不動産投資のインカムゲインの仕組みは?株式の配当金や投資信託の分配金との違いも

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投資において発生する収益はインカムゲインとキャピタルゲインに分けられます。

個人の不動産投資においてはインカムゲインが重要な役割を果たしますが、これから不動産投資を始める初心者の方にとってはインカムゲイン、キャピタルゲインの違いがよくわからないという人も少なくないでしょう。

また、同じインカムゲインでも、不動産収入と株式の配当や、投資信託の分配金との違いも気になるところです。

そこで、この記事ではインカムゲインの特徴や、不動産投資、株式、投資信託それぞれのインカムゲインの違いを紹介します。

目次

  1. インカムゲインとキャピタルゲイン
    1-1.インカムゲインとは?
    1-2.キャピタルゲインとは?
  2. 不動産投資のインカムゲインの仕組み
    2-1.インカムゲインの源泉
    2-2.不動産投資におけるインカムゲインの特徴
  3. 株式、投資信託のインカムゲイン
    3-1.株式のインカムゲインは配当収入
    3-3.投資信託のインカムゲインは分配金
  4. まとめ

1 インカムゲインとキャピタルゲイン

インカムゲインとキャピタルゲインは投資における収益の形式です。インカムゲインは資産を保有している期間の運用によって得られる収入で、キャピタルゲインは資産価格の変動を活かして獲得するものをさします。まずは両者の特徴についてみていきましょう。

1-1 インカムゲインとは?

インカムゲインとは、有価証券や不動産のような資産などを保有していることによって手に入る収入です。例えば、株式を保有していると企業ごとに設定された利率の配当が定期的に入り、不動産投資なら物件を賃貸に出していれば賃料収入が入ります。

インカムゲインには次のような特徴があります。

  • 保有期間は定期的な収益が見込める
  • 長期的に一定の収支が見込める
  • 短期間でハイリターンは見込みづらい

インカムゲインは特定の資産を保有していることによって、定期的に受け取れる収入です。不動産投資なら賃貸契約が継続していれば毎月収入が入り、株式も配当を出す企業の株式であれば概ね半年に一度収入が発生します。

ただし、不動産であれば空室になれば収入は無くなり、株式も無配当になるケースもあるため「保有していると絶対に受け取れる」というものではない点に注意しましょう。

また、次に紹介するキャピタルゲインと比較すると、収支が大きく変動しにくいという特徴を持っています。

例えば、不動産投資であれば、収入である賃料水準、支出であるローン支払いや維持費などは、いずれも月々で大きく水準が変動しにくいため、月々のインカムゲインも変動しにくいのです。そのため、長期的に一定の収入を得る投資方法としてインカムゲインが着目される傾向にあります。

一方で、1回で得られるインカムゲインは保有している資産価値の数%程度にとどまる投資先が多いため、一気にハイリターンを獲得するのは難しく、インカムゲインを重視した投資は長期でじっくり取り組むのが有効です。

1-2 キャピタルゲインとは?

キャピタルゲインは、資産価格自体の変動により生じる収益を意味します。株式や投資信託では、購入時点の株価(投資信託の場合は基準価額)より売却時点の水準が高ければ、売買差益をキャピタルゲインとして獲得できます。

キャピタルゲインには次のような特徴があります。

  • 売却しないと実現しない
  • プラス・マイナス双方に変動リスクが大きい
  • ハイリターンを獲得するチャンスがある

キャピタルゲインは、通常資産を「売却する」というアクションを起こさなければ実現しません。株式や投資信託において、株価や基準価額が上昇して「今売却すれば利益が出る」状態を「含み益」といいます。

含み益が出ていたとしても、その時に投資資産を売却しないまま放置して、仮にその後株価が下落すればキャピタルゲインを得ることが出来なくなります。そのため、キャピタルゲインを獲得するためには、売買タイミングが重要となるのです。

また、キャピタルゲインはプラスの収益を獲得できるときに使用する表現ですが、投資が失敗すれば価格が下落し損失が発生することも考えられます。価格変動に伴い損失に着目するときには「キャピタルロス」という言葉を使用します。

資産価格は頻繁に変わり、時に大きく動くため、売買差益を狙う投資はプラス・マイナス双方向において変動リスクが高いといえるでしょう。

その分、価格が急騰すればすぐに大きな収益を獲得するチャンスになります。投資先の選別や市場環境の分析、売買タイミングの検討など高度な専門知識や技術が必要になるものの、キャピタルゲインに着目した投資方法は短期間でもハイリターンを目指しやすいのです。

2 不動産投資のインカムゲインの仕組み

不動産投資のインカムゲインの源泉は主に賃料収入です。賃料収入は月々で変動することがあまりないため、管理コストやローン支払いなどの支出を上回る収入を維持できれば、毎月継続的に収益が発生します。

2-1 インカムゲインの源泉

不動産投資のインカムゲインの大部分は、物件の入居者から受け取れる賃料です。賃料のスキームはそれぞれの賃貸契約によって決まりますが、通常は毎月一定額を受け取ることができ、数年に一度、市場環境や賃貸需要などによって更新・変更されます。

そのほか、共有部分の管理に使用する共益費や物件全体の管理に充当される管理費、退去時に返却する必要がない礼金なども収入源です。

一方で、不動産投資においては毎月お金が出ていく支出には注意が必要です。ローンを借りていれば毎月ローン返済が発生し、物件管理のために管理コストもかかります。

2-2 不動産投資におけるインカムゲインの特徴

不動産のインカムゲインは、株式や投資信託のインカムゲインとはまた異なる特徴があります。

  • 賃料は頻繁に変わらない
  • 空室発生がインカムゲインの主な変動リスク
  • 支出も毎月発生するので赤字となるリスクがある

不動産投資の主なインカムゲインの源泉となる賃料は、一度賃貸契約を結べば、一定期間は変動しない内容になっているケースがほとんどです。そのため賃料収入は、入居者がいる限りにおいては特に変動しにくい特徴があります。

一方で、不動産投資におけるインカムゲインの大きな変動リスクは空室発生により賃料が入らなくなることです。空室は不動産特有のリスクであり、空室リスクの抑制が不動産運用において重要なポイントとなります。

また、不動産投資では管理費用やローン支払いなど、毎月一定額の支出が発生するのも特徴です。賃料収入よりこれらのコストが上回ってしまうと、毎月赤字が継続することになってしまいます。そのため、不動産投資においては毎月黒字を維持できるよう、長期の収支計画を事前に立てることが重要です。

【関連記事】不動産投資の空室リスクを回避する物件の選び方は?5つのポイントを解説

3 株式、投資信託のインカムゲイン

一口にインカムゲインといっても、株式や投資信託のインカムゲインは不動産投資とは大きく性質が異なります。それぞれの特徴をおさえて、投資先を選ぶときの参考にしてください。

3-1 株式のインカムゲインは配当収入

株式投資におけるインカムゲインとは配当収入を意味します。配当は、企業がその期間の利益を投資家に分配する目的で実施されるものです。

株式の配当収入には次のような特徴があります。

  • 配当の方針は企業が判断
  • インカムゲインがマイナスになることはない
  • 配当確定のタイミングで株価が下落するリスクがある

配当の有無や配当の水準は、企業が株主総会や取締役会などを通じて決定することができます。そのため、配当額は毎回変動するリスクがありますし、無配当のケースも想定されます。特に成長過程にある企業などでは、意図的に配当を当面出さない方針を打ち出すケースも少なくありません。

株式の配当を受け取る時には税金が引かれますが、税金は配当額の20.315%(2022年9月現在)と決まっているため、配当額を上回る支出が発生することはありません。すなわち株式のインカムゲインは最低のケースでもゼロ(無配当)で、マイナスになることはありません。

一方で、株価のなかには通常「配当を受け取る権利」が折り込まれています。投資家は今後のインカムゲインを加味して企業を評価し株式の売買をするためです。配当を受け取る権利は特定の期日に株式を保有しているかどうかで決まり、この日を配当落ち日といいます。

配当落ち日の翌日に株式を購入すると配当が1回分得られなくなりインカムゲインが減少することから、配当落ち日以降の株価の下落要因となります。インカムゲインが株価下落による価格損益の押し下げ要因となるのは、株価のインカムゲインの特徴です。

【関連記事】株式投資、配当と売買益どちらを狙う?メリット・デメリットを比較

3-2 投資信託のインカムゲインは分配金

投資信託もまた定期的に受け取れるインカムゲインがあります。こちらは分配金といいます。

分配金には次のような特徴があります。

  • 分配金の方針は運用会社が決定
  • 分配金が出るスケジュールはファンドにより異なる
  • インカムゲインがマイナスになることはない
  • 分配金は基準価額は下落要因に

分配金の方針は運用会社が決定します。分配金が毎回増減する可能性もあり、分配金が0円となるケースも考えられます。本来の分配金の位置付けは、投資信託の運用益を投資家に配分するものですが、運用益が出ず基準価額が購入価格を下回る「元本割れ」の状況になる場合でも、現行の制度では分配金を出すことは可能です。

分配金が出るスケジュールはファンドによって異なり、例えば毎月出るもの、数ヶ月〜半年に一度程度出るもの、年一回出るもの、一切分配金が出ないものなどがあります。また、運用状況などをふまえて、運用会社の判断で分配金を0円とすることも可能なため、本来のスケジュールよりもインカムゲインの発生頻度が少ないケースも珍しくありません。

投資信託のインカムゲインを受け取る時には税金20.315%は引かれますが、分配金を上回る費用が発生することはないため、インカムゲインは必ずゼロ(分配金なしの場合)もしくはプラスです。また、分配金を出した結果元本割れとなるケースにおける分配金を「特別分配金」といいますが、特別分配金は元本の一部払い戻しと同義とみなされるため、この部分は税金も発生しません。

分配金は、その時点のファンドの総資産から充当されます。投資信託の基準価額は簡単にいうと1口当たりの資産額なので、ファンドの総資産から投資口数を割って算出されます。

分配金を支払うとその分総資産が減少するので、基準価格は下落することにます。仮に運用成果や信託報酬など他の条件が全て同じなら、分配金の支払いが多いファンドの方が基準価額が下落しやすいという特徴があります。

【関連記事】投資信託、分配金の仕組みと分配ありファンドのメリット・デメリット

4 まとめ

一口にインカムゲインといっても、不動産投資と株式や投資信託では大きく性質が異なります。不動産投資のインカムゲインは変動しにくいものの、収入だけでなく支出も毎月発生するため、収支計画を立てて黒字化していかないと、収支がマイナスになるリスクがあるのが特徴です。

一方の株式や投資信託は、インカムゲインの観点から収支がマイナスになることはありません。しかし、配当や分配金支払いが株価及び基準価額の下落要因の一つになる点に注意が必要です。投資先を考えるうえでは、それぞれのインカムゲインの性質も着目しながら、検討を進めるとよいでしょう。

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伊藤 圭佑

資産運用会社に勤める金融ライター。証券アナリスト保有。 新卒から一貫して証券業界・運用業界に身を置き、自身も個人投資家としてさまざまな証券投資を継続。キャリアにおける専門性と個人投資家としての経験を生かし、経済環境の変化を踏まえた投資手法、投資に関する諸制度の紹介などの記事・コラムを多数執筆。