ハザードマップから見る不動産投資戦略「東京23区の地震危険度ランキング」最もリスクが高いのは…?

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ハザードマップから見る不動産投資戦略「東京23区の地震危険度ランキング」最もリスクが高いのは…?

日本では、細かいものも含めると年に2000回近くもの地震が発生しており、マグニチュード7程度の大地震の発生確率は、今後30年以内に70%程度とも言われています。不動産投資を考える際にも、地震のリスクを切り離すことはできず、あらかじめ念頭に入れた動きを取っておきたいところです。

東京都では、地震が起きた際の地域危険度を5年に一度公表しています。この記事では、地域危険度のデータをもとに、東京23区の地震危険度をランキングにしてみましたので、これから不動産投資を始める方はエリア検討の際にご参考にしていただければと思います。

目次

  1. 地震発生時の地域危険度マップとは
  2. 総合の地震の危険度ランキング
  3. 倒壊危険度ランキング
  4. 火災危険度ランキング
  5. 災害時活動困難係数ランキング
  6. 不動産投資における震災リスクの考え方
    6-1.安全性が高い地域での投資は有効な選択肢の一つ
    6-2.区内でリスクの低い地域を探す
    6-3.リスクを受け入れて備えることも大切
  7. まとめ

1.地震発生時の地域危険度マップとは

地域危険度マップは、東京都都市整備局が5年に一度行っている「地震に関する地域危険度測定調査(第9回)」という定期調査に基づいて、都内の市街化区域の5,192町丁目について、建物倒壊・火災危険度・災害時活動困難度を考慮した総合危険度が5段階で表されたものとなります。5段階で4、5にあたる地域が地震の際に「危険度の高い地域」となっており、以下のようなマップの形で公開されています。

※画像引用:東京都都市整備局「地震に関する地域危険度測定調査(第9回)

この地域危険度はExcelデータでも公開されていますので、今回は東京23区にエリアを絞り、区内の各地域のランクの平均を取ることで、区全体の危険度ランクを算出してみました。

2.総合の地震の危険度ランキング

令和4年時点の東京都23区の地震危険度を集計しました。今回は東京都都市整備局が定期的に公表している「地震に関する地域危険度測定調査」をもとに、各区の平均値を取ってランク化しています。

なお、点数が低い方が安全性が高いことを意味していて、ランキングも点数が低い方を上位としています(すなわち、1位が最もリスクの低い区となります)。

こちらの危険度は次の要素を加味して計測されています。

  • 建物倒壊危険度(建物倒壊の危険性)
  • 火災危険度(火災の発生による延焼の危険性)
  • 災害時活動困難係数(災害発生時の救助活動に時間・負担がかかるリスク)

総合的な危険度を集計すると、次のとおりです。

※東京都都市整備局「地震に関する地域危険度測定調査(第9回)」を参照し筆者作成

順位 危険度ランク平均値
1 千代田区 1.31
2 中央区 1.37
3 港区 1.53
4 新宿区 1.63
5 文京区 1.77
6 台東区 1.82
7 墨田区 1.84
8 江東区 1.86
9 品川区 1.97
10 目黒区 2.1
11 大田区 2.21
12 世田谷区 2.33
13 渋谷区 2.38
14 中野区 2.42
15 杉並区 2.47
16 豊島区 2.49
17 北区 2.5
18 荒川区 2.52
19 板橋区 2.62
20 練馬区 2.65
21 足立区 2.71
22 葛飾区 2.76
23 江戸川区 3.48

※東京都都市整備局「地震に関する地域危険度測定調査(第9回)

東京都のなかでも都心部に当たる千代田区、中央区、港区といった地域が上位にきました。

特に千代田区と中央区は突出してリスクが低くなっています。この二つの区については倒壊危険度・火災危険度・災害時活動困難係数すべてにおいて低水準でリスクが低い区です。港区については、倒壊危険度がやや高いものの、災害活動係数が優れているため3位にランクインしています。

逆にリスクが高いのは足立区・葛飾区・江戸川区となりました。足立区と葛飾区については、倒壊危険度の高さがリスクを高める要因となっています。江戸川区は他の区と比べて突出してリスクが高く、こちらは火災・倒壊双方の危険度が高水準です。

3.倒壊危険度ランキング

続いて、倒壊危険度ランキングをまとめました。こちらは、建物の全壊リスクの高さを元に集計された指標です。地盤が弱く、建物に対する揺れの影響が大きくなりやすい地域は危険度が高いと考えられます。また、古い建物、耐震性能が低い建物が多い地域も、倒壊危険度は高くなるでしょう。

※同上

順位 危険度ランク平均値
1 中央区 1.45
2 文京区 1.55
3 新宿区 1.64
4 江東区 1.66
5 千代田区 1.73
6 台東区 1.8
7 品川区 1.82
8 世田谷区 1.85
9 墨田区 1.9
10 目黒区 1.93
11 板橋区 2.13
12 中野区 2.17
13 荒川区 2.18
14 港区 2.19
15 杉並区 2.45
16 大田区 2.56
17 練馬区 2.65
18 北区 2.76
19 豊島区 2.88
20 葛飾区 3.17
21 渋谷区 3.45
22 足立区 3.6
23 江戸川区 3.77

建物の倒壊危険度では、中央区・文京区・新宿区・江東区のリスクが低くなっています。トップの中央区は、再開発が進んだオフィス・タワーマンションなどが多い地域です。地盤は沖積低地が中心でやや軟弱(地震のリスクが高まりやすい)地域ですが、建物の性能の高さがカバーした結果、倒壊危険度のリスクが低くなっているとみられます。

一方で文京区や中央区は、区域の大部分の地盤が揺れの影響を受けにくい「台地」です。さらに近年開発された建物も多いため、ランキング上位に入りました。

また、江東区は新宿区よりわずかにリスクの高い「4位」です。東部は沖積低地のなかでも揺れの影響を受けやすい地域が多いため、地盤の面では倒壊リスクが高くなります。しかしそのなかで、江東区は豊洲や青海地域など近年急速に再開発がすすんだ地域を含みます。これらの建物の耐震性の高さが、リスクの低減につながっていると考えられます。

一方、リスクの高い区をみてみると、渋谷区は地盤は揺れ影響を受けにくい「台地」の地域が多いのですが倒壊危険度は高めです。耐震性の低い、古い建物が多く残っていると考えられます。また、足立区や江戸川区は軟弱な「沖積低地」であるうえ、都心部と比べると古い建造物が多いなどの理由で危険度が高いと評価されたとみられます。

4.火災危険度ランキング

火災危険度は、火災発生時の延焼の危険性をもとに集計されています。地盤が弱く揺れが大きければ、火災がおきるリスクが高くなります。そのほか、建物の構造や密集度合い、道路の幅員や公園の数・広さなども加味されています。

※同上

順位 危険度ランク平均値
1 千代田区 1.1
2 中央区 1.12
3 港区 1.37
4 新宿区 1.39
5 品川区 1.64
6 台東区 1.75
7 目黒区 1.76
8 墨田区 1.84
9 大田区 1.95
10 文京区 1.99
11 江東区 2.16
12 中野区 2.28
13 杉並区 2.38
14 荒川区 2.42
15 豊島区 2.43
16 渋谷区 2.54
17 世田谷区 2.54
18 北区 2.56
19 足立区 2.61
20 板橋区 2.61
21 練馬区 2.62
22 葛飾区 2.86
23 江戸川区 3.56

上位は千代田区・中央区・港区となっていて、総合的な地震の危険度が低い区と重なっています。いずれの区も近年建てられた高層ビルが多く建つ地域です。

高層ビルは、隣の建物と緑地や歩道・道路などで一定の距離を取るかたちで計画される傾向にあります。その結果、防火性・防災性能が高くなり、火災リスクの低下につながっていると考えられます。

一方で、練馬区、葛飾区、江戸川区がリスクの高い3区となっています。また、次点の板橋区も練馬区との差はわずかで、相対的に火災リスクの高い区といえます。

古い木造の家屋が多い、住宅の密集地域が多いなどの原因で火災ランクが高いと評価されているとみられます。なかでも東京の下町の一角で、古い建物が多く残る江戸川区は、ほかの区と比べて突出して火災危険度が高いのが特徴です。

5.災害時活動困難係数ランキング

東京都都市整備局「地震に関する地域危険度測定調査」では、災害発生時の救助活動・復旧活動の難しさも計測しています。これは、一時避難において重要な公園の数、緊急車両の通行に欠かせない6m以上の道路の整備状況などをもとに集計されています。

※同上

順位 危険度ランク平均値
1 港区 0.09
2 渋谷区 0.09
3 千代田区 0.1
4 足立区 0.12
5 葛飾区 0.14
6 豊島区 0.14
7 北区 0.14
8 大田区 0.15
9 墨田区 0.16
10 中央区 0.17
11 杉並区 0.18
12 練馬区 0.18
13 江戸川区 0.18
14 新宿区 0.19
15 台東区 0.19
16 江東区 0.2
17 文京区 0.2
18 品川区 0.2
19 目黒区 0.2
20 中野区 0.21
21 荒川区 0.24
22 世田谷区 0.24
23 板橋区 0.25

港区・渋谷区・千代田区といった都心部の区は、道路整備が進んでいるため順位が高くなっています。足立区も、災害発生時の救助活動などの困難が小さい区となっています。逆に荒川区や世田谷区、板橋区などの区は、地域内に狭い道路が多く、災害時の対応に困難を伴うリスクが高いとみられています。

6.不動産投資における震災リスクの考え方

不動産経営では、震災リスクだけでなく、収益性、平時の賃貸需要、不動産価格などを総合的に加味して投資判断をしなければなりません。

震災リスクだけを軸に投資物件を選べば、選択肢が狭まってしまう恐れがあります。ここからは、不動産投資における震災リスクの考え方について紹介します。

6-1.安全性が高い地域での投資は有効な選択肢の一つ

地震の危険度ランクが低い安全な地域が多い区は、千代田区、中央区、港区、世田谷区、目黒区、渋谷区などです。いずれの区も人口密集地で賃貸需要も申し分ないため、不動産経営を行ううえで理想的な地域の一つといえるでしょう。

一方で、これらの地域は日本有数の高地価な地域でもあります。不動産の価格は高くなるため、投資収益の判断材料となる利回りは低くなる可能性が高いといえます。

災害、賃貸需要の双方からリスクの低い経営を徹底するなら、都心部の区を選択するのが一つの考え方です。ただし、自己資金やローン借入額が高額になる点に留意しなければなりません。

6-2.区内でリスクの低い地域を探す

今回は区ごとに震災リスクをランク付けしましたが、実際には区のなかでも震災の危険度には差があります。区ごとのランキングにとらわれず、実際の立地条件や建物の性能を確認し、少しでもリスクの低い地域を探してみるのも一案です。

うまく安全性の高い地域を見つけられれば、価格を相対的に安く、利回りを高く維持しながら不動産経営ができるでしょう。

6-3.リスクを受け入れて備えることも大切

震災リスク・火災リスクがゼロになることはないため、オーナーが震災リスクをふまえて適切に対処するのも大切です。地震災害に備える方法としては、物件構造にこだわることでもリスクを低減することができます。

例えば、耐震等級3の物件は建築基準法で定められた基準の2倍の強度を持っており、震度7クラスの揺れが来ても倒壊リスクは限定的です。火災についても、燃えにくい建材を使用すればリスクを低減できます。

耐震等級3

  • 耐震等級1の1.5倍の耐震性
  • 現行の耐震性の最高基準で、警察署や消防署などが満たす基準
  • 数百年に一度程度発生する地震の1.5倍規模の地震でも倒壊・崩壊しない
  • 数十年に一度程度発生する地震の1.5倍規模の地震でも損傷を生じない

※出所:一般社団法人住宅性能評価・表示協会「『長期優良住宅の普及の促進に関する法律』の長期優良住宅認定制度の技術基準の概要について

また、地震保険に加入すれば、損害が出たときのダメージを一定程度は抑制できます。

地震保険で補償される損害

地震保険は火災保険では補償されない地震・噴火・津波を原因とする以下のような損害を補償します。

  • 地震による揺れで建物が倒壊した
  • 地震でダムが決壊して建物が流された
  • 地震による火災で建物が焼失した
  • 地震による津波で建物が流された
  • 噴火による火砕流で建物が損壊した
  • 噴火による火山灰で建物が埋没した
  • 地震による山崩れで建物が埋没した
  • 地震による液状化で建物が傾いた

このように災害リスクを受け入れて工夫すれば、立地選びの選択肢を広げられるでしょう。

【関連記事】不動産投資の地震保険と火災保険の違いは?補償の範囲や保険料の目安も

まとめ

今回の記事では、23区の地震危険度をランキング形式で紹介しました。被災による損害リスクを避ける観点では、ランキング上位の地域を選ぶのが一つの考え方といえます。

一方で収益性や物件価格まで加味すると、災害リスクを最優先に判断基準とするするわけにはいかない方もいるでしょう。その場合も、物件構造や保険加入などに着目して、震災による損害リスクを下げる工夫ができます。リスクと収益性のバランスをうまくとりながら、自分が納得のいく形で不動産経営を進めましょう。

【関連記事】不動産投資、地震や火災など災害リスクへの対策方法は?それぞれ解説

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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム

HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チームは、不動産投資や金融知識が豊富なメンバーが不動産投資の基礎知識からローン融資のポイント、他の投資手法との客観的な比較などを初心者向けにわかりやすく解説しています。/未来がもっと楽しみになる金融メディア「HEDGE GUIDE」