不動産と株式は互いに異なる特徴を持つ資産であるため、分散投資するうえで相性のよい組み合わせの一つです。一方で、過度にリスクを取らずに、上手に資産形成をおこなっていくうえでは、株式投資にも工夫が必要になります。
この記事では不動産投資をすでにおこなっている方向けに、株式投資の始め方や銘柄選びのポイントについて紹介します。これから株式投資にチャレンジしようと考えている人は、ぜひ参考にしてください。
目次
- 不動産投資と株式投資の特徴や相性は?
1-1.賃料収入が主体の不動産投資と価格損益が主体の株式
1-2.株式投資を取り入れればより柔軟な投資が可能に
1-3.長期投資の不動産と短期でも売買できる株式 - 不動産投資の分散投資先として株式投資を活用するには?
2-1.投資比率を考える
2-2.多数の銘柄への分散投資が鉄則
2-3.単元未満で株を購入できる証券会社を利用
2-4.積み立て投資を活用するのも有効 - 不動産との相性を高めるための株式の銘柄選び
3-1.インフレの影響を受けやすい銘柄を避ける
3-2.景気敏感株とディフェンシブ株で分散する
3-3.長期投資に適した銘柄を多めに組み入れる
3-4.投資信託への投資も一つの選択肢 - まとめ
1 不動産投資と株式投資の特徴や相性は?
特に不動産投資を賃料収入、すなわちインカムゲインに着目して投資をおこなっている人は、キャピタルゲインが主体となる株式にあわせて投資をすると、投資先の分散効果が期待できます。
株式投資を分散投資先として活用するために、まずは不動産投資と株式投資の特徴を比較していきましょう。
1-1 賃料収入が主体の不動産投資と価格損益が主体の株式
ここからは不動産と株式の特徴の違いをいくつか紹介していきます。まず一つ目の特徴は、大きな違いや両者の損益の出方が異なることです。
不動産と株式の損益の特徴
資産 | 損益の主な源泉 | リスクの高さ | 景気動向との連動性 |
---|---|---|---|
株式 | 株価変動によるキャピタルゲイン | ハイリスク | 高い |
不動産 | 賃料収入によるインカムゲイン | ミドルリスク | 低い |
投資において、定期的に入ってくる収入を「インカムゲイン」と呼びます。例えば不動産でいう賃料収入、株式の配当や投資信託の分配金などが該当します。一方で、価格の値上がりによって得られる収益を「キャピタルゲイン」と呼びます。
インカムゲインは定期的にプラスの収入となるため、安定的な収益の源泉となります。一方で、キャピタルゲインは価格変動によってプラスにもマイナスにもなります(正確には損が出たときはキャピタルロスといいます)が、相場が追い風であれば大きな収益が期待できます。
不動産投資は、毎月の賃料収入の積み上げが主な収益源となるため、インカムゲインが主体に。賃料は毎月のように短期間で変動するものではないので、不動産は株式と比較してリスクの低いミドルリスクの投資手法です。
一方、株式は株価変動によるキャピタルゲインが主体となります。株価は不動産価格と比べると変動が大きいため、株式投資はハイリスクな投資手法と言えます。
また不動産の賃料は、通常数年に1度程度しか変わらないので、不動産投資は景気変動の影響をあまり受けない投資手法です。一方で、株式投資は景気変動の影響を受けやすい投資手法といえます。
このように、不動産投資と株式投資は、損益の出方において異なる特徴を持っているのです。
1-2 株式投資を取り入れればより柔軟な投資が可能に
投資をおこなうためには、ほとんどの場合一定程度の自己資金が必要となります。株式投資においては、単元未満株や単元制度の無い米国株などであれば数百円から取得できることもあり、自己資金が少なく済むため柔軟に投資額をコントロールできます。
不動産投資はフルローンで新たに物件購入するとしても、諸費用などで物件の5〜10%程度の資金が必要です。投資リスクを下げるためにさらに多くの頭金を用意する人もいます。物件価格にもよるものの、数十万円〜数百万円は自己資金を用意する必要があるでしょう。
株式投資については、元々は株価と購入単位を意味する「単元数」で最低金額が決まる仕組みでしたが、2022年時点ではネット証券を中心に1株から購入できるサービスをおこなっている証券会社もあります。このようなサービスを活用すれば、株価がそのまま最低投資金額になるので、例えば株価1,000円の株式は必要な最低の自己資金額も1,000円です。
不動産投資と株式投資を組み合わせれば、少額の余裕資金が発生した時にもすぐに投資に回すことができます。そのため、効率のよい投資が可能になるのです。
1-3 長期投資の不動産と短期でも売買できる株式
不動産投資は短期での売買には向かない投資手法です。短期では充分に賃料収入を積み上げることができず、取得のたびに登記費用がかかることに加え、5年以内に物件を売却してしまうと30%の譲渡所得税と9%の住民税ががかかるルールもあります。(※参照:国税庁「譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」)
一方で株式は、売却は証券取引所が空いている時間帯であればいつでも可能です。急に現金が必要になった場合、不動産では対処が難しいですが、株式であればすぐに現金化することができます。例えば、値上がり益が出ている銘柄を選んで売却すれば、損失が発生することもありません。
不動産と株式へ分散投資しておけば、急な現金ニーズにも対応しやすくなります。
2 不動産投資の分散投資先として株式投資を活用するには?
株式投資の手法を工夫すれば、不動産投資との相性はさらに改善し、長期的で効率的に資産形成ができます。ここからは、不動産投資との相性をふまえた株式投資の始め方、進め方を紹介します。
2-1 投資比率を考える
株式投資を新たに取り入れるときは、不動産投資とどのような比率で分散するのか考えておきましょう。株式投資の方がリスクが高いため、基本的には株式の比率が高いほどリスクの高いポートフォリオになります。
投資比率を考えるときは、株式は単純に投資額で問題ありません。不動産は始めて間もない頃は頭金として支払った自己資金額、ある程度年数が経っているときは不動産の資産額から残債を差し引いた簡便な「純資産額」で考えるのがよいでしょう。
不動産と組み合わせる以上、ある程度中長期的な視点で投資に取り組んでいると考えられます。過度に株式比率を高めると、経済変動で大きなダメージを負うリスクが高くなるため、最大でも株式と不動産投資の比率は50:50程度にとどめるのが適切です。
低リスクの運用を重視するなら株式比率を下げるのがよいですが、あまりに比率が低いと分散投資の効果があまり得られません。慎重派の人は、例えば株式に資産全体の20%程度を投資するのが一つの目安となります。
【関連記事】将来の資産形成に役立つ「資産三分法」の配分比率は?株・不動産の選び方も
2-2 多数の銘柄への分散投資が鉄則
株式は不動産投資と比較してリスクの高い投資のため、特に不動産投資に慣れている人は、株式の損益幅の大きさに驚いてしまうかもしれません。このような株式をうまく投資に取り入れていくためには、株式の中でも多数の銘柄へ分散投資をおこなうのが有効です。
個別銘柄を選ぶときにできるだけ特徴の異なる銘柄を選んだ方がよいのは、株式における分散投資でも同じです。すなわち、異なる業種や異なる企業の規模の銘柄を多数組み合わせるのがよいでしょう。また、不動産関連の銘柄比率を低くしておくことも分散投資には有効です。
ただし、個人投資家の場合は、銘柄が多すぎると、今度は日々のポートフォリオ管理が大変になります。そこで、まずは5~10銘柄前後を目指して始めてみるとよいでしょう。
2-3 単元未満で株を購入できる証券会社を利用
限られた資金で多くの銘柄に分散投資をおこなうためには、株一つ一つの購入単位が小さい取引方法を選ぶのが有効です。
そのため、1株単位での株式購入に対応した証券会社で口座を開設して取引をおこなうのがよいでしょう。現在では大手証券会社も含めて、多くの証券会社が単元未満での株式取引を受け付けていますが、手数料の水準に差があります。
株式では売買のたびに手数料がかかるスキームとなっているケースが多くなっていますが、対面型のチャネルを扱っている証券よりネット専業の証券会社の方が手数料が低い傾向にあります。こうした証券会社を利用すれば、取引にかかる手数料を節約可能です。
2-4 積み立て投資を活用するのも有効
長期で投資を継続したい方、現時点では自己資金が乏しいが、徐々に株式投資を増やしていきたい方などには、積み立てで投資をおこなう手法を活用するのも一案です。例えば、自分で家計管理していると、ついつい使い過ぎて投資資金を捻出できないという人には有効な選択肢となります。
毎月資金を積み立てて株式へ投資をする方法は大きく分けて次の3つです。
- るいとう
- 株式投信の積み立て
- つみたてNISA
それぞれの特徴をまとめると次の通りです。
積み立て投資の手法の比較
手法 | 手数料 | 実際の購入商品 | その他の特徴 |
---|---|---|---|
るいとう | 高め | 証券会社が指定する個別株 | 売買手数料は主に証券会社ごと、取引規模ごとで変動 |
株式投信の積立 | 銘柄による | 株式へ投資する投資信託(アクティブもしくはインデックス) | 売買手数料はおもに銘柄による |
つみたてNISA株式投信の積立 | 低い | インデックス投信が中心 | 売買手数料はおもに銘柄による 年間40万円まで 20年間収益に対する税金がかからない |
るいとうはあらかじめ指定した個別株を毎月強制的に積み立てる方法です。今回紹介する積み立て投資の手法の中では、唯一自分で個別銘柄を選んでポートフォリオを形成することができます。一方で購入手数料が高めなので、実質的な投資の効果が低減してしまう点がデメリットです。
投信の積立とつみたてNISAはともに投資信託を積み立て購入する方法です。株式に投資する投資信託で積み立てをおこなえば、実質的には株式へ投資ができます。
通常の積み立ての方が銘柄の選択肢が広く、アクティブ・インデックス投信の多くが積み立てに対応しています。つみたてNISAは購入できる銘柄のほとんどがインデックス投信である、利用できる金額に年間の上限があるなど制約が多い一方で、20年間にわたり投資収益への税金がかからないというメリットがあります。
【関連記事】NISAの始め方は?証券会社選びや銘柄選びなど手順に沿って解説
3 不動産との相性を高めるための株式の銘柄選び
不動産と株式で長期にわたり効率よく資産形成をおこなうためには、株式における銘柄選びも重要です。ここからは不動産との分散投資を念頭においた銘柄選びのポイントを紹介します。
3-1 インフレの影響を受けやすい銘柄を避ける
不動産の特徴の一つとしてインフレの影響を受けやすいという特徴があります。インフレが加速する局面では不動産価格が上向きやすい一方で、デフレ環境では価格下落のリスクが大きくなります。
リスク分散の観点から、株式投資においては、インフレに連動しやすい銘柄を避けるのが一つの選択肢です。インフレに連動しやすい業種とは、資源やエネルギーの生産がメインビジネスとなっている、もしくは不動産を多く所有している業種で、例えば次のような業種が当てはまります。
不動産を多く所有する業種
- 不動産
- 公益(大手電力会社、鉄道会社など)
資源・エネルギーを生産する業種
- 石油・ガス
- 素材
- 金属・鉱業
こうした業種は、不動産の価格と似たパフォーマンスとなりリスク分散の効果が充分に発揮されない可能性があります。
3-2 景気敏感株とディフェンシブ株で分散する
株式投資における分散効果を高めるためには、景気に連動しやすい株と、景気の影響を受けにくいディフェンシブ株を組み合わせるのが有効です。
不動産が景気の影響を株式と比較して受けにくい投資であることをふまえると、一定程度は景気敏感株を取り入れた方が、分散効果が期待できます。一方で、景気敏感株のみに投資してしまうと、株式投資の損失リスクが大きくなるため、一定程度はディフェンシブ株を入れるのがよいでしょう。
景気敏感株・ディフェンシブ株には厳格な定義はありませんが、例えばそれぞれ次のような業種になります。
景気敏感株の例
- 自動車
- 化学
- 素材
- 機械
ディフェンシブ株の例
- 食品
- 医薬品やヘルスケア
- 運輸・物流
- 通信
3-3 長期投資に適した銘柄を多めに組み入れる
長期的な視点で資産形成をするなら、株式も長期投資に適した銘柄を多めに組み入れるのが有効です。
中小企業や新興の成長企業のようなセクターは短期的な値動きが大きい一方で、将来の環境変化に脆弱で、長期保有していると、どこかのタイミングで暴落や倒産などの事態に直面するリスクが高くなります。
逆に、すでにビジネスモデルが確立された大手企業は、大幅な値上がり益は期待しにくいものの、企業の存続自体が危ぶまれるリスクは相対的に低下します。
長期投資の観点からは、後者の大手で経営基盤がある程度確立している企業を多めに組み入れるのが一つの選択肢となります。誰でも知っているような大手企業を中心に銘柄を選んでみましょう。
ただし、中小企業や成長企業の株を「絶対に避けなければならない」というわけではないので、よりハイリターンを追求したい人は、ポートフォリオに占める比率に留意しながら、チャレンジしてみるのが良いでしょう。
3-4 投資信託への投資も一つの選択肢
株式の個別銘柄の選別は、初心者には容易ではありません。株式には投資したいが、個別銘柄の分析まではしたくない、という人には、株式に投資する投資信託を活用するとよいでしょう。
投資信託では、特定の株価指数に連動するインデックス投信と、指数を上回るパフォーマンスを目指すアクティブ投信があります。それぞれ次のような特徴を持っています。
株式へ投資する投資信託の特徴
種類 | 特徴 |
---|---|
インデックス投信 |
|
アクティブ投資 |
|
市場全体に幅広く分散したい、手数料を抑えたい人はインデックス投信が適しています。一方で将来性のある特定のテーマやセクターに投資したい、市場平均を上回るパフォーマンスを追求したいという人は、アクティブ投信を取り入れてみましょう。
4 まとめ
不動産と株式はさまざまな点で特徴が異なるため、分散投資するうえで適しています。双方投資すればリスク分散になり、より柔軟な投資が可能になるでしょう。
インフレに強い株を選ぶ、株式投資のなかでも分散投資をするなど、工夫して投資をおこなえば、さらに高い分散効果が期待できます。また個別株への投資はハードルが高いと感じる人は、投資信託などを活用するのも一案です。
不動産と株式をうまく組み合わせて投資をおこない、大きな損失をさけて効率よく資産形成をすすめましょう。
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伊藤 圭佑
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