現在、多くのネット証券がサービスを提供しており、さまざまな選択肢から自分に合ったサービスを選ぶことができるようになっています。ですが、そのぶん多すぎてどこを選べばいいのかわからない、となる場合もあるでしょう。
そこで今回は、ネット証券各社の人気を探るため、シェア上位の会社についてリサーチしてみました。口座開設数と売上からどの証券会社がユーザーに選ばれているか見てみましょう。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2024年2月20日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。
目次
1.主要ネット証券会社を比較
まずは、シェア上位を比較する対象となる証券会社を紹介します。
- SBI証券
- 楽天証券
- マネックス証券
- auカブコム証券
- 松井証券
- GMOクリック証券
- 岡三オンライン
いわゆる「大手ネット証券会社」と呼ばれるSBI証券、楽天証券、マネックス証券、auカブコム証券、松井証券の各証券会社に、GMOクリック証券、岡三オンラインの2社をプラスした合計7社でシェアの比較を行います。
また、比較するデータは以下の通りです。
- 口座開設数
- 営業収益(≒売上高)
- 新規口座開設数
口座開設数を確認することで、顧客数を見ることができます。つまり、口座開設数が多い証券会社ほど、多くの投資家に選ばれているといえます。
証券会社の営業収益とは、売上高に当たる収入です。株式売買を仲介する委託手数料や証券会社が株式を売買して得ることができるトレーディング収益など、証券会社が挙げた収益のすべてを合計したものが営業収益となります。営業収益が順調に伸びていれば、証券会社の事業も好調だと考えられるため、経営規模の大きい証券会社であると判断することもできます。
また新規口座開設数では、直近の証券会社の人気を測ることができます。この数値が大きいほど、人気と勢いのある証券会社であると考えられます。
なお、今回は各証券会社のホームページの情報、もしくは決算情報、決算用資料などから筆者独自にリサーチをしています。
2.ネット証券会社各社の口座開設数のシェア率比較
まずは、口座開設数のシェア率を比較してみましょう。このデータについては2024年2月10日時点の総合口座開設数をリサーチしています。
口座開設数のシェア率は以下のようになりました(※ここでは、7社全体の口座開設数を100%として各社のおおよその割合を算出)。
会社名 | 口座開設数 | シェア率 |
---|---|---|
SBI証券 | 約1,200万 | 約42% |
楽天証券 | 約1,020万 | 約35% |
マネックス証券 | 約257万 | 約9% |
auカブコム証券 | 約166万 | 約6% |
松井証券 | 約152万 | 約5% |
GMOクリック証券 | 約53万 | 約2% |
岡三オンライン | 約41万 | 約1% |
口座開設数のシェア率トップはSBI証券で約42%、次点は楽天証券で約35%です。今回リサーチした7社のシェアのうち、楽天証券・SBI証券の2社で7割以上を占めていることがわかりました。
SBI証券は、2023年9月30日より、国内株式(現物・信用)売買手数料を無料とする「ゼロ革命」サービスを提供しています。諸条件を満たすと、国内上場株式(ETF、ETN、REIT含む)の現物および信用の売買手数料(インターネット取引)が無料となります。
また、2024年の新NISAの開始に併せ、NISA口座内における米国株式および海外ETFの取引手数料が無料となっています。NISAとは、日本の個人投資家向けの非課税投資制度であり、2024年からのNISA取引では、マイクロソフトアやアマゾンなどの米国個別株(ADRを含む)や海外ETFの売却注文も手数料無料の対象となっています。
業界トップクラスの安価な取引手数料やIPO取扱件数の多さといった強みを持っており、業界内でも口座開設数が多い人気の証券会社です。
一方、楽天証券は、2023年10月1日より、国内株取引(現物・信用)手数料を約定代金に関わらず無料にしており、単元未満株取引である「かぶミニ」の取引手数料も買付・売却ともに無料です(なお、手数料とは別にスプレッドがかかります)。
2023年12月には、口座開設数が1,000万を突破するなど、安価な取引手数料や幅広い投資サービスと充実した投資情報の提供、楽天ポイントとの連携などで、業界内の勢力を拡大しています。
また、2023年12月より米ドル/円のリアルタイム為替手数料を3銭から無料に引き下げたことで、業界最低水準の手数料体系を実現しています。
4位のauカブコム証券は、1日の約定合計代金が100万円以下の場合、株取引手数料(現物・信用)が無料となります(1日定額手数料コース)。
また、auカブコム証券は、多彩な自動売買注文に対応しているのも大きな特徴です。主要ネット証券では対応していないこともあるトレーリングストップ注文(最高値または最安値から一定の幅だけ値動きに追随し、一定の幅以上に上昇または下落した場合に売買注文を発動する機能)や、Uターン注文(一度注文を出した後、市場の動きに応じて逆方向に注文を出す機能)、時間指定注文(特定の時間に注文を発動する機能)など、投資家のスタイルに合わせて豊富な選択肢があります。
なお、複数の証券会社に総合口座を開設している投資家が多いため、上記データが実績を正確に反映しているとはいえませんが、それでも楽天証券とSBI証券の強さが際立っています。
3.ネット証券会社各社の営業収益のシェア率比較
次に、営業収益のシェア率比較を見てみましょう。こちらは各証券会社の直近の通期決算データをリサーチしています。
※以下のシェア率は、岡三オンラインを除く6社全体の営業収益を100%として各社の割合を算出しています。いずれも直近の通期決算を参考としているため、あくまで目安としてご活用ください。なお、岡三オンラインは2022年1月1日より岡三証券グループの傘下となっており、単体として営業収益の公表はありません。
会社名 | 営業収益(百万円) | 前年同期比 | シェア率 |
---|---|---|---|
SBI証券 | 175,053 | +5.1% | 約37% |
楽天証券 | 110,877 | +16.2 % | 約24% |
マネックス証券 | 79,304 | △10.7% | 約17% |
GMOクリック証券 | 51,432 | +10.5% | 約11% |
松井証券 | 31,071 | +1.0% | 約7% |
auカブコム証券 | 20,083 | +1.0% | 約4% |
営業収益のシェア率では、トップがSBI証券でシェア率が約37%(1,750億530万円)、次点が楽天証券でシェア率が21.0%(1,108億7,700万円)を誇っています。
SBI証券は、主要インターネット証券の個人向け国内株式委託売買代金で46.0%のシェアを獲得するなど、他社を大きく引き離しています(2022年4月~2023年3月)。
投信積立口座数も好調で、2023年3月期は163万7,000を突破したほか、個人型確定拠出年金のiDeCo口座数も78万7,000と右肩上がりが続いています。
新規公開株式(IPO)の引受実績についても92社(2022年4月~2023年3月)と、2位楽天証券(64社)、3位松井証券(59社)を大きく上回っています。
このように、SBI証券は投資信託や外国株式投資など業界でもトップクラスの豊富な商品数や投資に関する情報を提供していることに加え、各種セミナーの実施件数などでも他社にアドバンテージを有しています。また、各種キャンペーンも頻繁に実施するなど、顧客の投資活動を促しているといえます。
一方、3位のマネックス証券は、米国株取扱数が5,000銘柄超と業界トップクラスです。2023年3月期の業績は、投資信託の積立口座数が順調に伸びたほか、ロボアドバイザーが国内ファンドラップの運用パフォーマンス1位、2位独占するなど好調です(「2022年ファンドラップ 費用控除後運用パフォーマンス」における過去3、5年のシャープレシオ及びリターンで第1位を獲得)。
4.ネット証券会社各社の新規口座開設数のシェア率比較
最後に新規口座開設数のシェア率を紹介します。こちらは各証券会社の直近通期でどれだけ新しく口座が開設されたのかをリサーチしました。
会社名 | 新規口座開設数 | シェア率 |
---|---|---|
SBI証券 | 約214万 | 約49% |
楽天証券 | 約158万 | 約36% |
マネックス証券 | 約37万 | 約9% |
auカブコム証券 | 約14万 | 約3% |
松井証券 | 約9万 | 約2% |
GMOクリック証券 | 約2万 | 約0.4% |
岡三オンライン | 約0.7万 | 約0.1% |
新規口座開設数では、SBI証券が約214万口座・シェア率49%なので、上位2社で約85%のシェアを占めていることになります。次点の楽天証券が直近1年間で約158万口座の新規口座開設を獲得しており、シェア率が36%に達するという結果でした。
新規口座開設者を年齢別に見ると、30代以下の顧客が58.1%を占めるほか(2023年1月~12月)、女性の割合も2018年の38.8%から2323年は50.7%に増加しています。また、投資経験のない初心者が79.2%を占めるなど、投資・資産形成がより大衆に浸透していることを示しました。
楽天証券は、楽天ポイントで投資信託や国内株式などが購入できる「ポイント投資」や、楽天のクレジットカード決済で事前入金不要で行える投資信託の積立投資、投資金額に応じてポイントが貯められるサービスなどを提供しており、投資初心者にとって利用しやすいサービスとなっていることが要因と考えられます。
また、投資をおまかせで運用して貰えるロボアドバイザー「楽ラップ」や、スマートフォン専用サービスの「らくらく投資」の普及も新規口座開設の増加につながっています。2017年からは、金融メディア「トウシル」にてライフプランや生活のお役立ち情報など幅広い情報を発信しており、投資初心者でも資産形成を身近に感じられるサービス環境が整っているのも大きな後押しとなっています。
5位の松井証券は、順調に口座開設数を伸ばしている老舗の証券会社です。松井証券のユーザー限定である銀行サービス「MATSUI Bank」の普通預金金利は0.2%と好評で、2023年10月1日のサービス開始以降、預金残高220億円、利用者数2万3,000人を突破しています。
「MATSUI Bank」は、松井証券口座との連携も可能なので、株式購入に必要なお金をMATSUI Bank口座から自動入金できるほか、松井証券口座からMATSUI Bank口座へ休日・夜間を問わず即時に無料で出金可能です。
まとめ
今回はネット証券7社のシェア率を比較してみました。口座開設数、営業収益、新規口座開設数を比較すると、SBI証券と楽天証券が人気を二分していることがわかります。
ネット証券にはそれぞれ異なる特徴や強みがあるため、これから証券会社を選ぶ方は、どの証券会社が人気なのかという点も参考にしつつ、自身の投資目的やスタイルに合った強みやサービスを有しているかどうかという観点から比較検討してみてはいかがでしょうか。
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山本 将弘
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