空き家を放置するリスクやデメリットは?管理が難しい場合の対策4つ

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総務省によると利活用されていない「その他」に分類される空き家は、2018年時点で全国に462万戸あります。「親から相続した実家が空き家になっている」という方も少なくないでしょう。

しかし、空き家を放置すると経年劣化による崩壊や犯罪に使用されるなどのリスクがあります。また活用されていないことでメンテナンスが為されず、資産価値を大きく目減りさせてしまうことにもつながってしまいます。

今回のコラムでは、空き家を放置するリスクやデメリットを解説し、管理が難しい場合の対策も紹介します。

目次

  1. 空き家が発生する理由とは
  2. 空き家を放置するリスク
    2-1.空き家が崩壊するリスク
    2-2.犯罪の現場などになるリスク
    2-3.景観が悪化するリスク
    2-4.近隣とのトラブルになるリスク
    2-5.行政から措置の対象になるリスク
  3. 空き家を放置するデメリット
    3-1.資産価値が下落する
    3-2.活用方法が限られていく
    3-3.納税の負担感が大きい
    3-4.空き家のリスクとデメリットと次世代に引き渡してしまう
  4. 空き家の管理が難しい場合の4つの対策方法
    4-1.売却する
    4-2.賃貸物件として活用する
    4-3.解体して更地として活用する
    4-4.空き家管理サービスを利用する
  5. まとめ

1 空き家が発生する理由とは

総務省住宅局の「空き家政策の現状と課題及び検討の方向性」によると、全国の空き家は2018年時点で846万戸あり、全住宅の7戸に1戸が空き家という状況です。

空き家にはタイプがあり、以下の4つに分類されます。

  • 売却用:販売している間の一時的な空き家
  • 賃貸用:入居者を募集している空き家
  • 二次利用:普段使っていない別荘など
  • その他:上記の3種類以外の空き家

「売却用」「賃貸用」「二次利用」は利活用されている中で現状空き家という状態ですが、「その他」に分類される空き家は所有者が管理をしているものの利活用されていない空き家を指します。

「その他」に分類される空き家は30年間で2.67倍になっています。空き家の総数は30年間で2.15倍、「賃貸または売却用」は1.94倍となっており、「その他」の伸び率が最も高いことがわかります。

調査年 賃貸用または売却用 2次的住宅 その他 空き家の総戸数 空き家率
1988年 234万戸 30万戸 131万戸 394万戸 9.4%
1993年 262万戸 37万戸 149万戸 448万戸 9.8%
1998年 352万戸 42万戸 182万戸 576万戸 11.5%
2003年 398万戸 50万戸 212万戸 659万戸 12.2%
2008年 448万戸 41万戸 268万戸 757万戸 13.1%
2013年 460万戸 41万戸 318万戸 820万戸 13.5%
2018年 462万戸 38万戸 349万戸 846万戸 13.6%

※参照:総務省住宅局「空き家政策の現状と課題及び検討の方向性」より抜粋

空き家が発生する要因の一つは、住宅を所有する高齢者が亡くなったり、高齢者住宅や子供の家に転居することです。このうち空き家の利活用が進まないのは、「処分して良いのかどうか」「利活用する方法がわからない」といったような状況にあることが多く、積極的になれない事情があるからとされています。

しかし、空き家をそのままにしていると、リスクやデメリットがあります。次の項目から詳しく見ていきましょう。

2 空き家を放置するリスク

空き家にはさまざまなリスクがあり、放置することでそのリスクは増大していく懸念があります。代表的な5つのリスクについて確認しましょう。

2-1 空き家が崩壊するリスク

空き家は必要なメンテナンスや修繕がされないと、建物の躯体自体が脆くなってしまいます。そのため小さな地震や台風などが直撃すると、倒壊してしまうリスクがあります。

倒壊するに至らなかったとしても、屋根や壁が崩れるといったことも考えられます。このときに通行人などにケガをさせてしまったり、第三者のものを壊してしまった場合、損害賠償を請求されるリスクもあります。

2-2 犯罪の現場などになるリスク

人の出入りがほとんどなく、異変が起きても周辺に気付かれにくい空き家は、犯罪に利用されるリスクもあります。具体的には、以下のような犯罪に利用される可能性があります。

  • 暴行や殺人現場
  • 違法薬物の取引現場
  • 不審者や犯罪者の隠れ家
  • 放火による火災、など

このように空き家が放置されたままだと、周辺地域の治安が悪化する拠点となってしまうことが考えられるのです。

2-3 景観が悪化するリスク

適切な管理が行われていない空き家は、草木が生い茂ったり、ゴミが散乱したりする可能性があります。また、建物自体も破損や汚損が放置されるケースが多く、周辺にマイナスな印象を与えることも考えられます。

害獣や害虫の棲家になることも考えられ、周辺環境を悪化させてしまうリスクもあります。

2-4 近隣とのトラブルになるリスク

景観を悪化させたり、犯罪の現場などに利用されるような空き家は、周辺に住む方たちにすると迷惑な存在になります。子どもの危険な遊び場になったり、不審者が潜んでいるリスクもあり、地域のイメージを損なうだけではなく、人が集まりにくくなることで地価の下落につながることもあるからです。

近隣住民は、こうしたトラブルの発信地となりうる空き家を排除したいと思うもので、トラブルに発展する可能性もあります。

2-5 行政から措置の対象になるリスク

全国で空き家の数が増えていることで、空き家の管理や利活用を促進するために「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空き家対策法)が2015年に制定されています。また2023年12月からは、より対策が厳しくなった「改正空家特措法」が施行されています。

空き家はその状態によって、以下の3つの種類に法律上わけられます。

  • 空き家…居住や使用されていない建築物やその敷地
  • 管理不全空き家…そのまま放置すると特定空き家になる空き家
  • 特定空き家…倒壊や環境悪化のリスクが高い空き家

空き家は各自治体によって上記の3つの種類に分類され、法律によって以下のような措置が行われることになっています。

措置の対象 措置の種類 措置の内容
管理不全空き家 「指導」→「勧告」 勧告を受けた場合、「住宅用地特例適用」の対象から除外され、固定資産税・都市計画税が増額されます。
特定空き家 「助言・指導」→
「勧告」→「命令」→
「行政代執行」
勧告を受けた場合、「住宅用地特例適用」の対象から除外され、固定資産税・都市計画税が増額されます。
また命令に従わない場合、50万円以下の罰金が科せられることになります。さらに、取り壊しなどの行政代執行が行われ、この際の解体費用を請求されることになります。

空き家を放置してしまうと、このようなリスクを抱え続けてしまうことにもつながります。いつか活用する可能性がある場合、土地価格が値上がりする可能性があるケース以外は、所有しているメリットはほとんどないと言えるでしょう。

3 空き家を放置するデメリット

空き家を放置することでデメリットとして考えられるのは、次の4つです。

3-1 資産価値が下落する

住宅は人が住まないと、換気や清掃がほとんどされないため老朽化が早く進んでしまいます。また、劣化している箇所に気づくことができず、その部分から破損や腐食が進んでしまうこともあります。そのため放置してしまうと、資産価値が下落してしまうのです。

資産価値が低いと、販売価格が下がるだけではなく、売れなくなってしまうこともあります。破損箇所などを修繕したとしても、かつて空き家として放置されていたことがわかると購入希望者にマイナスなイメージを持たれてしまうことも考えられます。

3-2 活用方法が限られていく

前述したように、空き家を放置すると建物の劣化が早く進んでしまいます。特に破損箇所が大きくなっている場合は、再利用する方法が限られてしまうことになります。これも空き家を放置するデメリットの一つです。

利活用しようとすると、大規模なリノベーションやリフォームが必要になるため、再生するためにかかる費用が膨らむ可能性があります。

3-3 納税の負担感が大きい

空き家といっても、登記上は住宅であることは変わりません。そのため、固定資産税・都市計画税を毎年納める必要があります。

固定資産税・都市計画税は、土地と建物それぞれの評価額を用いて求めます。計算式は下記になります。

  • 固定資産税=課税標準額×1.4%
  • 都市計画税=課税標準額×0.3%

住んでいない、あるいは活用していない住宅の税金を支払い続けることは、住んでいる住宅の税金を払うのに比べて負担感が大きく感じられるものです。

また、土地にかかる固定資産税と都市計画税は、特例によって軽減措置がとられています。具体的には以下のように税金が抑えられています。

特例 対象 固定資産税 都市計画税
小規模住宅用地の特例 200㎡以下の部分 1/6 1/3
一般住宅用地の特例 200㎡を超える部分 1/3 2/3

ただし、空き家として放置している場合、前述したように各自治体が管理不全空き家や特定空き家に指定する場合があります。その場合、勧告の措置が取られると軽減措置の対象外となるため、固定資産税の負担額がさらに増えることになるのです。

3-4 空き家のリスクとデメリットと次世代に引き渡してしまう

これまで紹介したように、空き家にはリスクがあり、また所有することによるデメリットもあります。しかしそのまま空き家を放置し続けていれば、そのリスクとデメリットを別の誰かに引き渡すことになる可能性があります。

例えば、現在の所有者が亡くなって遺族に空き家を相続する場合、その頃にはリスクはさらに大きくなり、デメリットによる負担も大きくなっていると想定できます。その大きくなったリスクとデメリットを空き家とともに遺族に引き渡してしまうことも、空き家を放置することのデメリットとなります。

4 空き家の管理が難しい場合の4つの対策方法

空き家は適切に管理することができれば、デメリットはあるにしても、リスクを増大させることはなくなります。そのため適切な管理が求められますが、遠方に住んでいるケースなどでは難しい場合もあります。

そこで、空き家の管理が難しい場合の対策を4つ紹介します。

4-1 売却する

空き家問題をすぐに解決する方法として、検討されやすいのが売却することです。

ただし、老朽化の程度によって売却が難しくなっていることも考えられます。空き家の売却に精通した不動産会社を選ぶようにしましょう。

空き家のような難しい物件の売却を依頼する不動産会社を選ぶ際は、複数の不動産会社へ同時に査定依頼ができる「不動産一括査定サイト」が便利です。不動産一括査定サイトは無料で活用できるうえ、一度の登録で複数社の査定結果を簡単に比較することができ、売却をスムーズに進めることができます。

下記は代表的な不動産一括査定サイトをまとめたものです。地域に精通し、さらに空き家売却の実績が多いなど信頼できる不動産会社を探す際にも利用することができます。

主な不動産一括査定サイト

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【関連記事】不動産査定会社・不動産売却サービスのまとめ・一覧

4-2 賃貸物件として活用する

空き家を活用する方法として、選択肢の一つになるのが賃貸物件として活用することです。入居者が清掃や換気などを行ってくれる上に、家賃収入も手にすることができます。

また住宅だけではなく、周辺環境などによっては以下のような選択肢もあります。

  • 古民家カフェなどの飲食店として活用する
  • 貸別荘として活用する
  • 民泊施設として活用する
  • 倉庫やトランクルームとして活用する、など

入居者や利用者が見つかりにくい状況であれば、親族に住んでもらうことも検討されます。

また、セーフティネット住宅として貸し出す方法もあります。セーフティネット住宅とは、高齢者、子育て世帯、障害者、被災者などの「住宅確保要配慮者」に向けた住宅のことです。

ただし、住宅確保要配慮者向けの賃貸経営は、滞納や事故などのトラブルが発生するリスクもあります。リフォーム費用などの追加投資を必要とすることもあり、不動産経営のノウハウがない場合にはまずは情報収集から行ってみることも大切です。

【関連記事】セーフティネットとしても注目される低所得者向け賃貸住宅経営の課題は?不動産投資家にできる取り組みも
【関連記事】古民家再生投資のメリット・デメリットは?地域活性化の社会意義や投資の注意点も

4-3 解体して更地として活用する

空き家としての利活用や売却が難しい場合は、解体して更地としての活用方法を考えてみましょう。具体的には以下の方法があります。

  • 住宅用地として売却する
  • 駐車場を経営する
  • 貸地として貸し出す
  • 太陽光発電設備を設置する、など

空き家問題の解消を進めるために、国土交通省では「空き家対策総合支援事業」を2025年度までの予定で行っています。この事業のもと、各自治体では「老朽危険空き家解体補助金」「空き家解体補助金」といった名称で補助金・助成金制度を設けていますので、これらを活用することで解体にかかる費用を抑えることができます。

4-4 空き家管理サービスを利用する

空き家への対策が社会問題となっていることから、空き家の管理サービスを提供する事業者や公共団体、NPO法人などが増えています。

代表的な事業者をまとめたのが下記の表です。

事業者名 空き家管理サービス
東京ガス 実家のお守り
大東建託パートナーズ 空き家管理サービス
ALSOK るすたくサービス
NPO法人空家・空地管理センター 100円管理サービス

費用と内容はそれぞれで異なりますが、おおむね月に数回、空き家を訪問して換気や簡単な清掃などを行う内容になっています。空き家の所有者にしてみると時間も労力も必要ないのに加えて、遠方にある空き家であれば交通費がかからないというメリットもあります。

まとめ

空き家問題の解消に向けて政府も対策を強化しており、空き地を放置すると納税額が増えたり、罰金といった措置の対象になります。また老朽化が進むだけではなく、犯罪の発生現場になることもあり、資産価値が下がっていく可能性もあります。

管理を適切に行うことが求められますが、遠方に住んでいるなどで難しい場合もあります。そこで今回のコラムでは、所有者自身が管理する以外の対策方法を4つ紹介しました。

空き家の対応について悩みや不安をお持ちの方は、今回のコラムをぜひ参考にしてください。

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倉岡 明広

経済学部経済学科卒業後、出版社や編集プロダクション勤務などを経てフリーライターとして独立。雑誌や新聞、インターネットを中心に記事を執筆しています。初心者が抱く不動産投資の疑問や質問を解決できるよう丁寧な記事を執筆していきます。