2022年4月時点、為替相場では急速な円安が進み、国内市場のインフレが懸念されています。
家計不安が高まる環境下で、投資によって収入を増やしたり、資産を分散させることを検討している方も多いでしょう。投資対象として、金融資産と実物資産を比較した場合、実物資産である不動産への投資は円安・インフレ対策として有効といえるのでしょうか。
この記事では、円安・インフレの簡単な説明から始めて、金融資産と実物資産の特徴をみた上で、円安・インフレ対策として不動産投資は有効なのか、について考えていきます。
目次
- 円安・インフレとは
1-1.円安とは
1-2.インフレとは - 金融資産と実物資産の特徴
2-1.金融資産の特徴
2-2.実物資産の特徴 - 円安・インフレ対策に不動産投資は有効なのか
3-1.円安・インフレがもたらすリスク
3-2.リスクヘッジとしての不動産投資の有効性 - まとめ
1.円安・インフレとは
円安・インフレ対策に不動産投資が有効であるかどうかを考える前に、円安やインフレとはどのような状態を指すのか、みていきましょう。
1-1.円安とは
円安とは、円の価値が他の外国通貨と比較して相対的に低い状態をいいます。すなわち、円単位で交換できる他の外国通貨の単位数が少ない状態が円安です。
為替相場が1ドル=100円と1ドル=80円の状態を比べてみましょう。1万円が手元にあるとして、これをドルに交換するとした場合、それぞれの為替相場では、いくらのドルと交換できるのかを見てみます。
1ドル=100円の場合は、1万円÷100円=100ドルと交換できます。これに対して、1ドル=80円の場合は、1万円÷80円=125ドルと交換できます。すなわち、1万円という円単位で交換できるドルが少ない、1ドル=100円の場合の方が、1ドル=80円の場合に比べて円安である、といえます。
1-2.インフレとは
インフレとは、世の中のモノやサービスの価格が継続して上昇する状態をいいます。
インフレになると、モノやサービスの価格が上がることで企業の売上増加につながり、給料も上がって消費活動も活発になるなど、好景気の指標として用いられることもあります。
しかし、モノやサービスの価格上昇によるコストの増加を販売価格に上乗せできない企業や、海外製品の高騰によるインフレの場合には、国内経済に良い効果をもたらさず、給料の上昇がモノやサービスの価格上昇に追いつかない場合もあります。
つまり、インフレは必ずしも好景気を示すものではなく、どのような原因で物価が上昇しているのか、という視点が重要なポイントとなってきます。
2.金融資産と実物資産の特徴
次に、金融資産と実物資産の特徴を比較してみましょう。
金融資産は、流動性が高い反面、価格が変動しやすい傾向があります。実物資産は、比較的価格が景気の影響を受けにくいものの、流動性が低いケースもあり、取引には手間やコストがかかります。
2-1.金融資産の特徴
金融資産とは、客観的な時価を把握することができ、換金や決済をおこなうことができる資産をいいます。投資対象となる金融資産には、株式や債券、投資信託などがあります。
金融資産は、時価を支える取引市場が存在するため、流動性が高いという特徴があります。そして、市場において活発に取引されることにより、価格が変動しやすいといえます。
インフレ局面では企業の業績や保有する資産が上昇するため、特定の分野における企業の株式が上昇することもあります。
一方、債券は利回りをベースとした金融商品であるため、金利の影響を大きく受けます。そのため、インフレによって金利が上昇すると、固定金利の預金と同様、価格が下落する傾向があります。
2-2.実物資産の特徴
実物資産とは不動産や貴金属などの実体のある資産のことで、インフレによって貨幣価値が下がると相対的に価格は上昇する傾向があり、景気の影響を受けにくいという特徴もあります。
貴金属としては、金(ゴールド)がもっともポピュラーな現物資産です。取引市場も多く、価格変動のリスクが低い資産となっています。ただし、不動産のようにそれ自体が収益を生むことはないことから、資金の分散先として選ばれたり、売却益を得ることを目的とした資産になります。
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不動産は建物や土地などが投資対象となります。貸家や貸地、事業運営など様々に活用して投資収益を得ます。値上がりすれば、売却益を得ることも可能になります。
ただし、不動産市場はその立地などの個別要因に大きな影響を受けます。また、売却して現金化するには手間や時間がかかるという特徴がデメリットと言えるでしょう。
3.円安・インフレ対策に不動産投資は有効なのか
円安・インフレは、どのようなリスクをもたらす可能性があるのでしょうか。2022年4月時点の日本の経済状況において実際に生じている影響についても触れた上で、そのようなリスクを回避するための手段として、不動産投資が有効といえるかどうかを考えてみましょう。
3-1.円安・インフレがもたらすリスク
円安は、円の価値が他の外国通貨と比較して少ない状態であるため、外国からの輸入商品、原材料が値上がりします。このようなことから、一部の企業ではコスト高になり、業績が悪化する可能性があります。
2022年4月に発表された日銀の「地域経済報告(さくらリポート)」においても、円安の影響を受けて原材料や仕入れ高等が高騰し、一部企業の収益が圧迫されているとの報告がなされています。
インフレ局面は、モノやサービスの価格が上昇するため、相対的に貨幣の価値が下落します。つまり、同じ金額の貨幣で買うことのできるモノやサービスが少なくなり、その結果、貨幣価値が下がることになります。
なお、上述した2022年4月の日銀の「地域経済報告(さくらリポート)」によれば、物価は全体として上昇しているものの、給料水準は横ばいという傾向にあります。
このように、円安の影響によって企業の業績が悪化し、株式の価格が下がったり、あるいは給料も賞与などが減ったりする可能性もあります。また、インフレによって、現金や預金の資産価値が相対的に下がるリスクもあるといえるでしょう。
3-2.リスクヘッジとしての不動産投資の有効性
不動産投資は、不動産を活用することによって得る運用収益を主な投資収益源とします。
活用形態は様々ですが、たとえば居住用として貸し出す場合、居住スペースの提供というサービスに対する対価である家賃は、インフレによって値上がりするモノやサービスの価格に連動して上昇する可能性が高いといえます。また、インフレによって不動産その物の価格が値上がりする可能性もあると言えるでしょう。
このように、インフレ局面において不動産投資をおこなうことで、現金や預金などの資産価値が目減りするリスクを回避できる可能性があります。
さらに、不動産投資は、融資を受けておこなうことが多く、現金や預金の価値が下がると借金の価格も相対的には下がることになり、インフレ局面の資産形成にはメリットがあります。
円安については、建物を建築しておこなう不動産投資の場合、建材などの高騰の影響を受ける可能性はあります。しかし、企業の株式に投資して、円安によってその企業業績が悪化し株価が下がった場合と比較するとリスクは限定的と言えます。
また、サラリーマンの方であれば、円安の煽りを受けて給料が下がった場合にも不動産投資による副収入というリスクヘッジとして考えることも出来るでしょう。
総じて、不動産投資は円安・インフレの対策として有効な手段であると考えることができます。ただし、どのような不動産でも良いということではなく、資産性が高いものや、収益性が高い物件を選ぶことが重要となってきます。
まとめ
インフレ局面において、不動産投資の運用収益は物価上昇と連動して上昇する可能性が高く、リスクヘッジになるでしょう。不動産自体の価格も上昇することが考えられ、売却益の観点からもインフレ対策の効果が期待できます。
また、不動産投資の副収入は、円安によるコスト高で企業収益が圧迫されて、株価や給料が下落した場合のリスクヘッジとしても役立つといえます。
ただし、不動産によっては経年劣化が進んで価値を大きく低下させていたり、エリアの人口が減少傾向にあり収益性が損なわれているケースがあります。リスクヘッジとして不動産投資を検討する際は、不動産投資の基本的な知識を身に着けておきましょう。
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佐藤 永一郎
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