2030年の不動産市場「ESG不動産の価値高まる」CBRE予測レポート

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不動産サービス大手のCBRE(日本本社:東京都千代田区)は2020年1月23日、特別レポート「人・テクノロジー・環境が変える不動産の未来」を発表した。本レポートは、オフィス、物流施設、リテール、ホテル、データセンター、そして不動産投資市場全般について、「人」「環境」「テクノロジー」の3つのキーワードに注目して、2030年までの不動産市場がどのように変化するかを考察したものだ。

2015年の国連サミットで採択されたSDGsへの賛同企業が増えるなど、持続性に対する日本企業の関心が徐々に高まる中、企業がオフィスを選ぶ際にも、今後は環境性という要素の優先度が高くなることが予想される。国交省による「ESG不動産の価値観に関するアンケート」によれば、環境性、快適性、健康性に優れたグリーンビルディングを含むESGに配慮したオフィスビルの不動産価値が「高まる」、または「今後は高まる」と回答した比率は、テナントで約7割、ビルオーナーで約8割にのぼった。

ESG不動産の価値

出展:CBRE特別レポート「人・テクノロジー・環境が変える不動産の未来」

また、これまでの環境対応は、企業にとってコスト負担の増大など、収益性でマイナスのイメージが強かったが、持続的成長への取り組みは長期的には収益性向上をもたらす可能性を示唆するデータが出ている。

出展:CBRE特別レポート「人・テクノロジー・環境が変える不動産の未来」

さらに同レポートでは、リテールセクターにおいても、グリーンコンシューマー(環境に配慮をしたり、環境負荷の少ない商品を購入したりする消費者)と呼ばれる消費者の増加が、リテーラーの店舗選択における変化を促すと予想。建物の環境性能の高さが店舗の付加価値となり、ブランドの出店ニーズが集まることで賃料水準の上昇にもつながると考えられる。

データセンターでも、環境対応を求める声が高まっている。データセンターは電力などのエネルギー消費量が非常に多く、消費電力の内訳は、サーバーやラックなどのIT機器がもっとも多く50~60%、次いで空調が約20~30%を占める。このうち、空調の消費電力のほとんどは、再生可能エネルギーの一つである、外気や氷雪を利用することで削減することができる。現在、データセンターは約7割が東京や大阪などの都心部に集中しているが、寒冷地にデータセンターを置くことで省エネを図れるというわけだ。

このような、再生可能エネルギーを利用し、高い電力使用効率を実現した「グリーンデータセンター」の実例として、北海道のさくらインターネットや新潟長岡のデータドックなどがある。CO2削減に貢献する有効な方策の一つとなるグリーンデータセンターは、今後も増えていくだろう。

出展:CBRE特別レポート「人・テクノロジー・環境が変える不動産の未来」

こうしたグリーンデータセンターは短期で閉鎖、移転することはほとんどなく、中長期の安定した稼動による収益が見込まれる。そのため、環境(E)、社会(S)、企業統治(G)といった非財務情報の観点を重視し、長期の安定的なリターンが求められるESG投資市場の投資対象として選好されやすくなるとしている。

雪氷を利用したデータセンターの冷却

雪氷を利用したデータセンターの冷却

現在、アメリカではグリーンビル志向が高く、建物の環境性能においては、国際的にも評価されているLEED取得ビルの総数は69,066件と世界の中でも圧倒的に多い。一方、日本では登録総数は245件、認証は128件(2019年10月現在)と、まだ少ない。しかし今後は、日本でも環境性能の情報開示への要求が強まり、環境性能の高い施設の建設をも促すと考えられる。

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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム

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