世界最大の事業用不動産サービスCBREは5月17日、2017年第1四半期(Q1)の投資市場動向及び第55回「不動産投資に関するアンケート」の最新調査結果を公表した。
これによると、今期Q1の事業用不動産の投資額(10億円以上の取引)は、対前年同期比51%増の1兆3,540億円となった。アベノミクスの効果が不動産投資マーケットに表れた2013年以降のQ1取引額としては、2014年Q1の1兆4,700億円に次ぐ水準だ。また、2016年Q1の投資額が9,000億円と、2013年以降で最も少なかっことも増加率が高かった要因だ。
投資主体別では、いずれも投資額は前年同期を上回り、最も増加率が大きかったのが海外投資家で前年比3.7倍の4,660億円。国内では、J―REITが対前年同期比10%増の5,810億円、その他の国内投資家は同27%増の3,070億円であった。
投資家の取得意欲は旺盛であり、横浜や大阪などで300億円を超える大型取引が散見。アセットタイプ・地域の分散投資が続いている。地域別の投資額は、東京23区を除く首都圏と大阪で増加し、それぞれ前年同期の3倍である4,910億円、同1.9倍の1,360億円となった。
ホテルを除く全アセットタイプで投資額は前年同期を上回ったが、最も大きく増加したのは住宅だ。大型ポートフォリオが取引されたことを主因に、前年同期の2.7倍である3,300億円となった。次いで増加率が大きかったのは商業施設で、対前年同期比78%増の2,720億円であった。
CBREが四半期ごとに実施している不動産投資家調査では、東京の期待利回りの平均値は6アセットタイプ中2つで低下し、その他は横ばい。期待利回りが低下したのは「商業施設(銀座中央通り)」対前期比-5bpsの3.60%と「賃貸マンション(ファミリータイプ)」-10bpsの4.55%だ。「商業施設(銀座中央通り)」は今期横ばいとなった「オフィス(大手町)」と並んで2009年調査開始以来の最低値であった。
地方都市のオフィス期待利回りも低下傾向が続いている。前期から5bps以上低下した都市は大阪(5.20%)、名古屋(5.38%)、そして福岡(5.15%)であった。今期は、札幌と大阪の期待利回りがそれぞれの過去最低値に並ぶ結果となった。
「不動産取引量」、「売買取引価格」、「NOI」(物流施設は「賃料」と「空室率」)、「期待利回り」、「金融機関の貸出態度」、「投融資取組スタンス」の各項目に関して尋ねた回答結果では、「オフィス(Aクラスビル)」において収益面では変化がみられなかったものの、資金調達環境は引き続き良好であり、投資家の投資意欲も高まっている。一方、「物流施設(マルチテナント型)」においては前期に比べて価格が上昇したことや、空室率低下の回答率が減少したことを要因に悪化。価格がすでに高水準に達したとみられており、一部エリアでは空室率も上昇していることから、投資家は徐々に慎重姿勢に転じていると推察される。
「最近(回答時点)と比べた半年先」の見通しについては、「オフィス」では賃料上昇、「物流施設」では利回りの低下(価格上昇)のそれぞれにおいて、今後は限定的とみられる兆しがあった。
【参照リリース】CBREが日本の投資市場動向(2017年第1四半期)を発表
(Hedgeニュース編集部 平井 真理)
平井真理
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