2020年第2四半期の投資額は前年比22%減、第3四半期はさらに減少か。CBRE調査

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総合不動産サービスのCBREは8月12日、2020年第2四半期(4-6月)の投資市場動向と第68回「不動産投資に関するアンケート」の最新調査結果を発表した。同期の投資額は対前年同期比22%減の7530億円で、J-REITおよび他の国内投資家による投資額減少が主因となった。東京の期待利回りは、ホテルでは3期連続で上昇、商業施設、物流施設、住宅は前期から2~5bps低下した。CBREは短観指数で「市況感はオフィスで引き続き悪化、金融機関の貸出態度DIは-3、前期から16ポイント悪化」とし、コロナ禍による影響は第3四半期から表面化、投資額も第2四半期に比べてさらに減少すると予想する。

事業用不動産の投資額(10億円以上が対象、土地取引およびJ-REITのIPO時の取得物件は除く、Figure 2)はJ-REITおよび他の国内投資家による投資額がいずれも前年同期を大きく下回った。一方で海外投資家の投資額は前年同期比45%増加。海外投資家が年初に契約した大型取引が今期に引き渡されたことが主因。この取り引きを除けば、海外投資家による投資は1000億円を下回る水準で、全投資家による投資額は前年同期から5割強も減少したことになる。

今期の既存J-REITによる公募増資(払込ベース)は3件で前年同期から5件減少、調達額は対前年同期比62%減の478億円となった。東証REIT指数は3月20日に1145で底を打った後、6月10日に1721にまで回復したものの、その後は1700を下回る水準で推移。6月末の投資口価格が感染拡大以前の水準に戻った銘柄は、GLPなどの物流施設特化型リートに限定された。今期、J-REITが発表した不動産投資(IPOによる取得を除く全取引)は、件数は前年同期比39%減の28件、投資額は同60%減の1121億円となった。

投資額に占める割合が最も大きかったのは物流施設(53%、対前年同期比13pts増)、次いでオフィス(29%、同12pts減)。いずれのアセットタイプも投資額は前年同期から大きく減少したもののコロナ禍でも賃貸マーケットが堅調な物流施設の存在感がさらに高まる結果となった。

CBREが四半期ごとに実施している「不動産投資に関するアンケート期待利回り」(平均値)によれば、東京ではホテル(運営委託型)が対前期比+29bps と3期連続で上昇となった一方、商業施設(銀座中央通り)、物流施設(首都圏湾岸)、賃貸マンション(ファミリー)は同2bps~5bps低下、オフィス(大手町)と賃貸マンション(シングル)は横ばいとなった。地方都市のオフィス期待利回りは大阪、仙台で対前期比4bps上昇、福岡も同+5bpsと2期連続で上昇した。福岡が2期連続で上昇したのは2008年7月以来12年ぶり。

6月時点の東京オフィスAクラスビルを対象としたCBRE短観指数(DI、Figure6)は「期待利回り」を除く全項目で悪化した。「金融機関の貸出態度」DIは-3と、前期から16ポイント悪化。「3か月前と比較して貸出態度は厳しい」と回答した投資家は全体の17%で、2010年7月調査(23%)に次ぐ水準だった。一方、物流施設(首都圏マルチテナント型)のDIは7項目中5つで悪化したものの、悪化幅は前期より大きく縮小した。「賃貸需要が引き続き堅調であることで安心感が徐々に広がっている」と見る。

一方、新型コロナウイルス感染が拡大した3月以降、延期もしくはキャンセルされる取引が増加。今期把握された取引の多くは感染拡大前にマーケティングを開始し取引条件がほぼ決まっていたと推察される。コロナ禍でも取引が成立した理由として、CBREは買主の資金力が高かったこと、安定した収益を見込めるアセットタイプであったこと、希少性が高い物件だったことなどを挙げ、「潤沢な投資資金を背景に投資家の投資意欲は総じて高い」という見方は崩さない。

ただし、第三四半期の投資額は第2四半期に比べてさらに減少を予想した。理由の一つは、売り手と買い手の間の価格目線の乖離が広がっていること。もう一つは、レンダーも選別姿勢を強めており、アセットタイプによってはノンリコースローンの調達が難しいと考えられ、実際そのようなケースが散見されているため。感染拡大前に最も選好されていたオフィスも、投資家は需要の減少ならびに賃料の下落を懸念しており、投資判断も慎重にならざるを得ないと推測する

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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム

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