不動産相続の話し合いで気を付けるポイントは?分割方法やトラブルの対策も

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相続財産の中でも不動産は評価や分割が難しく、遺産分割協議でトラブルが起こりやすい財産です。

不動産を相続することになった方や、将来不動産を相続する予定の方の中には、「分割にはどのような方法があるのか」「トラブルにならないためには?」と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、不動産相続の流れ、不動産相続の話し合いで気を付けるポイント、遺産分割協議での注意点をお伝えしていきます。

※本記事は2022年6月時点の情報に基づいて書かれています。国税庁の最新情報など、ご自身でもよくお調べの上でご判断下さい。

目次

  1. 不動産相続の流れ
  2. 不動産相続の話し合いで気をつけるポイント4つ
    2-1.遺産分割の評価額
    2-2.不動産の分割方法
    2-3.不動産相続の税金
    2-4.各相続人の事情・意向
  3. 遺産分割協議での注意点
  4. まとめ

1.不動産相続の流れ

不動産を含む相続の手順は、大まかに下記のような流れになります。

  1. 遺言書の有無を確認
  2. 不動産査定などで相続財産を調査し、相続額を把握する※相続放棄・限定承認を行う場合は相続発生から3ヵ月以内に申し立てを行う
  3. 遺言書が無い場合や内容変更する場合は遺産分割協議を行い、不動産の分割方法を決める
  4. 遺産分割の内容に沿って所有権を変更する
  5. 相続税を納める

相続は、被相続人(相続財産を残して亡くなった人)が亡くなることで自動的に開始します。まずは相続人や身近な人が遺言書の有無を確認し、被相続人の全ての財産を調査・把握します。

被相続人が亡くなったことを知った日から3ヶ月以内に相続放棄・限定承認の手続きをしないと、自動的に相続を承認した(単純承認)とみなされます。相続放棄・限定承認を検討している方は期限に注意しましょう。

基本的に遺言書がある場合は遺言書通りに、遺言書が無い場合は遺産分割協議で誰が・何を・どのくらい相続するかを取り決めます。

遺産分割協議で話がまとまらない時、どう分けたら良いのか分からないケースでは法定相続(民法で定められた相続人・割合)を参考にし、意見が別れる場合には再度話し合いを行います。当事者間で定まらない場合には、遺産分割調停を家庭裁判所に申し立てるケースもあります。

遺産の分配割合・方法などが決定した際には、それぞれの相続財産を所定の手続きに従い、名義を被相続人から相続人に変更します。

不動産の場合は所在地を管轄する法務局で、相続登記(所有権移転登記)の手続きを行います。

相続財産の価額が基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合には、相続開始の翌日から10ヶ月以内に相続税を計算・申告・納付します。(※参照:国税庁「相続税の計算」)

2.不動産相続の話し合いで気をつけるポイント4つ

不動産相続の話し合い(遺産分割協議)で注意すべきポイントは、主に以下の4つです、

2-1.遺産分割の評価額

相続財産の評価基準を示した「財産評価基本通達」では、遺産分割における不動産の評価額は基本的に「時価」で評価すると記載されています。(※参照:国税庁「法令解釈通達>(評価の原則)」)

不動産の時価を知る方法の1つとして、不動産会社による査定があります。不動産会社によって査定額のばらつきが生じることがありますので、まずは複数の不動産会社に査定を依頼しそれぞれの査定価格を比較してみましょう。

以下、複数の不動産会社へ査定依頼ができる不動産一括査定サイトの一覧です。物件情報を登録するだけで複数社の査定が受けられ、売却するかどうかの判断は査定後に決定することができるため、まずは価格を知りたい方にも適したサービスとなっています。

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ただし、不動産会社の査定結果によっては、遺産分割協議で「査定額では納得できない」と言う相続人がいるケースもあります。このような場合、不動産鑑定士による鑑定を受けることも検討されてみると良いでしょう。

不動産鑑定士が行った不動産鑑定は公的証明力や法的責任があるため、鑑定結果の信ぴょう性は不動産査定よりも高いと言えます。しかし、鑑定には数十万円のコストがかかるため、鑑定費用をどのように捻出するのかあらかじめ考慮しておくと良いでしょう。

なお、相続税の計算時には土地は路線価又は倍率方式、建物は固定資産税評価額で評価します。売却して現金化しない場合は、不動産の時価で相続税が決まるわけではないという点に注意しておきましょう。

2-2.不動産の分割方法

相続不動産には4種類の分割方法があり、それぞれメリット・デメリットがありますが、分割方法で最も後のトラブルが起こりやすいのは共有分割です。

  • 現物分割:現物のまま相続する
  • 換価分割:売却し現金化して分配する
  • 代償分割:1人が代表して相続人となり他の相続人に金銭・財産を譲る
  • 共有分割:相続人同士の共同名義とする

共有分割では一つの不動産の名義が複数になってしまうことで、売却や賃貸に所有者全員の合意が必要となり、後の不動産の取り扱いに関して不便になります。また、二次相続が起きた際にはさらに所有権が複雑化してしまうという点もデメリットです。

トラブルを避けるためには、遺産分割協議書に不動産相続後の活用方法を記載しておく、弁護士に相談するなどの方法を検討しましょう。

2-3.不動産相続の税金

一定の要件に当てはまる時は「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」によって最高3,000万円まで控除することができます。一定の耐震基準を満たすものである、相続開始から3年を経過する年度において12月31日までに売却するなどの要件があるため、適用可能かどうか確認しておきましょう。(※参照:国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」)

加えて、相続税は基本的に「3000万円+600万円×法定相続人の数(基礎控除額)」を超えた時に納める義務が生じますが、「未成年者の税額控除」や「配偶者の税額の軽減」など相続人によって控除されることがあります。

税金が気になる場合には上記の控除制度を踏まえて遺産分割を相談することで、税金の負担をおさえられる可能性があります。なお、換価分割で不動産売却の利益が出た場合には譲渡所得税が課される可能性がある点に留意しておきましょう。

これらの税控除を適切に適応するためには、相続に特化した税理士などの専門家に相談することも有効です。例えば、「税理士紹介エージェント」のようなインターネット税理士紹介サービスの利用を検討されてみると良いでしょう。税理士業界に精通したエージェントが、分野ごとに、顧客のニーズに合った税理士を登録税理士の中からピックアップして紹介してくれます。特に特定の分野における専門性の高い税理士を探している人には、有用なサービスとなります。

2-4.各相続人の事情・意向

相続財産は各相続人の事情を汲み相続人同士で、分割方法や相続人を決めることが大切です。遺産分割協議のポイントは「相続人全員が合意する事」であるため、最終的に相続人全員の合意が得られた場合には、遺言書や法定相続分通りの相続でなくても構いません。

また、不動産自体に思い入れがある場合はその他の相続財産と金銭的なバランスを取ることでトラブルを回避できることがあります。例えば、被相続人と相続人1名が同居しており「被相続人が亡くなった後も同じ家に住み続けたい」と希望した場合、代償分割を行うことで他の相続人の方の合意を得やすくなるでしょう。

遺言書で相続人の一人が不動産の相続人に指定されているものの、遠方に住んでいて管理ができない場合や「継ぎたくない」と拒否した時には遺産分割協議で話し合い、全員が合意した際には他の相続人を決める事も可能です。

3.遺産分割協議での注意点

遺産分割協議には一定のルールがあります。主には以下の4点です。

  • 相続人全員が出席する
  • 未成年者や意思決定が難しい方には後見人を選任する
  • 全員の合意が得られた場合に成立する
  • 協議後には遺産分割協議書を作成する

意思決定が難しい方とは、認知症の方、知的・精神障がいを持つ方で意思能力が無いと判断された人を指します。

遺産分割協議書にはフォーマットはありませんが、相続不動産の所在地や価額、被相続人の氏名と住所、死亡日、相続人の氏名・住所などを記載し、押印・署名を行います。相続登記の際に、遺産分割協議書(又は遺言書)と押印に使った印鑑の印鑑証明書が必要となります。

遺産分割協議書の例

まとめ

不動産相続ではトラブルが起こる事もありますが、各相続人の事情や意思を尊重し、分割方法や評価額について慎重に話し合いましょう。遺言書や法定相続分などの形式だけにとらわれず、それぞれの事情なども考慮しながら話し合いを進めていくことがポイントとなります。

不動産の時価の評価は難しく、相続時点で行った査定結果に対して後の不公平感を招くケースもあります。複数の不動産会社へ査定を依頼したり、鑑定士への不動産鑑定も検討されてみると良いでしょう。

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田中 あさみ

経済学部在学中に2級FP技能士(AFP)の資格を取得。ライターとして不動産投資を含む投資や年金・保険・税金等の記事を執筆しています。医療系の勤務経験がありますので、医療×金融・投資も強みです。HEDGE GUIDEでは不動産投資を始め、投資分野等を分かりやすくお伝えできるよう日々努めてまいります。