部屋がいくつもある一棟アパートを売却する際は、通常の不動産を売却するときと注意する点が異なります。初めての方は知らずに損をしてしまったり、買主に迷惑をかけてしまうケースもあります。
そこで今回のコラムでは、アパートを売却する際の注意点を紹介していきます。失敗しないための売却の手順と相場の調べ方も合わせて解説していくので、アパート売却を検討している方はご参考ください。
目次
- 一棟アパートを売却する際の注意点
1-1.売却価格でローンは返済できるか確認する
1-2.既存不適格物件ではないか確認する
1-3.家賃滞納があれば解消しておく
1-4.できるだけ家賃は下げずに空室を埋める
1-5.購入希望者は投資家であることを意識する - 一棟アパートを売却するときの手順
2-1.複数社へアパート査定を依頼する
2-2.媒介契約を結ぶ
2-3.アパートの売却活動を始める
2-4.不動産売買契約を結ぶ
2-5.アパートの引き渡し・賃貸借契約の引継ぎ・オーナーの変更の通知 - 一棟アパート売却を失敗しないための相場の調べ方
3-1.売りアパートを掲載しているポータルサイトで調べる
3-2.不動産一括査定サイトで査定をしてもらう
3-3.自分でアパートの査定をしてみる(収益還元法・原価法) - アパート売却の必要書類
4-1.アパートの査定で必要になる書類
4-2.アパートの購入時に取得している書類
4-3.管理会社へ問い合わせることで確認できる書類 - アパート売却で価格交渉をされた時の対策
- アパート売却に関するよくあるQ&A
6-1.アパートがなかなか売却できない時はどうすればいい?
6-2.信頼できる不動産会社の見極め方は?
6-3.ローンの残債よりも査定価格が低い場合(オーバーローン)の対策は?
6-4.アパート売却を検討したい築年数の目安は?
6-5.アパートに雨漏りやシロアリ被害などの欠陥がある場合の注意点は? - まとめ
1 一棟アパートを売却する際の注意点
一棟アパートには一棟アパートならではの売却時の注意点があります。以下5つのポイントに注意点をまとめたので見て行きましょう。
1-1 売却価格でローンは返済できるか確認する
賃貸物件を売却する際に気をつけたいのは、物件を売却した後で得られる資金でアパートローンの残額を返済できるかどうかです。ローン残高が残ってしまうと金融機関の抵当権を解除できないため、売却額とローン残高を差し引いた差額の一括返済を求められることになります。
そのためアパートの売却を検討する際にローンの残額を正確に把握し、なおかつ売却できる価格を予想することが重要になってきます。この際、より正確に査定を知りたい場合は、不動産会社に査定を依頼しましょう。
より高く売却するためには複数の不動産会社に査定をしてもらうことが重要です。一度に複数の不動産会社に査定を依頼できる不動産一括査定サイトなどの活用も検討してみましょう。
主な不動産一括査定サイト
サイト名 | 運営会社 | 特徴 |
---|---|---|
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1-2 既存不適格物件ではないか確認する
売却の際に特に気をつけたいのが建ぺい率や容積率がオーバーしていないかです。これらが守られていないと既存不適格物件あるいは違反建築物とされ、金融機関からの融資が得られない可能性があります。つまり、買主側が行う購入費の資金調達の難易度が上がり、売買がなかなか成立しないという状況になる可能性があります。
建ぺい率と容積率は物件を建てる際の基準になる数値ですが、下記の表にまとめました。
項目 | 法律 | 概要 |
---|---|---|
建ぺい率 | 都市計画法 | 敷地面積に対して建てられる建物の面積の割合 |
容積率 | 建築基準法 | 敷地面積に対して建てられる建物の総床面積の割合 |
例えば、建築当時は法律を遵守していても、その後に入居者のために屋根付きのカーポートを建てたり、物置を追加した場合などに建ぺい率がオーバーしていることもあります。このような場合は、リフォームをするなどして建ぺい率や容積率を基準内に収めてからの方が、売却しやすくなります。
1-3 家賃滞納があれば解消しておく
一棟物件の売却で難しいのは、複数いる入居者の管理状況を適切に把握しているかどうかです。例えば、201号室のAさんと403号室のBさんを同じように管理できているかどうかで、売却のしやすさが違うこともあるのです。
その一例として挙げられるのは家賃の滞納です。例えばアパートが満室だとしても、家賃を滞納している入居者がいれば物件としての価値は低くなります。購入希望者が現れて家賃滞納についての説明をした際に難色を示す可能性もあり、他の物件と競合しているのであれば競合物件の方を選ぶことも考えられるのです。
保証会社を導入している物件が多く、家賃を滞納している入居者がいることにオーナーが気づいていないケースもあります。そのため、売却を決める前に管理会社に売却の意向があることをあらかじめ伝えておき、家賃滞納を含め売却に関する支障の有無を確認しておきましょう。もし家賃を滞納している入居者がいれば、管理会社と相談しながら、スムーズな売却ができるように対策を講じていきます。
1-4 できるだけ家賃は下げずに空室を埋める
賃貸用の物件を売却するときは、購入希望者の値下げ交渉の材料とならないようにできるだけ空室を減らしておきます。しかし思ったように空室が埋められない場合は家賃を下げて入居者を募集してしまいがちですが、できるだけ家賃を下げずに入居者を募集しましょう。
それは家賃が売却価格に影響するためです。一棟アパートの売却は利回りが大きく影響しますので、年間で家賃収入が減るとそれだけ売却価格も下げる必要が出てくるのです。
例えば、家賃を5万円で募集していたが、なかなか見つからないので5,000円下げた場合、年間で6万円の収入が減ります。物件全体の年間家賃収入が300万円、表面利回りを10%とした場合、収益還元法で計算すると3000万円の販売価格で売り出すことになります。
しかし家賃を下げたために年間の家賃収入が294万円となってしまえば、表面利回りを10%とするなら販売価格は2940万円となります。つまり60万円も安く売り出すことになってしまうのです。
空室を埋めるにはいくつか方法がありますが、家賃を下げないようにするには下記のような方法があります。
- 客付けが得意な管理会社へ変更する
- 入居祝金として入居者に商品券を渡す
- 1カ月のフリーレント期間を設ける
- 室内をリフォームする
- 敷金や礼金の金額を減らす
なお、対策を講じてもなかなか空室が埋まらない場合や、他の競合物件と比較して家賃が高く設定されてしまっている場合には、家賃設定の見直しを検討してみましょう。
1-5 購入希望者は投資家であることを意識する
アパートを売却する際の難しいところは購入希望者が不動産投資を行っている投資家ということです。これは住居を目的としたマイホームの売買ではなく、アパートは利益を得るために取得する賃貸用物件だからです。
住宅の場合であれば住みやすさや間取り、立地などが購入ポイントとなりますが、アパートであれば投資家が重視するところは、資産価値、収益性、入居率、など人によって違います。そのため物件にいくつの魅力があるのか、購入すると得られるメリットは何か、といったことを明確にしておく必要があります。
そのためには適切な運営を日頃からして、利益を確実に出していることが重要です。アパート内の清掃やメンテナンスを適切な時期に行い、購入希望者に納得してもらう価格設定で売却することが不可欠になります。
加えて、不動産投資家の方はアパートを購入するための資金調達(アパートローン)が行いやすい物件であるかどうかというポイントも重要視します。アパートの担保評価が低いと融資額が伸びなかったり、融資年数も短く設定されることになり、毎月のキャッシュフローを大きく圧迫するためです。
十分に収益性が高いアパートであっても金融機関からの評価が低い物件であれば、資金調達のハードルが高いために売却に苦戦してしまったり、融資審査の評価額に合わせて売却価格を調整する必要があります。
アパートの売却に強い不動産会社では金融機関の融資姿勢について豊富な情報を持っており、査定価格を算出する際にも考慮しています。
アパートの査定依頼をした際は、金融機関の情報も併せて確認されておくのも良いでしょう。金融機関の融資情報を豊富に持っている不動産会社では、アパート経営に積極的な投資家の顧客を多く抱えていることも多いためです。
2 一棟アパートを売却するときの手順
賃貸用のアパートを売却するときの手順は、通常の不動産とほとんど変わりません。ただし入居者がいますので、賃貸借契約の引き継ぎやオーナー変更通知などが加わります。
また売却活動の際にはレントロールや入居者情報、修繕履歴などを求めに応じて提示する必要があります。あらかじめ準備しておきましょう。
- 査定を依頼する
- 媒介契約を結ぶ
- 売却活動を始める
- 売買契約を結ぶ
- 物件を引き渡す
- 賃貸借契約を引き継ぐ
- オーナーの変更を通知する
2-1.複数社へアパート査定を依頼する
売却を成功させるには、複数社へ査定を依頼して適切な不動産会社を選ぶことが大切です。収益物件は査定が難しく、不動産会社によって査定価格がバラバラになる傾向があります。複数社の査定を受け、査定価格だけでなく査定の根拠や担当者の対応力などを総合的に判断してみましょう。
【関連記事】不動産一括査定サイトはどこを選ぶ?大手5社の特徴を比較
2-2.媒介契約を結ぶ
不動産会社との契約方法には下記の3つの方法があります。
項目 | 一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 |
---|---|---|---|
複数の不動産会社への依頼 | ○ | × | × |
自分で見つけた買主との単独契約 | ○ | ○ | × |
指定流通機構への登録義務 | 無 | 有 | 有 |
販売活動の報告義務 | 無 | 有 | 有 |
契約期間 | 規制は無し | 3ヵ月以内 | 3ヵ月以内 |
アパートは売却相手が投資家になることが多いため、高額物件なら大手不動産会社に専属専任媒介契約で売却活動をしてもらう方がいいといった判断になることもあります。物件価格や売却時期などによって望ましい契約方法がありますので、不動産会社のアドバイスを受けながら慎重に選ぶようにしましょう。
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2-3.アパートの売却活動を始める
アパートの売出価格を決めて売却活動を始めます。適切に売却活動を行っていると、購入検討者から問い合わせや買付(購入の申し込み)が入り、条件のすり合わせや価格交渉などが行われます。
アパートの収益性やエリアに問題が無いにも関わらず3ヶ月以上買付が入らない場合は、相場に合った価格設定が出来ていなかったり、依頼した不動産会社の販売力が弱いという可能性もあります。価格の見直しや不動産会社の変更も視野に入れて検討されてみると良いでしょう。
2-4.不動産売買契約を結ぶ
買主との交渉が進んだ場合は、条件をまとめて売買契約を結びます。売買契約書を締結すると手付金の放棄による契約解除か、ローン特約などのあらかじめ設定した特約の条件を満たさない限り解除ができません。契約前は慎重に検討しておきましょう。
2-5.アパートの引き渡し・賃貸借契約の引継ぎ・オーナーの変更の通知
契約書に明記された引き渡し日に、残金の決済とアパートの引き渡しを行います。引き渡し前には管理会社と協力して住民への通知や、電気やガスの契約引継ぎ、預かっている敷金や鍵の引継ぎなどがスムーズに行われるように準備しておきます。
3 一棟アパート売却を失敗しないための相場の調べ方
不動産の売却で失敗しないためには、所有するアパートがどれくらいで売却できるのか、あらかじめ相場価格を知っておくことです。市場での基準が分かるため、販売価格や売買価格で悩むことが少なくなるからです。相場の調べ方について、詳しく見て行きましょう。
3-1.売りアパートを掲載しているポータルサイトで調べる
相場価格は、「LIFULL HOME’S」「suumo」「athome」などの不動産ポータルサイトで売り出されている不動産情報を用いることで手軽に調べることができます。それぞれのサイトによって細かなところは違いますが、相場価格を確認するには下記のような方法で行います。
- 不動産ポータルサイトを開く
- 検索条件の物件種別を「一棟アパート」にする
- それ以外の検索条件には、ご自身が所有するアパートに近い「地域」「沿線」「駅」「最寄り駅」「部屋タイプ」「築年数」「専有面積」などを選ぶ
- 検索条件に合致した物件の一覧が掲載される
- ご自身の所有する条件に近い物件を探す
- 選んだ物件の販売価格を比べ平均を出すことで、ある程度の相場価格が分かる
ただし、ここで分かるのは販売価格であって、実際に成約となった売買価格ではないので注意しましょう。
3-2.不動産一括査定サイトで査定をしてもらう
「1-1.売却価格でローンは返済できるか確認する」でご紹介した不動産一括査定サイトで査定をしてもらう方法もあります。複数社の意見を比較することが出来るため、おおよその相場観を知る際にも役立ちます。
アパートの査定には実際にアパートを見て査定する訪問査定と、アパートの情報だけで過去の事例と比べて算出する机上査定があります。手軽に相場を知りたいのであれば、まずは不動産査定一括サイトで机上査定をしてもらってから売却するかどうかを見極める方法もあります。
3-3.自分でアパートの査定をしてみる(収益還元法・原価法)
アパートの査定は、ある程度自分でも行うことが可能です。アパートの査定方法には、主に下記の3種類の方法があります。
- 収益還元法:利回り相場からアパートの価格を逆算する方法
- 原価法:土地と建物を別々に評価し、合算する方法
- 取引事例比較法:周辺の売却事例から売却価格を類推する方法
この3つのうち、不動産事業者ではない個人の方が行いやすいのは、収益還元法と原価法です。
収益還元法
年間の家賃収入 ÷ 想定利回り × 100
年間の家賃収入と、周辺の利回り相場から物件価格を逆算する方法です。売却するアパートと似た物件の利回り相場を調査し、アパートの売却価格を設定することができます。
アパートは実需(居住用)目的ではなく購入者が全て投資家の方になるため、収益還元法が重視されやすい物件タイプです。人口減少傾向にある地方の物件になるほどハイリスクになるため、求められる利回りの基準も上がり、家賃収入に対して物件価格が下がる傾向にあります。
原価法
原価法では建物と土地の評価を分けて算出し、後に合算する方法になります。計算式は下記です。
- 建物価格:物件の再調達価格(木造:12~16万円) × 延床面積 × (残存耐用年数 ÷ 法定耐用年数(木造:22年))
- 土地価格:路線価×土地面積
- アパート価格:建物価格+土地価格
原価法によるアパートの建物価格の査定は、再調達価格(1㎡あたりの単価)について残耐用年数の割合についてのみ算出する方法です。残耐用年数が多いほどアパートの価値が多く残っていることになります。
土地価格については、路線価と土地面積を掛け合わせて算出します。路線価については「全国地価マップ」で調査することが可能です。
それぞれの方法で算出した建物価格と土地価格を合算し、現在のアパート価格を算出するのが原価法による査定方法です。なお、原価法で算出された価格はそのまま売却価格になることは少なく、実際の取引価格よりもやや低くなるのが通例です。
原価法によって算出された価格は「積算価格」と呼ばれ、主に金融機関の担保評価で使用される査定方法です。アパートローンの融資額や融資年数の参考とされ、積算価格が高いほど資金調達のハードルが下がり、高値売却に繋がりやすくなるという特徴を持っています。
4.アパート売却の必要書類
次にアパート売却での必要書類について確認していきましょう。なお、全てを揃える必要はなく、また売却を依頼する仲介会社によって求められる書類が異なることもあります。適宜、必要になったタイミングで徐々にそろえていくと良いでしょう。
4-1.アパートの査定で必要になる書類
- 固定資産税評価証明書
- レントロール(家賃表)
- ランニングコストが分かる書類(管理費、電気・水道代、浄化槽のメンテンス費など)
4-2.アパートの購入時に取得している書類
- 登記識別情報(権利証)
- 購入時のパンフレット
- 購入時の不動産売買契約書
- 購入時の重要事項説明書
- 耐震診断報告書
- 住宅性能評価書
- 建築確認済証および検査済証
- 建築設計図面および工事記録書
- 土地測量図および境界確認書
- 付帯設備表(※現況については管理会社への確認が必要)
※購入時の状況・条件によって取得していない書類も含まれる
4-3.管理会社へ問い合わせることで確認できる書類
- 賃貸借契約書
- 保証会社契約書
5.アパート売却で価格交渉をされた時の対策
アパート売却では購入者が不動産投資家になるため、通常の不動産と比較して価格交渉(指値交渉)も頻繁に行われています。物件の価格が下がるほど収益性が高くなり、元本回収までのスケジュールが早くなるためです。
このような価格交渉があった際は、まずはどのような理由や条件付けで値下げ依頼をしているのかを確認してみましょう。例えば、ローンを活用せずに現金によるスムーズな取引が可能であるなど、売主側にもメリットの提案を受けられるケースも少なくありません。
その他、不動産売買契約において、売主は契約内容と物件の状態が一致する義務を負います。これを契約不適合責任と言い、売却後に契約書に記載されていない重大な欠陥が見つかった場合には賠償請求を受ける可能性があるのです。
価格交渉があった際はこの契約不適合責任について免責としたり、もしくは期間を短くしたりなどの交渉を実施できる機会にもなります。売却後のリスクを大きく低減できるため、値下げ幅とのバランスを取りながら積極的に交渉をしていくと良いでしょう。
その他、買主側での資金調達の事情や、たんに値下げをしてほしいという相談ベースでの交渉であるケースも少なくありません。この場合は周辺アパートの価格相場や売却にかけたいスケジュール感なども加味し、値下げに応じるかどうかを判断するとスムーズです。
出来るだけ高く売却を行いたいアパートオーナーにとって、価格交渉は心理的な負担に感じてしまう方も少なくありません。しかし、アパートの価格交渉は購入検討者との重要なコミュニケーションの機会ともなるため、自身の希望条件と市場から求められている需要をすり合わせるつもりで、積極的に参加していきましょう。
【関連記事】契約不適合責任をわかりやすく解説!売主が注意したい3つのポイントも
6.アパート売却に関するよくあるQ&A
6-1.アパートがなかなか売却できない時はどうすればいい?
アパート売却では価格を下げるほど早く売却が可能になり、逆に価格を上げると売却が長期化するという傾向があります。ただし、一度下げた価格を戻すことは難しいため安易に値下げをせず、なかなか売却できない時はまずは何が要因となっているのか確認することが大切です。
価格以外にアパートの売却が長引く要因としては主に以下の4つがあります。
- 入居率が低下している
- 売却活動がうまくいっていない
- 物件に欠陥がある(もしくは欠陥があるリスクが高い)
- 周辺地域の生活環境が整っていない
まずはこれらの要因が当てはまっているかどうかを調査し、対策ができるようであれば一つずつ対処されていくと良いでしょう。ただし、大きな費用が掛かってしまうものについては回収できないリスクもあり、値下げをして売却してしまった方が良いケースもあります。不動産会社へ相談のうえ、慎重に検討されると良いでしょう。
6-2.信頼できる不動産会社の見極め方は?
不動産会社の中には相場よりも低い金額で査定を行って物件を安く買い取ったり、逆に相場よりも高い金額で査定を行って売却を促したりなど、悪質な業者も多くいます。しかし、これまで不動産に関わった経験のない方であれば、不動産会社の言っていることが正しい情報であるのかどうか、判断が難しいと言えるでしょう。
不動産会社の信頼性を確かめる方法の一つに、複数社の不動産会社と同時にコミュニケーションを取り、1社からの案内で疑問点が出てきた場合には他の不動産会社に聞くという方法があります。
例えば、1社から「アパートの築年数が経過して融資年数が伸びないため、値下げを検討してほしい」と説明があった場合、その真偽が不明であれば他の不動産会社へ正しい情報であるか聞いてみると良いでしょう。不動産会社も他社の存在を感じることで、より慎重にコミュニケーションを取ってくれるようになります。
ただし、不動産会社が信頼できないからと言って、必要以上に横柄な態度にならないよう注意しましょう。不動産会社は成約した時の仲介手数料、もしくは買取再販に成功した際の利ざやが収益となっており、売主の相談に乗ることは無料で行っています。双方で良い関係性が築けるように一方的な要求とならないよう配慮することも、アパート売却を成功させるコツです。
6-3.ローンの残債よりも査定価格が低い場合(オーバーローン)の対策は?
ローンの残っているアパートには抵当権が設定されており、原則としてこれを解除しなければ売却ができません。ローンの残債を売却価格で相殺できないオーバーローンのアパートの場合、以下のいずれかの方法で抵当権を解除する必要があります。
- 不足分に自己資金を充当する
- 金融機関に任意売却の相談をする
自己資金がある場合には、アパートの残債と売却価格の差額を現金で支払うことで抵当権の解除が可能です。また、自己資金が無い場合には金融機関へ任意売却の相談を行い、アパートの売却価格や残債の支払い方法、期間などを取り決めたうえで抵当権を解除できることもあります。
ただし、オーバーローンのアパートを売却する時は慎重に検討することが大切です。ローンの残債を解消しなければ抵当権を解除することができないため、残債と売却価格の差額が大きい場合には焦って売却をしない方が良いケースもあります。
6-4.アパート売却を検討したい築年数の目安は?
アパートの価格は築年数に応じて値下がりが起きていきます。不動産投資と収益物件の情報サイト健美家(けんびや)の「収益物件 市場動向四半期レポート2023年4月~6月期」を参考に、アパートの築年別の価格を見てみましょう。
築年数 | 価格 |
---|---|
築10年未満 | 11,480万円 |
築10年〜築19年 | 8,352万円 |
築20年〜 | 5,455万円 |
上記を見ると、築10年未満の物件と比較して築20年以上の物件は半値ほどまで値下がりすることが分かります。築浅であるほど高値で売却しやすくなりますが、築浅であるということはローンの残債も多く残っていることも多くあります。築年数だけで売却のタイミングを検討しないよう注意が必要です。
築22年を超えるとアパートの法定耐用年数が切れるため、アパートローンの融資審査も厳しくなり、ローンの年数も伸びづらくなります。これが築20年以上で値下がりが起きる要因の一つとなるのですが、反対に、築22年を超えたアパートの値下がり率はそこまで大きくないという傾向も見られます。
築22年を超えたアパートの売却を検討する際は、築年数が及ぼす影響は大きくなく、入居率や土地価格、建物の劣化状況などの面を重視されることになります。建物をしっかりと管理し、入居率を高めておくなどの施策をしっかりとされておくと良いでしょう。
6-5.アパートに雨漏りやシロアリ被害などの欠陥がある場合の注意点は?
アパートに欠陥がある場合は、買主に欠陥の詳細について開示し、重要事項説明書にしっかりと盛り込んでおく必要があります。重要事項説明書に欠陥が明記されておらず、契約内容と引き渡した物件が一致していないと、売主は原則として契約不適合責任を負います。
契約不適合が発見されたとき、買主は、追完(補修や代替物)請求、代金減額請求、契約解除、損害賠償請求ができることになります。瑕疵(欠陥)を買主に通知せずに、引渡し後に判明した場合、買主からこのような請求をされるリスクがあることになります。
なお、契約不適合責任を考えるにあたり、注意しておきたいのは売主も把握していなかった欠陥が引き渡し後に見つかるケースです。この場合、買主が不備を知った時から1年間は追及する権利を得ることになります。
このままだと売主に不利な契約内容になってしまうため、契約不適合責任を追及できる期間を限定する内容を契約書に追記しておくのが商習慣となっています。なお、契約不適合責任は売買契約書で免責とすることも可能です。買主からの減額交渉を受ける代わりに、契約不適合責任を免責とするようなケースもあります。
まとめ
一棟アパートの場合、空室がたくさんあったり、高く売却するために利回りのことを考えるなど、注意するべき点がいくつもあります。
しかし、これらの注意点は売却時だけ気をつければいいのではありません。普段から適切に運営しておくことが重要で、それによって売却時も失敗なく進められるようになります。
また、売却のパートナーとなる不動産会社選びも重要なポイントです。複数社の不動産会社を比較しながら、自身に合った会社選びができるよう、慎重に検討していきましょう。
倉岡 明広
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