サステナブル住宅に求められる3つの要素とは?事例や活用できる補助金も

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サステナブル住宅とは、持続的な社会の形成に資する住宅のことです。日本建築業協会が指針を示しており、持続可能な社会の形成に向けて環境保護や地域貢献、居住環境などさまざまなポイントにおいて工夫された住宅を指します。

この記事ではサステナブル住宅の要件や具体的な建築方法の例、そしてサステナブル住宅を建てるときに利用できる補助金を紹介します。サステナブル住宅の保有を考えている人は、ぜひ参考にしてください。

目次

  1. サステナブル住宅の基本的な考え方や3つの要素
    1-1.サステナブル建築の3つの要素
    1-2.地球の視点
    1-3.地域の視点
    1-4.生活の視点
  2. サステナブル住宅を実現する具体的な事例
    2-1.建設・加工におけるエネルギー消費が少ない
    2-2.高気密・高断熱は省エネ+住環境の改善に
    2-3.フレキシブルなリフォームに対応した住宅
    2-4.周囲の環境に悪影響を及ぼさない住宅
    2-5.空き家や築古物件の再生
  3. サステナブル住宅の建設に役立つ補助金とは?
    3-1.サステナブル建築物等先導事業
    3-2.ZEH支援事業
  4. まとめ

1 サステナブル住宅の基本的な考え方や3つの要素

SDGsの考え方が広がるなか、住宅などの不動産に対してもサステナビリティ(持続可能性)を意識する動きが高まっています。日本建設業連合会ではサステナビリティに貢献できる建築を意味する「サステナブル建築」の指針を公開しています。

サステナブル住宅とは、このサステナブル建築の指針に沿って建設された住宅を指します。具体的な指針の内容をみていきましょう。

1-1 サステナブル建築の3つの要素

不動産は所有者が建てた財産である一方で、社会全体の財産でもあり、地球の発展に貢献し、環境破壊などの問題を引き起こさない配慮が必要になります。

サステナブル建築は、そのような考え方を土台に下記3つの視点から環境に配慮した不動産を指します。

  1. 地球の視点:建築のライフサイクルを通じての省エネルギー・省資源・リサイクル・有害物質排出抑制を図る
  2. 地域の視点:その他地域の気候、伝統、文化および周辺環境と調和する
  3. 生活の視点:将来にわたって人間の生活の質を適度に維持あるいは向上させていくことができる

出所:日本建設業連合会「サステナブル建築

ここからは、それぞれの要素の詳しい指針についてみていきましょう。

1-2 地球の視点

現在および将来の地球環境を守るために「建築のライフサイクルを通じての省エネルギー・省資源・リサイクル・有害物質排出抑制を図る」ことが求められています。

地球の視点での環境設計配慮項目

配慮すべき項目 ポイント
省CO2、節電 化石エネルギー消費が最小となるような設計及び運用、省CO2と節電・ピークカットの両立
再生可能エネルギー 再生可能エネルギー活用を推進する設計及び運用
(ex 固定買取制度活用を含む)
建物長寿命化 長持ちし長く使い続けられる建物の設計及び運用
エコマテリアル 二酸化炭素排出や環境負荷の少ないリサイクル材等の利用を推進
ライフサイクル 設計・施工・運用・改修・廃棄プロセスを通じ、一貫したライフサイクル・マネジメントを可能にする
グローバル基準 グローバルな性能評価基準への適宜対応
(ex LEED、Energy Star 他)

出所:日本建設業連合会「サステナブル建築を実現するための設計指針

地球環境を守るための項目がまとめられています。地球の資源が有限であることを前提に、再生可能エネルギーの積極的な活用や、建物の長寿命化による不動産の建設や廃棄の頻度の低減などが求められています。さらに、不動産の建設〜廃棄に至るライフサイクル全体において不動産を適切に管理することも重要です。

現代ではさまざまな環境に関する評価基準があります。これらを取得すれば、性能の高さは一目瞭然なため、サステナブル建築の枠組みの中では、グローバルな評価基準の取得を推奨しています。

1-3 地域の視点

地球全体の環境に加えて、地域の環境やネットワークへの配慮も求められています。この項目ではいわゆる環境保護だけでなく、地域との調和やコミュニティ形成、防災といった社会的な側面にも触れられています。

地域の視点での環境設計配慮項目

配慮すべき項目 ポイント
都市のヒートアイランド抑制 外構・屋上・壁面の緑化、保水床、散水・打水他
生物多様性への配慮 既存の動植物に対する生態系ネットワークへの配慮
自然・歴史・文化への配慮 景観配慮、歴史・文化配慮、地域コミュニティ配慮
地域や近隣への環境影響配慮 土壌汚染、大気汚染、水質汚染、交通量配慮、日影、騒音、振動、臭気、廃棄物等の配慮
エネルギーネットワーク化 CEMS,スマートグリッド等の地域に最適なエネルギーネットワー化への配慮
地域防災・地域BCP 自然災害の防災及びライフライン確保等、事業継続性計画(BCP)への配慮

出所:日本建設業連合会「サステナブル建築を実現するための設計指針

環境面では、ヒートアイランドの抑制や地域の大気・土壌などの汚染リスクへの配慮など、より局所的な環境保護を求めています。

さらに騒音・振動の抑制や景観への配慮など、地域住民全体が調和的で快適に生活して行くうえで必要なポイントもおさえられています。また、地域コミュニティの発展や防災といった社会的側面にも触れられているのも特徴です。

1-4 生活の視点

生活の視点とは、その建物を使う住民が健康、快適に過ごすための配慮がまとめられています。サステナブル建築は「我慢して省エネ」するのではなく、そこに住む人や働く人が快適に暮らしながら省エネも達成していける不動産を目指しているのです。

生活の視点での環境設計配慮項目

配慮すべき項目 ポイント
安全性 平常時安全性(防犯、事故防止、弱者安全、他)、非常時安全性(地震安全・BCP、火災安全、他)
健康性 CO2濃度、化学汚染物質、感染症対策、清浄度、臭い、他
快適性 温熱環境、光環境、音環境、他(ex 輻射空調等)
利便性 ELV待ち時間、モジュール、動線、オフィススタンダード、IT環境他
空間性 眺望、広さ、色彩、触感、コミュニティ、緑化、アメニティ他
更新性 可変性、拡張性、冗長性、回遊性、収納性他

出所:日本建設業連合会「サステナブル建築を実現するための設計指針

防犯や事故など、その建物の利用者・関係者に直接影響があるトラブル要因の抑制が求められます。防災・減災に関しては、安全確保やBCPといったように、利用者の安全や生活といったミクロな視点での対策が必要です。

また、快適性や利便性、空間性などは、使用する人が快適かつ便利に建物に住んだり使用したりするために考慮すべき要素です。また、特徴的なのは「更新性」で、長期で不動産を使用することを念頭に、将来のニーズや用途、利用者の変化などに応じて建物を更新可能な仕組みをもつことを求めています。

2 サステナブル住宅を実現する具体的な事例

日本建設業連合会の基準のもと、サステナブル住宅の事例はすでに多数存在します。ここからは実際にサステナブル住宅を実現するための手法をみていきましょう。

2-1 太陽光発電と蓄電池による創エネ・蓄エネ

東京都が推進している新築住宅における太陽光発電の義務化などの話題もあり、SDGsと太陽光発電を関連付けて考えている人は多いでしょう。

太陽光発電を導入すると、使用する電力を化石燃料を使用せずに賄えるようになるため、資源保護と二酸化炭素の排出抑制などを通じた環境保護に役立ちます。使用電力を上回る発電能力を備えている場合には、売電を通じて社会全体の脱炭素化への貢献が可能です。

一方、太陽光発電は夜間に発電ができない上、日中も発電量が天候に左右されるのが課題となります。この課題解決の方法として注目されているのは蓄電池です。

太陽光発電は蓄電池と併用するとエネルギー効率が向上します。蓄電池があれば、発電量の多いタイミングの電気を貯めて、夜間や悪天候時などに使用することで、効率的に再生可能エネルギーを使用できるようになります。

2-2 高気密・高断熱は省エネ+住環境の改善に

高気密とは内外の空気の出入りが少ないことで、高断熱は熱や冷気を遮断して室温を維持する機能が高いことを意味します。高気密・高断熱を同時に達成すると、夏に涼しく冬に暖かい居住空間を実現できるため、冷暖房使用を控えることが可能に。建物全体で使用するエネルギーを節約することで省エネにつながります。

さらに、住環境が改善するため「生活の視点」からサステナビリティに貢献することにもつながります。室内の温度が安定するため夏も冬も快適に過ごせますし、住む人の健康維持にもプラスに働くでしょう。

高気密・高断熱は外壁や塗料などの建材の工夫と空気の流れ、窓からの採光性などを加味した構造設計が重要に。サステナビリティに配慮した住宅設計に長けた建築士や施工業者を利用することが大切です。

2-3 フレキシブルなリフォームに対応した住宅

生活の視点では、住む人の特性やライフサイクルに合わせて増改築やリフォームがしやすい住宅が望ましいと言えます。間取りを簡単に変えられれば、ライフイベントなどによって調整していけるため、長期間にわたり住みやすくなります。

こうした物件は、元の住人の転居により別の人が住む場合にも、新たな住人に合わせた間取りへの変更が容易です。間取りを調整しながら、長い間人が快適に住める家となるため、サステナビリティの観点から望ましいと言えます。

最近では、構造体(スケルトン)と間仕切り壁や内装(インフィル)を分けて設計する「SI(スケルトン・インフィル)住宅」が増えています。また、マンションなどでは、間仕切りを住人が開閉することで間取りが可変な物件も見られます。これらの住宅はサステナビリティに配慮した事例といえるでしょう。

2-4 周囲の環境に悪影響を及ぼさない住宅

周辺環境にも配慮した住宅であることもサステナビリティ住宅の条件の一つです。新たな住宅のトラブルの元となりやすい問題としては騒音と遮光がありますが、いずれも計画段階での工夫が重要になります。

外壁の工夫により遮音性を高め、太陽の軌道を踏まえて周囲の建物の日光を遮らないようにしなければなりません。いずれも設計段階で工夫しておかなければならないポイントなので、新築のサステナブル住宅を建てる考えの人は、サステナビリティに配慮できる業者を選ぶようにしましょう。

2-5 空き家や築古物件の再生

空き家や古い物件をリフォーム・リノベーションして住める状態にするのも、サステナブル住宅を実現する手法の一つです。古き良き建物を守りながら利用することで、歴史や景観の維持に役立ちます。

建物を建てるときには、どうしても資源やエネルギーを大量に使うことになります。古い建物を工夫して長く使うことで、取り壊し、建て替えのサイクルを遅らせて、資源の保護や脱炭素化につながるのです。

空き家は全国で増加傾向で、その対応が課題となっている自治体も少なくありません。空き家や築古物件の使用は、さまざまな視点からサステナビリティに貢献する手段といえるでしょう。

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3 サステナブル住宅の建設に役立つ補助金とは?

政府や自治体は日本全体のサステナビリティを高めるために、サステナブル住宅の普及を推進しています。

そのため、サステナブル住宅の建設に活用できる補助金がいくつかあります。これからサステナブル住宅に住むことを考えている人、サステナブル住宅で不動産投資をしようと思っている人は、ぜひ活用を検討してください。

3-1 サステナブル建築物等先導事業

国立研究開発法人 建築研究所が提供している補助金事業です。次の4つの部門に分かれています。

  1. 一般部門(建築物(非住宅)、共同住宅、戸建住宅)
  2. 中小規模建築物部門(非住宅)
  3. LCCM低層共同住宅部門
  4. 分譲住宅トップランナー事業者部門

出所:建築研究所「サステナブル建築物等先導事業

このうち、住宅単体で応募可能なのは①と③となります(④は住宅メーカーなどまとまった数の住宅を提供する事業者向け)それぞれ以下が基本要件となっており、最終的には充足するかどうかは建築研究所の審査を経て判断されますが、基本的な要件として以下が公表されています。

サステナブル建築物等先導事業の応募要件

部門 要件
一般部門・中小規模建築物部門 ①新築される住宅・建築物については、ZEH・ZEB水準の省エネルギー性能を満たすものであること
②材料、設備、設計、運用システム等において、CO2の削減、健康、災害時の継続性、少子化対策等に寄与する先導的な技術が導入されるものであること
LCCM低層共同住宅部門 ①強化外皮基準(ZEH水準の断熱性能)を満たすもの
②再生可能エネルギーを除き、一次エネルギー消費量が現行の省エネ基準値から25%削減されているもの
③ライフサイクルCO2の評価結果が0以下となるもの

出所:建築研究所「サステナブル建築物等先導事業

なお、過去の傾向では年に2回ほど対象事業を募集していますが、募集時期は年によって異なるため、利用を検討する場合は募集情報を逐一確認しておきましょう。

なお、一般部門・中小規模建築物部門の補助率・補助限度額は次のとおりです。

  • 補助率:補助対象費用の1/2
  • 補助限度額:1プロジェクトあたり原則5億円

3-2 ZEH支援事業

ZEHとはZero Emission Houseの略で、地球温暖化の原因となる二酸化炭素などのガス発生を実質的に抑制した物件のことです。

正式なZEHではエネルギー消費量と再生可能エネルギーによる発電に伴う実質的な炭素発生の抑制効果を加味して、一次エネルギー消費量の削減率を100%以上にしなければなりません。

そのほか、削減率が75〜100%ならNearly ZEH、基準に対して20%以上の省エネを行っている場合にはZEH Orientedとなります。ただし、Orientedは都市部の狭小地や豪雪地帯など一部の地域でのみ適用を受けられます。

なお、再生可能エネルギーによるエネルギー創出を加味した後の抑制効果の大きさに関わらず、自然界に存在する化石燃料などから算出する一次エネルギー消費量を20%以上は抑制しなけなりません。また、25%以上の削減を実現している場合には「ZEH+」となります。

補助金の額は、一戸あたりZEHが55万円、ZEH+が100万円です。そのほか蓄電システムや地中熱ヒートポンプなど、省エネ、畜エネや創エネ機能を高める設備を設置する場合には、さらに補助金額は増加します。

これまでは年1度のペースで公募していましたが、2023年4月時点では令和4年〜5年の公募を行なっており、2024年3月までに補助金支給まで完了するスケジュールとなっています。

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まとめ

SDGsの認知度向上もあり、不動産においてもサステナビリティに配慮したサステナブル建築の注目度が高まっています。中でもサステナブル住宅は、環境への配慮のほか住む人の機能性向上や地域への影響の抑制などさまざまなメリットがあるため、建設することによる貢献度は高いといえるでしょう。

条件に適合するサステナブル住宅であれば補助金の支給を受けられるため、高いコストをかけずに持続的な社会の発展に資する住宅を建てられます。投資や居住する住宅からサステナビリティへ貢献したいと考えている人は、サステナブル住宅の保有を検討してみてください。

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伊藤 圭佑

資産運用会社に勤める金融ライター。証券アナリスト保有。 新卒から一貫して証券業界・運用業界に身を置き、自身も個人投資家としてさまざまな証券投資を継続。キャリアにおける専門性と個人投資家としての経験を生かし、経済環境の変化を踏まえた投資手法、投資に関する諸制度の紹介などの記事・コラムを多数執筆。