREは9月15日、「COVID-19下の不動産投資戦略」を発表した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大が不動産投資市場におよぼした影響について、同社が3月10日から30日と6月9日から30日の2回にわたって実施、投資家に対するアンケート結果から読み解き、COVID-19下にある市場の現状や今後の不動産投資戦略について考察している。
3月の調査は95社、 6月は97社が回答。回答者の属性はアレンジャー、レンダー(シニアを主とする)、レンダー(メザニンを主とする)、デベロッパー・不動産賃貸、アセットマネージャー(J-REITを主とする)、アセットマネージャー(J-REIT以外を主とする)、エクイティ投資家など。まずCOVID-19が拡大した 3月以降、売買市場では延期もしくはキャンセルされる取引が増加したが、5月25日に緊急事態宣言が全国で解除され、6月からは投資活動も徐々に再開された。6月の投資家調査の結果も、3月に実施した調査に比べて投資家の意欲の改善を示した。投資対象については、キャッシュフローの安定性を重視し、景気変動の影響を受けにくいアセットタイプを選好する傾向に変化はなかった。
緊急事態宣言下、COVID-19による不動産取引への影響は拡大する。2020年第2四半期(4~6月期)の事業用不動産の投資額は対前年同期比22%減の7530億円に減少。J-REITおよび他の国内投資家による投資額とも前年同期を大きく下回った。6月調査では、「感染拡大は取引に影響があった」と回答した投資家は全体の53%で、3月の調査結果に比べて12ポイント増加。このうち、「取引が中止・延期になった」と回答した投資家は37%と同14 ポイント増加した。緊急事態宣言中は外出自粛要請により、取引が進められない状況にあったため、4月から5月に、中止や延期などに至った取引が増加したと考えられる。
しかし、6月に入り投資意欲には明確な改善が見られた。緊急事態宣言の解除後、経済活動は徐々に再開されてきている。6月の調査で不動産投資戦略に対する影響を尋ねたところ、感染拡大前に比べて「投資方針は変わらない」と回答した投資家は全体の75%を占め、3月の調査結果に比べ13ポイント増加しました。一方、「取得額を減額」・「わからない」を選択した回答者の割合は、いずれも前回調査結果に比べて減少した。
「売買市場では、売り手と買い手の間の価格目線の乖離は従前以上に広がっている。売り手と買い手の価格目線の乖離が続く理由のひとつは、価格を下げてまで売り急ぐ状況にある売主が少ないこと。成約件数は当面、低迷すると考えられる」と同社は市場の足元を予測する。ただし「金融危機当時に比べてディストレス案件は少なく、価格を下げてでも売ろうという売り手も多くないため、収益不動産の募集価格も総じて高止まりの状況が続くと考えられる」という見方だ。
6月の調査では「投資対象として魅力的なアセットタイプ」を質問したところ、トップ 3 は物流施設が33%で1位となり、住宅(32%)、オフィス(27%)が続いた。ECの拡大が加速することへの期待を受けて、物流施設に対する投資家の注目が高まっているようだ。一方、オフィスについては、リモートワークの導入などにより、中長期的な需要の見方が分かれてきていることが、順位の低下につながったと見られる。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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