個人でESG不動産投資を始めるには?物件・サービス選びのポイントや始め方も

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ESG投資とは、環境、社会、ガバナンスを重視した経営を行う企業の株式や債券などを対象とした投資のことを指しています。

不動産投資は実物資産を保有したり、運用したりすることで収益を得る投資方法であり、株式などと比較してオーナー個人の意見を反映させやすい投資対象です。人が生活する住居としての役割、地域社会への影響、使用される資材など、ESGの観点から注目されるポイントも多く、投資家が注意しておきたい事柄も多いと言えるでしょう。

今回のコラムでは、個人でESG不動産投資を始める方法や、物件・サービスの選び方について解説していきます。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定サービスの利用を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. ESG投資とは
  2. ESG不動産投資を始める方法
    2-1.環境に配慮した物件を購入して不動産投資を始める
    2-2.ESG課題に取り組むデベロッパーの不動産を購入する
    2-3.ESG課題に取り組む不動産投資クラウドファンディングを活用する
    2-4.J-REITでESG課題に取り組む法人や事業に投資する
    2-5.空き家を活用して不動産投資を始める
  3. ESG不動産投資における物件・サービス選びのポイント
  4. まとめ

1 ESG投資とは

ESG投資とは、環境や社会の発展に貢献するために行う投資のことです。ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治や管理)の頭文字をとったもので、下記のようなことを指します。

E(Environment、環境)

環境に配慮することを指し、具体的には下記のようなことが考えられます。

  • 再生可能エネルギーの活用
  • CO2排出の削減
  • 環境問題に配慮した製品の製造、など

S(Social、社会)

社会や地域に貢献・寄与することを指し、具体的には下記のような対応や施策のことです。

  • 労働環境の整備
  • 地域活動への貢献
  • 雇用における男女差の解消、など

G(Governance、企業統治や管理)

収益を上げることに加えて、透明性を保って経営をすることを意味しており、具体的には下記のようなことを指します。

  • コンプライアンスの順守
  • 適切な情報開示による経営の透明性
  • 強固なリスクマネジメント、など

このようなESG課題は、不動産を開発するデベロッパーや不動産投資会社などの経営方針や将来的なビジョンなどにも影響を与えています。また、個別に所有者が存在する不動産運営においては不動産投資を行う個人投資家(物件オーナー)自らが経営者となるため、これらの社会課題について注目しておくことも大切なポイントとなります。

不動産投資を行う際に、短期的な利益を追求して環境に負荷をかけるのではなく、今後は中長期的な視点でESG課題に取り組む企業に重点的に投資することが個人投資家にも求められている、ということが言えるでしょう。そこで次の項目では、個人でESG不動産投資を始める方法について紹介していきます。

2 ESG不動産投資を始める方法

ESG不動産投資とは、ESG課題の解消を目的の一つにして不動産投資を行うことです。オーナー自身がESG課題の解決に向けて取り組むことのほか、ESG課題解消に向けて取り組む企業に投資をするなどの方法があります。この項目では、代表的な5つについて解説していきます。

2-1 環境に配慮した物件を購入して不動産投資を始める

オーナー自身がESG課題の解消に向けて不動産投資を始める方法として、環境面に配慮した物件を購入することが挙げられます。具体的には、下記のような対策を講じた物件を指します。

  • 環境配慮型コンクリートを用いて建築したマンション
  • ソーラーパネルを活用して電力を自前で賄っているアパート
  • 壁面や屋上に緑化をしているマンション
  • CO2排出を抑制して建築したマンション
  • 性能の高い断熱材を用いて断熱性能に優れたアパート、など

このようにESG課題に対応した物件を購入して賃貸経営を始めることで、ESG不動産投資を始めることができます。

また、区分所有する物件の設備や仕様をESG課題解決に向けてリフォームし直すことでも、ESG不動産投資を始めることができます。具体的なアイデアとしては下記のようなことが考えられます。

  • 物件内の照明をすべてLEDにする
  • キッチンやバスルームの水栓を節水型水栓にする
  • 省エネ設計の給湯器やエアコンを導入する
  • 再生木材を利用してリフォームを行う、など

建物自体が環境に配慮していなくても、室内をリフォームする際にこのように環境に配慮することでESG不動産投資となります。

2-2 ESG課題に取り組むデベロッパーの不動産を購入する

ESG投資とは、投資先の経営方針や企業体質などを評価して投資することです。そのため、ESGに配慮した物件を供給していなくても、ESG課題の解決に向けた取り組みを行う企業が供給する不動産を購入して不動産投資を始めることもESG不動産投資となります。

具体的には下記のような投資先が考えられます。

  • 適切な情報開示によって経営の透明性を図っている
  • 女性管理者を増やすなど男女の雇用に関して差をなくしている
  • 地域活性化に向けて社会貢献活動に積極的に取り組んでいる
  • 社用車をすべて電気自動車(EV)にしている、など

2-3 ESG課題に取り組む不動産投資型クラウドファンディングを活用する

少額から始められる不動産投資として、クラウドファンディングを活用した商品があります。

不動産投資型クラウドファンディングは、不動産のプロが厳選した案件や、不動産投資会社が建てた物件へインターネットを介して出資をし、その加入口数に合わせて分配金を受け取る仕組みです。不動産を保有(登記)しない匿名組合型のクラウドファンディングでは、1~10万円などの比較的に少額資金ではじめることが可能となっています。

不動産投資型クラウドファンディングの中には、環境に配慮した物件を供給したり、ESG課題に配慮した物件を供給する不動産投資会社があります。こうした不動産会社のクラウドファンディングに参加することもESG不動産投資の一つとなります。

下記は、環境課題や社会課題に取り組んでいる不動産投資型クラウドファンディングサービスです。

クリアル株式会社「CREAL(クリアル)」

クリアル株式会社では、社会問題となっている待機児童問題の解決に向けた保育園や学校などを新設するためのクラウドファンディングを実施しています。

不動産投資型クラウドファンディングの「CREAL」でESG不動産を対象としたファンド数は11件を数えており、2022年3月末時点での累計取得金額は約51億円でCREALでの合計取得金額の約34%となっています。ヘルスケア施設や教育施設、保育施設など、様々なタイプの物件へ投資できるのが特徴です。

1万円から投資ができるので、初心者の方でも少ない資金から不動産投資型クラウドファンディングを始められる点もメリットとなります。

※CREALでは、下記ページ経由で新規に投資家登録やファンドへの投資を行うと最大50,000円のAmazonギフト券がプレゼントされるキャンペーンを開催中です。詳しくはCREALのキャンペーンページでご確認下さい。

株式会社ウッドフレンズ「信長ファンディング」

株式会社ウッドフレンズは、東京証券取引所(東証)スタンダード市場と名古屋証券取引所(名証)に上場しており、不動産開発や販売だけでなく生活環境に関連する事業なども行っている企業で、不動産投資型クラウドファンディングの「信長ファンディング」を運営しています。

信長ファンディングは、国産木材を積極的に活用した賃貸アパートや中古不動産再生物件を商品化することで、株式会社ウッドフレンズがこれまで培ってきた不動産事業や建設事業、建材事業などのノウハウを活かした不動産型クラウドファンディングサービスとなっています。

地域経済の活性化や国産材の積極活用などを特徴として掲げており、国産木材を積極的に活用した賃貸アパートや中古不動産再生物件への投資が可能です。最低投資金額は10万円と他サービスと比べてやや高めですが、名古屋など東海エリアに投資ができる点や予定分配率の水準が5%程度と高めな点、上場企業が運営しているといったメリットがあります

2-4 J-REITでESG課題に取り組む法人や事業に投資する

J-REIT(Jリート)とは、日本版不動産投資信託とも言われる金融商品です。投資法人が投資家から集めた資金で不動産の運用を行い、投資家に利益を分配する仕組みで、株式投資と同様に、投資家が投資証券を所有することで不動産投資による運用益が得られることになります。

J-REIT市場に上場している投資法人の中には、ESGに配慮した物件を用いて運用している法人が多くあります。例えば、ホームページでESGへの取り組みを記載している法人として以下が挙げられます。

  • オリックス不動産
  • 東急リアル・エステート
  • 森トラスト総合リート
  • 大和証券オフィス
  • イオンリート
  • 野村不動産マスターファンド
  • 三井不動産ロジスティクスパーク

2-5 空き家を活用して不動産投資を始める

少子高齢化や人口減少などによって全国には空き家が850万戸あり、管理が適切に行われないことで倒壊や不法投棄、犯罪の利用など、様々な問題に関連した社会問題になっています。

空き家や空き店舗を活用して不動産投資を行うことは、地域の人口増加あるいは雇用創出につながり、地域創生に向けたESG不動産投資になります。実際に空き家を保有して行う空き家投資の手法としては以下の3つの手段があります。

  • 空き家の賃貸経営
  • 空き家のリフォーム再販
  • 空き家を利用した事業経営

【関連記事】空き家投資のメリット・デメリットは?始め方や注意点も

しかし、空き家投資は人口減少が進んでいる過疎地域がエリアになることが多く、投資としてはややハイリスクな投資対象となります。オーナー自身に空き家再生のノウハウがない場合は、空き家再生を中心にした不動産投資を手掛けるクラウドファンディングに出資する方法を検討されてみるのも良いでしょう。

3 ESG不動産投資における物件・サービス選びのポイント

不動産投資を行う場合、利回りやインカムゲイン・キャピタルゲインといった財務面や資産価値を評価し、物件の選定を行います。

ESG不動産投資ではこれら物件の価値や事業性などの観点に加えて、投資対象となる企業の財務状況、環境問題への取り組み、社会的な活動の有無、コーポレートガバナンス、対象物件の環境性能などを下記のような情報から評価する必要があります。

  • 決算説明資料
  • 決算説明動画
  • 経営者のメッセージ
  • 有価証券報告書
  • 企業サイト内のESG関連ページ、など

これらを総合的に判断し、さらに事業として将来性があるのか検討して投資判断をするようにしてみるのも良いでしょう。具体的には、ESGの観点から問題のある企業や物件を外していく「ネガティブスクリーニング」や、高く評価できる企業や物件をピックアップしていく「ポジティブスクリーニング」といった方法で選定をしていく手法もあります。

また、物件やサービスを選ぶ際に参考にしたいのが不動産に関する評価制度です。法人や団体が環境性能などの評価をしており、投資先となる企業や物件がこのような外部評価を獲得しているかどうか確認することで、投資先選定に役立てることができます。

主な不動産関連の評価制度は下記のようなものがあります。

CASBEE

一般社団法人住宅・建築SDGs推進センターが行っている「建築環境総合性能評価システム」です。省エネ機器の使用や環境負荷の少ない資材を使用しているといった環境配慮、室内の快適性、景観への配慮などで、「Sランク」「Aランク」「B+ランク」「B-ランク」「Cランク」の5段階で評価しています。

DJBグリーンビルディング認証

日本政策投資銀行(DBJ)が提供している認証制度です。「オフィスビル」「ロジスティクス」「リテール」「レジデンス」という4つの分野で、ESGに基づく「建物の環境性能」「テナント利用者の快適性」「多様性・周辺環境への配慮」「ステークホルダーとの協働」「機器に対する対応力」という5つの視点から評価しています。

LEED

アメリカの非営利団体USGBCが運営している、ビルト・エンバイロメント(建築や都市の環境)に関する環境性能評価システムです。「立地と交通」「材料と資源」「エネルギーと太陽」などの項目で評価し、「標準認証」「シルバー」「ゴールド」「プラチナ」の4段階で認証レベルを表しています。

BELS認証

国土交通省のガイドラインに基づき、一般社団法人住宅性能評価・表示協会によって創設された評価制度です。BELSはBuilding-Housing Energy-efficiency Labeling Systemの略で、日本語では「建築物省エネルギー性能表示制度」となります。建築物一次エネルギー消費量に基づいて、「1つ星」から「5つ星」までの5段階で評価しています。

まとめ

これまでの不動産投資はリターンによる「収益性」や「事業性」が優先されてきましたが、ESG課題への配慮も長期的な視点に立った投資を行ううえで重要なポイントになると推測されます。

社会的な評価の獲得に加えて、金融機関が行う担保評価へ影響を与える可能性もあると言えるでしょう。個人でもESGを踏まえて不動産投資を行うことで、長期的なリターンに繋がると考えられます。

今回はESG不動産投資を始める方法として、5つの方法をご紹介しました。不動産投資を始める際は、今回のコラムで解説したポイントを参考にしつつ、投資方法を検討されてみると良いでしょう。

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倉岡 明広

経済学部経済学科卒業後、出版社や編集プロダクション勤務などを経てフリーライターとして独立。雑誌や新聞、インターネットを中心に記事を執筆しています。初心者が抱く不動産投資の疑問や質問を解決できるよう丁寧な記事を執筆していきます。