空き家再生投資におすすめのエリアは?地価や家賃相場、人口推移から検証

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人が住んでいない空き家を再生、入居付けして運用する、空き家再生投資が人気です。

ただし、空き家再生投資ではリフォームなどで比較的多額の初期費用がかかり、建物の活用期間も限られていることから、出口戦略を意識した物件選びが大切になります。

この記事では、空き家投資で注目したいエリアについて、地価や家賃相場、人口推移から検証していきます。

目次

  1. 空き家再生投資とは
    1-1.空き家再生投資では購入時から出口戦略を考える
  2. 空き家再生投資でおすすめのエリアを地価や家賃相場の観点から検証
    2-1.新横浜(神奈川県)
    2-2.府中(東京都)
    2-3.柏(千葉県)
    2-4.大宮(埼玉県)
  3. 空き家再生投資でおすすめのエリアを人口推移の観点から検証
    3-1.人口が増加している都道府県
    3-2.人口密度の高い都道府県
  4. まとめ

1.空き家再生投資とは

「空き家再生投資」とは、人が住んでいない空き家を安価で購入し、入居者を付けて運用する不動産投資法のことです。

投資対象となる「空き家」は、人が住んでいない状態で購入するため、生活必需の設備が故障していたり、老朽化が進んでいたりすることがあります。その場合は、入居者を募集できるような状態にまでリフォームをして、貸し出すことになります。

初期費用として、購入費用に加えてリフォーム費用がかかること、と家賃収入が入ってくるようになるまでに時間がかかるのが特徴です。また、「空き家再生投資」は、築古木造戸建てでおこなうのが基本であるため、不動産投資ローンがつきにくく、現金一括購入が多いのも特徴といえるでしょう。

1-1.空き家再生投資では購入時から出口戦略を考える

空き家再生投資では、初期投資としてかかる支出が大きくなります。また、建物が元々老朽化していることも多く、建物が賃貸用として活用できる期間は限られているといえるでしょう。また、ローンを組みにくく現金買いの場合はレバレッジも効きません。

このため、家賃収入によって比較的短期間に初期投資を一定程度は回収したいといえます。つまり、利回りが比較的高めである地域が望ましいでしょう。首都圏の一棟収益物件の利回りは5~8%程度であることを鑑みても、10%以上が目安に検討されることになります。

長期的に家賃収入を見込むためにも、人口過疎地域は高いリターンを見込める反面ハイリスクと考えられるため、まずは大都市圏の範囲内から検討していくことが好ましいでしょう。具体的な検討対象は、東京圏、大阪圏、名古屋圏、福岡圏となります。

賃貸建物が活用できなくなった後は、更地にして売却し、初期投資の費用をある程度回収できるような出口戦略を立てる必要があります。

このように考えると、家賃収入を得た後も地価があまり下落せず、土地の購入需要があるような地域が条件と言えます。10年程度でリフォームした内装や設備などが劣化してくることを考え、過去の人口推移、人口密度から、10年後の人口が大きく減少していないことが予想される地域が対象となります。

【関連記事】空き家再生投資に必要なリフォームは?7つのチェックポイントと費用も

2.空き家再生投資でおすすめのエリアを地価や家賃相場の観点から検証

公益財団法人不動産流通推進センターから東京圏の3DKの家賃相場マップが公表されています。ここでは、東京圏の家賃相場を細かく網羅しているこのマップを下に、地価と家賃相場の観点から、空き家再生投資に向いているエリアを検証してみましょう。

東京圏は地価が高いため、都心に近い地域では利回りが伸びず、空き家再生投資で目標としたい10%以上の利回りを期待するのは難しくなります。そこで、都心から20~30キロエリアを中心に検証してみましょう。空き家再生投資は、戸建てを基本とするため、戸建てとして最低限の広さといえる80㎡の土地に建っている築古戸建てを、土地値で購入した場合を想定していきます。

2-1.新横浜(神奈川県)

公益財団法人不動産流通推進センターから東京圏の家賃相場マップによると、新横浜の3DKの家賃相場は、12万円です。新横浜駅近隣の2022年公示地価のうち、駅700メートルの住宅地の横浜市港北区篠原町字板倉谷の公示地価は、274,000円/㎡となっています。

仮に、80㎡の古家付き土地を土地値で購入したとすると、2,192万円となります。

取得費用やリフォームを考慮しない表面利回りは、12万円×12月÷2,192万円×100=6.6%となります。空き家再生投資としては、利回りが低い地域といえるでしょう。

2-2.府中(東京都)

公益財団法人不動産流通推進センターから東京圏の家賃相場マップによると、府中の3DKの家賃相場は、14.5万円です。府中駅近隣の2022年公示地価のうち、駅2,000メートルの住宅地の府中市天神町の公示地価は、284,000円/㎡となっています。

仮に、80㎡の古家付き土地を土地値で購入したとすると、2,272万円となります。

取得費用やリフォームを考慮しない表面利回りは、14.5万円×12月÷2,272万円×100=7.7%となります。こちらについてもやはり、空き家再生投資としては利回りが低い地域といえるでしょう。

2-3.柏(千葉県)

公益財団法人不動産流通推進センターから東京圏の家賃相場マップによると、柏の3DKの家賃相場は、12万円です。柏駅近隣の2022年公示地価のうち、駅700メートルの住宅地の柏市東上町の公示地価は、192,000円/㎡となっています。

仮に、80㎡の古家付き土地を土地値で購入したとすると、1,536万円となります。

取得費用やリフォームを考慮しない表面利回りは、12万円×12月÷1,536万円×100=9.4%となります。利回りが比較的高く、空き家再生投資には向いている地域と考えることができます。

2-4.大宮(埼玉県)

公益財団法人不動産流通推進センターから東京圏の家賃相場マップによると、大宮の3DKの家賃相場は、14万円です。柏駅近隣の2022年公示地価のうち、駅2,000メートルの住宅地のさいたま市大宮区櫛引町の公示地価は、196,000円/㎡となっています。

仮に、80㎡の古家付き土地を土地値で購入したとすると、1,568万円となります。

取得費用やリフォームを考慮しない表面利回りは、14万円×12月÷1,568万円×100=10.7%となります。こちらも利回りが比較的高く、空き家再生投資には向いている地域といえるでしょう。

3.空き家再生投資でおすすめのエリアを人口推移から検証

東京圏のうち、地価や家賃相場の観点から、利回りが比較的高くなりやすく、空き家再生投資に向いていると考えられる地域について検証しました。

それでは、東京圏以外の大都市圏はどうでしょうか。以下では、人口推移から大都市圏が空き家再生投資に向いているのかどうかを検証してみましょう。

3-1.人口が増加している都道府県

総務省が令和4年に発表した「令和2年国勢調査人口等基本集計結果」の統計を下に、人口が増加している都道府県をみてみましょう。

都道府県 2010年~2015年人口増加率 2015年~2020年人口増加率
東京都 2.7% 4%
沖縄県 2.9% 2%
神奈川県 0.9% 1%
埼玉県 1.0% 1%
千葉県 0.1% 1%
愛知県 1.0% 1%
福岡県 0.6% 1%

直近5年間に人口増加が継続していたのは東京圏の1都3県、沖縄県、愛知県、福岡県です。この傾向は、直近10年間をみても、ほぼ変わりません。

なお、大阪府は、全国平均の減少率と比べると低いものの、直近10年間および5年間、やや人口が減少しています。

これらの人口が増加している都道府県は、10年後の人口も大きく減少する可能性は低く、住宅需要が堅調であると推測されることから、比較的空き家再生投資にも向いている地域である考えることができます。

3-2.人口密度の高い都道府県

次に、前述した総務省の統計を下に人口が増加している都道府県をみてみましょう。

都道府県 2020年人口密度
東京都 6,403人/㎡
大阪府 4,638人/㎡
神奈川県 3,823人/㎡
埼玉県 1,934人/㎡
愛知県 1,458人/㎡
千葉県 1,218人/㎡
福岡県 1,030人/㎡

人口密度の高さの上位は、東京圏の1都3県、大阪府、愛知県、福岡県となっています。

人口密度の高さは、住宅需要の多さにつながります。人口密度が高いと、限られた土地に人口が密集することから、集合住宅の需要も高まりますが、その分やや都市部から外れた住宅地域の戸建ての供給が少ないことが推測されます。これらの地域は、空き家再生投資には比較的向いている地域であるといえるでしょう。

まとめ

空き家再生投資では、建物の活用期間が比較的短く、ローンによるレバレッジもかけにくいことから、比較的高めの利回りが期待されます。

東京圏の地価、家賃相場の統計データから利回りを検証すると、空き家再生投資に向いている地域は、東京圏では、都心20キロ~30キロ圏の埼玉県や千葉県に多いといえます。

また、空き家再生投資では、初期投資を売却によってある程度回収したいといえます。そのためには、10年間ぐらいの期間、賃貸需要や地価が大きく下落しないことが期待されます。その観点から、今回の人口推移や人口密度のデータを検証すると、1都3県や大都市圏、沖縄県が比較的向いているエリアであると言えるでしょう。

ただし、不動産は個別性の高い資産であり、より細かな地域ごとの特性や条件によって賃貸ニーズは変化し、また物件の状態などによっても初期費用が大きくことなってきます。マクロの視点によるデータの検証は大まかな方針を決定する際に役立ちますが、実際の投資判断は物件ごとの詳細を確認し、慎重に検討していくことが大切です。

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佐藤 永一郎

筑波大学大学院修了。会計事務所、法律事務所に勤務しながら築古戸建ての不動産投資を行う。現在は、不動産投資の傍ら、不動産投資や税・法律系のライターとして活動しています。経験をベースに、分かりやすくて役に立つ記事の執筆を心がけています。