ロボットの発展と普及で訪れる未来とは?同分野に投資するファンドも紹介

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ロボットとは人の何かしらの動作を担う機械を意味します。フィクションでは人もしくは生き物を模した形状のものが多いイメージがありますが、現実では人の一連の作業の一部もしくは全部を担う存在全体をロボットと呼ぶケースが多くなります。

ロボットはさまざまな技術と結びつきながら、人間の省力化や人力ではなしえないレベルの安全性・正確性を実現するために進化し続けています。

この記事ではロボット産業の発展がもたらすメリットや社会的意義を紹介したうえで、後半では、ロボット産業や技術に投資できるファンドも紹介します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. ロボットに期待される役割
  2. ロボット産業の発展を後押しする技術
    2-1.IoT
    2-2.AI
  3. ロボットの発展がもたらした変革の例
    3-1.製造現場の飛躍的な発展
    3-2.物流の増加と人手不足を解決
    3-3.手術もロボットが行う時代に
    3-4.ロボットによるスマート農業
  4. ロボット産業に投資できるファンド2選
    4-1.ロボット・テクノロジー関連株ファンド -ロボテック-
    4-2.eMAXIS Neo ロボット
  5. まとめ

1 ロボットに期待される役割

ロボット技術は、主に次のニーズを満たすために進化を重ねてきました。

  • 省力化
  • 安全性・正確性の強化

現代におけるロボットは、その多くが、電源供給されてさえいれば一定の作業を自動でおこなえる能力を持っています。人力では大きな負担となる過酷な環境での活動や重労働を難なくこなすロボットも開発されています。

ロボットを導入すれば、そこに携わる人の作業負担が軽減したり、作業のために必要な人員を減らしたりすることが可能です。その現場で働く人にとっても、企業にとっても大きなメリットとなります。

また、ロボットのもう一つの役割が安全性や正確性の確保です。人が介在する以上、作業においてミスはつきものです。もし一つのミスが命に関わるような仕事だった場合は、そこに携わる人を常に生命のリスクに晒すことになります。また、どんなに熟練した人でも作業などにおける計画・目標とのずれや誤差を完全に無くすことはできません。

その点ロボットを導入すれば、極めて正確な作業が可能になるため、そもそもミスや事故を極小化できます。また万が一事故が起きたとしても、ロボットの破損までで済むため、人命を危険に晒さずにすみます。ロボットを頑丈に作っておけば、破損のリスクも抑えられます。

このように、ロボット産業の発展がもたらす社会・産業のメリットは大きいため、より多くの役割をロボットが担えるよう、ロボット産業は発展し続けているのです。

2 ロボット産業の発展を後押しする技術

近年のロボット産業の発展の背景にはIoTやAIという先進技術の発達がありました。これらの技術とロボット開発が融合することで、従来よりも便利なロボットの生産が進み、産業や社会の発展に貢献しています。

2-1 IoT

IoTとは「Internet of Things」の略で、日本語でいうと「モノのインターネット」となります。この場合の「モノ」は実質的に機械を指します。機械がインターネット通信を送受信する機能を有していて、外部から通信端末で指示を出したり、機械が感知した情報を通信端末が受信したりすることが可能になるという概念です。インターネット通信により機械の利便性を飛躍的に高める技術です。

このIoTをロボットに搭載し、ロボットとPCやモバイル通信端末が結びつくことで、ロボットを遠隔操作したり、より精度の高い検査や分析に活用したりできるようになりました。遠隔操作をさらに発展させて、一つのモバイル端末から多数のロボットを同時操作するような技術も開発されています。

2-2 AI

AIは人工知能を意味する言葉で、これもまた最先端技術の一つです。機械自身に知能、すなわち学習能力をもたせることができます。周囲の変化や人間の動作に反応したり、反復して使用することで学習させて、動作の正確性や効率性を高めたりすることが可能です。

AIとロボットはしばしば混同されますが、もともとのロボットは人工知能は有しておらず、決められたプログラムに従って動くことしかできませんでした。しかし現在では人工知能を持つロボットが次々と開発されています。

ロボットが人工知能を持つと、例えば次のような、より複雑な状況にもロボットを導入できるようになります。

  • 農業:気温や環境の変化に合わせて適切な対応を取る
  • 建設現場:工程に合わせて対応を変える、人の邪魔にならないように検査する
  • 物流施設:荷物の積載状況を踏まえて荷捌きし、作業の効率性を高める
  • 製造工場:気温により対応が異なるなど細かい技術が必要な作業にも導入可能に

3 ロボットの発展がもたらした変革の例

ロボットの進化は、産業や社会の発展にさまざまな領域で役立っています。その事例をあげるときりがありませんが、ここでは特に近年のロボットがもたらした変革について4つ事例を紹介します。

3-1 製造現場の飛躍的な発展

製造業の現場ではロボットの活用が以前からおこなわれていたこともあり、業種にあったロボットが多数開発されています。先に紹介したIoTやAI技術を取り入れたロボットの導入により、例えば次のような変革を製造現場にもたらしています。

  • 生産性の向上:疲労による能率低下の排除と24時間稼働の実現
  • 従業員の安全確保:3K(きつい、汚い、危険)作業の完全自動化
  • 品質向上:ミスや不良品の最小化
  • 製造ライン構築の自動化:多品種生産への対応力強化
  • 複数工程の自動化:従来の複数のロボットの仕事を1台で自動対応

さまざまな産業の製造現場においてロボットによる変革は進んでいますが、特に工程の多い自動車産業、精密な検査などが要求される医療産業などは、ロボット導入による高い効果が見込まれています。

3-2 物流の増加と人手不足を解決

物流業界もロボット開発によって著しく発展した業界です。従来型の物流施設では、荷物の仕分けや移動など多くのプロセスで人が介在していました。近年はインターネットショッピングの普及などを背景に、物流施設で留置・保管される荷物が大幅に増加しています。人材の雇用はこの増え続ける荷物の量に対応しきれず、人材不足が業界の課題となっていました。

そこでロボットが従来の人の作業を代替することで、人手不足の解決に一役かっています。例えばECサービス大手のAMAZONの物流施設では、自律型ロボットが自動で荷物を決められた場所に運搬してくれます。重い荷物を人間が運ぶ頻度が減るため、労働環境の改善や安全性の向上にも役立っているのです。

3-3 手術もロボットが行う時代に

日本は極端ではありますが、いくつかの先進国では多かれ少なかれ少子高齢化が進行しています。こうした国では先進医療の担い手となる優秀な医者の不足も課題となっているのです。

特に外科医は高い知識と器用な手先を兼ね備えている必要があるため、候補となる人材が限られていることから人材不足の懸念が大きい領域ですが、現代ではロボットが一部の腹腔鏡手術を担えるようになっています。

ロボットを取り入れた手術実績のある症例

  • 胆石症
  • 虫垂炎
  • 大腸がん
  • 胃がん
  • 前立腺がん
  • 直腸がん
  • 子宮がん

洗練されたロボットは、人間よりもはるかに精密・正確な動作が可能なため、今後ますます医療業界におけるロボットの活用は進んでいくと期待されます。

3-4 ロボットによるスマート農業

特に日本において担い手が不足しつつあるのが農業です。農業は人手不足もさることながら、もともと長時間の畑仕事、資材や収穫物の運搬など重労働が重なりがちな業態でした。

これらの課題を解決すべく、農業分野でのロボット進出も着実に進んでいます。例えばドローンによる農薬散布や、自動走行するトラクターなどがすでに実用化されています。収穫作業の一部を自動化するロボットも、畑の環境に合わせた複数のタイプが導入されているのです。

また自走するロボット台車にデータ収集機能を備え付けて、農作業の効率化や収穫予測などを立てられる機材の開発も進められています。

ロボットの導入によって農業の省力化が進めば、少ない人数で効率的な運営が可能な産業に進化していくでしょう。

4 ロボット産業に投資できるファンド2選

社会や産業の課題解決や発展に大きく貢献するロボット産業は、今後も高成長が期待できます。企業成長による収益が期待できるセクターとして、あるいは社会貢献の一環として、ロボット産業に投資したいと考えている人も少なくないでしょう。

そこでここからは、ロボット産業に投資できるファンドを2つ紹介します。自身の投資先選びの参考にしてください。

4-1 ロボット・テクノロジー関連株ファンド -ロボテック-

アクサ・インベストメント・マネージャーズが実質的に株式の運用を担う大和アセットマネジメントの投資信託です。野村證券大和証券など大手証券会社や、楽天証券・マネックス証券などのネット系証券、全国の多数の地銀と、多くの金融機関で購入可能なファンドです。

ファンド名の通り、世界のロボット関連産業の株式へ投資します。同ファンドの目論見書に基づくと、ここでいうロボット関連産業とは、ロボット・テクノロジーの開発や製造などにより、ビジネスを展開する企業を指します。

2022年8月末時点の主な期間別騰落率

期間 騰落率
1年間 -11.1%
3年間 +70.1%
5年間 +79.0%

*「期間別騰落率」の各計算期間は、基準日から過去に遡った期間とし、ファンドの「分配金再投資基準価額」を用いた騰落率を表しています。また実質的な運用管理費用を控除しています。
出所:大和アセットマネジメント株式会社「ロボット・テクノロジー関連株ファンド -ロボテック-2022年8月末月次レポート

2022年8月末時点を基準に、1年間のリターンは株式市場の不調も背景にマイナスでしたが、3年・5年の長期リターンは大きくプラスでした。ファンドに組み入れられたロボット関連産業が、長期で見ると順調に成長している様子がうかがえます。

大和アセットマネジメントが公開したレポートによると、新型コロナ以降、日本の産業用ロボットの受注額は堅調に推移しています。また、資源価格の高騰を背景としたコスト高が企業の収益を圧迫すると見込まれるなか、自動化によるコスト削減が進捗することも、ロボット産業にとっては成長機会となるとの見通しを示しています。
参考:大和アセットマネジメント株式会社「2022年6月16日 ロボテックの⾜元の運⽤状況と今後の⾒通し(2022年6⽉)

なお、2022年8月末時点の主な組み入れ銘柄は次の通りです。

2022年8月末時点の組入上位5銘柄

銘柄名 国・地域名 業種名 組入比率
クアルコム アメリカ 半導体・半導体製造装置 3.7%
キーエンス 日本 テクノロジー・ハードウェア 3.2%
インテュイティブサージカル アメリカ ヘルスケア機器・サービス 3.1%
アルファベット アメリカ メディア・娯楽 3.1%
アマゾン・ドット・コム アメリカ 小売 3.0%

出所:大和アセットマネジメント株式会社「ロボット・テクノロジー関連株ファンド -ロボテック-2022年8月末月次レポート

4-2 eMAXIS Neo ロボット

三菱UFJ国際投信が運用するインデックスファンドの一つに「eMAXIS Neo ロボット」があります。

株式などの指数の管理や、企業の信用力評価などをおこなうS&Pが運営する株式指数の一つに、ロボット関連の企業の株価によって構成される指数である「S&P Kensho Robotics Index」というものがあります。

同指数をはじめ、eMAXIS neoシリーズが参照する指数はいずれもAIを活用して銘柄選びを行っているのが特徴です。AIが膨大な開示資料を認識したうえで、テーマに沿った銘柄を自動的に取捨選択しています。eMAXSIS Neo ロボットはこの指数に連動することを目指して運用されるファンドです。

インデックスファンドのため運用コストが安いのが特徴で、運用管理費用は年率0.792%以内(税込)となっています。

こちらのファンドは三菱UFJモルガン・スタンレー証券三菱UFJ銀行三菱UFJ信託銀行といった三菱系の金融機関や、SMBC日興証券で購入可能です。また、松井証券SBI証券など複数のネット証券も販売しています。

2022年8月末時点の主な期間別騰落率

期間 騰落率
1年間 -7.6%
3年間 +52.5%
設定来 +48.3%

*「設定来」は2018年8月6日から2022年8月末までの騰落率。「期間別騰落率」の各計算期間は、基準日から過去に遡った期間としています。実質的な運用管理費用を控除しています
出所:三菱UFJ国際投信株式会社「eMAXIS neo ロボット2022年8月末月次レポート

直近1年程度は株価市場全体が不調だったこともあり、リターンはマイナスですが、3年程度の長期投資においては堅調なリターン実績を有しています。長期で見ると、ここまではロボット産業に関連する企業の成長機会をしっかりと捉えている様子が伺えます。

なお、2022年8月末時点の主な組み入れ銘柄は次の通りです。

2022年8月末時点の組入上位5銘柄

銘柄名 国・地域名 業種名 組入比率
IROBOT CORP アメリカ 耐久資本財・アパレル 4.9%
PROCEPT BIOROBOTICS CORP アメリカ ヘルスケア機器・サービス 4.1%
AEROVIRONMENT INC アメリカ 資本財 4.0%
LINCOLN ELECTRIC HOKDINGS アメリカ 資本財 4.0%
APPLIED INDUSTRIAL TECH INC アメリカ 資本財 4.0%

出所:三菱UFJ国際投信株式会社「eMAXIS neo ロボット2022年8月末月次レポート

IROBOTのような正にロボット開発の専門企業にくわえ、APPLIED INDUSTRIAL TECHなどのように製造業や物流施設向けに産業用機械の開発・導入をおこなう機械セクターの企業などが組み入れられています。

まとめ

ロボット産業は社会や産業のニーズを背景に、早いペースで発展が進んでいます。特に近年はAIやIoTといった他の先進技術も取り込むことで、従来よりも複雑な作業を高いレベルでおこなうロボットが実用化されてきているのです。

多くの産業が人材不足や、加重労働による人的負担を課題とする中で、ロボットの普及が産業や社会の発展を後押しすると期待されます。ロボット産業のように高成長で社会貢献が期待できるセクターに着目するのも投資先を考えるうえでの一つの選択肢といえるでしょう。

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伊藤 圭佑

資産運用会社に勤める金融ライター。証券アナリスト保有。 新卒から一貫して証券業界・運用業界に身を置き、自身も個人投資家としてさまざまな証券投資を継続。キャリアにおける専門性と個人投資家としての経験を生かし、経済環境の変化を踏まえた投資手法、投資に関する諸制度の紹介などの記事・コラムを多数執筆。