賃貸経営は、ワンルームマンションやアパートなどの不動産を所有し、貸借人に貸し出すことで収入を得ていくビジネスモデルです。ビジネスマンの副業として選ばれることもあります。
そこで今回のコラムは、賃貸経営を始める場合のメリットとデメリットがテーマです。初心者向けに賃貸経営のリスクとその対策法についても解説していきます。
目次
- 賃貸経営を始める場合の5つのメリット
1-1.資産を形成できる
1-2.レバレッジ効果を活用できる
1-3.管理業務を委託することが出来る
1-4.インフレ対策になる
1-5.相続税の負担を軽減できる場合がある - 賃貸経営を始める場合の4つのデメリット
2-1.ランニングコストがかかる
2-2.業務時間を確保する必要がある
2-3.流動性が低い
2-4.複数のリスクに対して対策を取る必要がある - 賃貸経営のリスクに対する対策法
3-1.空室リスク
3-2.家賃下落リスク
3-3.修繕リスク
3-4.資産価値下落リスク
3-5.家賃滞納リスク
3-6.金利変動リスク
3-7.災害リスク - まとめ
1 賃貸経営を始める場合の5つのメリット
この項目では、賃貸経営を始めるとどのようなメリットがあるのか解説していきます。
1-1 資産を形成できる
賃貸経営は、マンションやアパートなどの不動産を貸借人に貸し、対価として賃料を得ることで利益を確保する仕組みです。賃貸経営を始めるには、不動産を所有する必要があります。
自己利用の住宅として不動産を所有するのとは違い、賃貸経営のメリットは物件の購入代金の原資を家賃収入にできることです。オーナー自身の住まいとするのであれば、物件の購入代金はオーナーが払うことになります。しかし、賃貸経営の場合は、貸借人から得た家賃収入でまかなうことが可能となります。
家賃収入によって、不動産投資ローンの返済や管理費などを相殺し、物件を維持していく費用も捻出することができます。このような仕組みによって、実物資産を形成できるという点が不動産投資の大きなメリットと言えます。
1-2 レバレッジ効果を活用できる
賃貸経営の特徴の一つは、金融機関からの融資を活用できることです。ローンを組むことに不安を感じる人もいますが、不動産投資ローンを活用することで得られるのがレバレッジ効果です。不動産投資ローンを活用することで、自己資金以上の物件を取得することが可能です。
なお、株式投資やFXでも証券会社から融資を受けて自己資金以上の運用を行うレバレッジの仕組みがあります。しかし、金融商品は日々の値動きが大きいため8~10倍ものレバレッジをかけてしまうと、ロスカット(強制的な決済)が行われるリスクが高くなりすぎてしまうというデメリットがあります。
不動産は値動きの少ない実物資産であるため、金融商品ほどのボラティリティがありません。そのため、長期的にレバレッジ効果を活用しながら徐々に純資産を増やす、という戦略に向いた投資方法となります。
1-3 管理業務を委託することが出来る
賃貸経営における主要な業務は専門業者に委託することができます。委託できる業務の代表的なのが管理会社による賃貸管理・建物管理です。管理会社では下記のような業務を主に行っています。
- 入居者募集
- 入居者の契約
- 家賃の回収
- 更新および解約手続き
- クレーム処理
- 建物および設備の管理
- 建物の清掃、など
つまり賃貸経営を行うオーナーとして、実際に管理業務をしなくても賃貸経営ができる仕組みになっているのです。手間が少なく運用を行えるため、「仕事をリタイアした後も収入が得られる」「年金支給額の不足部分を補える」「老後資金となる」といった部分にメリットを感じる方も少なくありません。
1-4 インフレ対策になる
物価が上昇するインフレの状態が続くと、現金の価値は下がりますが、不動産は価値が上昇していきます。実物資産である不動産を所有しているとインフレ対策にもなります。
賃貸用物件の場合であれば、物価が上がると家賃設定を上げられる可能性もあります。つまり収入が上がることも考えられるのです。また賃貸用物件を売却したときにキャピタルゲイン(売却益)を得られる可能性もあります。
1-5 相続税の負担を軽減できる場合がある
不動産を所有していると相続税の負担を軽減できる場合があります。同じ資産でも、現金や預金、債券、株式などは時価で評価されますが、不動産の場合は、時価のおよそ7~8割程度となる「相続税評価額」で評価されるからです。
課税対象となる資産を2~3割ほど抑制することができるため、相続税を軽減できる可能性があります。ただし、購入時よりも大きく値下がりが起きていると相続税評価額の減少割合を下回り、実質的に現金のまま保有している方が資産を多く残せる可能性があります。あくまでも副次的な効果ととらえ、運用する不動産については慎重に精査する必要があります。
2 賃貸経営を始める場合の4つのデメリット
この項目では、賃貸経営を始めるとどのようなデメリットがあるのか解説していきます。
2-1 ランニングコストがかかる
現預金で資産を所有していたり、株式などの他の投資商品に比べると、ランニングコストがかかるのがデメリットの一つになります。賃貸用物件の状態を維持したり、入居者を確保するためなどに費用が必要になるからです。
賃貸経営に必要な主なランニングコストは下記になります。
- 管理費
- 広告費
- 固定資産税・都市計画税
- 不動産投資ローンの金利
- 共用部の光熱費(アパートの場合)
- メンテナンス費
- 修繕費
- 修繕積立金(マンションの場合)、など
このほか、物件を購入する際には融資事務手数料や不動産取得税、登録免許税などの初期費用がかかり、物件を売却する際も仲介手数料や抵当権抹消費用などの費用が発生します。
2-2 業務時間を確保する必要がある
賃貸経営は業務を委託することができますが、すべてを任せられるわけではありません。物件のオーナーとして経営判断を求められるケースもありますので、本業を持っていても賃貸経営に関わる時間や労力の確保が必要になります。
例えば、部屋内の修繕工事などで機器の交換が必要な場合、主に下記のような4つの方法があります。
- 同じ機種を導入する
- より新しい機種を導入する
- より価格の安い機器を導入する
- 中古の機種を導入する、など
このようにどの機種を導入するかでも、オーナーの予算や意向などによって異なってきます。そのため賃貸経営に関するノウハウや知識を、オーナーとして勉強する必要もあるのです。
また税理士などにも依頼できますが、経理業務や確定申告業務を行うことも考えられます。その場合は、さらにオーナー自身の業務が増えることを覚えておきましょう。
2-3 流動性が低い
「流動性」とは交換のしやすさで、資産を速やかに処分したり、取引ができることを指しています。不動産を売却する際は買主との相対取引となるため、現預金や株式などに比べるとこの流動性が低いのがデメリットとなります。
不動産を売却したい時、売却希望価格で購入を検討する人を見つけ、買主との契約によって売買が成立させる必要があります。手順としては、下記のような流れで売却が成立します。
- 売却を決定する
- 査定を依頼する
- 価格を設定する
- 売却活動を始める
- 買主が決定する
- 不動産売買契約を締結する
- 物件を引き渡す
売買代金の決済が行われるのは物件の引き渡しのときですが、それまでの期間は早くても2〜3カ月程度となります。なお、不動産会社に買い取ってもらう買取という売却方法では1か月ほどの短期間で売却も可能ですが、その場合は相場よりも2~3割程度価格が下がってしまうデメリットがあります。
不動産は売りたいときに、希望価格で売れない可能性があるという点がデメリットの一つと言えるでしょう。
2-4 複数のリスクに対して対策を取る必要がある
賃貸経営の場合、金融商品への投資にはないリスクが複数あります。下記に列挙したのが主なものです。
- 空室リスク
- 家賃下落リスク
- 修繕リスク
- 資産価値下落リスク
- 家賃滞納リスク
- 金利変動リスク
- 災害リスク、など
次の項目では、これらのリスクに対する対策法について解説していきます。
3 賃貸経営のリスクに対する対策法
賃貸経営をしていくには、さまざまなリスクを把握し、それらに対して適切な対策を行う必要があります。前項で紹介した7つのリスクに対して、代表的な対策法を解説していきます。
3-1 空室リスク
賃貸経営のメインの収入は入居者からの家賃です。つまり空室になると収入が途絶えるため、できるだけ空室にならないように、また空室になった場合は長引かせないような対策を取る必要があります。
主な対策法は下記になります。
- 賃貸需要のある物件を選ぶ
- 相場に合わせた家賃設定をする
- 入居者付けに強い管理会社を選ぶ
- 特典をつけるなどで入居者募集を工夫する、など
3-2 家賃下落リスク
賃貸用物件は老朽化や競合などにより、家賃を下げないと入居者が確保できないことがあります。家賃を下げるとオーナーとしての収入が減りますので、回避したり、軽減する対策が必要になります。
主なものには下記のような方法があります。
- 入居希望者が多い物件を選ぶ
- リフォームやリノベーションを行う
- 人気のある設備を導入する
- 空室対策に強い管理会社を選ぶ、など
3-3 修繕リスク
建物は建てたときから劣化が始まります。賃貸用物件も同様で、時間の経過とともに大きな破損にならないように修繕する必要が出てくるのです。
しかし下記の方法を行うことにより、修繕する時期を遅らせたり、回避することができる可能性があります。
- 清掃やメンテナンスを適切に行う
- 資金に余裕を持って運営する
- 耐久性能の高い建材や設備を導入する、など
3-4 資産価値下落リスク
修繕リスクと同様ですが、建物は劣化することが避けられません。そのため資産価値はやがて下落するものです。ただし、資産価値をできるだけ下げないような方法もあります。
代表的な対策法は下記になります。
- 適切な時期にメンテナンスを実施する
- 土地価格が下落しない場所を選ぶ
- 資産価値が下がる前に売却をする、など
3-5 家賃滞納リスク
賃貸経営における収入の柱は家賃収入です。そのため家賃の回収が滞ると、オーナーの賃貸経営自体に影響をおよぼしてしまいます。家賃の滞納は貸借人の経済的な事情によるものが主な理由ですが、オーナーとしても下記のような対策を取っておきましょう。
- 保証会社を利用する
- 保証金制度を取り入れる
- (管理会社も含め)普段から入居者とコミュニケーションをとっておく、など
3-6 金利変動リスク
賃貸用物件を購入する際に金融機関から融資を得ているオーナーに限りますが、金利が上昇することでローン返済額が増えてしまいます。その場合、賃貸経営に影響がおよぶこともありますので、金利の変動に備えて対策をしておく必要があります。
代表的なのは下記のような対策法です。
- 定期的に繰り上げ返済を行う
- キャッシュフローの潤沢な物件を選ぶ
- 固定金利を選ぶ
- 経済情報などを適切に確認する
- 借り換えも検討する、など
3-7 災害リスク
賃貸経営は、所有しているアパートやマンションなどを貸借人に貸して行います。そのため建物が災害に遭ってしまうと、入居者に快適な住居を提供できなくなってしまいます。また被害が大きくなると建物自体を損失することもあり、賃貸経営自体が行えなくなってしまいます。
そのため下記のような対策を検討しておきましょう。
- 損害保険を手厚くする
- 災害に強い物件を選ぶ
- 災害が起きにくい立地を選ぶ、など
まとめ
賃貸経営の代表的なメリットとデメリットについて解説しました。賃貸経営のメリットばかり強調されることがありますが、適切にデメリットについても把握し、自身の投資目的に沿っているかどうか検討することが大切なポイントです。
また、賃貸経営には他の金融商品への投資とは異なるリスクがあります。リターンだけでなくこれらのリスク対策も行いながら、リスクとリターンのバランスを取った経営を行えるよう判断していくことが重要となります。
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倉岡 明広
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