デジタルアセット担保ローンのメリット・デメリットは?仕組みや注意点も

※ このページには広告・PRが含まれています

デジタルアセット担保ローンは、暗号資産(仮想通貨)を売ることなく資金調達ができる、新しい金融サービスです。

長期的な運用を考えて暗号資産を保有している場合でも、資産を寝かせておくだけでなく、それを担保に法定通貨の調達ができるのはデジタルアセット担保ローンの大きなメリットとなります。一方、暗号資産の値上がりや値下がりがあった場合のデメリットや、総量規制などの注意しておきたいポイントもあります。

本記事では、デジタルアセット担保ローンの仕組みとメリット・デメリット、注意点について解説していきます。

目次

  1. デジタルアセット担保ローンの仕組みとは
  2. デジタルアセット担保ローンのメリット
    2-1.暗号資産の含み益を手数料や税金をかけることなく活用することができる
    2-2.値動きの激しい暗号資産の時価下落リスクに対応することができる
    2-3.返済資金がなくても暗号資産で返済することができる
    2-4.不動産ローンとして利用すれば担保評価不足を補うことができる
  3. デジタルアセット担保ローンのデメリット・注意点
    3-1.借入額には暗号資産価格の一定割合および総量規制の制限がある
    3-2.借入期間内は暗号資産の利用・処分が制限される
    3-3.借入期間内の暗号資産の値上がり益を充分に活用することができない
    3-4.暗号資産が値下がりした場合、処分されたり、追加支払いが必要になることがある
  4. まとめ

1.デジタルアセット担保ローンの仕組みとは

デジタルアセット担保ローンデジタルアセット担保ローンは、暗号資産(仮想通貨)を利確することなく、担保に差し入れることで、法人および個人事業主に法定通貨を融資するサービスです。

暗号資産は、ビットコインおよびイーサリアムが対象となり、法定通貨は円およびUSドルが対象となり、借入限度額は担保に預け入れた暗号資産の時価の50%となります。

基本契約および暗号資産担保契約を締結した後、借入契約は任意のタイミングで申し込むことができます。基本契約は、予め極度額を設定し、その範囲内で借り入れることができる形式によっておこないます。

借入期間は1年間で、契約期日に元利一括返済する借入契約となります。担保として差し入れた暗号資産は、借入期間中は原則として引き出すことはできませんが、借入資金の返済方法として暗号資産を利用することが可能です。

不動産ローンとして利用することもでき、不動産を担保としないため、デジタルアセットの極度額の範囲内でフルローンを組める可能性もあります。

2.デジタルアセット担保ローンのメリット

デジタルアセット担保ローンのメリットとして、次のような点が挙げられます。

  • 暗号資産の含み益を手数料や税金をかけることなく活用することができる
  • 値動きの激しい暗号資産の時価下落リスクに対応することができる
  • 返済資金がなくても暗号資産で返済することができる
  • 不動産ローンとして利用すれば担保評価不足を補うことができる

以下、それぞれについて解説していきます。

2-1.暗号資産の含み益を手数料や税金をかけることなく活用することができる

暗号資産は、支払・資金決済に利用できる機会が増えているものの、法定通貨でないため、利用するには日本円や米ドルなどの法定通貨に交換することが必要になることが多いといえます。

暗号資産を法定通貨に交換するには、専門の取引業者に依頼して売却する必要があり、手数料を支払うことになります。

また、暗号資産を法定通貨に変えて売却益が発生した場合には、原則として所得税法上の雑所得として取り扱われ、総合課税における累進税率によって税金がかかることになります。

暗号資産は上記の要因によって現金化するハードルが高く、大きな含み益を得ていても資産運用の手段が限られてくるという側面がありました。デジタルアセット担保ローンは、法定通貨に交換する際の手数料や税制面のデメリットを解消し、担保として暗号資産を活用することができるメリットがあります。

2-2.値動きの激しい暗号資産の時価下落リスクに対応することができる

暗号資産には時価が急激に低下するリスクがあり、ローンの担保としては不安定な資産であると言えます。

デジタルアセット担保ローンでは、担保率が120%以上であれば売却されず、暗号資産を担保に残したまま、借り入れた資金も利用することが可能です。

デジタルアセット担保ローンは、暗号資産の急激な値動きによる時価下落リスクにも対応したサービスであるといえるでしょう。ただし、過去には大きな変動によって特定の暗号通貨が50%ほど下落するケースも見られており、120%の担保率を超えてしまうリスクがあるという点にも注意が必要です。

2-3.返済資金がなくても暗号資産で返済することができる

通常のローンであれば、担保に差し入れている資産は返済遅延が起きた際の差し押さえなどの手続きを踏んで回収され、平時にローンの返済に充てることはできません。例えば、不動産担保ローンの返済は不動産のまま支払うことはできず、その他の給与収入や、売却などの方法によって現金化したうえで返済していくのが原則です。

しかし、デジタルアセット担保ローンであれば、担保に差し入れている暗号資産でローン返済をすることも可能です。手元現金を返済によって減らすことなく、ローン返済が可能であることもメリットといえるでしょう。

2-4.不動産ローンとして利用すれば担保評価不足を補うことができる

デジタルアセット担保ローンは、不動産ローンとしても利用することができ、物件価格までの融資(フルローン)が利用可能です。個人の不動産購入目的の借入については除外貸付となり、総量規制を超えた融資を受けられる点もメリットとなります。

例えば、銀行や公庫などの金融機関で不動産をローンによって購入する際、基本的には購入不動産が担保に設定されます。この時、不動産の担保評価額が低いと融資可能額が少なくなり、購入価格に届かないために購入を断念することもあるでしょう。

そのような場合、デジタルアセット担保ローンを利用することで、評価額の伸びにくい物件を購入検討することが可能になります。不動産購入における資金調達の方法として、新しい選択肢を得られるという点もメリットとなります。

その他、不動産ローンの主な特徴は下記になります。

  • 1年ごとの固定金利(4.0~8.0%)
  • 1つの不動産に対し借入は1回のみ可能(追加融資不可)
  • 不動産売買契約書を提示し、審査を受ける必要がある
  • 不動産取得の諸費用に対する融資(オーバーローン)は個別に相談が必要になる
  • 1年契約のため住宅ローン控除の対象外になる可能性が高い

3.デジタルアセット担保ローンのデメリット・注意点

デジタルアセット担保ローンのデメリット・注意点として、次のような点が挙げられます。

  • 借入額には暗号資産価格の一定割合および総量規制の制限がある
  • 借入期間内は暗号資産の利用・処分が制限される
  • 借入期間内の暗号資産の値上がり益を充分に活用することができない
  • 暗号資産が値下がりした場合、処分されたり、追加支払いが必要になることがある

以下、それぞれについて詳しくみていきましょう。

3-1.借入額には暗号資産価格の一定割合および総量規制の制限がある

デジタルアセット担保ローンの借入額には、2種類の上限制限があります。

  • 第1の上限制限:差し入れる暗号資産の評価額による制限(時価の50%)
  • 第2の上限制限:貸金業者の総量規制の対象となり、年収の3分の1を超えると返済能力を超える貸付けとみなされる

※不動産ローンの場合は除外貸付となり、総量規制の対象とはなりません。(参照:日本貸金業協会「お借入れは年収の3分の1まで(総量規制について)」)

借入できる金額は、これらの制限に基づき基本契約で設定した極度額の範囲内となってしまうことがデメリットといえるでしょう。

3-2.借入期間内は暗号資産の利用・処分が制限される

デジタルアセット担保ローンの借入期間内は、借り入れた状態のままでは、暗号資産を担保に差し入れているため、暗号資産を利用したり、売却したりすることができなくなります。

暗号資産は、支払や資金決済に利用できる通貨の機能を備えていますが、借入期間内に暗号資産を通貨として活用することはできなくなります。また、暗号資産が借入期間内に値上がりしたとしても、売却して利益を確定することはできません。

このように、借入期間内に暗号資産を利用・処分したい場合は、ローンを利息とともに一括返済することが前提になります。ただし、大幅に値上がりしている場合には、一部の暗号資産を引き出して利用・処分ができることもあります。

3-3.借入期間内の暗号資産の値上がり益を充分に活用することができない

デジタルアセット担保ローンの借入期間内に暗号資産が値上がりした場合、その分の追加借り入れが可能ですが、極度額の範囲内となります。極度額は、貸金業者の総量規制の影響などを受けるため、暗号資産の値上がり益を必ずしも充分に活用できるとはいえません。

暗号資産の値上がり益を得たい場合は、売却して利益確定をすることになりますが、それにはローンを利息とともに一括返済することが前提になります。利息等の支払分、暗号資産の値上がり益が目減りすることになるでしょう。

3-4.暗号資産が値下がりした場合、処分されたり、追加支払いが必要になることがある

デジタルアセット担保ローンでは、担保に差し入れた暗号資産の価格が大幅な値下がりにより、担保不足となるおそれが著しく強いと判断された場合、担保として差し入れている暗号資産を処分されることがあります。

また、処分した暗号資産の処分価格が債権額を下回った場合、残債部分について追加で支払い義務が発生することがあります。ボラティリティの大きい暗号資産を担保としているため、値下がりリスクについては十分に注意する必要があります。

なお、担保不足の対策としては、担保となる暗号資産を追加することで回避することも可能です。

まとめ

デジタルアセット担保ローンは、暗号資産(仮想通貨)を利確することなく、担保に差し入れることで、融資を受けることができるサービスになります。

利確しなくても一定額の法定通貨が調達できるため、税金や手数料を節約して暗号資産を活用できたり、時価下落リスクに対応できるなどのメリットがあります。

一方、借入期間内は暗号資産の利用が制限され、調達できる資金は暗号資産の評価額の半分以下になってしまうなどのデメリットもあります。特に、借入期間内に暗号資産が値上がりした場合や値下がりした場合のデメリットには注意したいといえます。

本記事を参考に、デジタルアセット担保ローンを利用する際は、自身の資金需要や暗号通貨の運用方針に合わせて利用検討されてみると良いでしょう。

The following two tabs change content below.

佐藤 永一郎

筑波大学大学院修了。会計事務所、法律事務所に勤務しながら築古戸建ての不動産投資を行う。現在は、不動産投資の傍ら、不動産投資や税・法律系のライターとして活動しています。経験をベースに、分かりやすくて役に立つ記事の執筆を心がけています。