相続で借地権付の不動産を取得した人の中には、相続して住む、売却する、活用するのかで悩んでいる人も多いのではないでしょうか?
借地権付の不動産は一般的な不動産とは異なる部分が多いため、違いをよく理解した上で相続・売却・活用を選択することが重要です。
この記事では、借地権付の不動産を相続した際の注意点を相続する・売却する・活用するの3つに分けて解説します。
目次
- 借地権は大きく3つに分類される
1-1.旧借地権
1-2.普通借地権
1-3.定期借地権 - 借地権付の不動産を相続した際の注意点
2-1.相続する場合
2-2.売却する場合
2-3.活用する場合 - まとめ
1.借地権は大きく3つに分類される
借地権付の不動産と言っても、地主とどのような契約を締結していたのかによって大きな違いがあります。
例えば、契約期間や更新の有無、借地権者による建物の解体の有無、地主による建物の買取の有無など、借地契約の内容によってとれる手段が限られる可能性があります。
それぞれの契約ごとに違いがある借地権ですが、大きく以下の3つに分類されます。
- 旧借地権
- 普通借地権
- 定期借地権
それぞれの違いを詳しく見ていきましょう。
1-1.旧借地権
旧借地権とは、平成4年8月に制定された新借地借家法より前に締結された借地権です。旧借地権の特徴をまとめると以下の通りです。
建物の種別 | 期間の定め | 契約期間 | 更新後の契約期間 |
---|---|---|---|
堅固な建物 | 期間の定めなし | 60年 | 30年 |
期間の定めあり | 30年以上 | 30年以上 | |
堅固でない建物 | 期間の定めなし | 30年 | 20年 |
期間の定めあり | 20年以上 | 20年以上 |
堅固な建物とは、石造、レンガ造、コンクリート造、ブロック造など、堅固でない建物とは、木造、プレハブ造などです。
地主が更新を拒否するには正当事由が必要で、正当事由が認められない場合は借地権者が半永久的に土地の使用を続けることになります。
また、借地権者には契約解除後の建物買取請求権が認められており、地主に建築した建物を買い取ってもらえるため、借地権者に有利な契約条件と言えるでしょう。
1-2.普通借地権
普通借地権は、平成4年8月に制定された新借地借家法に基づいて締結された借地権です。普通借地権の特徴をまとめると以下の通りです。
契約期間 | 更新後の契約期間 | 2回目以降の契約期間 | |
---|---|---|---|
期間の定めなし | 30年 | 20年 | 10年 |
期間の定めあり | 30年以上 | 20年以上 | 10年以上 |
旧借地権にあった構造による契約期間の違いはなくなりました。また、更新後の契約期間が1回目と2回目以降で異なっています。
借地権者には契約解除後の建物買取請求権が認められているため、依然として借地権者が有利と言えますが、更新後の契約期間が短くなっているので地主に歩み寄った契約条件と言えるでしょう。
1-3.定期借地権
定期借地権も新借地借家法に基づいて締結された借地権で、契約が更新されないのが普通借地権との大きな違いです。定期借地権は大きく以下の3つに分類されます。
- 一般定期借地権
- 建物譲渡特約付借地権
- 事業用定期借地権
一般定期借地権
一般定期借地権では、契約期間を50年以上に設定します。借地権者は契約終了時に建物を解体して更地に戻してから土地を返還しなくてはなりません。
建物譲渡特約付借地権
建物譲渡特約付借地権では、契約期間を30年以上に設定します。一般定期借地権は建物を解体して更地に戻してから返還しなくてはなりませんが、建物譲渡特約付借地権は地主が建物を買い取ってくれるのでそのまま土地を返還することが可能です。
事業用定期借地権
事業用定期借地権では、契約期間を10年以上50年未満に設定します。上記2つは建物の用途が限定されていませんでしたが、事業用定期借地権は事業用に限定されています。契約終了時は建物を解体して更地に戻してから土地を返還しなくてはなりません。
契約の更新が認められていないため、地主有利の契約条件と言えます。契約条件によっては建物の買取の有無が異なるため、契約条件をしっかり確認しましょう。
2.借地権付の不動産を相続した際の注意点
借地権付の不動産を相続した後の選択肢として、相続して住むもしくは契約期間満了まで放置する、売却する、活用するの3つが挙げられます。
借地権付の不動産を相続した際の注意点について選択肢別に詳しく見ていきましょう。
2-1.相続する場合
相続した借地権付き不動産に居住する場合、借地権の契約期間を確認しておきましょう。借地契約が更新できなかった場合、居住し続けることが難しくなることがあるためです。
その他、定期借地権で契約が更新されず、建物を解体して更地に戻してから土地を返還しなくてはならない場合は契約終了時に解体費用がかかる可能性があります。居住する場合にはこれらの点に注意しておくことが大切です。
また、借地権付の不動産を相続した人の中には、自分自身が借地権付の不動産を使用しないため、途中解約したいと考える人もいると思います。
しかし、地主・借地権者ともに原則として途中解約はできないという点に注意が必要です。災害や老朽化で建物が使えなくなった場合など特殊な事例においては、借地権者からの途中解約が認められる可能性がありますが、原則途中解約ができないことに留意しておきましょう。
2-2.売却する場合
相続した借地権付きの不動産は売却できますが、地主の許可が必要で、地主の許可がなければ売却できません。もし、許可を得ないまま売却した場合、契約違反を理由に地主から土地の明け渡しを請求される可能性があるので注意が必要です。
また、地主の許可を得る際は承諾料を支払うケースがあります。承諾料の相場は借地権価格の10%程度となっているため、売却を検討中の人は承諾を得ることと承諾料がかかるケースがあることに注意しましょう。
なお借地権付き不動産は土地の所有権がないことから、土地付きの不動産と比較して売却に苦戦する傾向があります。売買の取引事例も少なく、不動産会社によって査定額が大きく異なるケースも多い物件であると言えるでしょう。
そのため、借地権付き不動産の売却査定をする際は、1社だけでなく複数の不動産会社への査定依頼を検討することが大切です。不動産一括査定サイトなど、複数の不動産会社へ査定が依頼できるサービスを活用し、効率的に査定価格を比較してみましょう。
主な不動産一括査定サイト
サイト名 | 運営会社 | 特徴 |
---|---|---|
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2-3.活用する場合
借地権付の不動産を相続した人の中には、既に自身の住居を所有しているため、借地権付の不動産を貸し出したり、賃貸住宅を再築したりなど、活用を検討している人も多いと思います。
相続した借地権付の不動産は活用できますが、条件(制限)があれば、その範囲内の使用に限定され、再築や増改築を行う際は地主の承諾を得なくてはなりません。
また、再築や増改築を行う、条件(制限)を解除してもらう場合には承諾料を支払う必要があったり、定期借地権の場合には契約更新がされないことがあります。これらの注意点を踏まえ、あらためて契約内容を確認し、必要に応じて地主と交渉を進めることが大切です。
活用を検討している人は、契約条件を確認する、契約条件に活用について記載がない場合はトラブルを未然に防ぐためにも地主に確認してから活用を始めましょう。
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まとめ
借地権と一口に言っても、締結した契約条件によって契約期間、更新の有無、建物の買取の有無などが異なります。何も知らずに相続した場合、トラブルに発展する可能性があるため、締結した契約条件を確認しておくことが重要です。
また、借地権があれば土地を使用できますが、自由に使用できるというわけではありません。一部制限されるもしくは地主に承諾料を支払わなくてはならないケースもあります。
トラブルを未然に防ぐためにも、借地権付の不動産の相続・売却・活用を検討している人はそれぞれの注意点を確認してから手段を選びましょう。
矢野翔一
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