不動産投資の地震保険と火災保険の違いは?補償の範囲や保険料の目安も

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不動産投資のリスク対策に火災保険の加入は欠かせません。しかし、火災保険では地震の被害が補償されないため、地震保険に加入すべきか迷う人も少なくないでしょう。

この記事では、不動産投資における火災保険と地震保険の違いについて、補償の対象や範囲、支払われる保険金、保険期間などを解説します。また、保険料の目安も紹介します。

目次

  1. 不動産投資の火災保険・地震保険について知っておくべきこと
    1-1.火災保険に加入しないと借り入れができない
    1-2.地震保険は単独では契約できない
    1-3.不動産オーナーの火災保険・地震保険の対象となるのは「建物部分」
    1-4.不動産投資では地震保険の加入も検討したい
    1-5.地震保険の不足分を上乗せする方法も
    1-6.保険料全額が経費計上可能
  2. 火災保険・地震保険の違い
    2-1.補償の対象
    2-2.補償される損害の範囲
    2-3.支払われる保険金
    2-4.保険期間
  3. 火災保険と地震保険の保険料の目安
    3-1.火災保険
    3-2.地震保険
  4. まとめ

1.不動産投資の火災保険・地震保険について知っておくべきこと

最初に、不動産投資における火災保険と地震保険の基礎知識について解説します。

1-1.火災保険に加入しないと借り入れができない

金融機関からの不動産投資ローンで物件を購入する場合、火災保険に加入しないと借り入れができません。火災や自然災害によって貸し付けの対象物件が滅失してしまった場合に、保険金が支払われれば金融機関は貸し倒れのリスクを回避できます。

また借主としても、物件が滅失しても返済を免除されることはないため、残債の返済のために保険金は不可欠です。このように、不動産投資ローンの貸主である金融機関、借主双方にとって火災保険によるリスクヘッジは重要な意味があるのです。

1-2.地震保険は単独では契約できない

地震保険は火災保険では対象外の地震・噴火・津波による損害を補償する保険で、火災保険にオプションとして付帯します。つまり、地震保険に単独では加入できません。

1-3.不動産オーナーの火災保険・地震保険の対象となるのは「建物部分」

投資用不動産のオーナーとして火災保険に加入する際に必要となるのは、建物の補償です。

火災保険と地震保険の補償の対象には建物と家財がありますが、家財の保険には入居者が加入します。また、入居者の故意または過失で発生した損害については、オーナーが入居者に対して損害賠償を請求できます。

たとえば、入居者がタバコの火を消し忘れて火災を起こした場合や、水道の蛇口を開けっぱなしにして水漏れを起こした場合などです。その際には、入居者の火災保険から保険金が支払われます。

1-4.不動産投資では地震保険の加入も検討したい

不動産投資で火災保険に加入する際には、地震保険の加入も検討したいと言えます。不動産投資で地震保険の加入が必要な理由の1つに、投資用の物件には災害時に公的な支援を受けられない点があります。

たとえば、自然災害で住んでいる家が全壊するような被害を受けた世帯には、「被災者生活再建支援制度」により300万円までの支援金が支給されます。

しかし、この制度の対象は自分が居住している物件に限定されており、投資用不動産には適用されません。そのため、投資用不動産のオーナーは、地震保険のような自己責任での備えが必要です。

不動産投資では火災保険だけでなく地震保険の必要性が高いといえますが、実際にどれくらいの人が地震保険に加入しているのか見てみましょう。損害保険料算出機構の「グラフで見る!地震保険統計速報」によると、2022年度の地震保険の付帯率(火災保険に地震保険が付帯されている割合)は69.4%でした。地震保険の付帯率は年々増加しており、今後も増えていくと考えられます。なお、こちらの割合は投資用不動産に限らず、居住用建物および家財を対象としたすべての地震保険の付帯率となります。

1-5.地震保険の不足分を上乗せする方法も

地震保険の保険金額には火災保険の保険金額の30%~50%の範囲内で、建物は5,000万円、家財は1,000万円という上限があります。保険金額に上限が設けられているのは保険金支払い額が過大になり、大震災で保険金の財源が不足するのを避けるためです。

そのため、地震保険の保険金だけでは地震の損害の全額をカバーしきれない可能性もあります。建物の修繕や再建、ローンの支払いができなくなるケースもあるでしょう。

このような場合に備えて、一部の保険会社では通常の火災保険に「地震危険等上乗せ補償特約」というオプションを提供しています。これは、地震による損害に対して火災保険金額の50%の上乗せ補償を受けられる特約です。

残債の多いケースでは付保したい特約ですが、保険料は地震保険料の2倍程度かかります。残債の多い人は地震によるリスクも高いため、付保するかどうかを慎重に検討しましょう。

1-6.保険料全額が経費計上可能

不動産投資の対象となる建物についての火災保険(地震保険含む)の保険料は、全額経費計上が可能です。長期契約で保険料を一括払いしている場合は、1事業年度分ずつ保険料を計上します。

また、自分が住む家の場合、火災保険料は所得控除の対象にならず、地震保険料の一部または全額が控除の対象になります。

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2.火災保険・地震保険の違い

地震保険は単独では加入できず、火災保険に付帯する補償です。具体的に火災保険と地震保険の補償内容はどのように違うのでしょうか。火災保険と地震保険の主な違いを解説します。

2-1.補償の対象

地震保険の補償の対象となる建物は、火災保険に比べて限定されています。地震保険を付保できるのは居住用の建物に限定され、店舗や事務所専用の物件は対象外です。

また、地震保険は建物の主要構造部の損害状況によって保険金が支払われます。主要構造部にあたらない門、塀、垣のみに生じた損害は補償されません。

2-2.補償される損害の範囲

火災保険では火災のほか地震・噴火・津波を除く自然災害による損害でも補償されます。一方、地震保険では火災保険で補償対象外となる地震・噴火・津波による損害に対してのみ補償を受けられます。

火災保険で補償される損害

火災保険で補償される主な損害は、以下のとおりです。

  • 火災、落雷、破裂・爆発
  • 風災・雹災・雪災
  • 建物の外部からの物体の落下、飛来、衝突
  • 給排水設備に生じた事故による水濡れ
  • 騒擾および集団行動または労働争議に伴う暴力行為もしくは破壊行為
  • 盗難
  • 水災
  • 不測かつ突発的な事故による破損・汚損

上記のうち、火災、落雷、破裂・爆発は基本の補償で外せませんが、他の補償の有無は選択できます。補償の選択の自由度は保険会社によって異なります。

地震保険で補償される損害

地震保険は火災保険では補償されない地震・噴火・津波を原因とする以下のような損害を補償します。

  • 地震による揺れで建物が倒壊した
  • 地震でダムが決壊して建物が流された
  • 地震による火災で建物が焼失した
  • 地震による津波で建物が流された
  • 噴火による火砕流で建物が損壊した
  • 噴火による火山灰で建物が埋没した
  • 地震による山崩れで建物が埋没した
  • 地震による液状化で建物が傾いた

2-3.支払われる保険金

火災保険と地震保険の、損害発生時に支払われる保険金について解説します。

火災保険

火災保険の対象となる損害については、保険金額を上限として補償される仕組みです。免責金額が設定されていれば、損害額から免責金額を差し引いた金額が支払われます。契約内容によっては、臨時費用保険金のような所定の費用保険金も支払われる場合があります。

地震保険

地震保険では損害の程度によって全損、大半損、小半損、一部損の認定が行われ、その認定に沿って保険金が支払われます。損害の程度がいずれにも該当しない場合は保険金が支払われません。

損害の程度 基準 支払われる保険金額の割合
全損 ・主要構造部の損害額が時価額の50%以上
・焼失もしくは流失した部分の床面積がその建物の延床面積の70%以上
地震保険金額の100%
大半損 ・主要構造部の損害額が時価額の40%以上50%未満
・焼失もしくは流失した部分の床面積がその建物の延床面積の50%以上70%未満
地震保険金額の60%
小半損 ・主要構造部の損害額が、時価額の20%以上40%未満となった
・焼失もしくは流失した部分の床面積がその建物の延床面積の20%以上50%未満
地震保険金額の30%
一部損 主要構造部の損害額が、時価額の3%以上20%未満となった
・建物が床上浸水もしくは地盤面より45cmをこえる浸水を受け、建物の損害が全損・大半損・小半損に至らない
地震保険金額の5%

出典:財務省「地震保険制度の概要」より筆者作成

2-4.保険期間

火災保険と地震保険の保険期間は最長5年です。地震保険は火災保険と同じ期間か、1年で設定します。

3.火災保険と地震保険の保険料の目安

不動産投資の火災保険と地震保険は物件の構造や延床面積などで異なります。ここでは、保険料の一例を紹介します。

3-1.火災保険

SBI損保の「保険料のお見積り」の見積もりシミュレーションで、投資用物件の火災保険料の例をアパート1棟とワンルームマンション1戸で試算してみました。なお、これらのシミュレーション結果は概算であり、物件の構造や延床面積によって保険料は変動するため、目安としてご参考ください。

アパート1棟

アパート1棟の火災保険料の一例です。条件と保険料は以下のとおりです。なお、この保険料に地震保険分は含まれていません。

物件所在地 東京都
建物構造 M構造
延床面積 330㎡
建物保険金額 1億円
払い方: 5年一括
補償 火災・落雷・破裂・爆発、風災・雹災・雪災、水濡れ・外部からの物体の衝突・騒擾、破損等(水災なし)
保険料(1年あたり) 121,140 円(24,228円)

ワンルームマンション1戸

ワンルームマンション1戸の火災保険料の一例です。条件と保険料は以下のとおりです。なお、この保険料に地震保険分は含まれていません。

物件所在地 東京都
建物構造 M構造
延床面積 50㎡
建物保険金額 800万円
払い方: 5年一括
補償 火災・落雷・破裂・爆発、風災・雹災・雪災、水濡れ・外部からの物体の衝突・騒擾、破損等(水災なし)
保険料(1年あたり) 14,150 円(2,830円)

3-2.地震保険

地震保険の保険料は建物の構造と所在地(都道府県)で決まり、条件が同じであればどの保険会社で加入しても同じです。保険金額1,000万円あたりの保険期間1年の保険料は、財務省の「地震保険の基本料率」より確認できます。なお、「イ構造」とは主として鉄骨・コンクリート造建物等、「ロ構造」とは主として木造建物等を指します。

まとめ

不動産投資にはさまざまなリスクがあり、災害のリスクヘッジ手段の1つに火災保険、地震保険への加入があります。近年、日本では自然災害が多発し、火災保険や地震保険の保険料は年々値上がりしています。

しかし、大きな資産を運用する不動産投資において、災害リスクを回避する火災保険と地震保険の必要性は高いと言えます。地震保険については建物の構造と所在地(都道府県)で決まるためどの保険会社でも同じ費用になりますが、火災保険の加入にあたっては複数社の補償内容と保険料を調べ、必要な補償をローコストで準備できる保険会社を選ぶとよいでしょう。

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松田 聡子

明治大学法学部卒。金融系ソフトウェア開発、国内生保を経て2007年に独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師、個人向け相談全般に従事。現在はFP業務に加え、金融ライターとしても活動中。 保有資格:日本FP協会認定CFP・DCアドバイザー・証券外務員2種 運営サイト : 経営体質改善のヒント