一軒家の売却を人生で何度も経験されている方は少なく、「売却が成功すれば売却益が入って来るだろうけど、その分多額の税金がかかるだろうし、損をするようなことになったら困る」、と不安に思っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
人生の一大イベントである一軒家の売却を失敗したくないという方も少なくないでしょう。本記事では、一軒家の売却にかかる期間や費用について概説し、できる限り損失を出さずに高く売るコツについても紹介します。
目次
- 一軒家の売却にかかる期間
1-1.売却の流れと売却期間
1-2.売却期間が長引く理由 - 一軒家を損せず高く売るコツ
- 一軒家の売却にかかる費用
3-1.基本的にかかる費用
3-2.場合によってかかる費用 - まとめ
1.一軒家の売却にかかる期間
一軒家の売却はマンションよりも長くなる傾向があり、約3カ月から11カ月ほどかかるケースがあります。その他、マンションと比較して一軒家は土地の境界確定や隣地との越境問題、私道の通行掘削承諾など、土地がある分の手続きに時間を取られることもあります。
また、分譲だけでなく注文住宅など個別性が高い物件もあることから、画一的なニーズがつかみにくいことも一因といえるでしょう。
以下では、一般的な一軒家の売却の流れと売却にかかるおおよその期間を解説します。売却期間が長引く理由と、損せず高く売るコツについても考えていきます。
1-1.売却の流れと売却期間
一軒家は、次のような流れを経て売却をするのが一般的です。
- 仲介会社選び
- 販売活動準備
- 販売活動
- 売買契約
- 決済引渡し
それぞれについて、解説します。
①仲介会社選び
個人間売買サイトや知人の紹介などを利用して買主を見付け、一軒家の売却を個人間のやり取りで済ませることは可能です。
しかし、売買契約書の作成と所有権移転登記、金融機関と連携した決済日の調整など、これらの手続きが必要になり、不動産知識が少ない個人が行うのは大変な作業となります。また、一軒家の場合は、建物と土地を併せて売却するため、土地にかかる様々なトラブルが生じる可能性もあります。
そのため、専門の不動産会社に仲介を依頼した方が堅実であるといえるでしょう。一軒家の場合、特に仲介会社によってその後の売却活動に差が出てきます。1週間から1か月程度かけて慎重に選びたいところです。
仲介を依頼する不動産会社を探す際は複数の不動産会社へ査定が依頼できる不動産一括査定サイトの利用を検討してみましょう。不動産一括査定サイトとは、物件情報を一度登録するだけで複数の不動産会社による査定結果を比較することができるサービスです。
不動産一括査定サイトによって査定依頼ができる不動産会社の種類や依頼可能な社数が異なります。下記のサイトはどれも無料で登録ができるため、より多くの不動産会社にリーチしたい方は複数のサイトに登録してみるのも良いでしょう。
主な不動産一括査定サイト
サイト名 | 運営会社 | 特徴 |
---|---|---|
SUUMO(スーモ)不動産売却[PR] | 株式会社リクルート | 大手から中小企業まで約2,000の店舗と提携。独自の審査基準で悪質な不動産会社を排除。60秒で入力が終了し、無料査定がスタートできる。 |
すまいValue[PR] | 不動産仲介大手6社による共同運営 | 査定は業界をリードする6社のみ。全国841店舗。利用者の95.5%が「安心感がある」と回答 |
LIFULL HOME’Sの不動産売却査定サービス[PR] | 株式会社LIFULL | 全国3826社以上の不動産会社に依頼できる。匿名での依頼も可能 |
リガイド(RE-Guide)[PR] | 株式会社ウェイブダッシュ | 17年目の老舗サイト。登録会社数900社、最大10社から査定を受け取れる。収益物件情報を掲載する姉妹サイトも運営、他サイトと比べて投資用マンションや投資用アパートの売却に強みあり |
HOME4U[PR] | 株式会社NTTデータ スマートソーシング | 全国2100社から6社まで依頼可能。独自審査で悪徳会社を排除 |
【関連記事】不動産査定会社・不動産売却サービスのまとめ・一覧
②販売活動準備
仲介会社を選定した後は売却予定物件の調査を行い、売出価格や売却希望時期などの売却プランを決定します。近年の不動産一括査定サイトの発達により、売り出し価格を仲介会社選定時に決めてしまうこともあります。
一軒家の場合、販売準備のために建物の調査のほか、土地の境界や上下水道、ガス管の状況、私道の権利関係などの様々な調査が必要です。
調査には1週間から1カ月程度かかる場合もあります。調査が長引く場合は、先行して販売活動を開始し、販売活動と並行して調査を行うこともあります。これらの調査は、仲介の依頼をした不動産会社が行います。
③販売活動
販売活動は、ポータルサイト(スーモ、ホームズ、アットホームなど)への広告、チラシ配布、営業マン独自のネットワークなどによって行います。
売主としては、不動産会社の販売活動報告の確認対応のほか、売り出している一軒家が居住中であれば、内覧希望者の対応を行います。
しかし、買付けの申し込みが入っても必ずしも売買契約にまで至るとは限りません。価格交渉などの条件付きの申し込みの場合や、買主候補者がローンを希望する場合はローンの仮審査が通ってから売買契約を行うケースもあります。
実際に不動産会社に問い合わせてから不動産の引き渡しが行われるまでには、、約3カ月から11カ月程度はみておきましょう。通常3カ月で不動産会社との媒介契約が更新になるため、この時に売出価格の値下げを検討し、売却プランを見直すこともあります。
④売買契約
ローンの仮審査などの条件もクリアしたら、いよいよ売買契約となります。買付けの申込みから売買契約までは、1週間から2週間程度はかかります。
ローンの場合は、本審査が通るまでの間の白紙解除を認めるローン特約の内容についても確認しておきましょう。ローン特約による解除の期限はいつなのか、手付金の清算方法などがポイントとなります。
⑤決済引渡し
売買契約後、ローンの本審査などの条件が整った場合、残金の決済と物件の引渡しを行います。決済引渡しの前に、現地に残置物がないかどうか、あるいは現況に変化がないかどうか、などについて買主が最終確認を行うこともあります。
決済引渡し日には銀行などの決済の利便性が高いスペースを借りて、司法書士立ち合いの下に残金の支払いと所有権移転登記申請を行うと、売却が完了となります。
決済日は金融機関の融資実行スケジュールに合わせることになるため、引き渡し完了までには売買契約時から1カ月から2カ月程度かかることになります。
1-2.売却期間が長引く理由
売却期間が上述の目安の期間より長引いてしまったら、販売活動に何らかの問題があることが考えられます。よく見れる原因としては、主に下記の3つのポイントに問題がある可能性があります。
- 売却依頼をした不動産会社が不適切である
- 売主の準備不足
- 物件自体のニーズが少ない
不動産会社に問題がある場合としては、販売実績が少なくノウハウがなかったり、販売ネットワークが少なかったりして適切な販売活動が行えていないこともあります。
また、一方で売主の事前の準備不足の場合もあります。内覧時の印象がよくなかったり、室内が汚れていたりすると売れる物件も売れないことがあります。
その他、物件自体のニーズが少ない可能性があります。不動産査定は周辺エリアの過去の取引事例や、物件の築年数、立地条件などのデータをもとに算出されますが、実際にニーズがあるかどうかは販売してみないと分からないこともあります。
特に、一軒家では立地や間取りが特殊なケースも多くニーズの判別が難しいといえます。
2.一軒家を損せず高く売るコツ
売却期間が長引く理由を分析し、あらかじめ対策を立てることで損をせずに高く売ることができる可能性が高くなります。
不動産を高くするためには、不動産会社選びは重要なポイントです。自分の売りたい一軒家について適切な販売活動を行うことができる不動産会社を選ぶことが重要です。
まず、先ほどご紹介した不動産一括査定サイトを利用し、複数の不動産会社を比較することから始めます。自分の物件に近い物件の販売実績があるかどうか、合理的な査定がなされているか、営業マンの印象も参考にしつつ依頼先の不動産会社を選択しましょう。
また、売主としても、売却するためにできる努力は積極的に行いましょう。不動産会社に頼まれたことを対応するだけでなく、内覧時の印象値を上げることも重要です。
汚れの貯まりやすい水回りの清掃や、室内に芳香剤を置いたりするなど、清潔感を与えるように心がけましょう。不動産は、広く明るく見せるのが基本です。ライトを明るめにしたり、費用の少ない簡易な内装リフォームを行ったりすることも検討してみましょう。
3.一軒家の売却に共通してかかる費用
一軒家の売却にかかる費用には、基本的にどのような場合でも共通してかかる費用と、場合によってかかってくる費用があります。
売却にかかる費用を実際に支出するタイミングについても費用の種類によってそれぞれです。税金の中には売却後1年以上経過してから支払うものもあるので注意したいといえます。
3-1.基本的にかかる費用
どのような場合でも基本的にかかる費用には次のようなものがあります。
- 不動産会社の仲介手数料
- 印紙税
それぞれについて、内容と金額の目安を解説していきます。
不動産会社の仲介手数料
不動産会社の仲介手数料(税込)は、宅地建物取引業法によって以下のように定められています。
- 200万円以下:売買金額×5.5%
- 200万円超400万円以下:売買金額×4.4%+2.2万円
- 400万円超:売買金額×3.3%+6.6万円
ただし、これらの仲介手数料は法律で定められた上限であり、上限よりも安い手数料設定をしている不動産会社もあります。
売主にとって仲介手数料が安い点はメリットと言えますが、最終的に売却が長期化してしまうのであればデメリットにもなり得ます。少ない手数料でポータルサイトへの広告や人件費へ割く余力があるのか、安くてもちゃんとした販売活動ができるのかは確認すべきでしょう。
また、仲介手数料の支払いのタイミングは、基本的には物件の決済・引渡し時ですが、半金を売買契約時に買主から預かった手付金から前払いするケースもあります。
印紙税
売買契約書には印紙を貼る必要があり、その金額は売買代金によって次のようになっています。印紙の購入費用を不動産会社が立て替えている場合には、これらの費用が売買契約の締結時にかかってきます。
売買契約金額 | 印紙税 |
---|---|
10万円超50万円以下 | 200円 |
50万円超100万円以下 | 500円 |
100万円超500万円以下 | 1,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 5,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 10,000円 |
5,000万円超1億円以下 | 30,000円 |
1億円超5億円以下 | 60,000円 |
5億円超10億円以下 | 160,000円 |
10億円超50億円以下 | 320,000円 |
50億円超 | 480,000円 |
3-2.場合によってはかかる費用
場合によってかかってくる費用には次のようなものがあります。
- 測量費用
- 登記費用
- ローンの繰上げ返済手数料
- 引っ越し関連費用
- 譲渡所得税・住民税
それぞれについて、内容と金額の目安を解説していきます。
測量費用
売却する一軒家の敷地の境界が確定していない場合、確定測量をすることが売却の条件になるケースがあります。この場合、およそ30万円から60万円程度の測量費用がかかることになります。
測量には1カ月から3カ月程度、隣地所有者が承認しないなどの場合はそれ以上の期間がかかることがあるので、測量が必要な場合は販売活動と並行して行われることもあります。費用は測量が完了次第に支払うことになります。
登記費用
売却した一軒家が住宅ローンなどの担保になっているケースなどでは、登記費用が売主負担になることがあります。この場合、一軒家に抵当権が登記されていてるため、売却時に抹消する必要があります。
抹消にかかる費用には、登録免許税という税金と手続きを代行する司法書士に支払う報酬があります。登録免許税は不動産1個につき1,000円、司法書士報酬は、2万円~3万円程度が相場となります。司法書士への報酬は決済、引渡し時に支払います。
ローンの繰上げ返済手数料
売却する一軒家にローンが残っている場合、金融機関によっては当初の完済予定期限より前に返済すると追加手数料を取るケースがあります。
繰上げ返済の手数料は、購入時に組んだローン商品によって様々ですが、一種の違約金として扱われるため、場合によっては返済額の2~3%程度取られることもあります。
こちらも売買代金の決済金によって完済するので、決済、引渡し時に支払うことになります。
引っ越し関連費用
売却する一軒家に売主が居住している場合、引っ越しするための費用がかかります。引っ越しのための家財の運搬費用のほか、新居が決まっていなければ、新居を探す費用もかかってくることになります。
注意しなければならないのは、業務用の機械などを設置していて、売却にあたってそれを片付けなければならない場合です。産業廃棄物の処分には数十万円程度の高額な費用がかかることもあります。
譲渡所得税・住民税
一軒家を売却したことによって利益が出た場合、税金を支払う必要があります。税金には、「譲渡所得税」と「住民税」があります。
これらはいずれも、譲渡所得=収入金額―(取得費用+譲渡費用)―特別控除、に対して一定の税率を乗じて計算されます。
取得費用には取得価格が含まれているため売却価格が取得価格を下回るのであれば、譲渡所得がプラスになるケースは少ないと言えます。プラスにならなければ譲渡所得税の課税対象とはならないため税金も課税されず、税務申告も不要です。
しかし、建物価格が大きい場合は減価償却によってプラスに転じることがあるので注意しましょう。
譲渡所得税は、長期(5年以上)所有の場合15.315%、短期所有の場合30.63%となっています。売却した翌年の3月15日までに確定申告をして納めることになります。
住民税は、長期の場合5%、短期の場合9%で、確定申告の情報に基づいて翌年6月以降に順次分割納付となります。
なお、高く売却できて譲渡所得税がかかりそうな場合でも、売却した不動産が自分の居住していた家であり、住まなくなった日から3年以内であれば、3,000万円の特別控除が適用できる可能性があります。
3,000万円の特別控除を申請するには不動産売却後の確定申告が必要になります。確定申告の手順も併せて確認しておきましょう。
【関連記事】【5分で分かる】確定申告が面倒な人へ。不動産売却後の確定申告ガイド
まとめ
今回は一軒家の売却にかかる期間や費用、できる限り損失を出さずに高く売るコツについて紹介しました。
一軒家の売却は、比較的長期間にわたり、手間もかかります。できるだけ損をせずに、売却した後手元に多くの資金を残すために、本記事を参考にしていただき、綿密に売却計画を立てて実行していただきたいと思います。
佐藤 永一郎
最新記事 by 佐藤 永一郎 (全て見る)
- 公認会計士が不動産投資をするメリット・デメリットは?体験談・口コミも - 2024年9月20日
- 不動産投資を小さく始める方法は?初心者向けの手順や注意点を解説 - 2024年8月25日
- 中古マンション投資のメリット・リスクは?初心者向けの注意点も - 2024年7月27日
- 不動産小口化商品のリスクは?購入・投資前に確認しておきたい5つのポイント - 2024年6月2日
- 相続不動産を売却したら税金はいくら?シミュレーションで解説 - 2024年3月31日