資産形成のための長期運用を検討するにあたって、ファンド選びに迷っている方も多いのではないでしょうか。
運用成績を確認するのはもちろんのこと、運用コストなど注目すべきポイントはいくつかあります。本記事では、長期運用を行うにあたって、ファンド選びの際に見るべきポイントを紹介しています。
ファンド選びの基準がいまいち分からないという方は、ご確認ください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※信託報酬など、課税対象となる数値はすべて税込表示としています。
目次
- 何年を超えたら長期運用?長期運用の基本的な考え方とは
1-1.余裕資金による10年〜20年の運用
1-2.長期運用の過程でチェックしておきたい運用成績 - 長期運用に良いのはインデックスファンド?アクティブファンドとの比較
2-1.ベンチマークへの連動を目指すインデックスファンド
2-2.ベンチマークよりも上を目指すアクティブファンド
2-3.運用次第ではアクティブファンドが良いケースも - 長期運用の成績が良い5つのファンド
- 長期運用に適したファンドの選び方
4-1.運用コスト
4-2.低リスク運用
4-3.債券ファンドの検討
4-4.運用のベースはバランスファンド - まとめ
1.何年を超えたら長期運用?長期運用の基本的な考え方とは
資産形成には長期運用という考え方は広く浸透しつつありますが、具体的に長期運用とは何年以上の運用期間を指し、どのような運用スタイルをとっているのでしょうか。
1-1.余裕資金による10年〜20年の運用
投資信託の長期運用による資産形成は、比較的新しい運用スタイルです。以前の投資信託の運用手法は、株のような回転売買が多くを占めていました。
回転売買のリスクが認識され、個人の資産形成がフォーカスされるにしたがって、投資信託の長期運用という言葉が目立ち始めた背景があります。
具体的に長期運用とは、生活費や急な病気に備えた資金を手元に残しつつ、残った余剰資金を運用に充てるスタイルをいいます。運用資金を取り崩す時期にもよりますが、長期運用の期間はおおよそ10年〜20年以上の運用期間を指すことが多い傾向です。
1-2.長期運用の過程でチェックしておきたい運用成績
投資信託の運用成績は、決算を迎えるごとに発行される運用報告書の他に、月次、週次レポートにて報告されます。
長期運用の場合、日々の基準価額の増減に一喜一憂する必要はありませんが、大きな流れは捉えておく必要があります。
長期運用の過程で確認しておきたいポイントは、以下の3点です。
- 純資産の増減
- 分配金の推移
- 社会のトレンド
ファンドの純資産総額は、基準価額の推移を表すグラフとともに表示されています。ファンドは潤沢な資金がなければ思うような運用ができません。純資産総額はファンドの注目度や信頼度を表す数値でもあります。急激な減少を確認した場合は、要因を分析しましょう。
特別分配金を出すファンドは別ですが、一般的なファンドの分配金の有無は、ファンドの運用成績に直結します。分配再投資に設定している場合でも、決算ごとの分配金の金額は確認しておいたほうが良いでしょう。
純資産が減少し、分配金も無くなる状況では、ファンドの運用が思わしくない証拠です。
運用報告書や月次レポートに記載される運用概況や今後の運用方針と合わせて、内容をよく確認しておきましょう。
2.長期運用に良いのはインデックスファンド?アクティブファンドとの比較
資産形成といえばインデックスファンドを活用した長期運用、という考え方も定着している感がありますが、長期運用のファンド選びは本当にインデックスファンドが一番良いのでしょうか。
インデックスファンドやアクティブファンドの特徴を確認しつつ、運用成績について考察します。
2-1.ベンチマークへの連動を目指すインデックスファンド
インデックスとは指標、ファンドとは「複数の投資家から資金を集めて投資を行い、リターンを分配する仕組み」を指します。
インデックスファンドは、株式や債券、商品などの指数に連動する運用成績を目指すことを目的としているファンドです。通常は、ベンチマークとする指数に採用されている同じ銘柄で構成されるため、組入比率は同じになります。
日経225やダウ平均のインデックスファンドは、レポートを確認しなくとも、日々指数を確認していればファンドの運用成績が把握できるわかりやすさがメリットです。
2-2.ベンチマークよりも上を目指すアクティブファンド
アクティブファンドとは、プロのファンドマネージャーの責任で投資商品を選定、運用して、ベンチマークとしている指数を上回る成績を目指すファンドです。
運用スタイルは多岐にわたりますが、主な手法はバリュー投資やグロース投資、テーマに沿って銘柄を選定するテーマ型投資などが中心です。
運用成績はファンドマネージャーの力量によるところが多く、属人化の懸念もあります。
2-3.運用次第ではアクティブファンドが良いケースも
インデックスファンドとアクティブファンド、どちらがいいのか?というテーマをよく目にすることがあります。
インデックスファンドの方が良いと言われる要因は、人の判断が介入しないため属人化しないことと、低コスト運用によるところが大きいのではないでしょうか。
属人化が懸念される根本的な理由は、運用期間が長くなればなるほど人の判断の介在によって失敗する可能性が高まる、という考え方です。アクティブファンドは人の介在と売買回数の多さから、インデックスファンドに比べると運用コストは割高になります。
インデックスファンドは運用スタイルの性質上、アクティブファンドに比べて運用コストを抑えた運用ができますが、ベンチマークを大きく超えることはできません。相場下落時の救急対応も無しです。
長期運用においてファンドを選ぶ時は、柔軟性を持った考え方が必要です。
3.長期運用の成績が良い5つのファンド
楽天証券の投信スーパーサーチより、20年のトータルリターンが良い上位5ファンドをピックアップしました。
数値は2023年3月16日時点の情報です。
ファンド名 | リターン | 運用管理費用 | |||
---|---|---|---|---|---|
20年 | 10年 | 5年 | 設定来 | ||
JPMザ・ジャパン | 13.69 | 7.71 | 2.71 | 8.83 | 0.0187 |
スーパー小型株ポートフォリオ | 13.69 | 15.89 | 5.71 | ― | 0.0132 |
日本新興株オープン | 12.89 | 16.74 | 4.48 | ― | 0.0167 |
MHAM新興成長株オープンJ-フロンティア | 12.49 | 17.76 | 4.86 | 5.82 | 0.0187 |
フィデリティ・アジア株・ファンド | 11.91 | 9.01 | 5.67 | 8.46 | 0.019 |
長期運用とインデックスファンドの相性の良さは、最近よく取り上げられるテーマですが、実際に20年の長きにわたって良い運用成績をだしているのはアクティブファンドでした。
10年や5年のトータルリターンでソートしても、上位はアクティブファンドが多くを占めています。
20年間のトータルリターンをプラスでまとめている要因は、ひとえにファンドマネージャーを始めとするファンドの運用方針に依るところが大きいのではないでしょうか。
インデックスファンドで長期運用を行うメリットは、リターンよりも低コスト運用のほうに意味があるのかもしれません。
4.長期運用に適したファンドの選び方
長期運用を行うにあたって、一般的なファンド選びの注目ポイントを以下に紹介します。資産運用には例外もありますので、状況に応じた判断も必要です。
- 運用コスト
- 低リスク運用
- 債券ファンドの検討
- 運用のベースはバランスファンド
4-1.運用コスト
投資信託の長期運用において、日々かかり続ける運用コストの把握はとても重要です。
信託報酬は日割り換算した金額が日々ファンドから差し引かれ、基準価額として計算されます。したがって、信託報酬が高ければ高いほど、ファンドにとって直接的な負担となります。
1年や2年の運用であればさほど影響はありませんが、10年を超える長期運用となると、信託報酬の差は見逃せないものとなるでしょう。
しかし単に信託報酬が安ければ良いというものではなく、運用コストと運用成果のバランスを見ることが重要です。
4-2.低リスク運用
長期運用においては、損益の上ブレ、下ブレが激しすぎると思うような運用成績を得られないことから、低リスク運用が良いとされています。低リスク運用と時間の効果によって少しづつ収益を積み上げていけるという考え方です。
リスクという言葉は危険という意味で使われることが一般的ですが、投資においてのリスクとは価格変動の幅のことを指します。低リスク運用とは、値動きが少ない運用のことです。
低リスクファンドを探す時は、標準偏差に注目しましょう。標準偏差とは、リターンのばらつき具合を数値化したものです。数値が大きいほどブレが大きく、少ないほどブレが少ないことを意味します。リスクの大きさを測るには見逃せない指標です。
4-3.債券ファンドの検討
投資信託の資産運用というと株式ファンドが注目されがちですが、利払いによるインカムゲインで資産を増やしていく債券ファンドも長期運用のポートフォリオとして検討したいところです。
債券は利払いを受け取りつつ償還日に全額返済される運用商品です。国内債券であれば比較的低リスク運用を実現できます。
債券には金利リスクと信用リスクが介在しますが、ファンドへの投資であれば、ある程度はファンドマネージャーの責任で対応してくれるでしょう。
4-4.運用のベースはバランスファンド
バランスファンドは、株式や債券不動産など、異なる資産へ分散投資するファンドです。相場下落時にはお互いの資産どうしが緩衝役となり、大きな損失を防いでくれるメリットがあります。反面、上昇相場時も同様の力が働くため、値上がりを抑えてしまうデメリットもあります。
バランスファンドは、値動きがかなり緩やかなため、長期運用のベースを作るにはよい選択です。
まとめ
長期運用を行うにあたってのファンド選びは、純資産総額の推移や運用コスト、トータルリターンなど、数値を客観的に見て判断する必要があります。
インデックスファンドは分かりやすく低コスト運用ができますが、必ずしも成績が良いわけではありません。運用コストと成績のバランスで見るようにしましょう。
sayran
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