株式投資において使用されるインジケーターは、大きくトレンド型とオシレーター系に分けることができますが、そのどちらにも区分できる使い勝手の良いインジケーターがあります。それがMACD(マックディー)です。
MACDは、その使い勝手の良さから機関投資家に属するプロトレーダーにもよく利用されています。そこで今回は、株式投資におけるMACDを利用する手法について、チャートから具体例を用いて解説します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- MACDについて
1-1.MACDの算出方法 - MACDの売買サイン
2-1.ゴールデンクロス
2-2.デッドクロス
2-3.ヒストグラム
2-4.ダイバージェンス - MACDを使用したトレード手法
3-1.もっともシンプルなトレード手法
3-2.MACDをフル活用する手法
3-3.他のインジケーターとも組み合わせやすいMACD - まとめ
1.MACDについて
MACDとは、「Moving Average Convergence Divergence」の略で、日本語では「移動平均収束拡散手法」と訳されます。
「マックディー」と呼ばれるこのインジケーターは、テクニカル分析やマーケットタイミングの研究分野における重要人物であるジェラルド・アペル氏によって1980年ごろに開発されました。
MACDはテクニカルインジケーターの中では比較的新しい概念ですが、その使い勝手の良さや精度の高さから多くのトレーダーに利用されています。
MACDは移動平均線から派生して生まれた、相場の勢いを確認するために用いられるオシレーター系にもトレンド系にも分類されるテクニカルインジケーターで、短期の移動平均線と中長期の移動平均線の動きを利用して、買いと売りのタイミングをジャッジする方法です。
なお、MACDで利用されているのは「EMA(指数平滑移動平均線)」と呼ばれる移動平均線で、新しい価格のほうをより重要視するという見方です。「SMA(単純移動平均線)」よりもさらに直近の価格に重点を置いています。
そのため、MACDは相場の値動きに対する反応が比較的早く、トレンドの転換ポイントを予測しやすいというメリットがあります。
1-1.MACDの算出方法
MACDは2つの移動平均線によって構成されており、各移動平均線は「MACDライン」と「シグナルライン」と呼ばれ、両者の距離を棒グラフによって表したものを「ヒストグラム」と言います。
MACDでは、基本的にこの3つを判断材料として、取引を行います。なお、下記はMACDの算出方法です。
MACDライン
短期EMA(指数平滑移動平均線)-長期EMA
シグナルライン
MACDのSMA(単純移動平均線)
ヒストグラム
MACDライン-シグナルライン
なお、期間設定については、短期EMAは12日間、長期EMAは26日間、シグナルは9日間とするのが一般的とされています。
MACDを利用したことがない方などは、まずこの期間設定で利用してみることをおすすめします。
2.MACDの売買サイン
MACDを使用する際の売買サインの見方を解説します。
2-1.ゴールデンクロス
前述したように、MACDはMACDラインおよびシグナルラインによって構成されており、両者がクロスする現象が発生した際に売買ポイントを見極めるという方法が、最も一般的です。
ゴールデンクロスとは、MACDがシグナルを下から上へ抜ける現象のことで、ゴールデンクロスが確認された際は、相場が下落から上昇に変わる「買いサイン」と見なします。
なお、両者がクロスする角度も重要な判断材料であり、角度がより深ければ深いほど、信頼性が高い買いサインと言うことが可能です。
2-2.デッドクロス
デッドクロスはゴールデンクロスと真逆の現象で、MACDがシグナルを上から下へ抜ける現象を言います。
MACDにおいてデッドクロスが確認された際は、相場が上昇から下落に変わる「売りサイン」と見なせるため、ここがエントリーのポイントとなります。
なお、デッドクロスも、両者がクロスする角度がより深ければ深いほど信頼性が高い売りサインと見なせます。
2-3.ヒストグラム
前述したように、ヒストグラムとは「MACDライン-シグナルライン」という公式で導き出される棒グラフで、MACDではこのヒストグラムも売買サインとして利用可能です。
ゴールデンクロス現象が確認された際は、ヒストグラムの値はマイナスからプラスに変わります。また反対に、デッドクロス現象が確認された際は、ヒストグラムの値はプラスからマイナスに変わる仕組みです。
この仕組みを利用すると、ヒストグラムがマイナスからプラスになった際は「買いサイン」、プラスからマイナスになった際は「売りサイン」と考えることが可能です。
これ以外にも、ヒストグラムが上方向に伸びている際は上昇トレンドが、下方向に伸びている際は下降トレンドが起こっていると考えることができるほか、長さが長いほどトレンドの勢いが強いと見なせます。
2-4.ダイバージェンス
ダイバージェンスとは、実際の相場の動きとMACDの動きが逆行する現象で、具体的には、相場が上昇傾向にあるにもかかわらず、MACDが下降しているといった状況を言います。
ダイバージェンスの発生は相場が変わるサインと言われ、相場は上昇傾向で、MACDは下降傾向なら「売りサイン」、反対に相場は下降傾向で、MACDは上昇傾向なら「買いサイン」と見なせます。
つまり、トレンド発生の際にダイバージェンスが確認された際は、十分な注意が必要と言えます。
3.MACDを使用したトレード手法
MACDを使用した具体的なトレードの仕方についても解説します。
3-1.もっともシンプルなトレード手法
2種類の移動平均線とヒストグラムで構成されるMACDは、トレード初心者の方にとっては要素が多くわかりづらいといった側面があります。
そのような場合には、最もシンプルなトレード手法として、MACDとシグナルラインのゴールデンクロスとデッドクロスを利用すると言う方法があります。
ゴールデンクロス、デッドクロスを売買サインとする手法は非常にシンプルで、買いでエントリーしたい銘柄は、ゴールデンクロスが発生したときにエントリー、売りでエントリーしたい銘柄は、デッドクロスが発生したときにエントリーをします。
この手法を利用する場合はヒストグラムは使用しません。
3-2.MACDをフル活用する手法
MACDとシグナルラインのゴールデンクロス、デッドクロスに加えて、ヒストグラムもトレードに利用する手法が、MACDをフル活用する手法です。
ここでは、具体的なトレード手法を売りのエントリーをする前提で解説します。例として、東証一部上場のファーストリテイリングのチャートを用います。
売りエントリーをする場合、まずはMACDとシグナルラインのデッドクロスを待ちます。デッドクロスの発生は、以下のチャートのようにMACD(青い線)がシグナル(オレンジの線)を上から下へ抜けたタイミングです。
次にヒストグラムでエントリーのタイミングを測ります。
デッドクロスの発生時にはヒストグラムは一番低くなっているので、この場合はヒストグラムの拡大を確認してからエントリーをします(黄色の〇)。
そして、前のヒストグラムよりも大きくなった事を確認してエントリーをします(黄色の〇)。
決済に関しては、ヒストグラムを参考にしながら、ヒストグラムのグラフがひとつ前のグラフを越えなかった場合に、決済をするなどします(赤の〇)。
この例では、64,500円で売りエントリーをして、61,500円で決済ができ、1株当たり3,000円の利益確定ができます。
3-3.他のインジケーターとも組み合わせやすいMACD
MACDは、その他のインジケーターと組み合わせて利用しやすいインジケーターでもあります。特にMACDと相性が良いと言われているインジケーターには以下のようなものがあります。
- ストキャスティクス
- RSI
- ボリンジャーバンド
- 移動平均乖離率/エンベロープ
もちろん他のインジケーターとも併用することができるため、MACDの利用に慣れてきた後に興味のあるインジケーターと組み合わせてみると良いでしょう。
まとめ
MACDは基本的な売買サインだけでも十分に実践使用に耐え得るものです。また、多くのプロトレーダーが利用していると言うことは、MACDのサインは市場に大きな影響を与えるトレーダーも受け取っていると言うことになります。
このようにインジケーターを利用する際は、機関投資家がどのようなインジケーターを利用しているのかと言う点も考慮に入れて選択すると良いでしょう。
- 外国株(米国株など)が買えるネット証券会社
- IPO投資に強い証券会社、少額からIPOに参加できるサービス
- 25歳以下の現物株式の取引手数料が実質0円の証券会社
- 大手証券会社が提供している株式投資サービス
- 少額で株式投資ができるサービス
中島 翔
最新記事 by 中島 翔 (全て見る)
- ユニクロ運営会社に見るサステナビリティ経営|ファーストリテイリングの環境・社会貢献策を解説 - 2024年11月29日
- 急成長するDePIN、ソーラーファーム×ブロックチェーン 「Glow」が描く持続可能なエネルギーの未来 - 2024年11月27日
- ユニリーバのサステナビリティ戦略 – ブロックチェーンで実現する環境保護とトレーサビリティ - 2024年11月27日
- 脱炭素に向けた補助金制度ー東京都・大阪府・千葉県の事例 - 2024年10月22日
- 韓国のカーボンニュートラル政策を解説 2050年に向けた取り組みとは? - 2024年10月7日