投資する前に知っておきたい、中古ワンルーム投資の利回りと物件の選び方

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2019年5月時点において、三大都市圏における新築ワンルーム投資の利回りは4%~5%程度が一般的であり、物件による利回りの差はあまりありません。一方、中古ワンルーム投資の場合は利回り6%~20%と物件によって大きな差があります。そのためどの物件が良いのかと迷う方もいるでしょう。

今回は中古のワンルーム投資をする際に、利回りの違いによって変わる注意しなければいけないポイントなど、投資する前に知っておきたいことをご紹介します。

目次

  1. 区分マンションの利回りの傾向
    1-1.地域別の利回りの傾向
    1-2.築年数別の利回りの傾向
  2. 利回りが良い物件を購入する時に知っておきたいこと
    2-1.利回りが高い物件ほど都心部から遠い・築年が古い
    2-2.利回りの高い物件は組めるローン期間に注意
    2-3.瑕疵の確認は必ず行う
    2-4.利回りが良い物件は空室に注意する
    2-5.購入する際の価格に注意する
  3. 利回りがあまり良くない物件の特徴
    3-1.物件価格が高いが資産価値も高い
    3-2.都心部の居住ニーズは長期的に落ちない予想
    3-3.最新の間取りや広さの物件が多い
    3-4.資金に余裕を持つ必要がある
    3-5.余裕を持った返済計画がたてられる
    3-6.長期の運用に向いている
  4. まとめ

1.区分マンションの利回りの傾向

まず区分マンション全体では利回りはどれくらいあるのかを見てみましょう。

不動産投資と収益物件検索サイト「健美家」の「収益物件市場動向マンスリーレポート2019年4月期」によれば、2019年4月時点の健美家に登録された全国の収益物件の平均利回りは7.54%だということがわかります。

1-1.地域別の利回りの傾向

では地域別に見た場合はどのような差があるのでしょうか。以下の表は、同レポートから引用した地域別の区分マンションの利回りとなります。

投資エリア 利回り
全国 7.54%
北海道 13.23%
東北 12.64%
首都圏 6.59%
信州・北陸 17.18%
東海 9.73%
関西 8.31%
中国・四国 11.27%
九州・沖縄 10.17%

この表から首都圏や関西、東海といった大都市では利回りが低く、大都市から遠くなるほど利回りが高いことがわかります。

利回り(表面利回り)は以下の試算法で算出されます。

利回り=年間の家賃収入÷物件価格

利回りは物件価格に対する年間の家賃収入の割合です。このことから首都圏や関西などの大都市圏と地方を比較した場合、地方の方が家賃収入に対する物件価格が低いことが考えられます。

1-2.築年数別の利回りの傾向

次に築年数と利回りの関係はどのようになっているかを見てみましょう。東京カンテイ「築年帯別に見る駅別利回り分布の分析」によれば、首都圏では新築マンションの利回り4.44%に対して、築10年で5.18%、築20年で5.81%、築30年で6.19%と利回りは上昇していくことが分かります。

このことから、築年数が経過する際の家賃の下落率よりも、物件価格の下落率の方が大きいことが予想できます。

以上の資料などから、築年数が古く、都心から遠いほど利回りが高くなるという傾向があることがわかります。不動産は個別の取引になりますので、全ての物件がこの傾向に当てはまるわけではありませんが、一般的な傾向として捉えておくと良いでしょう。

2.利回りが良い物件を購入する時に知っておきたいこと

利回りが高い物件にはどのような傾向があり、購入前にどのような点に注意すれば良いかを見てみましょう。

2-1.利回りが高い物件ほど都心部から遠い・築年が古い

先ほど首都圏とその他の地域の比較で見たように、都心から遠い物件ほど利回りが高くなる傾向があることがわかります。東京23区で言えば、千代田区・港区・中央区の都心3区の利回りは低く、それらの地域から離れた葛飾区・足立区の利回りは高くなっています。

また、先述の通り築年数が経過している物件ほど利回りが高い傾向にある点も踏まえると、利回りの高い物件を購入する場合は、都心から離れた郊外の物件や築古の物件が多くなる可能性が高いことがわかります。

2-2.利回りの高い物件は組めるローン期間に注意

利回りが高い物件は都心から離れた場所に建ち、築年数が多く経過している傾向があることがわかりました。利回りが高いという点にメリットを感じても、そのような物件を購入する際はローンの期間に注意が必要です。中古ワンルームでは全ての物件で長期のローンが組めるわけではありません。

中古の不動産を購入する際のローンの返済期間は、物件の法定耐用年数から築年数を引いた年数が判断基準になります。以下に各構造の法定耐用年数を記します。

構造 法定耐用年数
木造 22年
軽量鉄骨造 27年
重量鉄骨造 34年
RC造 47年

ワンルームマンションはRC造ですので47年の法定耐用年数になります。仮に築30年の物件を購入する場合の残存年数は、47年-30年=17年となり、金融機関によっては17年程度の返済期間でしかローンを組めないことも考えられます。

そのため、売りに出ている物件の現在の利回りが良かったとしても、短いローンで組み直した場合はキャッシュフローが悪くなる可能性もありますので、試算する際はローンの返済期間を事前に金融機関に確認してから行うことが大切です。

2-3.瑕疵の確認は必ず行う

仮に利回りが良くても、築年数が多く経過している物件を購入する際は瑕疵(かし)がないかどうかに注意する必要があります。瑕疵とは目視ではすぐに確認できない物件の損傷や欠陥のことです。購入後に瑕疵が発見された場合、3ヵ月を過ぎていると買主が自費で修理しなくてはいけません。

また、築古物件の契約書には「売主は瑕疵担保責任を負わない」と謳われているものもあります。その場合は購入後3ヵ月以内であっても売主に瑕疵担保責任が発生しないため、瑕疵の修理は全て買主の負担となります。

物件引き渡しの前に住宅診断を業者に依頼することで、水回りの損傷や目に見えない屋根裏の状態まで細かく調査してもらうことができます。水回りなどの損傷は最初小さくても時間が経過すると大きくなり、修理費用が高額になることがあります。

診断には数万円かかりますが、修理費用に数十万円かかる可能性があることを考えると、保険のつもりで診断をしてから購入することをおすすめします。

2-4.利回りが良い物件は空室に注意する

瑕疵と同じように注意しなければいけないのは空室リスクです。築年数が多く経過していると空室率が高くる傾向があります。また売りに出ている時には入居者がいたとしても、購入後に退去してしまい空室期間が長期に及ぶことも考えられます。

利回りが良い物件であったとしても、他の部屋の入居状況にも注意した上で購入するようにしましょう。

2-5.購入する際の価格に注意する

利回りが良いということは、物件価格に対して家賃収入が多いか、家賃収入に対して物件価格が低いということが考えられます。周りの同じような物件と比較して物件価格が低い場合は、修繕やリフォームが必要だったり、築古だったりするなどでリスクが高く、安くしないと売れない物件である可能性があります。

購入する際の価格が相場と比較してあまりに低い場合は、低い理由を確認した上で購入することが大切です。

利回りが良い物件を購入する場合に注意したい点について考えてみました。利回りが良い物件には立地や築年数、修繕などのリスクを持っている可能性が高いということがわかりました。

次に、利回りがあまり良くない物件を購入する場合について見てみましょう。

3.利回りがあまり良くない物件の特徴

利回りがあまり良くない物件にはどのような特徴があるのでしょうか。上記で利回りが高い物件は都心から離れ、築年数が多く経過している可能性が高いことには触れました。利回りがあまり高くない物件はその逆で、一般的に都心付近に建築されているものや築年数が浅いものが考えられます。

3-1.物件価格が高いが資産価値も高い

利回りがあまり良くないからといって、必ずしも投資に向いていないということではありません。そうした物件は売却価格が高かったり入居率が高かったりというメリットがあり、資産価値が高く評価される可能性が高くなります。

そのような物件であれば、賃料収入によるキャッシュフローがあまりストックされていなくても、売却時にまとまった金額を得られる可能性があるほか、新しい物件を購入する際の担保としても評価が高く、多く借りられる可能性が高まります(後述)。

3-2.都心部の居住ニーズは長期的に落ちない予想

利回りがあまり良くない物件は都心に建っているものが多く、その場合長期的な賃貸ニーズがある可能性が高いと言えます。また、国が職住近接の施策を推進しているため、都心に住む単身者や夫婦が増えているということも都心の住宅ニーズを押し上げている要因になっています。

以下のグラフは東京都政策企画局が作成した「2060年までの東京の人口推計」から引用したものです。こちらのグラフでは全国と東京都、23区部などの2060年までの人口推移がわかります。

*東京都政策企画局「2060年までの東京の人口推計」から引用

こちらのグラフによると、全国的には2010年をピークに人口はすでに減少傾向にありますが、東京都では2025年位までは人口は増加すると予想されています。さらに23区部では2030年までは増加することが予想されています。

また、2060年時点では全国の人口は8,000万人台になると予測されていますが、うち23区部の住民は840万人とされており、全国の人口の10分の1が都心部を含む23区内に居住している可能性があることがわかります。このようなことから、都心部の居住ニーズは長期的に落ちないことが考えられ、ワンルーム投資でも安定した運用ができる可能性が高くなります。

3-3.最新の間取りや広さの物件が多い

近年のワンルームマンションは10年前の物件と比較して広く、またキッチンを部屋と分けるなど間取りも変化しています。築浅の物件で利回りが低い場合は、最新の間取りや広さを備えている物件が多く、今後もニーズが高い可能性があります。

不動産情報サイトSUUMOの「家を探すときに重視する項目」アンケートによると、どの世帯も物件の構造について重視する項目では間取りや面積が上位にランキングされていることがわかります。

また、路線・駅やエリア、最寄駅からの時間などの条件は都心の物件が備えている可能性が高く、利回りがあまり良くなくても、都心の築浅物件であれば、入居者からのニーズが高く、安定した運用が期待できると言えます。

3-4.資金に余裕を持つ必要がある

利回りがあまり良くない場合、利回りが良い物件と比較して毎月の手残りが少なく、キャッシュフローがストックされるスピードが遅いことが考えられます。キャッシュフローが十分ストックされる前に大きな修理や空室が発生した場合、キャッシュフローで蓄積した資金では足りない可能性があります。

その場合はオーナーが自分の貯蓄や給与から出費をしなければならなくなります。そういったことにならないためにも、利回りがあまり良くない物件を購入する際は資金を多めに準備し、余裕を持って資金計画を立てることが大切です。

3-5.金融機関の評価が高い

利回りがあまり良くなくても、築浅・都心部の物件を購入する場合は金融機関の評価が高くなるため、融資が付きやすくなり、余裕を持った返済計画が立てられる可能性が上がります。

中古マンションの場合、法定耐用年数をもとにローンの返済期間を決めることには触れました。築浅の物件であれば返済期間30年など長期でのローンを組むことができますし、また金利も低くなる可能性があります。金利をなるべく低く設定し、長期のローンを組むことで少しでも毎月の手残りや利回りのアップが図れるようにしましょう。

3-6.長期の運用に向いている

都心に建つ築浅の物件は長期の運用に向いています。築年数が多く経過している物件と比較して、間取りや広さが将来的な賃貸ニーズにも適応している可能性が高く、長期間所有していても入居率が落ちにくいことが考えられます。

そのため、年金代わりに所有したい方や、売却せずに所有し続けたい方のように、長期間運用したい考えの方に向いている物件と言えます。

まとめ

今回は中古ワンルーム投資の利回りについて、投資する前に知っておきたいことを解説しました。

ワンルーム投資では利回りが良い方が高い投資効率で運用ができるように思えますが、空室リスクや不動産価格の下落リスクなども小さくありません。一方で、利回りがあまり良くない物件は、好立地のエリアに建っていたり、築年数が浅かったりすることで、利回りが良い物件よりも安定した運用が期待できます。

どのような目的でワンルーム投資をするかによって、検討すべき投資手法や物件のタイプは違ってきますので、慎重に計画を立てて取り組むようにしましょう。

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西宮光夏

不動産会社での勤務や、所有している不動産運用の経験をもとにHEDGE GUIDEでは不動産関連記事を執筆しています。現在は主にふるさと納税の記事を担当しています。ふるさと納税記事では、地域の人たちが心を込めて提供する返礼品の素晴らしさを、少しでも多くの人にお伝えできればと思っています。