マンション利回り低下で注目、新築アパート経営のメリットや注意点とは?

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新築マンションの価格がバブル期並みの水準に上がってきており、マンションの投資利回りもかなり低い水準となってきました。都内では新築や築浅のマンションの利回りが4%を下回ることも珍しくありません。

そういった中で、新築アパート経営が投資効率の良い不動産投資手法として注目されてきています。今回は新築アパート経営のメリット・デメリットを、投資を始める目的や資金面・利回り、そして建物の構造面などから多角的に分析してみたいと思います。

目次

  1. アパート経営をする目的によって検討することが大きく違う
  2. 新築アパート経営の4つのメリット・魅力
    メリット1.新築アパートはサラリーマンでも始めやすい
    メリット2.新築アパートでも月々の手残り額が10万円以上ある場合も
    メリット3.新築であれば賃貸をつけやすいので、満室にしやすい
    メリット4.最近の木造アパートは耐火性、耐震性も高いレベル
  3. 新築アパート経営の3つのデメリット・注意点
    デメリット1.新築アパートは価格帯が高いことがデメリット
    デメリット2.アパートはマンションよりも家賃設定が低くなりやすい
    デメリット3.長期にわたりメンテナンスをしてくれる業者選びが必須
  4. まとめ

1.アパート経営をする目的によって検討することが大きく違う

区分所有のマンション経営の場合は、節税対策や生命保険効果など、取り組む人の目的は似たようなものになります。それは、アパート経営を勧める営業マンが長い間同じようなメリットしかアピールしてこなかった影響もありますが、他にあまりメリットの多様性がないとも言えるでしょう。そういった理由からマンション経営は節税や、生命保険効果などを目的に始める人が多いのは事実です。

アパート経営の場合は土地活用、相続税対策といったことを目的としているケースが多く見られます。土地のまま相続するより、アパートを建て賃貸経営をした方が相続税は安くてすむからです。また、土地を所有している場合は大家の家がアパートに併設されている、賃貸併用住宅も多くなってきます。自宅を立て直す際に、自分たちの住居の部分だけでなく賃貸部分を設けることで、相続税を軽減できるというメリットがあるからです。

【関連ページ】不動産投資が相続税対策になる?相続時の評価計算方法介

もちろん自宅は別にあり賃貸アパートだけを建築するケースもありますが、どちらにしろ、土地を所有している場合は、自宅と賃貸部分の割合を検討したり、その他にも道路に面する部分の広さを検討したり、といったように相続する資産としての価値を考えながら建築することになります。

しかし、アパート経営をしている人は土地を所有している人ばかりではありません。土地を所有していなくてもアパート経営をしてキャッシュフローを得たり、資産形成をしたりしている人は多くいます。そういった人は土地活用や相続税対策を目的としているわけではありません。

土地活用を目的としない人は、利回りの良さや、資産形成、年金代わりといったように、マンション経営をする人と似たような目的で始めている方も多いようです。

このようにアパート経営をする人の目的は土地を所有しているかいないか、始める際に検討することや準備することが大きく違ってきます。

2.新築アパート経営の4つのメリット・魅力

アパート経営を始める際の目的には土地を所有しているケースとしていないケースがあることがわかりました。今回は土地を所有していない場合のアパート経営について考えてみましょう。

メリット1.新築アパートはサラリーマンでも始めやすい

土地を所有せずに始める場合、中古アパートか新築アパートかによって運用の仕方が大きく変わってきます。中古アパートの場合、価格帯が低く始めやすいのですが、古いものだと購入してすぐに大きな修繕をしなければいけなかったり、空室が多くなったりするリスクがあります。融資条件も厳しいものになりがちで、2割から3割の自己資金が求められるケースもあります。

また、中古アパート経営で成功している人の例では、入居者を付けるためにリフォームをしたり、アパートの周りの清掃や植樹などをしたりしてアパート事態の雰囲気などを変える努力をしている場合が多く、ある程度、大家業としての時間がとれる人や経験がある人向きだと言えます。

その点、新築アパートであれば、すぐに入居者が付くことが多い上、十数年間は大きな修繕がないので、サラリーマンの人でも手放しで始められるメリットがあります。また、新築アパートは金融機関の融資が付きやすい、仲介手数料がかからないといった資金面でのメリットもあります。

メリット2.新築アパートでも月々の手残り額が10万円以上ある場合も

中古アパートは価格帯が安いので利回りが20%くらいあるアパートも多くあります。しかし、中古になるほど家賃を下げなければ賃借人が付かなくなる物件もあるため、リフォームをしたり、募集広告を多く出したりするなどの工夫が必要になります。

新築アパートの場合は価格帯が高くなるため利回りは悪くなります。ただ、中には5,000万円前後の手頃な価格で利回りが8%くらいある新築アパートもあります。では利回り8%だとどれくらいの手残りがあるのでしょうか。

仮に4,500万円の物件、利回り8%の物件を購入するのにフルローンで金利1.5%、返済期間22年で融資を受け購入したとします。その場合以下のようになります。
*利回り8%ですので年間360万円の家賃収入が発生します。

新築4,500万円・利回り8%・金利1.5%・返済期間22年で試算

融資額 月々の返済額 月々の家賃収入 月々の手残り額
4,500万円 20万229円 30万円 9万9,771円

中古アパートの利回りと比較すると利回りは悪く感じますが、月々10万円弱の手残り額が発生することになり、キャッシュフロー面では新築アパートでもメリットが大きいことがわかります。

都内の新築アパートは利回りが5%台~6%となってきていますが、この場合は返済期間30年以上を目指すことで月々の返済額を抑えることができ、キャッシュフローの黒字を確保することができます。ただ、返済期間を30年位上に伸ばすということは、木造の耐用年数を超えた長期投資となりますので、土地や建物の品質にこだわることが重要となります。

新築の区分マンション経営の表面利回りは4%前後と言われています。フルローンを組むと手残り額は月々数千円か赤字というケースも少なくありません。マンション経営と比べてキャッシュフローが良いということがアパート経営の大きなメリットと言えるでしょう。

メリット3.新築であれば賃貸をつけやすいので、満室にしやすい

中古アパートと新築アパートでは賃貸力が大きく違ってきます。間取りや設備は時代とともに進化していますので、新築アパートの中には高級マンションで使っている床材やユニットバスなどを使っているなど、中古よりも良い設備を備えているアパートもあります。

また、床材や外壁なども、中古アパートと比較しても防音性、耐火性などに優れ、見た目もおしゃれな新築アパートが増えています。そのような点から、新築アパートはとても賃貸が付きやすく、満室にしやすいメリットがあります。

このような点から土地付きのアパートを購入したとしても満室が続くことで十分なキャッシュフローが得られ、土地有りのアパート経営と比較しても、極端に利回りが悪くなるということは考えられにくいでしょう。

メリット4.最近の木造アパートは耐火性、耐震性も高いレベル

木造アパートというと耐火性や耐震性が心配な人も多いかと思います。しかし、最近の木造は耐火性に優れている、という話を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。どれくらい優れているか検証してみましょう。

耐火性は鉄よりも優れている?

木は燃える、鉄は燃えない、というのが一般的な認識ですので、木造は火に弱いと思われがちです。実際に焚火などは木や葉っぱを燃やしますので、その印象は強いでしょう。

しかし、木造の建物に使われている木はそれほど簡単に発火するものではないことが証明されています。鉄骨の場合は火災が発生してから約10分後の時点で標準過熱を下回ってしまいます。

また、強度実験により鉄は温度が550度を超えた時点で極端に弱くなる(※)ことがわかっています。それに対し、木材の場合は炭化層という層が木の表面にでき、木の芯まで火が行き届かないため、10分くらいは発火しない性質になっていることが知られています。

※出典:Thompson, H.E.:F.P.J., Vol.8 No.4, 1958

また、最近の木造造りの建物は、火災保険に入る際に鉄骨造りと同じT構造やRC造りと同じM構造で契約できる、という点からも火災に強いことがわかります。

耐震性はどれくらいあるか

耐震性においても木造造りの物件は高い性能を証明しています。耐震性を示す一つの基準として耐震等級というものがあります。耐震等級は1から3まであり数字が大きくなるほど耐震性があると判断されます。

耐震等級1は建築基準法の耐震性能を満たす水準で、震度6から震度7程度の地震でも建物が崩壊しないレベルです。耐震等級1のレベルでも大地震に耐える性能と言えるでしょう。耐震等級2は建築基準法の1.25倍の耐震性があり、耐震等級3になると建築基準法の1.5倍の耐震性が認められています。

大手不動産会社が建築する木造アパートは耐震等級3のレベルにあります。耐震等級3は耐震性レベルでは最高ランクにありますので、他の構造物と比較しても全く引けをとらない構造だと言えるでしょう。

耐震等級3とは:国土交通省が定めた住宅性能表示における最高レベルの耐震性、耐震等級1・耐震等級2・耐震等級3

3.新築アパート経営のデメリット・注意点

新築アパート経営のメリットの項目では、性能や構造面でマンション投資などと比較しても遜色のないレベルであることやキャッシュフロー面ではメリットが大きいことがわかりました。次はデメリットについて考えてみましょう。

デメリット1.新築アパートは価格帯が高いことがデメリット

多くの不動産会社で販売されているアパートの中には、収支が悪い新築アパートが存在します。新築はアパートだけでなくマンションでも戸建てでも価格帯は高くなります。構造や新築だという理由だけではなく、立地も関係してきます。

当然都心に近くなれば高くなりますし、地方でも主要な都市部であれば、家賃と見合わない額になる可能性はあります。あまりに収支が悪いと感じた場合は、設定家賃やローンの金利、またそのエリアの今後の成長性も検討したほうが良いでしょう。家賃は適正であるにもかかわらず、利回りが極端に悪く感じる場合は物件を変えることも頭に入れて検討しましょう。

デメリット2.アパートはマンションよりも家賃設定が低くなりやすい

不動産投資の中では、アパートは駅から遠めのマーケットだと言えます。駅に近いと用途地域という法律の中で、建てる建物が鉄筋コンクリートなどに限られてくる地域もあるため、木造アパートが建てにくい環境にあるためです。

アパートは駅から離れた場所に建てられていることも多いですが、今後の入居需要や土地の資産価値を考えた場合、駅からの近さは重要なポイントです。アパートであっても徒歩10分位内、遠くても15分以内で検討することが必要です。

また、最初の家賃設定については、新築だからといってあまりに高い家賃が設定してあると、数年して大幅に家賃を下げなければ賃借人が付かない、ということも考えられるからです。家賃相場や下落率がそのエリアにあっているのかを確認して取り組みましょう。

デメリット3.長期にわたりメンテナンスをしてくれる業者選びが必須

アパート一棟を運用する場合はどうしても管理会社の協力が必要になります。定期的にメンテナンスを行い、極端に劣化しないように維持していくことが大切です。特に外壁はアパートの顔とも言えます。

建築されてから数十年経つときちんとメンテナンスしているかいないかで物件の見栄えが大きく違ってくるからです。賃借人もきれいなアパートに住みたいですので、管理会社や業者とはうまくつきあって、アパートをきれいなまま維持していくことが大切です。

そのためには長い期間メンテナンスをしてくれる業者を選ぶことが重要になってきます。アパートの外壁は耐火性や防水性を保つために特殊な加工がされています。中小企業ではそういった材質のものを維持していく資金や人材を投じるのは難しい面があります。

その点、大手の不動産会社であれば、専門知識を持った人材や、維持費に資金を使えますので、管理会社やメンテナンスを担当する業者は大手企業を選んだ方が無難でしょう。

また、設備や箇所によって修繕サイクルが違ってきますので、修繕部分ごとに修繕計画が必要になります。そのようなノウハウや経験がある業者を選ぶことが重要になってきます。以下の図は箇所ごとの修繕時期を一覧にしたものです。

中古×リフォーム 築年別の目安額
*不動産情報サイトSUUMO「中古×リフォーム 築年別の目安額」より

図のように修繕は行う箇所によって時期が異なります。ただ、これは修繕の時期を表しているだけで、診断の時期やメンテナンスの時期は記載されていません。また、木造だと設備の修繕だけでなく白アリ駆除なども含まれてきますので、さらに細かく計画する必要があります。

大手の不動産会社では数十年にわたるメンテナンスをセットにしてアパートを販売している会社もあります。そういった大手の会社だと30年や、長いところだと60年といった長期のスパンで細かく計画します。長期にわたりメンテナンスできるかどうか十分検討して業者を選ぶようにしましょう。

まとめ

アパート経営は区分のマンション経営と比べると建物価格が高くなる分、家賃収入も多くなります。その点はマンション経営にはない大きなメリットです。

しかし、大きなリスクと向き合っていることも確かです。アパート経営のメリットを十分に生かすには周到な準備と長期にわたる計画が必要なことがわかっていただけたと思います。

また、慎重に業者を選ぶことも重要です。アパート経営を失敗しないために、メリットとデメリットをよく理解して取り組むようにしましょう。

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西宮光夏

不動産会社での勤務や、所有している不動産運用の経験をもとにHEDGE GUIDEでは不動産関連記事を執筆しています。現在は主にふるさと納税の記事を担当しています。ふるさと納税記事では、地域の人たちが心を込めて提供する返礼品の素晴らしさを、少しでも多くの人にお伝えできればと思っています。