社債投資のメリット・デメリットは?国債との違いや比較も

2022年から国内企業の個人向け社債の発行は、増加傾向にあります。比較的身近な国債に比べて、社債にはなじみがない人も多いでしょう。社債は国債に比べて利率が高めで、信用力の高い銘柄を選ぶことで低リスクの運用も可能になります。

この記事では社債投資の国債と異なる特徴やメリット・デメリットなどについて解説します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定サービスの利用・投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. 社債投資とは
    1-1.社債の仕組み
    1-2.社債と株式の違い
    1-3.社債と国債の違い
  2. 社債の種類
    2-1.普通社債
    2-2.転換社債
    2-3.ワラント債
    2-4.担保付き社債
    2-5.無担保社債
  3. 社債投資のメリット
    3-1.国債や預貯金より利率が高め
    3-2.比較的に低リスク
    3-3.決められた時期に元本が戻ってくる
    3-4.利子が受け取れる
  4. 社債投資のデメリット
    4-1.購入できる金融機関が少ない
    4-2.まとまった資金が必要
    4-3.NISAを利用できない
    4-4.途中売却がしにくい
  5. 社債投資のリスク
    5-1.信用リスク
    5-2.価格変動リスク
  6. 社債投資の方法
    6-1.社債は証券会社ごとに取り扱う銘柄が異なる
    6-2.社債の選び方
    6-3.投資信託による間接投資も
  7. まとめ

1.社債投資とは

最初に社債投資の特徴を押さえておきましょう。

1-1.社債の仕組み

社債とは、企業が投資家から資金提供を受けるために発行する債券のことです。社債の発行元である企業は投資家に対して、満期まで決められた期日に利子を支払い、満期日には元本を返済(償還)する仕組みです。

社債の多くは金融機関のような機関投資家が購入していましたが、最近では最低購入単位を10万円・100万円のように小口化して販売する個人向け社債も発行されるようになりました。

償還までの期間は2年から30年などさまざまな種類があり、期間が長いほど利率が高い傾向にあります。

1-2.社債と株式の違い

社債は企業から見た資金調達方法のうち借入であるのに対し、株式は投資家から出資を受けることです。社債は期日が来れば元本を返済しなければなりませんが、出資金を返還する義務はありません。以下は、社債と株式の主な違いです。

社債 株式
発行体からの位置づけ 借入 資本
投資家の立場 債権者 株主
運用益 利子・売却益 配当・売却益

個人向け国債は固定金利型の3年ものと5年もの、変動金利型の10年ものがあります。固定金利タイプは償還まで利率は変わりませんが、変動金利タイプは発行後に金利が変動するリスクがあるため受け取る利子が増えたり、減ったりする可能性があります。

2024年5月15日発行の個人向け国債の税引き前の利率は以下のとおりです。

  • 変動金利型10年満期:0.51%
  • 固定金利型5年満期:0.36%
  • 固定金利型3年満期:0.18%

※参照:財務省「個人向け国債

次に社債について見ていきましょう。発行体が企業になる社債は国債と比較してリスクが高く、利回りも高くなる傾向にあります。例えば、SBIホールディングス株式会社の第36回無担保社債の場合、満期は4年で税引き前の利率は年1.28%と高く、この社債は10万円以上10万円単位で購入可能でした。

このように、利率の面では社債にメリットがあるといえます。しかし、社債は国債に比べると債務不履行リスクが高くなります。

また、国債はさまざまな金融機関が取り扱いますが、社債は銘柄ごとに取り扱う証券会社が異なります。購入したい社債を取り扱う証券会社に口座がなければ、口座開設をしなければなりません。

国債と社債にはメリット・デメリットがあるため、それぞれの特徴を理解して投資していきましょう。

2.社債の種類

社債にはいくつかの種類があります。ここでは、知っておきたい社債について解説します。

2-1.普通社債

「社債」というと、普通社債を指していることが多いでしょう。普通社債は英語で「Straight Bond(SB)」と呼ばれています。償還されるまでの期間(満期)が定められていて、満期までの間にあらかじめ決まった利子が支払われる社債です。普通社債を現金化したい場合は、満期前でも市場で売却できます。

2-2.転換社債

転換社債は正式名称を転換社債型新株予約権付社債といい、CBとも呼ばれます。転換社債は発行会社の株式に転換する権利の付いた社債です。

市場で発行会社の株価が上昇した場合、決められた転換価格で株式に転換して値上がり益を享受できます。株式が値上がりしなければ、転換せずに社債として利子収入を継続的に得られます。

2-3.ワラント債

ワラント債とは株式を一定の価格・数量で引き受ける権利を有した証書(=ワラント)の付いた社債です。ワラント債とCBの違いは、ワラントを行使する際に新たな資金を支払う必要がある点です。これにより、ワラントを行使した後も発行会社の普通社債は手元に残り、引き続き利子収入を得られます。

2-4.担保付き社債

担保付き社債とは、社債の債務に対して担保が設定されている社債です。担保付き社債には、一般担保付き社債と物上担保付き社債があります。

一般担保付き社債とは発行会社が破綻した際などに優先的に弁済される権利が付いた社債です。特別法に基づいて発行される、NTT債やJT債などが該当します。物上担保付き社債とは発行会社が保有する土地や動産のような財産を担保とする社債です。

2-5.無担保社債

無担保社債とは、利子や元金の支払いのために特に担保を設定していない社債のことで、現在発行されている多くの社債が該当します。債務不履行となった場合に、社債に関する支払いの一部または全部がなされない可能性があります。

3.社債投資のメリット

社債は株式と比較して低リスクの運用成果を期待できる運用商品です。ここでは社債投資のメリットを紹介します。

3-1.国債や預貯金より利率が高め

先述したとおり、社債は国債や預貯金より利率が高めです。通常、債券の利率は発行体の信用によって決まり、信用力の高い発行体の債券ほど利率は低くなります。国と企業では国の信用力のほうが高いため、国債より社債の利率が高めとなります。

3-2.比較的に低リスク

社債は発行体の会社が債務不履行(デフォルト)しなければ元本割れの心配がなく、比較的に低リスクの運用商品です。デフォルトがなければ決められた期日に利子を受け取れ、満期日には額面金額が償還されるためです。

社債の市場価格にも変動はありますが、売却益を狙わずに満期まで保持すれば損をすることはありません。株式に比べると大きな利益を狙えませんが、大きな損失を被るリスクも低めです。

3-3.決められた時期に元本が戻ってくる

社債は満期まで保有すれば元本が戻ってきます。決められた時期に利子を受け取りながら満期になると元本が償還されるため、デフォルト(貸し倒れ)がなければ資金計画を立てやすいという特徴があります。

3-4.利子が受け取れる

銀行預金にも利息は付きますが、社債の利率は銀行預金の利率より高く、より多くの利子の受け取りを期待できます。株式の配当と違い、社債の利子はあらかじめ金額が決まっています。受け取りたい利子額から逆算して購入額を決めるような投資法ができる点も、社債投資の魅力の一つといえるでしょう。

4.社債投資のデメリット

社債投資には知っておくべきデメリットもあります。

4-1.購入できる金融機関が少ない

社債が発行されてもすべての証券会社で購入できるわけでなく、銘柄ごとに取り扱う証券会社が限られます。また、発行も不定期なため、頻繁に情報をチェックしていないと条件のよい社債を購入できないでしょう。社債の取り扱いが多いのは大手店頭証券、SBI証券などです。

4-2.まとまった資金が必要

個人向けの社債は最低投資金額が10万円・100万円程度が多く、100円から買える投資信託に比べてまとまった資金が必要です。複数銘柄で分散投資したい場合は、さらに多額の資金が必要になります。そのため、社債は少額から投資したい人にはあまり適していないといえます。

4-3.NISAを利用できない

社債や国債のような債券は、NISAの対象外です。現行のつみたてNISAの投資対象は一定の投資信託とETF,一般NISAは上場株式や投資信託です。債券は非課税投資ができず、利子や売却益に課税されます。2024年からの新NISAでも債券は対象外です。

4-4.途中売却がしにくい

社債は満期前に市場で売却できますが、低い流動性のために買い手が見つからないおそれがあります。売却金額が購入金額を下回るケースもあり、その場合は売却損が生じてしまいます。

5.社債投資のリスク

社債投資を始める前に、以下のようなリスクを理解しておきましょう。

5-1.信用リスク

発行企業の破綻などにより利払いがされなかったり、元本が戻ってこなかったりするリスクを信用リスクといいます。発行されている社債の多くは無担保社債であり、企業の倒産によって元本が戻らない可能性があります。そのため、社債投資では投資先の信用力の見極めが非常に重要です。

信用力を測る指標の一つに「格付け」が用いられることがあります。格付けは、日本格付研究所(JCR)などのような格付機関が行います。信用度が比較的良好と考えられる投資適格格付けは、「BBB(トリプルビー)」以上とされています。

5-2.価格変動リスク

社債の価格が市場で変動するリスクを、価格変動リスクといいます。社債を中途換金する場合、市場の価格変動によっては損をしてしまうこともあります。満期まで保有し続けるのであれば、価格変動の影響を受けません。

価格変動リスクを避けたい場合、満期まで保有できるように計画的な社債の購入を心がけましょう。

6.社債投資の方法

社債投資はあまりなじみがなく、買い方がわからない人もいるでしょう。ここからは社債投資の方法を解説します。

6-1.社債は証券会社ごとに取り扱う銘柄が異なる

社債を買いたい場合、現在募集中の銘柄を証券会社で探します。ただし、証券会社ごとに取り扱い銘柄が異なるため、複数の証券会社を当たる必要があります。主な大手証券会社や大手ネット証券のサイトを参照してみましょう。

条件のよい人気の銘柄はすぐに完売してしまうため、情報は小まめにチェックしましょう。

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6-2.社債の選び方

社債を選ぶ際には格付けを確認しましょう。利率が相場よりも著しく高い銘柄の場合、格付けの低い可能性があります。

また、期間にも注意が必要です。期間が長いと企業の業績や経済変動の予測が難しいため、長期運用の社債であるほどリスクは高まり、保有中に発行体の格付けが下がる可能性もあります。

2022年以降は物価上昇も激しいため、社債のインフレリスクも考慮したいところです。社債の利率以上の物価上昇が続く場合、社債投資のメリットが薄れる可能性もあります。

6-3.投資信託による間接投資も

社債投資はデフォルトしなければ比較的手堅く運用益を見込めるため、個人投資家の方も取り組むメリットのある投資商品です。しかし、小口投資がしにくく取り扱う証券会社が限られているので、毎月数千円~数万円などの少額を積立投資したいという場合には適していません。

あまり元手をかけられない人が社債に投資する場合、直接投資でなく投資信託で債券へ間接的に投資する方法もあります。投資信託であれば100円程度から投資でき、複数の銘柄への分散投資も手軽にできます。また、NISA対象の銘柄を選べば、非課税投資も可能です。

まとめ

社債投資は比較的に低リスクの投資方法といえますが、少額投資がしにくい点や取り扱う証券会社が限られている点がデメリットです。社債を購入する場合、取り扱いの多い証券会社で情報収集し、条件のよい銘柄を比較されていくと良いでしょう。売却がしにくい社債の投資は余裕資金で行い、償還まで保有できるようにしましょう。

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松田 聡子

明治大学法学部卒。金融系ソフトウェア開発、国内生保を経て2007年に独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師、個人向け相談全般に従事。現在はFP業務に加え、金融ライターとしても活動中。 保有資格:日本FP協会認定CFP・DCアドバイザー・証券外務員2種 運営サイト : 経営体質改善のヒント