相続の話し合いの中でも、不動産は評価や分割が難しいためトラブルが起こりやすい相続財産の一つです。
遺産の中に不動産がある場合、固定資産税の評価証明書や登記事項証明書などを事前に準備しておくことでスムーズに話し合いを進められる可能性が高くなります。
今回の記事では不動産相続の話し合いで事前に用意しておきたい書類や遺産分割協議で注意すべきポイント4つをまとめました。不動産相続の予定がある方はご参考下さい。
目次
- 不動産相続の話し合いで事前に準備しておきたい書類
- 遺産分割協議で注意すべきポイント4つ
2-1.不動産の査定・評価方法
2-2.遺言書の有無
2-3.不動産の分割方法
2-4.債務の相続 - まとめ
1.不動産相続の話し合いで事前に準備しておきたい書類
相続財産の話し合い(遺産分割協議)において相続人全員で不動産の相続について話し合うにあたり、準備しておきたい書類は以下の通りになります。
土地・家屋共通
- 遺言書(有る場合)
- 不動産会社の査定書(又は不動産鑑定士による鑑定評価書)
- 登記事項証明書
- 固定資産税の評価証明書
土地
- 公図・地形図
- 実測図
- 土地賃貸借契約書(貸付地の場合)
家屋
- 建物賃貸借契約書(貸家の場合)
登記事項証明書と固定資産税の評価証明書は土地と家屋、双方で必要となりますので準備しておきましょう。
登記事項証明書は法務局、固定資産税評価証明書は管轄の市町村役場で手に入れる事が出来ます。なお、登記事項証明書は「登記・供託オンライン申請システム」にてオンラインで請求する事も可能です。
土地は登記事項証明書に記載されている面積と実際の面積が異なる場合があるため、測量事務所に測ってもらい、実測図を入手することも検討しておきましょう。
所有年数が長い場合、隣地との境界線があいまいになっている可能性があります。測量士に正確な面積を測定してもらうことで、後のトラブルを回避することにもつながります。ただし、測量には費用が発生するため、費用負担についても話し合いの中で決めておきましょう。
なお、不動産の相続登記を行う際には上記の書類とは別に下記の書類が必要となります。話し合いの時点では必ずしも必要ではありませんが、こちらも合わせて確認しておきましょう。
- 登記申請書
- 被相続人の戸籍謄本(生まれてから亡くなるまで)
- 相続人全員の現在の戸籍謄本
- 相続人全員の住民票の写し
- 委任状(代理人が申請する場合)
- 登録免許税(収入印紙で納付)
- 遺言書又は遺産分割協議書
2.遺産分割協議で注意すべきポイント4つ
実際に遺産分割協議を行う際に注意すべきポイントを解説していきます。遺産分割協議を行う際には、以下の4点に気を付けながら話し合いを進めていきましょう。
- 不動産の評価方法
- 遺言書の有無
- 不動産の分割方法
- 債務の相続
2-1.不動産の査定・評価方法
相対取引で売却価格の決まる不動産には決まった価格というものが無く、不動産の査定方法によって価格が大きく異なることがあります。不動産の評価額によって相続財産の割合が大きく異なるケースも少なくないため、査定方法についても相続人同士で意見を合わせておくことが重要です。
不動産査定の方法には、大きく分けて下記の2つがあります。
- 不動産会社の査定(無料査定)
- 不動産鑑定士の鑑定(有料査定)
不動産会社の査定は無料で行えることがメリットですが、不動産会社によって査定額にバラつきが出るデメリットがあります。複数社の不動産会社へ査定を依頼し、査定額だけでなく査定の根拠を比較し、相続人同士が納得できる価格を調査する工夫が必要になります。
なお、不動産会社の査定は、原則として物件売却を目的とした営業活動の一環で無料となっているため、後々売却を勧められる事があります。不動産会社や担当者によって査定の基準や範囲が異なり、査定額にばらつきが生じる点にも注意が必要です。
複数の不動産会社への依頼は、不動産一括査定サイトを利用することで効率的に進めることが可能です。下表の不動産一括査定サイトは、全国エリアに対応しており、悪徳な不動産業者の排除を積極的に行っている特徴があります。
主な不動産一括査定サイト
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【関連記事】不動産査定会社・不動産売却サービスのまとめ・一覧
一方、不動産鑑定士の鑑定は「不動産の鑑定評価に関する法律(昭和38年法律第152号)」に基づいた価額を把握でき、高い証拠能力を持った査定書類を獲得できるメリットがあります。
不動産相続のような、不動産の評価額によって後のトラブルに繋がる恐れがある場面では、不動産鑑定を検討することは有効です。しかし、デメリットは費用がかかるという点で、物件の規模によって15~30万円程度の費用がかかります。
鑑定士事務所に依頼する際も、複数の事務所に相談を行った後に鑑定額や対応からより良い事務所を選ぶと良いでしょう。
また、どちらの方法を選択する場合にも、後に意見が変わりトラブルに発展する可能性を考慮し、遺産分割協議書へ「不動産会社(不動産鑑定)による査定額を不動産の価額とする」旨を記載しておきましょう。
【関連記事】相続不動産の査定方法は?遺産分割の手順や流れ、査定のタイミングも
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2-2.遺言書の有無
遺言書がある場合は基本的に遺言書通りに分割を行います。ただし、遺言書が法的に無効であるケースや遺留分(法律で定められた最低限の取り分)を侵害している場合、相続人全員の合意が得られている時には遺言書通りでなくても構いません。
遺言書は自筆証書遺言の場合、財産目録以外は被相続人自身が自筆で書き、署名、押印、日付が有ることが法的に有効である条件となります。自筆証書遺言と秘密証書遺言は家庭裁判所で偽造・変造を防ぐために「検認」を受ける必要があります。
秘密証書遺言は遺言の内容を知られたくない場合に、公証役場で利害関係の無い証人2人と公証人の元で封印を行う遺言です。公正証書遺言は公証役場に保管されており、公証人が法に則り作成するため検認の必要はありません。
遺留分は一定の財産を遺族に残す制度で、配偶者、子孫、親や祖父母に限定されており、法定相続分の1/2となっています。遺留分が侵害されている時には裁判所に申し立てを行い、調停を行う事があります。
2-3.不動産の分割方法
不動産の分割方法は、現物、代償、換価、共有という4つの方法があります。不動産は分割が難しい財産となりますので、分割方法やメリット・デメリットをおさえておきましょう。
現物 | 代償 | 換価 | 共有 | |
---|---|---|---|---|
方法 | 現物のまま不動産を分割 | 相続人1人が不動産を相続、残りの相続人は相当の代償金や物を支払う | 不動産を売却、現金化して分割 | それぞれの持ち分割合で共同名義として登記を行う |
メリット | 売却する必要が無い | 売却せずに不動産を残しておく事ができる | 公平に分割しやすい | 公平に分割しやすい |
デメリット | 土地の形状や不動産の種類によっては分割しづらい。 不動産の資産価値を低下させる。 |
代表の相続人が、他の相続人に分配する資産を持っていないと難しい | 相続人が不動産に愛着がある時には、同意を得ることが難しい | 後でトラブルが起こる可能性がある。 売却・処分に全員の同意が必要となり、活用が難しい。 |
不動産の条件やエリア、相続人の生活環境や資産の状況、加えて被相続人が遺書を残している場合には遺書の内容を考慮して分割方法を決定しましょう。
2-4.債務の相続
不動産のローンが残っている場合、不動産と共にローンの残債を相続する事になります。ローンの残債と不動産の売却価格を比較し、不動産の売却価格の方が高い場合は資産価値がプラスの状態、ローン残債が多い場合は資産価値がマイナスの状態となります。
債務は法律上、相続人全員が法定相続分に応じて負担すると定められています。債務の大きさによっては相続放棄を考慮した話し合いをすることが重要になります。
なお、相続開始から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てを行う事で相続を放棄することが可能ですが、被相続人のすべての財産を放棄することになってしまいますので慎重に検討しましょう。
相続放棄をせずに資産価値がマイナスの不動産を相続する場合、相続人の1人がローンの残っている不動産を相続する「代償分割」や不動産を売却して残債を分与する「換価分割」を行うことで、公平な分与がしやすくなります。
まとめ
不動産相続の話し合いの前には、登記事項証明書や公図など不動産に関する書類を集めておきましょう。
なお、不動産は相続後のトラブルにつながることも多い資産です。不動産の評価方法や分割方法、債務の相続などについても話し合いで定めておくことが重要なポイントです。
田中 あさみ
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