2022年4月時点、為替相場では急速な円安が進んだことで国内市場のインフレ懸念が強まっています。このような情勢の中、不動産投資家の方にとっては円安が不動産投資にどのような影響を及ぼすのか、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ドル高円安の現状について大まかに確認した上で、円安が不動産投資に与える影響について、円安から派生するインフレ、海外投資マネーの動き、金融政策の転換の観点から考えていきます。
目次
- ドル高円安の現状
- 円安が不動産投資に与える影響
2-1.円安から派生するインフレの影響
2-2.円安と海外投資マネー
2-3.金融政策の転換(1980年代の不動産バブルとの比較) - 不動産投資ローンの金利と貸出態度の変化に注意
- まとめ
1.ドル高円安の現状
2022年3月に入ってから、ドル高円安が加速しています。3月半ばに、アメリカFOMCの政策金利見通しが引き上げられ、FRBの高官が今後の更なる積極的な利上げの継続を示唆したことに呼応して、ドル高円安となりました。
一方、日銀は、FOMCの利上げ後も、金融緩和政策の維持を決定し、必要であれば追加緩和も検討するとの姿勢を崩していません。このような円安容認とも解される日銀のスタンスが、円安の流れを一層加速しています。
4月時点、円相場は1ドル=130円に近づく勢いを見せています。急速なドル高円安は、不動産投資市場にどのような影響を及ぼすのか後述していきます。
2.円安が不動産投資に与える影響
円安が不動産投資に与える具体的な影響について以下3つの観点から考えてみましょう。
- 円安から派生するインフレ
- 海外投資マネーの動向
- 金融政策の転換(1980年代の不動産バブルとの比較)
2-1.円安から派生するインフレの影響
円安は、日本国内において、輸入原材料や燃料などの高騰(インフレ)をもたらします。インフレによって建設費やリフォーム費用も値上がりし、収益不動産も値上がりする可能性が考えられます。
また、円安になると国内の余剰資金が不動産市場から為替市場に流出する可能性もあります。そうすると、需要と供給の関係から、収益不動産の価格抑制の方向に働く要因となります。
このように、円安からインフレが生じた場合に不動産投資に与える影響は価格上昇の側面がある一方、価格抑制の側面もあり情勢によって異なるといえるでしょう。
2-2.円安と海外投資マネー
次に、海外投資マネーの観点から円安の影響を考えてみましょう。
2007年に国土交通省が、米国・欧州・アジアを中心とした海外の不動産投資家に対しておこなった「海外不動産投資家アンケート調査」では、日本の不動産に対する投資スタンスを強気にみる要因の一つとして、回答者の約4割が「円高を想定」としています。
実際に、2012年の1ドル80円から2015年には1ドル120円にまで円安が進み、円安の動きに呼応するように、外国人投資家の日本不動産への投資も拡大していったという状況があります。
円安は購入時点での割安感から将来的な円高期待につながり、日本の不動産投資に対する自国通貨ベースの投資リターンの底上げも期待できることから、海外投資マネーが日本不動産市場に流入する材料になりやすいといえるでしょう。
2-3.金融政策の転換(1980年代の不動産バブルとの比較)
1985年、プラザ合意によってドルに対する他通貨の切り上げに向け、各国が為替相場に協調介入をおこないました。その結果、日本でも円高ドル安が進み、これに対応するために、景気対策として金利が引き下げられました。
大規模な金融緩和によって貨幣供給量が大幅に増加し、余剰資金が不動産市場に大量に流入したことが、実態から乖離した不動産価格の上昇を招き、不動産バブルの一因と考えられています。(※参照:内閣府「プラザ合意後の円高の進行と円高不況」)
1980年代とは異なり、円安ドル高の場合には、輸入原材料等のコスト高が販売価格に転嫁され、インフレ懸念が生じます。そのため、金融政策として金利の引き上げがおこなわれることが考えられます。
2022年以降の不動産動向について注視したいポイントの一つは、アベノミクスより続いていた量的金融緩和政策が円安対策として見直され、金利が引き上げられるかどうかという点です。仮に金利の引き上げによって金融引き締めがおこなわれると、貨幣供給量が減少し、不動産需要も冷え込んでいくことになる可能性もあると言えるでしょう。
3.不動産投資ローンの金利と貸出態度の変化に注意
ここまで見てきたように、円安が不動産投資に与える影響は、多方面から捉えることができ、一様ではありません。また、為替相場以外にも、不動産投資市場には様々な要因が影響を及ぼします。
そのうち、大きな要因となるのが、日本国内の金融機関の金利と貸出態度です。不動産投資には、多額の資金が必要であるため、多くの人は金融機関から融資を受けて不動産投資をおこないます。そのため、金融機関の不動産投資ローンの金利条件、貸出態度は、不動産投資市場に影響を及ぼす要素となります。
金利が上がると、イールドギャップ(投資利回りと金利との差)を生み出しづらくなることで融資を受けようとする誘因が下がり、不動産投資市場の需要は減少する傾向があります。反対に、金利が下がれば、不動産投資市場の需要は活発になるといえるでしょう。
金融機関が、投資用不動産の購入のために資金を貸し出すかどうかという貸出態度も、不動産投資市場に影響します。貸出態度が緩和されれば、購入できる人が増えるため不動産投資市場は活発になる一方、引き締めがなされると、市場は冷え込むことになります。
また、不動産投資市場は、ミクロな需給に左右される側面もあります。不動産投資の収益は、不動産という実物資産に紐づいているため、その不動産が所在する地域の人口動向や、立地する周辺の環境にも大きな影響を受けることになるからです。全体のトレンドを見極めつつも、物件ごとのパフォーマンスや周辺エリアなどのミクロの視点で注視することが重要となってきます。
まとめ
2022年4月時点、急速なドル高円安が進んでいることから、為替相場の要因に焦点を当てて、円安と不動産投資の関係性を考えてみました。
円安から派生するインフレの観点からは、不動産価格が上昇する可能性が高いものの、価格抑制に働く部分もあります。海外投資マネーの観点からは、円安は不動産投資市場への余剰資金の流入を招き、市場の活発化につながると考えられました。
一方、インフレ抑制の金融政策がおこなわれ、金利が引き上げられると、不動産投資市場の冷え込みにつながると考えられます。
しかしながら、為替相場一つを取り上げても円安が不動産投資にもたらす影響は一様ではなく、実際には様々な要因が複雑に絡み合って相互に関連し合っているといえます。
また、不動産投資市場には、為替相場以外にも、金融機関の金利や貸出態度、人口動向など、様々な要因が影響を及ぼします。日常的に、経済状況に関する情報収集をおこない、どのように不動産投資に影響を及ぼすかを考える習慣をつけるようにしましょう。
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佐藤 永一郎
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