一戸建ては、様々な種類のある不動産の中でも特に個別性が高く、取引事例も少ないことから様々な注意点があります。初めて一戸建て売却を検討している方にとって、売却失敗しないか不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
そこで今回のコラムでは、住宅の中でも一戸建てを売却する際にはどのような注意点があるのか、解説していきます。また、失敗しないためのコツとして、売却をする際の手順や相場の調べ方についても紹介します。
目次
- 一戸建てを売却する際の注意点
1-1.雨漏りやシロアリ被害がないか確認する
1-2.契約不適合責任に該当しないように注意する
1-3.土地の境界線が明確になっているか確認する
1-4.登記簿上の所有者を確認する
1-5.リフォーム履歴や修繕履歴などをまとめる - 一戸建ての売却を失敗しないためのコツ
2-1.複数の不動産会社に査定を依頼する
2-2.相場価格を調べて、リスクを軽減する - まとめ
1 一戸建てを売却する際の注意点
一戸建ては土地と建物がセットになっているケースがほとんどで、マンションの売却とは違う注意点があります。一戸建て売却ならではの注意点をそれぞれ確認していきましょう。
1-1 雨漏りやシロアリ被害がないか確認する
建物は築年数とともに劣化するものですが、特に注意したいのが雨漏りやシロアリなどの被害です。それは建物の価値が下がってしまうだけではなく、売却後のトラブルに発展することもあるからです。
押し入れの奧や収納の天井などに、気づかないうちに雨漏りによるしみができていることもあります。長年、雨漏りが続いていたようであれば腐食が起きているケースもあるので、売却を決めた際は確認しましょう。
一方、シロアリは木材を食べることで知られており、一戸建てを管理するうえで注意しておきたい重大な欠陥の一つです。家の躯体にも被害が及んでいる場合は倒壊の危険もあります。普段の生活で気づかないことも多いので、売却をする前に一度専門家に調べてもらうのもいいでしょう。
シロアリ被害や雨漏りがあるのに知らずに売却してしまうと、契約不適合責任を追及され、損害賠償請求や売買契約のキャンセルといった事態にも発展します。
1-2 契約不適合責任に該当しないように注意する
前項でも触れた契約不適合責任とは、これは2020年4月に民法が改正されたことによって新しくできた売買取引の法律です。不動産売買契約においては、元々は瑕疵担保責任という言葉で知られていましたが、契約時に気づかなかった住宅の欠損に対して売主が負う責任のことを指しています。
(改正後)民法562条
引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課すものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
※引用:e-GOV法令検索「民法」
瑕疵担保責任から契約不適合責任になって大きく変わった点は、買主が売主に対して行使できる権利の選択肢が増えたことです。瑕疵担保責任では契約の解除や損害賠償請求だけでしたが、契約不適合責任には下記の5つの選択肢があります。
- 追完請求:代わりのものを提供するか、修理するなどで契約内容を満たす(例えば、雨戸の鍵が壊れていたケースでは、鍵の交換などで対応する)
- 代金減額請求:欠陥があって追完請求をしても売主が修理をしない時、あるいは修理ができない場合に買主が売主に代金の減額請求をすることができる
- 催告解除:追完請求をしても売主が修理をしない場合に、買主が契約を解除できる権利
- 無催告解除:追完請求をしても売主が修理をしないと想定される場合に、買主が契約を解除できる権利
- 損害賠償請求:売主に過失があった場合に、買主に認められている損害賠償請求の権利
対象となるのは、シロアリや雨漏りのほか、住宅設備の欠陥や不具合、給排水の故障、土壌汚染なども含まれ、一戸建ての売買で起きやすいトラブルとも言えます。インスペクション(住宅審査)を受けるなどして、住宅に欠陥や不備がないようにあらかじめ調べておくのも一つの手です。
1-3 土地の境界線が明確になっているか確認する
マンションとは違い、土地のある一戸建てでは敷地に関するトラブルもあります。代表的なのが敷地の境界線がはっきりしていないことです。
築年数が浅い物件や区画整理された分譲地などでは起きにくい欠陥トラブルですが、古くから所有している土地の場合は境界杭が土の中に埋まっていたり、隣家との間にブロック塀を設けるなどで境界線が曖昧になっていることがあります。
敷地面積が曖昧なままでは売買できないため、土地家屋調査士に依頼して土地面積や形を明確にしてもらうことが必要になります。
また、屋外にある庭木やエアコンの室外機、雨樋などが越境して隣家に入っていることに気づいていないケースもあります。これらも査定を依頼する前に確認しておき、越境しているようであれば適切に対処しましょう。
1-4 登記簿上の所有者を確認する
一戸建てに限らず、不動産の名義が他人の場合、勝手に売却することができません。例えば、親から相続した場合は名義が親のままになっていることがあり、なりすましなどによる詐欺行為と捉えられる危険性もあります。
不動産会社に不動産の売却を依頼する際には、身分証明書や登記済権利書などを提出することになります。名義と依頼者が違うケースでは委任状が新たに必要になるなどして、すぐに売却活動に移ることができません。そのため売却のタイミングを逸すこともあり得ます。
また、実家の敷地内に住居を建てたケースなどでは、土地と建物で名義が違うこともあります。この場合も売却を開始する前に、土地と建物の所有者を確認する必要があります。売却を決める前にあらかじめ名義を確認し、認識していた名義と違う場合には弁護士や司法書士などの専門家に相談しておくといいでしょう。
1-5 リフォーム履歴や修繕履歴をまとめる
一戸建ての売買では、買主が新築時の建築確認通知書・検査済証、設計図面などの引き渡しを求めることがあります。必ず引き渡さなければいけないものではないのですが、買主が購入後にリフォームをしたり、増改築するなどの際に設計図があったほうが的確に行えるからです。
マンションの場合は施工会社が保存しているケースがありますが、一戸建ての場合は所有者が保管しているものです。売却の際には手元に残っているか、確認しましょう。
またリフォームや修繕した履歴もまとめておきましょう。中古住宅を購入する場合、どこかに不具合がないか買主が不安に思っていることも多く、リフォームや修繕の履歴があれば購入に関する不安を取り除くこともできます。また、給湯器やシャワートイレ、ユニットバス、システムキッチンなどの設備に関しては、取扱説明書が残っているか確認しておきましょう。
なお、国土交通省では「住宅履歴情報」の活用を推奨しています。住宅履歴情報は、「国土交通省」のウェブサイトで、下記のように定義されています。
住宅がどのようなつくりで、どのような性能があるか、また、建築後にどのような点検、修繕、リフォームが実施されたか等の記録を保存、蓄積したものが住宅履歴情報です。 具体的には、新築時の図面や建築確認の書類、点検の結果やリフォームの記録などです。
売却時には、性能を示す資料やリフォームの記録、点検結果などの書類が保存されていることで、建物価値の適正な評価やスムーズな売却が期待できます。
2 一戸建ての売却を失敗しないためのコツ
一戸建ての売却を失敗しないためには、事前準備が大切です。売却を担う不動産会社を適切に選び、同時に相場価格を把握することが第一歩となります。
2-1 複数の不動産会社に査定を依頼する
一戸建て住宅を売却する際は主に下記のような手順で行います。
- 不動産会社の査定を受ける
- 不動産会社と媒介契約を結ぶ
- 主に不動産会社が売却活動を行う
- 売買契約を買主と結ぶ
- 決済をし、引き渡しを行う
このときに重要なのが、不動産会社選びを慎重に行うことです。マンションと比較しても、一戸建ての方が査定価格をつけるのが難しいため、各社の査定価格に大きな開きが出てくることも珍しくありません。
マンションの場合は類似物件が少なくなく、過去の取引事例などもあるため価格が付けやすいのです。同じマンション内で同じ間取りの物件の取引事例があることもあり、査定をする際にその事例をベースにすることができます。
一方、一戸建ての場合、同じ敷地内の同じモデルの分譲住宅であれば、同じような間取りになっているため参考にすることもできますが、ほとんどの住宅はそうではありません。
それぞれの個性が強く、住む人の生活スタイルに合わせて変化もしています。土地の形状も違い、日差しや接道状況、隣家との距離間、室内の動線、使いやすさ、エリアの状況など、査定のポイントが多岐に渡っています。
そこで大切なのが複数の不動産会社に査定を依頼することです。複数の会社に査定してもらうことで、住宅の評価も分かり、売買価格の基準の見極めにも役立ちます。
複数の不動産会社に査定を依頼する際は、無料査定を複数社へ依頼できる不動産一括査定サイトを活用してみるといいでしょう。代表的な不動産一括査定サイトを下記にまとめましたので、参考にしてください。
主な不動産一括査定サイト
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2-2 相場価格を調べて、リスクを軽減する
一戸建て売却を金銭的な面で失敗しないためには、周辺相場の価格を知ることが大切です。価格を高くつけすぎて買い手がつかなかったり、安くつけすぎて損をするリスクも軽減できます。
前述した査定も相場を知る上で有効ですが、ご自身でも相場を調べる方法があります。1つは不動産流通機構が運営する「レインズマーケットインフォメーション」です。同サイトでは、直近1年間の不動産売買の成約価格や売買価格について調べることができます。
また「LIFUL HOME’S(ホームズ)」「suumo」「athome」といった不動産ポータルサイトでは、販売中の不動産価格を調べることで相場を知ることができます。
どちらも、ご自身の物件に近い、沿線、最寄り駅、専有面積、間取り、築年数などを選択して検索すると、類似物件が一覧できます。その販売価格や売買価格を調べると、相場を把握することができます。
ただし、前述したように、一戸建てはそれぞれに個性があり査定価格をつけるのは簡単ではありません。上記のポータルサイトの価格も参考にしながら、最終的には不動産会社の訪問査定を受け、慎重に相場を調査していきましょう。
3 まとめ
一戸建ては住む人の生活スタイルに合わせて変化しているため、画一的で取引事例が多いマンションに比べて査定は難しくなります。複数の不動産会社を比較して慎重に依頼先を選ぶことが、失敗しない売却のために重要なポイントです。
また、一戸建ての管理はそれぞれの所有者が行っているため、見逃されている欠陥が出てくることも少なくありません。後のトラブルを回避するため、売却前には建物の欠陥が無いか、ある場合には仲介会社へ隠さずに伝え、適切な対処をすることが大切です。
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倉岡 明広
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