シービーアールイー株式会社(CBRE)は8月16日、2022年第2四半期(Q2)の国内の投資市場動向(Japan Investment MarketView)を発表した。事業用不動産投資額は7190億円で対前年同期比38%増加、オフィスの投資額が同192%増とマーケットをけん引したほか、大型ビルが東京都心のほか湾岸エリアや横浜で取引された。
同日発表の「不動産投資に関するアンケート」の調査結果では、東京の主要アセットタイプの期待利回りは全セクターで低下した。CBRE短観指数(DI)は、物流施設の「売買取引価格」DIが大きく悪化。賃貸市場の需給バランス緩和を背景に、賃料上昇を見込む投資家が減少したことを示唆した。7割強の投資家は現在の低金利は来年夏も続くと想定。一方で、海外の金利上昇を受けてやや慎重姿勢に転じた欧米投資家が一部で見られることから、同社は「これらの投資家が資産売却を増やすことになれば、取引総額を押し上げる」と予想している。
事業用不動産の投資額の増加は、前年同期が5190億円と低水準だったことによる反動増が主因。投資額が増加したのはJ-REITを除く国内投資家および海外投資家で、それぞれ186%、37%増加した。一方でJ-REITの投資額は減少、Q2の投資額としては05年の調査開始以来3番目に低い水準となった。
オフィス投資が対前年同期比192%の増加で突出、うちJ-REITを除く国内投資家による投資額は同543%と大きく伸びた。また海外投資家による取得も同105%増加。最も高額だった取引は「日本通運本社ビル」の732億円。その他にも、大型ビルが東京都心のほか湾岸エリアや横浜で取引された。取引利回りはコロナ禍前と同等か、それを下回る水準だったとみられる。
Q2のJ-REIT投資額(IPOを除く全取引)は対前年同期比62%減の892億円。Q2投資額としては2005年の調査開始以来3番目に低い水準だった。今期のJ-REITによる投資額のうち、オフィスが43%、ホテルが16%を占めた。
CBREが四半期毎に実施している投資家アンケートでは、東京の期待利回りは、全セクターで低下。中でも、ホテル(東京主要5区、運営委託型)は21年Q4以降3期連続で低下。旅行需要の回復期待やホテル案件が増加傾向にあることなどが期待利回りの低下につながっていると同社は見ている。
地方都市のオフィス期待利回りも低下傾向が続く。前期から横ばいだった大阪と福岡を除く4都市で期待利回りは低下。低下幅が最も大きかった札幌は、前期から10bps低下の5.00%と過去最低値を更新した。
Q2のアジア太平洋地域の投資額は291億米ドル、対前年同期比28%減少した。金利上昇が先行する海外マーケットでは、資金調達コストの上昇で取引が停滞しているようだ。その影響か、日本での不動産投資に対してもやや慎重姿勢に転じた欧米投資家が一部でみられている。一方、CBREが6月中旬に日本の投資家に対して実施したアンケートで23年夏ごろの長期金利の予想について質問したところ、回答者(アセットマネージャーやデベロッパー、レンダーなど、国籍問わず)の76%が「現状と変わらない低金利が維持される」と回答した。
日銀は金融緩和政策の継続を言明。また、不動産ファンドがアジア太平洋地域内で投資する予定の資金(6月集計)は既に19年の水準を2割上回る540億米ドルに達した。これから日本の投資を拡大しようとする海外投資家も少なくないとして、同社は「今後、やや慎重姿勢の投資家が保有資産の売却を増やすことになれば、取引総額を押し上げることになる」という予測で締めくくった。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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