「テレワークで東京から転出増」は本当?グローバル都市不動産研が検証

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コロナ禍で東京都の人口減少や転出者数の増加は「テレワークの普及」を理由とする論調が高まったが、実際はどうだろうか。投資用不動産を扱う株式会社グローバル・リンク・マネジメントが4月26日付で発表したレポート「2021年の東京の人口動向を徹底分析~転入・転出が進んだ人・場所は?~」で、グローバル都市不動産研究所所長で明治大学名誉教授の市川宏雄氏が考察している。

同レポートでは調査・研究の第15弾として21年の都と都区部の人口動向、転入・転出動向を分析、22年1月公示地価の東京の概況について紹介している。それによると、都の人口は1996年以来26年ぶりに減少。日本人の転入者数の低下と転出者数が拡大した。出生者数の低下と死亡者数の拡大、外国人の国外転出が要因とみられる。30~40歳代の子育て層の転出超過が続く。女性全体では転入超過を維持している。

東京都の人口

転出増について、テレワークの普及を理由とする論調に、同研究所は異論を唱える。まず、日本生産性本部の調査によると、首都圏(1都3県)のテレワーク実施率は、21年10月調査で36.9%、22年1月調査では26.8%と10.1ポイント低下している。また、都の調査では、都内企業(従業員30人以上・400社程度を対象)のテレワーク実施率は、緊急事態宣言期間中の21年5月から9月まで6割を超えていたが、宣言明けの10月以降は5割台に落ち込んだ。テレワークの実施回数も「週1日」(35.3%)「週2日」(19.0%)が過半数を占め、同研究所は「東京への通勤無しで仕事ができるような完全テレワークが普及しているとは言い難い」と否定する。

一方、首都圏の住宅市場では、不動産経済研究所が発表した21年度の1都3県の新築マンション1戸当たりの平均価格は前年度比6.1%上昇の6360万円とバブル期の1990年度に記録した6214万円を上回り、過去最高を更新した。

21年に30~40歳代の「子育て層」の転出超過が拡大し、感染拡大がいったん収まりテレワーク実施率が低下した10月以降も転出超過が継続している。同研究所は「完全テレワークで地方移住できるような一部の層を除き、その大半は東京都区部のマンション価格高騰を要因に隣県3県に移動したのでないか」と、テレワーク普及ではなくマンション価格の高騰が原因ではないかと推測した。

レポートはさらに、台東区、墨田区、江東区では都市開発などで人口流入が進み、城南・城西エリアでは近郊への転出が進んでいる点、地価は千代田、中央、港の都心3区の商業地では前年に引き続きマイナスだが、区部都心部の住宅地を中心に徐々に回復傾向にあると報告している。

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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム

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