アパート経営ができる築年数の目安は何年まで?築古のリスクや現地調査のポイントも

築古アパートは「利回りが高い」「購入価格が比較的安い」などの特徴があり、気になっている方もいるのではないでしょうか。しかし購入した後、何年くらいアパート経営ができるのか不安もあります。

そこで今回のコラムでは、アパート経営は築何年までできるか、法定耐用年数や経済的耐用年数について解説していきます。また、築古アパートのリスクやその対策方法についても紹介するので、ご参考ください。

目次

  1. アパート経営ができる築年数の目安は?
    1-1.法定耐用年数で考える
    1-2.経済的耐用年数で考える
  2. 築古アパート経営のリスク
    2-1.目に見えない劣化があるリスク
    2-2.入居率が低下するリスク
    2-3.入居者の属性が下がるリスク
  3. 築古アパートを経営する際のリスク対策
    3-1.現地調査を徹底する
    3-2.メンテナンスに関する知識を身につける
    3-3.資金を適切に確保する
  4. まとめ

1 アパート経営ができる築年数の目安は?

建造物であるアパートは、築年数に合わせてやがて老朽化していきます。しかし建てた後で何年間経営ができるのかは個々のアパートによって異なります。そこで目安をどう判断するのか、考えていきましょう。

1-1 法定耐用年数で考える

法定耐用年数とは、資産価値が消滅する法的な期間です。機械や自動車などにも定められていますが、建物に関しては構造によって年数が異なります。

構造または目的 法定耐用年数
鉄骨鉄筋コンクリート造または鉄筋コンクリート造 47年
れんが造、石造またはブロック造 38年
木造 22年
軽量鉄骨造(厚さ3ミリ以下) 19年
軽量鉄骨造(厚さ3〜4ミリ) 27年

※引用:国税庁「 減価償却のあらまし」より抜粋

木造アパートであれば築後22年、鉄筋コンクリート造のアパートであれば築後47年で、会計上の資産価値が消滅することになります。この法定耐用年数は金融機関の融資審査でも活用されることが多く、中には耐用年数内でしか融資年数を設定しない方針の金融機関もあります。

ただし、法定耐用年数はあくまでも税法上の減価償却資産の計上に用いる指標であり、法定耐用年数に合わせて建物が使用できなくなったり、売却時に値段が付かなくなる訳ではありません。建物の寿命については、次の項目で見ていきましょう。

1-2 経済的耐用年数で考える

アパートが法定耐用年数を超えたからと言って、誰も住めなくなるわけではありません。反対に法定耐用年数が残っていても、老朽化や災害などが原因となり、使用が困難になるケースもあります。法定耐用年数は建物としての寿命とは異なるということです。

「実際にアパート経営としての目的を達成できる年数」は「経済的耐用年数」と言われます。アパートの経済的耐用年数については、居住用として利用することができるか、運営によって収益を得ることが出来るかという点がポイントとなってきます。

メンテナンスや修繕工事などを適切な時期に行うことで、居住用としての建物の寿命はある程度延ばすことができます。実際に市場に売り出されている木造アパートの中には、1950年代に建てられた築70年前後の物件も売買されています。

ただし、築年数が経過したアパートの需要については土地の評価額が重視され、売買の対象となるケースも少なくありません。経年劣化によって建物価値が目減りしていくことは避けられませんが、土地は経年劣化という概念がなく、賃貸需要が豊富なエリアであれば建て直しなども検討することが可能なためです。

その他、アパートの経済的耐用年数を考えるのであれば、収益性(経済的要因)に焦点を当てた検証も必要になります。アパートの空室率や修繕に必要な経費率の悪化、減価償却期間が過ぎた後のデッドクロスなど、経年劣化により投資対象としての資産性を徐々に失っていくためです。

以上のことから、アパート経営が出来る築年数についてはケースバイケースであり、定義することが非常に難しいと言えるでしょう。設備不良や空室率、周辺エリアの賃貸需要の推移など多角的な視点で、それぞれが経営判断を行う必要があると言えます。

【関連記事】アパート経営におけるデッドクロスの仕組みは?回避する10個の対策も

2 築古アパート経営のリスク

築古アパートは経年劣化が進んでいる可能性があり、そのためリスクがあります。この項目では、築古アパートを経営する際のリスクについて解説していきます。

2-1 目に見えない劣化があるリスク

建物や設備機器は経年劣化が避けられません。築20年、築30年と築年数が経つことで、外壁や屋根、あるいは水道管など、アパートとして重要な箇所が劣化している可能性もあります。

また気をつけたいのは、部屋に入居者がいる状態でアパートを購入した場合です。入居者が退去するまで部屋内の確認ができないため、室内の劣化や設備不良を発見することができません。目に見えない劣化をそのままにしてしまうことで、より大きな劣化につながることもあります。この場合、大規模な修繕工事が必要なケースもあるのです。

2-2 入居率が低下するリスク

築年数が経っているアパートは、建物の老朽化が進んでいくだけではなく、内装デザインや設備、間取りなどが入居者のニーズに合わなくなっているケースがあります。そのため退去者が出ると、次の入居者が決まるまでの期間が長くなる可能性があります。退去が続いたり、空室が複数になることで、入居率が低下していくのです。

また入居率が低下すると、家賃設定を下げて入居者を募集するケースも多く、収益性は低下することになります。この点も築古アパートのリスクになります。

2-3 入居者の属性が下がるリスク

アパートは経年劣化により家賃が下落していくため、賃料の低下入居者の属性も下がっていく可能性があります。その場合、月収が低かったり、勤務状況が良くない入居者がいることも考えられます。

アパートの状態やエリアなどにもよりますが、入居者の属性が下がり、家賃の遅延や滞納さリスクが高くなる可能性もあります。入居需要が保証会社の審査を通過できない水準にまで下がってしまうと、空室期間を長引かせる要因ともなりかねないため注意しましょう。

3 築古アパートを経営する際のリスク対策

築古アパートのリスクを確認したところで、リスクを回避するためにも、対策方法を確認しておきましょう。

3-1 現地調査を徹底する

築古アパートはどこに劣化が潜んでいるか分かりませんので、購入前には現地調査を徹底して行うようにしましょう。具体的なポイントは下記のようなことが考えられます。

  • 過去の修繕履歴を確認する
  • メンテナンス状況を説明してもらう
  • 修繕工事の規模や費用について確認する
  • 適切な管理が行われているか確認する
  • 外壁や廊下など細かくチェックする
  • ゴミ置き場や郵便受け、自転車置き場などの状態を確認する
  • インスペクション(建物状況調査)を行う、など

見学時のチェックポイントは、特に雨に打たれてサビついているところなどを重点的に見ましょう。また修繕工事の履歴や箇所について、相手方から説明をしてもらうことも大切です。その箇所に行って、問題がないか確認しておくと良いでしょう。

ただし、分かりにくい欠陥については見落とすことがあります。そこで、プロの目で診断してもらえるインスペクションを活用するのも良いでしょう。インスペクションには費用が掛かりますが、売主との交渉でインスペクション費用の按分を行うことも可能です。

また契約前には、売買契約書に記載されている契約不適合責任の範囲や期間などについて、確認することが大切です。どの範囲まで契約不適合責任が適応されるのか、売主と買主双方で認識のすり合わせを行うようにしましょう。

3-2 メンテナンスに関する知識を身につける

前述したように、築古アパート経営では、屋内外で劣化あるいは損傷が発生する頻度が高くなります。そのため修繕工事や設備機器の更新などを適切に行う必要があります。

そこで必要なのが修繕工事やメンテナンスなどの知識を身につけておくことです。どのようなタイミングでメンテナンスした方がいいのか判断できるようになると、入居者に迷惑がかかるような大規模な劣化を回避することができます。また管理会社や施工会社に任せっきりにならないため、コスト削減や質の高いメンテナンスの実施などにもつながります。

3-3 資金を適切に確保する

築古アパートは、修繕工事やメンテナンスに想定外の費用がかかることがあります。また退去者が出た後に空室期間が長くなることも予想されますので、キャッシュフローが悪化することも考えられます。そのため支障が出ないように、資金を適切に確保しながら運営するようにしましょう。

キャッシュフローを悪化させない方法としては、下記のようなことが考えられます。

  • 経費を下げる
  • 法的な届け出は自分で行う
  • 繰り上げ返済をしてローンの返済額を減らす
  • 備品はインターネットなどで購入する
  • 簡単なリフォームは自分で行う、など

こうした知識を身につけて経営に活かすことは、築古アパート経営だけではなく、不動産投資全体におけるリスク対策になります。

まとめ

築古物件はハイリスク・ハイリターンになるケースが多く、特に建物や設備の劣化によるリスクが懸念されます。今回のコラムでは、築何年まで運用できるのか、目安を紹介しました。ただし、個々の物件で状態は異なるため、普段のメンテナンスや修繕工事などで寿命を延ばすことができます。

また、築古アパートのリスクとリスク対策方法についても解説しました。リスクを正しく理解して対策することで、適切なアパート経営に近づくことができます。これらの注意点を把握し、慎重に検討されてみると良いでしょう。

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倉岡 明広

経済学部経済学科卒業後、出版社や編集プロダクション勤務などを経てフリーライターとして独立。雑誌や新聞、インターネットを中心に記事を執筆しています。初心者が抱く不動産投資の疑問や質問を解決できるよう丁寧な記事を執筆していきます。