初めて不動産を売却する際、不動産会社から公平なアドバイスがもらえるのか不安に思う方は少なくありません。不動産仲介会社と売主との間には多くの情報差があるため、不動産会社が正しいことを言っているのか、売主側にとって判断が難しいポイントでもあります。
そこで本記事では、高額になりやすい不動産を売却するにあたり、できるだけ適切で公平なアドバイスをもらうための方法をご紹介します。これから初めて不動産を売却する方、仲介依頼をする不動産会社を探している方はご参考下さい。
目次
- 不動産売却の流れと注意点
- 不動産会社から公平なアドバイスをもらう5つの方法・手順
2-1.売却物件の詳細について自分でも確認しておく
2-2.複数社の不動産会社へ査定を依頼する
2-3.一般媒介契約で2~3社に仲介を依頼する
2-4.専属専任・専任媒介契約の場合、レインズへの登録状況を確認する
2-5.疑問点があれば、遠慮なく不動産会社へ相談する - まとめ
1.不動産売却の流れと注意点
不動産売却にあたり、まずは大まかな売却の流れを確認しておきましょう。主には下記のような流れとなります。
- 不動産会社に査定を依頼する
- 不動産会社と媒介契約を結ぶ
- 売り出し価格を設定し、売却活動を行う
- 不動産売買契約、引渡しを行う
まずは不動産会社へ不動産査定を依頼します。査定価格を確認したうえで、媒介契約を結ぶ不動産会社を選んでいきます。
媒介契約とは不動産会社へ売却依頼をする契約のことで、「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3つがあり、それぞれの特徴は以下の通りです。
比較項目 | 一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 |
---|---|---|---|
依頼できる会社数 | 複数社に依頼可能 | 1社のみ | 1社のみ |
買い手を自分で見つけてくることができるか | 可能 | 可能 | 不可能 |
契約が有効な期間 | 無制限 | 3ヶ月以内 | 3ヶ月以内 |
レインズへの登録義務 | 任意 | あり | あり |
報告義務 | なし | 2週間に1回以上、文書で報告 | 1週間に1回以上、文書で報告 |
一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約のそれぞれにメリット、デメリットがあり、どの契約タイプを選ぶのかは売却物件の条件や売主の売却方針で異なります。
例えば、「購入希望者を可能な限り広い範囲から探したい」「じっくり時間をかけて売却活動をしてくれる不動産会社を探したい」などの場合は一般媒介契約が適しています。
一方で、「なるべく早く売却したい」「すでに懇意にしている不動産会社がある」などの場合は、専任・専属専任媒介契約が検討できます。
次に、売却活動に向けて売り出し価格を設定します。買主からの減額交渉があることを想定して、最終的に売却したい価格よりやや高めの金額を設定することを検討してみましょう。
ただし、相場から乖離しすぎた価格を設定してしまうと売却が長期化してしまう可能性があります。売主の希望だけでなく相場に沿った価格設定ができるよう、不動産会社の担当者と打ち合わせをしておくことが大切です。
売却活動が行われると、不動産会社から進捗状況について報告が行われます。価格の変更や売却スケジュ-ルの相談などがある場合、売主からもこまめに連絡をすると良いでしょう。
購入検討者が現れると、必要に応じて内見対応を行います。その後、購入意思が固まった買主から買付証明書が届きます。
買付証明書には購入希望、ローン利用の有無、決済のスケジュールなどが記載されています。この内容をもとに細かな交渉を行い、不動産会社が不動産売買契約書を作成します。売買契約書に捺印した後は、原則として条件変更ができなくなるため慎重に確認を行いましょう。
不動産売買契約書に記載されている引き渡し日に不動産の所有権移転を行い、不動産売却の手続きは終了となります。
【関連記事】はじめての不動産売却、手順や流れは?不動産会社の選び方も
2.不動産会社から公平なアドバイスをもらう5つの方法・手順
前項の不動産売却の流れ・手順でも解説したように、不動産仲介会社は「不動産の査定・売り出し価格の設定・各スケジュール調整・売却活動・売買契約書の作成」と、重要なポイントに密接にかかわることになります。
公平なアドバイスをもらえない不動産会社へ依頼してしまうと、相場よりも安い価格での売却となってしまったり、売却が長期化してスケジュールが希望と合わなかったりなどの弊害がある可能性があります。
このような状況を避けるため、売主側でも積極的に不動産売却に関わることが大切です。以下、不動産会社から公平なアドバイスをもらう5つの方法・手順について見て行きましょう。
2-1.売却物件の詳細について自分でも確認しておく
売却予定の物件の詳細について、自身でも確認しておきましょう。これは、不動産会社から問い合わせがあった時に売主側で分からないことが多いと、適切なアドバイスが受けられない可能性があるためです。
例えば過去に修繕やリフォームを行った場合は、修繕の内容や行った時期を時系列でまとめておきましょう。その他、所有者でないと気づきにくい物件の欠陥や不具合などもあれば、後のトラブルを防ぐためにしっかり申告することが大切です。
また、売主側が物件の情報を詳しく知ることは、悪徳業者からの理不尽な値下げ交渉や売却への誘導を防ぐことにもつながります。重要なポイントだけでも、押さえておくと良いでしょう。
売主側で確認しておきたいポイントを下記にまとめているので、ご確認ください。
- 不動産登記上の所有者
- 固定資産税評価額
- ローンの残債
- 購入時の売買契約書・重要事項説明書
- 隣地境界・越境の有無
- 雨漏りやシロアリ被害などの重大な欠陥
2-2.複数社の不動産会社へ査定を依頼する
不動産会社へ査定を依頼する際は、1社だけでなく複数社への依頼を検討してみましょう。1社だけに依頼した場合、その査定額が相場に沿ったものであるか、売主側での判断が難しいためです。
不動産会社によって顧客層が異なることから、得意とする物件タイプにも違いがあります。複数の査定価格を比較することで、より良い条件で売却できる不動産会社を探すことにもつながります。
また、複数社に査定依頼することで、1社からの提案内容に疑問点が出てきた際に、他の不動産会社へ相談できることもメリットとなります。やりとりをする手間はかかりますが、複数社と同時に査定を進めることで公平なアドバイスをもらえる可能性は高まります。
なお、不動産一括査定サイトを利用すれば、物件情報をサイト上に登録することで、複数社への不動産査定依頼の手間をある程度省くことができます。下記、主な不動産一括査定サイトの一覧です。
主な不動産一括査定サイト
サイト名 | 運営会社 | 特徴 |
---|---|---|
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【関連記事】不動産査定会社・不動産売却サービスのまとめ・一覧
なお、複数社へ査定を依頼して査定結果を比較する際は価格だけでなく、各社の売却戦略についても比較してみましょう。
不動産会社によって、広告費や営業マンの人件費には違いがあります。一方、中小規模の不動産会社であっても地元のネットワークを通じて、売却予定の不動産に適した顧客を抱えていることも少なくありません。
また、不動産会社によっては明確な売却戦略がないままに査定額を提案しているケースがあります。売却戦略がなく、周辺相場を調査していない査定価格であった場合、購入検討者が現れる価格設定ではないために売却が長期化してしまう可能性があります。
売却までのおおよそのスケジュールや売出価格の設定、広告方法など、どのような戦略で売却を行うのか確認をしてみると良いでしょう。
2-3.一般媒介契約で2~3社に仲介を依頼する
一般媒介契約である場合、複数社と媒介契約を締結することが可能です。複数の不動産会社へ仲介を依頼することで、不動産会社側に有利な条件を提案されづらくなるメリットがあります。
また、査定時にはなかった新しい疑問点が出てきた時に、他社へ確認をとることで不公平なアドバイスをされてしまうことを防ぐことができます。特定の不動産会社に依頼しない場合は、一般媒介契約を検討してみるのも良いでしょう。
ただし、一般媒介契約にはレインズへの登録義務がなかったり、不動産会社側の積極的な売却活動が見込めないなどのデメリットがあります。売却スケジュールが決まっている時や需要が少ない不動産などでは適せないケースもあるため、注意しておきましょう。
2-4.専属専任・専任媒介契約の場合、レインズへの登録状況を確認する
「レインズ(REINS)」とは、不動産流通機構が運営しているコンピューターネットワークシステムで、不動産会社(宅建業者)のみアクセスできる不動産情報のポータルサイトとなっています。
不動産会社はこのレインズに掲載されている物件情報を見て、自社の顧客に販売ができないか調査を行っています。長期間申し込みなどがなければ囲い込みにあっている可能性もあります。どのように売却活動が進んでいるのか、依頼した不動産業者に確認をしましょう。
なお、物件情報がレインズに登録されると、レインズから登録証明書が発行されます。情報未登録の状態を防止するためには、専属専任・専任媒介契約を締結するのであれば、登録証明書を受け取っておくことが重要です。
登録証明書にはID・パスワードが記載されているので、そのログイン情報を使えば、レインズの取引情報管理を確認できます。専属専任・専任媒介契約を締結した物件の売主は自分が売却に出している物件に限り情報を閲覧することが可能です。(レインズ「売却依頼主向けログイン」)
2-5.疑問点があれば、遠慮なく不動産会社へ相談する
不動産会社に売却依頼をする際、疑問点が出てきたら遠慮なく質問・相談を行いましょう。疑問点を先延ばしにしてしまうと、適切なアドバイスが受けられず、望んだ売却結果にならない可能性も出てきてしまうためです。
不動産仲介会社には、売主・買主の双方に対する説明義務があります。疑問や不安があるままに契約書へ捺印してしまわないよう、分からない部分は積極的に確認をすることが大切です。
特に、不動産売買契約書の内容は原則として締結後に修正することができません。契約当日に内容を確認するのではなく、できれば事前にサンプルを送ってもらい、自身でも確認を行いましょう。
なお、相談時に明確な回答が得られない場合には不動産会社の変更も視野に入れて検討してみると良いでしょう。
ただし、専任媒介契約と専属専任媒介契約については、契約期間が定められていることから、原則として契約期間中は中途解約できません。契約締結後は不動産会社側の明確な義務違反がない場合、契約期間の終了まで待つ必要があります。(※参照:国土交通省「宅地建物取引業法施行規則の規定による標準媒介契約約款」)
まとめ
初めて不動産の売却を検討する方にとって、不動産会社が正しいことを言っているのかどうか、判断が難しいポイントとなります。不動産は大きな資産となりやすく、大切な資産の売却で公平なアドバイスをもらえるのか、不安に思う方も少なくありません。
公平なアドバイスを得るためには、自身でも売却物件について詳しく知り、複数の不動産会社を比較しながら慎重に検討してみましょう。また、分からない部分があれば積極的に質問をしてみることも大切です。
不動産売却は、売主の希望価格・条件で売り出すことができます。不動産会社へ任せきりとならず、良い条件で不動産を売却するためのパートナーとしてとらえ、良い関係性を築くことも重要なポイントと言えるでしょう。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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