不動産投資ローンを滞納すると担保不動産を手放すことになったり、最終的に自己破産することになる場合もあります。
そのような状況にならないためには、不動産投資ローンを滞納してしまった場合の流れを知り、その原因となり得るリスクを分析して、事前に対策をしておくことが大切です。
本記事では、不動産投資ローンを滞納した場合の流れと、投資前に確認したいリスクと対策について解説していきます。
目次
- 不動産投資ローンを滞納したら
1-1.金融機関からの督促、催告
1-2.期限の利益の喪失
1-3.代位弁済、債権譲渡
1-4.任意売却、競売
1-5.自己破産、個人再生 - 不動産投資で事前に確認したいローンのリスクと対策
2-1.空室リスクを抑えるため賃貸需要を調査する
2-2.ローン滞納リスクを軽減するため収支計画を練る
2-3.自己破産リスクを抑えるため借り過ぎや購入価格に注意する - まとめ
1.不動産投資ローンを滞納したら
不動産投資ローンを滞納すると、次のような流れで督促や競売、自己破産などの手続きが進行していきます。
- 金融機関からの督促、催告
- 期限の利益の喪失
- 代位弁済、債権譲渡
- 任意売却、競売
- 自己破産、個人再生
以下で詳しくみていきましょう。
1-1.金融機関からの督促、催告
不動産投資ローンを滞納して1カ月から3カ月程度までは、金融機関から督促や催告がおこなわれます。
電話や書面によって、不動産投資ローンの返済を求められます。返済できない事情の説明を依頼する通知がある場合もあります。
このような督促によっても返済がなされないと、さらに厳しい内容の催告書が送られて来ます。催告書では、一般的に、滞納分の一括返済を求め、滞納が続く場合、競売などの法的手続きに移行する旨などが通知されます。
1-2.期限の利益の喪失
不動産投資ローンの金銭消費貸借契約では、債務者は、借りた金銭を決められた期日ごとに分割して返済することができることになっています。このような債務者の権利を期限の利益といいますが、返済を滞納することでこの利益を失います。
滞納後3カ月から6カ月程度で、金融機関から期限の利益を喪失通知が届き、残債の一括返済を迫られることになります。
月々の返済を滞納している状況では残債の一括返済は困難であることが多く、基本的には担保不動産の売却代金による一括返済という方向に進んでいくことになります。
1-3.代位弁済、債権譲渡
不動産投資ローンでは、借入の際、保証会社と保証委託契約を締結していることが多いといえます。その場合、期限の利益を喪失すると、保証会社が債務者に代わって金融機関に代位弁済をおこないます。そうすると、今度は保証会社が債務の一括返済を求めてくることになります。
または、金融機関がサービサーと呼ばれる債権回収専門会社に債権を譲渡する場合もあります。その場合にはサービサーが債務の返済を求めてくることもあります。
1-4.任意売却、競売
債務の一括返済を求められる段階になると、担保不動産の売却代金による返済を検討することになります。金融機関や保証会社などの協力を得て、債務者の意思で売却をする方法が任意売却です。
他方、金融機関や保証会社などの債権者が、裁判所に対して、債権の担保となっている不動産を強制的に売却する法的手続きを申し立てる方法が競売になります。
競売になると、債務者の意思や都合に関わらず、裁判所が職権で強制的に担保不動産を売却します。通常、不動産投資ローンを3~6カ月程度滞納すると、競売手続きに移行します。
1-5.自己破産、個人再生
任意売却や競売によって担保不動産を現金化しても債務を全額返済できない場合、金融機関などが任意整理に応じなければ、自己破産や個人再生手続きをおこなうことになります。
自己破産、個人再生は、共に裁判手続きを通じて債務の全額または一部を免除してもらう手続きです。自己破産、個人再生は、債務の免除を法的に確定できる反面、生活に必要な財産以外のものを処分されてしまったり、新たにローンを組むことが一定期間制限されたりするデメリットがあります。
【関連記事】不動産ローンの滞納、個人再生と任意売却の違いやメリット・デメリットは?
2.不動産投資で事前に確認したいローンのリスクと対策
不動産投資ローンを滞納すると、担保に入れた収益物件を手放すことになる恐れがあるだけでなく、自己破産をすることになる可能性があります。
それでは、不動産投資ローンのそのようなリスクを抑え、軽減するために、ローンを組む前にどのような対策をおこなうことができるのか、具体的な対策をみて行きましょう。
2-1.空室リスクを抑えるため賃貸需要を調査する
収益物件では空室が生じるとその分家賃収入が減るため、不動産投資ローンの返済に充当する資金源が減ることになり、返済の滞納を引き起こすおそれがあるといえます。
このような空室リスクを抑えるために、購入前に、その物件の賃貸需要を綿密に調査するようにしましょう。立地の側面からどれぐらいの賃貸需要があるのか、そして、物件の築年数や床面積、間取りなど、類似の物件の家賃をポータルサイトなどで調べ、現状の家賃は相場と比較して適正かどうかをチェックしてみましょう。
2-2.ローン滞納リスクを軽減するため収支計画を練る
不動産投資では、空室リスクの他にも大規模な修繕費が必要となるリスクや老朽化による家賃下落リスク、返済利率の上昇リスクなどがあります。これらのリスクが実際に顕在化すると、キャッシュフローを圧迫し、不動産投資ローンの返済が厳しくなる可能性があります。
キャッシュフローが悪化してローンの返済を滞納するリスクを軽減するには、事前に十分な収支計画を練ることが重要です。金利、返済期間などの融資条件、家賃収入に対する返済比率などを考慮して、家賃収入に一定のストレスをかけてもキャッシュフローがマイナスにならないようにしましょう。
2-3.自己破産リスクを抑えるため借り過ぎや購入価格に注意する
不動産投資ローンを滞納した場合、ローンを組んで担保に入れた収益不動産を売却して一括返済をすることになりますが、それでも返済できない場合は、自己破産などのリスクがあります。
このようなリスクを抑えるためには、担保評価額を大きく上回るような多額の不動産投資ローンを組まないようにしましょう。少なくとも、購入価格が相場よりも高額である収益物件を購入する際は、慎重に検討しましょう。
まとめ
不動産投資ローンを滞納すると、担保に入れた収益物件を手放すことになる恐れがあるだけでなく、自己破産をすることになる可能性もあります。
滞納を防ぐには、収支計画に余裕をもって不動産投資ローンを組むことが重要です。また、家賃収入の減少を引き起こす空室リスクを抑えるために、賃貸需要を念入りに調査するようにしましょう。
自己破産を回避するには、最悪の場合でも、収益物件を売却してローンを全額返済できるように、借り過ぎや相場よりも高い物件の購入は慎重に判断していくことが大切です。
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佐藤 永一郎
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