円安で海外不動産投資を始めるメリット・デメリットは?注意点や手順も

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2022年の春以降、円・米ドル相場において大幅な円安が進んでいます。1ドル=140円台まで円安が進んだのは1998年以来です。

円安の状況下で海外不動産投資を始めるメリットや、各手順における注意点などについて解説します。

目次

  1. 円ドル相場の推移と円安が進んでいる原因
    1-1.円ドル相場の推移
    1-2.円安・ドル高が進んだ背景
  2. 円安で海外不動産投資を始めるメリット
  3. 円安で海外不動産投資を始めるデメリット
  4. 円安時に海外不動産投資を始める手順と注意点
    4-1.海外不動産投資を行う国を絞り込む
    4-2.見に行けるのであれば現地を見る[PR]
    4-3.物件を絞り込んで購入契約を締結する
    4-4.物件の引渡しと所有権登記
  5. まとめ

1.円ドル相場の推移と円安が進んでいる原因

1-1.円ドル相場の推移

日本銀行が発表している基準外国為替相場の推移を見ると、円ドル相場には2021年の年末あたりから変化が訪れており、時間の経過とともに円安が進んでいる状況です。具体的な円ドルレートの推移は以下グラフのようになっています。

※日本銀行「基準外国為替相場および裁定外国為替相場一覧」を参照し筆者作成

2021年11月までは1ドル=110円でしたが、2022年11月の時点では1ドル=143円となっており、日本銀行が発表している日次の外国為替市況を見ると、2022年11月2日17時のレートは1ドル=147.35円でした。

11月2日時点では、月次の基準相場よりさらに円安が進んでいる状況です。なお、2021年末と比較すると、約1年間で1.3倍前後にまで円安が進んだことになります。

1-2.円安・ドル高が進んだ背景

ここまで円安が進んだ背景として様々な要因が指摘されていますが、そのうちの1つは日米間における金融政策の違いです。

アメリカでは新型コロナウイルスによる経済停滞への対策として、一時的にほぼ0%まで政策金利が引き下げられました。一方、2022年に入ってからは一貫して利上げを繰り返しており、2022年11月2日に開かれたFRBの会合では4回連続で0.75%の利上げが決定されました。これによってアメリカの政策金利は3.75%~4%となります。

※Federal Reserve Bank「Selected Interest Rates (Daily) – H.15」を参照し筆者作成

従来、アメリカで利上げが行われるときは0.25%の上げ幅だったので、2022年はかなりハイペースで利上げが繰り返されている状況です。

アメリカが金利を上げて金融市場を引締めるきっかけとなったのは、労働参加率の低下傾向が続いていることです。アメリカではコロナの流行を契機として失業率が上昇し、働き手が大幅に減りました。

新型コロナウイルス感染拡大の長期化に伴って働き手は徐々に戻りつつありますが、依然として人手不足は解消されていません。人手不足はアメリカの賃金上昇をもたらしており、賃金の上昇が物価の上昇(=インフレ)を招いています。これらの背景から発生しているインフレを抑制することがFRBの狙いです。

一方で、日本銀行は「円安の加速は日本経済にとってマイナスに作用する」見解を示しつつも、大規模金融緩和を継続する姿勢を示しています。(※参照:日本銀行「金融政策決定会合における主な意見(2022年9月21、22日開催分)1」)

また、財務省が発表している国庫金利情報によると、2022年11月1日時点で長期金利に該当する10年もの国債の金利は0.264%です。

日本銀行が大規模金融緩和の姿勢を維持する限り、利上げを急ぐアメリカとの金利差が拡大し続けることとなり、この金利差が円安を招くことになります。

このような状況から、日本円を持っていても利息がほとんどつかない一方で、米ドルを持っていれば少しでも利息が付くために資金が円から米ドルへ流れている、という背景があると考えられます。

なお、不動産に目を向けると、アメリカ不動産に関しては長期金利の引き下げが住宅ローン金利の低下につながったため、2020年はアメリカ不動産が顕著に値上がりしています。※参照:Redfin「Redfin Monthly Housing Market Data」)

利上げが続く2022年に入っても、アメリカ不動産の長期的な値上がり傾向は変わっていません。FRBの金融市場引締め政策が今後どのように作用するのか、目を離せない状況にあると言えます。

2.円安で海外不動産投資を始めるメリット

海外不動産投資が持つ特徴の1つは、投資した国の通貨で家賃収入を得られることです。アメリカ不動産投資やカンボジア不動産投資では米ドルで家賃収入が入ってくるため、家賃収入を日本円に両替すれば多くの日本円が入ってくることになります。

また、東南アジアのような新興国の不動産投資でも米ドルが主な通貨として利用されることがあります。例えば、カンボジアでは自国通貨のリエルが国内で信用を得られておらず、市場に米ドルも多く流通しているため、カンボジア不動産投資では米ドルで家賃を得られます。

2021年11月時点の円ドル相場は1ドル=110円でしたが、2022年11月時点では1ドル=143円です。1ヶ月の家賃が1,000ドルだとすれば、2022年11月時点では1年前と比較して33,000円多くの家賃を得られることになります。

なお、円高の時に購入した物件を円安の時に売却する場合も家賃収入と同様です。海外不動産は売買に関しても現地の通貨で取引されるため、円安の時に海外不動産を売却すれば、円高の時よりも円換算した時の利益が上がります。

3.円安で海外不動産投資を始めるデメリット

海外不動産の売買は現地の通貨で行われるため、例えばアメリカ不動産を購入する場合は、米ドルを保有している場合を除き、日本からお金を送金して購入することになります。

送金する過程で日本円は米ドルに両替されるため、円安の時に物件を購入すると、為替相場に応じて物件価格が高くなる点に要注意です。家賃収入は円安によって増えますが、物件の購入価格も円換算すると上がるため、円安時に海外不動産投資を始めても利回りに大きな差はつかないことになります。

反対に、円安時に物件を購入した後で円高傾向に振れると、物件の取得価格に対して得られる家賃収入が円換算で低下することになります。円安時に海外不動産投資を始める際は、このような為替リスクを勘案したシミュレーションを行うことも重要なポイントとなります。

3.円安時に海外不動産投資を始める手順と注意点

3-1.海外不動産投資を行う国を絞り込む

海外不動産投資を始めるのであれば、最初に不動産会社のセミナーに参加するなどして情報収集をしてから、ある程度国を絞り込むことが必要です。不動産市況に加えて為替の状況や外国人向け規制の内容なども国ごとに異なっています。

【関連記事】海外不動産投資、国別のメリット・デメリットを比較

例えば、東南アジアの投資先として人気の高い「タイ」「マレーシア」「フィリピン」の為替レートを見ると、各国とも円高が進んでいる状況です。円安が進んでいる円ドル相場とは状況が異なるので、利回りだけに囚われず各国の為替と都市の特徴を把握してから比較していきましょう。

【関連記事】東南アジア不動産投資を始める手順・方法は?国ごとの違いや特徴、物件の選び方も

また、アメリカ不動産投資では更なる円安・ドル高傾向に振れた時の為替リスク対策の手段として有効と考えられます。長期的な投資戦略を練るうえでは、通貨を分散させておくことでカントリーリスクを低減する効果も期待できるでしょう。

【関連記事】アメリカ不動産投資の初心者は何から始めるべき?アメリカ不動産投資セミナーも

その他、海外不動産投資のリスクを低減させる方法として海外不動産へ投資できる投資型クラウドファンディングを利用するのも一つの方法です。クラウドファンディングを介して少額資金で投資ができるため、運用を任せることができるメリットがあります。

例えば、TECRA株式会社が運営する不動産投資型クラウドファンディングの「TECROWD(テクラウド)」では、経済成長が著しいモンゴルやカザフスタンをメインに、新興国の不動産を投資対象にしています。1口10万円~の投資が可能で、2022年11月時点で分配遅延や元本割れは0件となっており、ハイリスクになりやすい新興国を検討しやすいサービスです。

まずはこのように投資対象国ごとの違いを分け、自身の投資目的と照らし合わせて検討していくことが大切です。

3-2.見に行けるのであれば現地を見る

2022年11月時点では、新型コロナウイルスのワクチンの接種有無に関する規制を撤廃した国も増えています。投資対象国の出入国制限の状況を見ながら、できれば現地まで訪れ、物件調査を行うと良いでしょう。

海外不動産は日本国内の不動産と比較して現地視察に時間がかかるため、資料を見るだけで購入を決めてしまうケースもあります。しかし、物件購入後にも気軽に現地へ行けないからこそ、物件を比較検討する時点で現地視察を行ってみると良いでしょう。

なお、現地視察の前には簡単にでも現地のことを調べてから向かうのが良いでしょう。疑問点を現地のエージェントに質問することで、現地視察の意義が深まります。事前知識なしで現地へ行ってしまうと、海外旅行と大差ない結果に終わってしまうこともあるので注意が必要です。その他、円安の影響で渡航費用が高くなる可能性がある点にも留意しておくと良いでしょう。

3-3.物件を絞り込んで購入契約を締結する

国と物件を絞り込んだら購入契約の締結に移ります。契約時の注意点は資金送金のタイミングを確認することです。東南アジアでプレビルドと呼ばれる完成前の物件を購入する場合は、工事の進捗に合わせて複数回に渡り送金することがあります。

なお、為替は送金時のものが適用されるため、将来的には送金金額が増減している可能性もある点に要注意です。

3-4.物件の引渡しと所有権登記

物件が完成して資金の送金が全額完了したら、引渡しと所有権登記に移ります。所有権登記に当たっては現地渡航を求められる場合がある点に要注意です。物件の購入契約を締結する時点で現地渡航の有無を確認しておくと良いでしょう。

なお、現地渡航を求められるケースは東南アジアの新興国で物件を購入する場合が大半であり、例えばアメリカ不動産を購入する場合に現地渡航を求められることは多くありません。

まとめ

2022年時点の円安は主に日米間の金利差が原因となっており、日本銀行とFRBの方針が異なる2022年11月時点では、いつまで円安が続くのか予測は困難な状況となっています。

円安の状況下ではアメリカ不動産投資におけるインカムゲインが増えるものの、物件購入に必要な円も増えるため、利回りに大きな変化はありません。ただし、円安時の物件購入後、大幅な円高に振れた場合は円換算の家賃収入が下がり、利回りが低下してしまうことに注意しましょう。

円安時に海外不動産投資を始める際の注意点としては、為替は国によって状況が異なることや、購入する物件によっては複数回の送金が求められるため、必要資金が変化する可能性もある点などが挙げられます。これらのポイントに注意しながら、慎重に投資検討されていくと良いでしょう。

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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム

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