不動産相続に必要な手続き・費用・税金は?名義変更前の注意点も

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相続の中でも不動産の名義変更(所有権移転登記)は、必要書類が多く手続きが煩雑であるという声も少なくありません。

一見複雑に見える不動産相続ですが、相続全体の流れや必要書類・申請方法などをあらかじめおさえておくことで、登記の手順が理解できスムーズな相続ができる可能性が高くなります。

本記事では相続の流れ、不動産相続に必要な手続き・費用、所有権移転登記を行う前の注意点を解説していきます。

目次

  1. 相続の流れ
    1-1.相続開始・死亡届の提出
    1-2.遺言書の有無を確認
    1-3.遺産の調査・評価
    1-4.相続放棄・限定承認(3ヶ月以内)
    1-5.被相続人の準確定申告(4ヶ月以内)
    1-6.遺産分割協議
    1-7.遺産を分配・相続
    1-8.相続税の計算・申告・納付(10ヶ月以内)
  2. 不動産相続で必要となる手続き・書類・費用とは
    2-1.不動産相続の手続き方法は3種類
  3. 不動産の名義を変更する前の注意点
    3-1.不動産の所有者を確認する
    3-2.土地の境界線を明確にしておく
  4. まとめ

1.相続の流れ

相続開始から相続税の計算・申告・納付までの流れは以下の通りとなります。

  1. 相続開始・死亡届の提出
  2. 遺言書の有無を確認
  3. 遺産の調査・評価
  4. 相続放棄・限定承認(3ヶ月以内)
  5. 被相続人の準確定申告(4ヶ月以内)
  6. 遺産分割協議
  7. 遺産を分配・相続登記
  8. 相続税の計算・申告・納付(10ヶ月以内)

1-1.相続開始・死亡届の提出

被相続人が亡くなった日に相続開始となります。亡くなってから7日以内に被相続人が亡くなった場所又は出生地、届出人の所在地を管轄する役所に死亡届を提出します。

1-2.遺言書の有無を確認

被相続人の遺言書の有無を確認します。遺言書がある場合には基本的に遺言書通りに相続を行いますが、遺産分割協議で相続人全員の合意が得られている場合には、遺言書とは異なる内容で相続することが可能です。

1-3.遺産の調査・評価

被相続人が残した全ての遺産を調査します。生前取引のあった銀行や証券会社などの金融機関、保険会社や不動産会社などに問い合わせ金融商品・保険契約など遺産の有無を確認します。

遺産の評価は基本的に相続税法で時価により評価する事が定められていますが、判断が難しいため、国税庁が示す評価基準である「財産評価基本通達」を参考に評価するか、税理士に依頼する流れとなります。

不動産の場合、土地は「路線価方式」(一部の地域は倍率方式)、建物は固定資産税評価額によって評価を行います。

1-4.相続放棄・限定承認(3ヶ月以内)

遺産の相続を放棄したい場合には、相続開始から3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄の手続きを行います。

遺産の中にローンや借金など債務が含まれおり総額が分からない時には、相続で得た財産の範囲内で債務を受け継ぐ「限定承認」の手続きを行う事も可能です。相続放棄と同様に相続開始から3ヶ月以内に手続きを行います。

相続放棄は相続人1人で申し立てられますが、限定承認は相続人全員で申し立てなければならないといった違いがあります。

1-5.被相続人の準確定申告(4ヶ月以内)

相続開始の翌日から4ヶ月以内に、被相続人が亡くなった年の1月1日から亡くなった日までの所得税を計算し、申告・納付する「準確定申告」を行います。

1-6.遺産分割協議

相続する遺産を誰に・どのように・どの位の割合で分割するかを決定するのが「遺産分割協議」です。

遺産分割協議は相続人全員が出席する必要があり、未成年者や判断能力が乏しい方(認知症・精神障害など)には後見人を立てなくてはいけないといった決まりがあります。

相続人全員で遺産分割の方法や割合などを話し合い、最終的には全員が合意した内容で分割を行います。

協議の後には取り決めた内容をまとめた「遺産分割協議書」を作成します。遺言書又は遺産分割協議書は、後の相続手続きにおいて必要となります。

【関連記事】遺産分割協議書を作る手順は?相続の開始から相続財産の確認方法まで解説

1-7.遺産を分配・相続

遺言書や遺産分割協議などに応じて遺産を分配します。不動産の場合は、法務局で相続する物件の所有権移転登記を行う事で被相続人から相続人に所有権が受け継がれます。

1-8.相続税の計算・申告・納付(10ヶ月以内)

相続開始から10ヶ月以内に相続税を計算・申告・納付します。相続税は基本的に基礎控除額である「3000万円+600万円×法定相続人の数」を超えた時に支払い義務が生じます。ただし配偶者控除・未成年者控除など各種控除により納付義務が生じないケースもあります。

相続税について不明点がある場合には、税理士への相談も検討してみましょう。税理士報酬がかかってしまう点はデメリットですが、複雑な税計算や確定申告の代行依頼、適用したい税控除の特例の相談などもできるため、報酬以上の税制メリットを受けられるケースも少なくありません。

不動産相続に強い税理士を探す場合、「税理士紹介サイト」を利用して紹介してもらうという方法もあります。税理士紹介サイトでは、コーディネーターが相談者のニーズに合った税理士をピックアップし、面談を調整してくれます。

例えば、無料で利用できる「税理士ドットコム」は、全国5,900名の税理士の中から希望に沿った税理士を紹介してもらえるウェブサービスです。複数の税理士を比較することができ、「費用はいくらかかるか?」「どんな税理士を選ぶべきか?」といった税理士を選ぶ際の相談も可能となっています。

2.不動産相続で必要となる手続き・書類・費用とは

不動産登記で必要となる書類・費用は以下の通りです。

  • 登記申請書
  • 遺言書又は遺産分割協議書
  • 遺産分割協議書には相続人の印鑑証明書が必要
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本又は除籍謄本
  • 不動産を相続する方々の全員の現在の戸籍謄本
  • 不動産を相続する人全員の住民票の写し
  • 課税証明書(課税明細)の写し又は固定資産評価証明書の原本
  • 収入印紙(登録免許税)
  • 委任状(代理人が申請する場合)
  • その他の費用:司法書士や税理士など専門家への報酬、登記手数料など

登記申請書は法務局のホームページからダウンロードする事が出来ます。遺言書や遺産分割協議など、相続の内容によって申請書の書式が異なるためご注意ください。

なお、「課税価額※×0.4%」(100円未満は切り捨て)の額の登録免許税を収入印紙として貼付することで納付します。

課税価額は不動産の所在地を管轄する自治体が定めた固定資産課税台帳の評価額の合計で、自治体から送付された「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)納税通知書の課税明細書」又は自治体が発行する「固定資産評価証明書」(有料)で確認できます。

上記の書類を準備し、自身で手続きを行う場合には3種類の方法から選ぶ事になります。

2-1.不動産相続の手続き方法は3種類

不動産の登記はオンライン・郵送・法務局の窓口で直接申請する、3種類の方法があります。

法務局で申請する

法務局で申請する場合、月曜日から金曜日の8時30分~17時15分の時間内に不動産の所在地を管轄する法務局に書類を持参し、不動産登記の窓口に向かいます。平日の昼間に行くことが難しい場合には、オンライン又は郵送で申請しましょう。

司法書士といった専門家を代理人に選定し、代行してもらうことも可能ですが約5~6万円の費用がかかる点に注意しましょう。

不明な点がある場合、申請を行う前に法務局に相談を行う事ができますので、管轄の法務局に問い合わせてみましょう。

郵送で送付する

郵送で申請する場合、申請書はA4の用紙を使用し、PC又は手書きで入力します。黒のボールペンではっきりと記入しましょう。鉛筆は使用不可となります。申請書は他の添付情報と共に左とじで封筒に入れます。

申請書を入れた封筒の表面には「不動産登記申請書在中」と記載し、書留郵便で送付します。

登記完了時に返還してほしい書類や登記完了証の郵送を希望する際は、宛名を記載した返信用封筒及び書留郵便のための切手を同封しましょう。

2021年6月時点でA4の用紙を送付する際の定形外郵便物は、書留郵便は重さ100g以内の場合、一般書留(損害があった時の賠償額10万円以内のケース)575円、簡易書留(損害があった時の賠償額5万円以内)で460円となっています。

オンラインで申請する

オンラインで登記を行う際には、「登記・供託オンライン申請システム」のサイトにて専用ソフトを利用して申請を行います。

利用できる時間は平日の8時30分から21時までとなっており、昼間に直接法務局に行くことが難しい方でも申請が可能です。

オンライン申請では添付できる書類が定められていますが、不動産登記の場合には全ての添付書類をオンラインで送付する事ができません。(2021年6月時点)

添付書類は郵送で送付する事になり、郵送の場合と同様に郵送料金がかかってしまうことに留意しましょう。

書類の郵送は個人情報を含む重要な書類を送付する事になりますので、書留郵便や配達履歴が分かる方法を選ぶとトラブルがあった場合に対応できます。

3.不動産の名義を変更する前の注意点

不動産相続において所有権移転(名義変更)の手続きを行う前には、下記2点に注意しましょう。

  • 相続する不動産の所有者を確認する
  • 土地付きの不動産は境界線を明確にしておく

3-1.不動産の所有者を確認する

不動産の名義変更を行う前に、相続対象となっている不動産の所有者(名義人)を確認しておきましょう。

例えば被相続人が親である場合、親が祖父母の持ち家を受け継いだ後に相続登記を行っていないというケースが存在します。親が不動産登記を行っていない時には相続人が増え多くの書類が必要となり、登記の方法が通常の場合より複雑になってしまいます。このような事例を「数次相続」と呼びます。

所有者は、管轄の法務局で「登記事項証明書」を閲覧する事によって分かります。登記事項証明書は法務局の窓口又はオンラインで申請が可能で、窓口での発行手数料は600円、オンライン請求で証明書を郵送で受け取る場合の手数料は500円となっています。

事前に所有者を確認しておくことで、相続の関係性が明確となりスムーズに手続きができる可能性が高くなります。

数次相続であることが分かった時には、まずは法務局に相談に行き現状を説明してみましょう。場合によっては司法書士や土地家屋調査士など専門家に依頼する事になります。

3-2.土地の境界線を明確にしておく

土地を相続する場合、取得してから年数が経過している際には、隣が引っ越しをしているケースも多く、隣地との境界が曖昧になっている事例が存在します。

中には法務局の登記事項証明書に記載されている土地の面積と実際の面積が異なる事があり、不動産の価額にも影響を及ぼします。隣地との境界がはっきりしない時には隣の家の住人と話し合い、境界線を明確にしておきましょう。

登記事項証明書に記載されている面積が古い場合には、測量士に正確な面積を測量してもらい、登記の際に申請を行いましょう。

まとめ

不動産の相続は、遺言書の内容や遺産分割協議で話し合った結果を遺産分割協議書としてまとめた後、相続税の納付期限である相続開始から10ヶ月以内に他の遺産と同様に手続きを行います。

必要書類を集め、オンライン・郵送・法務局の窓口で申請する3つの方法から相続人にとって都合の良い方法で行います。

この記事を参考に不動産相続の必要書類や費用、手順を把握し、スムーズな不動産相続を行いましょう。

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田中 あさみ

経済学部在学中に2級FP技能士(AFP)の資格を取得。ライターとして不動産投資を含む投資や年金・保険・税金等の記事を執筆しています。医療系の勤務経験がありますので、医療×金融・投資も強みです。HEDGE GUIDEでは不動産投資を始め、投資分野等を分かりやすくお伝えできるよう日々努めてまいります。