アパート経営におけるデッドクロスの仕組みは?回避する10個の対策も

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アパート経営で利益を上げるには、デッドクロスの仕組みとリスクを理解しておくことが重要なポイントになってきます。

デッドクロスは事前に回避することが十分に可能です。アパート経営の投資戦略を練るのであれば、デッドクロスのリスクをコントロールできるよう対策を行いましょう。

本記事では、アパート経営におけるデッドクロスの仕組みと、デットクロスを回避する10個の対策を解説していきます。

目次

  1. アパート経営のデッドクロスとは?
    1-1.減価償却費の経費計上の仕組み
    1-2.ローン返済の経費計上の仕組み
  2. アパート経営のデッドクロスを回避する購入前の対策
    2-1.自己資金の投入額を多めにする
    2-2.元金均等返済を選択する
    2-3.減価償却期間の長い物件を購入する
    2-4.収益性の高い物件を購入する
    2-5.シミュレーションを綿密におこなう
  3. アパート経営のデッドクロスを回避する購入後の対策
    3-1.ローンの借り換え・繰上げ返済をおこなう
    3-2.手元資金を積み立てておく
    3-3.所得控除を受ける
    3-4.新規物件を購入する
    3-5.物件を売却する
  4. まとめ

1.アパート経営のデッドクロスとは?

アパート経営におけるデッドクロスとは、通称、「ローン元金返済>減価償却費」という状態に陥ることをいいます。このような状態になると、所得税や法人税などの税金計算をおこなう決算書上の所得が、実際の手取りキャッシュよりも少なくなってしまいます。

その結果、アパート経営の税金負担が増えてキャッシュフローを圧迫し、アパート経営が苦しくなる可能性があります。

なぜこのような事態が生じるのか、その原因は、法定期間を経過すると減価償却費は計上できなくなるのに対し、ローン返済については、返済が進むにつれて経費に計上できる利息部分が減っていくことにあるといえます。

1-1.減価償却費の経費計上の仕組み

アパート経営で建物や建物設備を購入するのにかかった支出は、購入時に一括して経費に計上するのではなく、それらが利用できる期間に分割して経費に計上していきます。

分割計上する期間は法令によって定められており、建物について、鉄筋コンクリート造は47年、鉄骨造は34年、木造は22年、建物設備は15年で均等償却をおこないます。これが減価償却費です。

減価償却費は、購入した年は、購入した支出よりも少ない経費を計上することになりますが、それ以降は、いわば現金の支出がない経費となって所得を圧縮するため、税金が軽減されることにもつながります。

しかし、これらの法定期間が経過すると、減価償却費は計上されなくなり、その分の経費は一切なくなることになるため、所得が増え、その分の税金がかかってくることになります。

アパート経営では、建物が木造であることが多く、減価償却費計上の法定期間が早めに経過してしまいます。その上、法定期間は、新築時から計算した期間であるため、中古で購入した場合は、さらに短い期間で減価償却費は計上されなくなります。

また、平成28年3月31日以前に購入した建物設備については、定率法が認められていました。定率法では、年数が経過するにつれて減価償却費が減っていく償却方法であるため、減価償却費の減少度合はより大きかったといえます。

1-2.ローン返済の経費計上の仕組み

アパート経営で物件の購入のために組んだローンの返済額には、ローンの元本と利息が含まれています。このうち、決算書上の経費に計上できるのは、利息のみであり、元本の返済は経費になりません。

ローンの返済では、返済が進むにつれて元金が減っていくため、利息も減少することになります。特に、元利均等返済という返済方式を選択した場合、返済額は定額であるものの、総額に占める元金部分の金額が徐々に増える、という仕組みになっています。

このため、経費に計上できる利息部分の金額の減少度合は、元金均等返済による場合よりも大きくなります。

いずれにしても、ローン返済額のうち、経費に計上できる利息部分の金額は、返済が進むにつれて減少する仕組みになっているといえます。

2.アパート経営のデッドクロスを回避する購入前の対策

アパート経営では、減価償却費の経費計上の仕組みと借入金返済と経費計上の仕組みから、デッドクロスが生じることが多いといえます。

それでは、デッドクロスを回避するためにはどのような対策が考えられるのでしょうか。まずは、購入前にできる対策からみていきましょう。

2-1.自己資金の投入額を多めにする

デッドクロスを回避するには、自己資金の投入額を多めにするという方法があります。

減価償却費に比べてローンの元金返済額が少なくなるため、元金返済額が減価償却費を上回るリスクが低くなります。また、自己資金を多めにした場合、返済期間が短くなることもあり、返済期間が減価償却費の法定期間を超えてしまうリスクを減らすことができるでしょう。

ただし、不動産投資のレバレッジ効果は薄れることになるため、手元資金の状況や投資目的に応じて検討してみましょう。

2-2.元金均等返済を選択する

返済期間を通じて元金の返済額が一定である元金均等返済は、ローン返済が進むにつれて、元金の返済額が増える元利均等返済よりも、デッドクロスになるリスクは低いといえます。返済方式が元金均等返済である不動産投資ローンを選択することも検討してみましょう。

ただし、元金均等返済は、返済初期の返済額が大きくなるため、家賃収入に対する返済比率の余裕があるかどうか、トラブルが生じたときに対応する手元資金が十分にあるかどうか、などキャッシュフローには注意を払うようにしましょう。

2-3.減価償却期間の長い物件を購入する

築浅の物件や木造以外の物件など、減価償却期間の長い物件を購入することで、減価償却期間が終わったために、デッドクロスに陥るリスクを避けることができます。

また、返済につれて返済元本の金額が増えていったとしても、減価償却期間が長ければ、その分デッドクロスに陥る時期を遅らせることが可能です。

購入前あるいは融資を申し込む前に、購入する物件の減価償却期間と不動産投資ローンの返済期間を比較するようにしましょう。

2-4.収益性の高い物件を購入する

収益性の高い物件を購入することで、デッドクロスのリスクに備えることができます。

収益性が高い物件であれば多くの家賃収入を見込みやすく、キャッシュフローに余裕が生まれることで、資金をプールしておくことができます。資金が貯まった段階で、繰上げ返済などのデッドクロスを回避するための対策を行うことが可能になります。

ただし、収益性が高くても、減価償却費や減価償却期間は変わりません。ローンの返済期間も変わらなければ、デッドクロスそのものを回避することはできないことに注意しましょう。

2-5.シミュレーションを綿密におこなう

デッドクロスを回避するためだけに役立つ対策ではありませんが、物件を購入する前や、ローンを組む前に、シミュレーションを綿密におこなうようにしましょう。減価償却費とローン元金の返済額のバランス推移を確認し、デッドクロスを回避できるような条件でローンを組み、物件を購入するようにしましょう。

毎年の減価償却費は、定額法の場合、下記の算式で求めることができます。建物の構造によって耐用年数が決められていますので、取得価格に法定の耐用年数に応じた償却率を乗じて計算してみましょう。

減価償却費=建物などの取得価格×定額法の償却率

3.アパート経営のデッドクロスを回避する購入後の対策

デッドクロスを回避するには、購入前に対策をおこなうのが最も効果的であるといえますが、購入後であっても対策を講じることは可能です。以下で、購入後にできる対策についてみていきましょう。

3-1.ローンの借り換え・繰上げ返済をおこなう

デッドクロスが生じる原因となる、物件の減価償却費とローンの元本返済額は、原則として物件の購入前に決定しています。

しかし、ローンの借り換えや繰上げ返済をおこなうことで、ローンの元本返済額を減らし、デッドクロスを回避することができることがあります。借り換えによって金利や返済期間などの返済条件を変更することで、元本返済額を減価償却費以下に抑えられる可能性があります。

また、手元資金に余裕が生じた段階で繰上げ返済をおこなえば、確実に元本返済額を減らすことができます。

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3-2.手元資金を積み立てておく

手元資金を積み立てておくことで、ローンの繰り上げ返済をおこなうなどのデッドクロス回避策の準備をしやすくなります。

また、手元資金に余裕があれば、将来、デッドクロスが生じてキャッシュフローが悪化したとしても、大きなリスクにはならないでしょう。

3-3.所得控除を受ける

デッドクロスは、税金を計算する上での所得が実際のキャッシュフローよりも大きくなって税金の支払額が負担になってしまう、という状態のことです。

そのため、デッドクロスのリスクを回避するにはアパート経営で適用できる税控除の利用を検討することも有効な手段となります。

たとえば、青色申告の条件を満たすことで、最大65万円の所得控除をすることが可能になります。さらに、不動産賃貸業を事業的規模にすることで、計上できる経費の範囲が広がり、税金の支払額を軽減できる可能性があります。

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3-4.新規物件を購入する

新規物件を購入することで、デッドクロスを回避することができる可能性があります。新規物件の購入によって、新たな減価償却費が発生するため、既存のローン返済と新たなローン返済の元本返済額がその減価償却費の範囲内であれば、デッドクロスの発生を先延ばしにすることができます。

しかし、新たな物件のローン返済が進んでいくと、やはりデッドクロスが生じる可能性があるため、別途、既存のローンと合わせて借り換えをおこなったり、あるいは既存物件を売却したりするなどの対策を検討する必要もあるでしょう。

3-5.物件を売却する

デッドクロスの発生は、デッドクロスが生じる原因となった不動産投資ローンに紐づく物件を売却することで、確実に回避することが可能です。

不動産投資においては、売却によって利益確定を図ることも選択肢の一つとなります。デッドクロスが生じるとキャッシュフローは少なからず悪化するため、物件の売却を検討してみるのもよいでしょう。

ただし、物件を購入してから、家賃収入から得た利益、売却によって見込める利益をすべて合わせて、十分な利益が出るかどうかを検討してから売却するようにしましょう。

まとめ

物件のローン元本返済額が減価償却費を上回ることをデッドクロスといいます。デッドクロスが発生すると、税金負担が増加し、キャッシュフローが悪化する可能性があります。

デッドクロスが生じないよう、減価償却費と元本返済額のバランスに十分注意を払って物件を購入することを検討しましょう。デッドクロスが発生する前に家賃収入で十分な利益を確保できるようであれば、その後に様々な対策を講じることも可能です。

アパート経営を行う際は、デッドクロスを一つの指標としてとらえ、キャッシュフローのシミュレーションを行ってみましょう。

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佐藤 永一郎

筑波大学大学院修了。会計事務所、法律事務所に勤務しながら築古戸建ての不動産投資を行う。現在は、不動産投資の傍ら、不動産投資や税・法律系のライターとして活動しています。経験をベースに、分かりやすくて役に立つ記事の執筆を心がけています。